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トランスジェンダーの起業家が、共感能力を高めるVRアプリを開発

2017.05.19

  • LGBT
  • トランスジェンダー
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トランスジェンダーだからこその気づき

米経済誌「フォーチュン」は先ごろ、「VRを使って社員の共感能力を高められるか?」と題した記事を掲載した。米トランスレーター社が開発中のVR(バーチャル・リアリティ)を利用したダイバーシティ&インクルージョン・トレーニング・システムについて報じられている。米トランスレーター社は、トランスジェンダーの女性CEOが経営している。(以下、抄訳)

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すべてを手にした男が充たされなかった理由

「2014年のネイサン・イーガンは、すべてを手にした男に見えた。親友でもある妻との間に3人の子どもを持ち、自身が経営するソフトウェア企業PeopleLinxは大成功して、数百万ドルの資金を調達したばかりだった」というストーリーから記事は始まる。

だがここから彼の転落が始まった。結婚生活は暗礁に乗り上げ、躍進を遂げていたPeopleLinxは内部崩壊寸前となる。「これはどん底の時期だった。手にしていた良きものはすべて失われてしまった」と記事はイーガンの回想を引用する。

やがてイーガンは、自分は望ましい人生を手にしていないと悟ったという。原因は会社でも妻でもなく、彼が「彼」でありたくなかったことだった。

そしてイーガンはトランスジェンダーの女性「ナタリー」として生まれ変わった。「彼女」として再出発したとき、イーガンは初めてマイノリティ・グループの人々の気持ちが真に理解できたという。自身を異性愛者の白人男性と自己規定していた頃には、いかに視野が狭かったかも気がついた。

さらにイーガンは、その反省の中からビジネス機会を見出した。

社員の共感能力を鍛えるVRアプリ

彼女は新しく立ち上げたトランスレーター社で、同名のモバイルアプリの開発に着手した。これはバーチャル・リアリティ(VR)を利用したダイバーシティ&インクルージョン・トレーニング・システムで、企業社員の「共感能力(empathy muscle)」を鍛えることを目指している。ユーザーはバーチャル上で「他人の靴を履いてみる(他人の立場になることを意味する英語の常套句)」体験をすることができる。

ユーザーはまず始めに、自分自身のアイデンティティやその意味について学ぶ。次に各々のニーズに基づいて、自分とは異なる出自(民族、性別、性的志向など)を持つ他者のアイデンティティについて学んでいく。音声エキササイズやゲーム形式のレッスンが用意されており、VR空間を利用した完全実体験型のレッスンもある。

たとえばユーザーが男性社員であれば、彼はビジネス・ミーティングに出席中の黒人女性の心と体に入り込む。他の同僚から「ハニー(女性に対する一般的呼称)」と呼びかけられたり、室内の男性のためにコーヒーを買ってくるよう頼まれたりする。そして女性の心の内の希望や不安を表現するモノローグ音声が流れる――「もし秘書だと思われたらどうしよう?」

視野の広さと業績は連動する

職場の共感能力を高めることは、ビジネス的に理に適う、と記事は論じる。心理学者のダニエル・ゴールマンがグローバル企業200社を対象にした調査では、パフォーマンスの高い社員の9割は、感情知性(emotional intelligence)のレベルが高いことが判明したという。共感能力は感情知性の重要な部分を占めている。

さらに共感能力の高い社員はよりエンゲージメントが高く、離職率が低く、顧客サービスに優れる、と記事は書く。これらはいずれも企業収益と関連する要素であり、2013年のギャラップ社の調査によれば、社員のエンゲージメントが高い企業は、そうでない企業と比較して業績が202%優れていたという。

トランスレーターのアプリはまだ開発段階のため、同社はクライアント向けに対人ワークショップを実施している。クライアントには、フォーチュン誌の企業番付「Fortune 500」に名を連ねる企業や、銀行、医療機関、政府機関、学校などが含まれる。

「視野をもう少しだけ広げても、きっと損はないはずだ」と記事は締めくくっている。

Can VR Help Your Coworkers Be More Empathetic? (April 25 2017)|FORTUNE

翻訳編集=櫻谷知央

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