人事のキャリア【第7回】
急成長中のベンチャー企業人事が語る 人材採用と組織づくりの面白さ(Loco Partners・三戸圭子さん)
2017.06.05
さまざまな業種の人事担当者に、仕事のやりがいやキャリアについてインタビューする「人事のキャリア」。第7回は、宿泊施設の予約サイト『Relux(リラックス)』を運営する、株式会社Loco Partners(ロコパートナーズ)の三戸圭子(みとけいこ)さんにお話を伺いました。三戸さんは急速に規模を拡大しているベンチャー企業の中で、日々人材採用・育成や組織づくりに励んでいます(2017年4月取材、聞き手:尾越まり恵、撮影:仲村介架)。【写真:Loco Partnersのオフィスにて】
三戸圭子(みと・けいこ)
株式会社Loco Partners 事業推進部 組織デザイングループ リクルーティングチーム所属。2006年に新卒で総合通信販売企業に入社し、人事として新卒採用に携わる。その後IT企業に転職し、採用だけではなく研修や制度設計、労務など幅広い人事業務を担当する。1年間シアトルに留学したのちLoco Partners入社。
インターンを受け入れ、通年で採用活動
――現在担当されている業務を教えてください。
三戸 組織デザイングループのリクルーティングチームに所属しており、採用を中心にメンバー全員と協力しながら、社内外におけるPRや組織開発に携わっています。
Loco Partnersは今、たくさんの「つながりをふやす」というミッションのもと、国内大手はもちろん、海外の大手OTA(オンライントラベルエージェント。インターネット上だけで取引を行う旅行会社のこと)とも肩を並べて戦える規模を目指し、急成長していく過程にあります。
強い組織をつくるために、組織が大きくなっても、経営理念やビジョン、経営者の想いが企業の隅々まで行き渡るように、また、全メンバーが安心して思い切り働けるような環境を維持し続けるために、組織デザイングループが作られました。
――組織デザインということは、通常の「人事」の枠を超え、より大きな視点で組織づくりをされているイメージですね。
三戸 そうですね。私が所属しているリクルーティングチームは、各部署と連携しながら採用戦略を練ったり、それと併せて組織活性のための仕組みをつくったりしています。
インターンや新卒社員の採用については、カレンダーに沿って活動するのではなく、その時々の状況に応じて、柔軟に通年で受け入れをしています。実際に、今年の1月には大学1年生のインターン生が大学を休学してそのまま社員として入社しました。
――インターン生は何人くらいいるのですか?
三戸 入れ替わりはありますが、常時20名くらいです。平日の週3日以上、半年以上働くことが可能で、かつインターンを経て弊社で成し遂げたいことを見出してくれた学生を積極的に採用しています。成長したいという強い意志を持って参加しているメンバーが多く、結果、毎年3名ほどがインターン生から新卒社員として入社しています。
直接、ご応募いただく場合もありますが、最近はリファラル採用(社員やOB・OGからの紹介などによる採用)も増えてきました。また、勉強会などのイベントを開催するなどして、集まってくれた学生に向けて、PRすることもあります。
――インターンとしてあらかじめ働いていると、会社への理解が深まりそうですね。
三戸 半年以上、弊社にコミットしてもらうので、インターンであっても任せる内容は社員と同等レベルです。マーケティング、編集、グローバル事業、事業開発、エンジニアなど、あらゆるポジションで受け入れていますが、例えば、月間で数百万円、中には1,000万円を超える予算を使って広告を運用したり、国内外の提携先の開拓をアポイント取りから訪問、商談まで携わったりするメンバーもいます。
――責任重大ですが、成長できそうですね。
三戸 そうですね。もちろん、任せきりではなく社員がフォローしながら二人三脚で進めていきます。ですが、学生だから仕方ない、とはせずに、1人の社員、社会人として権限委譲をしています。ときには、厳しくフィードバックをすることもありますが、彼らも目的を明確に持って働いてくれているので、キャッチアップが早く、とにかくポジティブ。結果に対してきちんと振り返り、次の施策を検討し再度トライする。常にPDCAを回すことを要求される環境なので、成長スピードがとても速いです。
また、成長するためには量も必要です。Loco Partnersのインターンでは、担当部署の業務以外にも、さまざまな成長機会があります。一例として、Slack(ビジネス向けチャット)に「Special Mission」というチャネルがあるのですが、多方面からいろんなミッション(依頼)が飛んできます。すべてスピード勝負で、最初に手を挙げた人がそのミッションを担当することができます。そこでは、代表・篠塚孝哉からのミッションも飛んできます。時には、新規事業に参画するチャンスもあるため、自分次第で新たなチャンスをつかむことができるのもベンチャーでインターンをする醍醐味だと思います。
常に120%夢中になれる環境に身を置く
――三戸さんのこれまでのキャリアを教えてください。
三戸 2006年、新卒で総合通信販売企業に人事として入社し、そこから私の人事としてのキャリアが始まりました。元々は企画職を希望していたのですが、最初の配属先は、人事の新卒採用担当でした。当時は企画職への強い想いがありましたが、やってみると意外と面白く、その時は年間で150人くらいを採用していたので、おそらく述べ5,000人の学生と会っていたと思います。気付けば、四六時中、人事のことを考えていたように思います。
それから3年後、念願の企画職に異動できたのですが、その時には人や組織など人事への想いが強くなっていました(笑)。1年間、企画職を経験した後、再度チャレンジできる環境で人事の仕事をしようと、ポータルサイトを運営するIT企業に転職しました。
そこでは、新卒採用担当として入社したのですが、これまでチームでやってきたことを一人でやるという環境で、採用計画の立案から運用(母集団形成、説明会やインターンの企画・運営、選考、フォロー、研修など)を行い、結果を出すことができたことは、自信にもなりましたし、大きく成長できたタイミングでもありました。
その後は、採用全般を担当し、研修や制度設計、労務などに幅広く携わりました。
そうしているうちに、入社初年度に採用した新卒社員が3年目になり、それぞれが組織の中心になって活躍しはじめた時に、一区切りついたという思いがあって、「新しいことを始めよう」と、アメリカのシアトルに留学しました。
――思い切った決断をされましたね。
三戸 前々から考えていたことなのですが、当時は、「行く」という選択肢しかありませんでした。ちょうど当時所属していた企業の海外支店が立ち上がったタイミングで、間近でその様子を見ていたこともあり、自身の視野を拡げるためにもまずは行ってみようと思いました。
――帰国後の職場として、Loco Partnersを選ばれました。
三戸 1年間海外に行き、外側から日本を見た経験が非常に大きかったと感じています。日本に対しての注目度も肌で感じられましたし、美しい日本の伝統文化の素晴らしさを改めて実感することができました。
「日本人として何ができるのだろう?」と考えていた時にLoco Partnersと出会いました。インバウンド事業に注力しているOTAに可能性を感じたことと、経営陣と面談を重ねる中で、ブレないビジョンを感じることができたこと、これからこんな組織を作っていきたいと、ありのままを話してくれたことがとても印象的で、純粋にこの人達と一緒に仕事がしたいと思い、入社を決意しました。
――実際に入社してみていかがですか?
三戸 ベンチャー特有のスピード感を感じながら、エネルギッシュで全員が同じ目標に向かって真っ直ぐに進むカルチャーがすごく魅力的だと感じています。
私が入社した時には、採用対応や入社の受け入れ体制にまだまだ改善の余地がありました。そのため、採用オペレーションの見直しを行い、新しく入社するメンバーには、気持ちよくスタートを切ってもらえるように、研修制度をより強化していきました。
しかし、今でも各部署から採用フローや研修制度について「こうしたい」と、オーダーが殺到している状態です。嬉しい半面、現在、リクルーティングチームは2人。1人ができることは限られているので、お互いを信頼し、フォローし合いながら、メンバーの期待に応えられるよう奮闘中です。
――どんな時に、人事の仕事を「楽しい」と感じますか?
三戸 その瞬間・瞬間が楽しいというよりも、組織を全メンバーと共に作っていく今のフェーズがすごく楽しいです。入社した時と比べて、今はオフィスも移転して広くなり、50人だった従業員が70人になり、来年には100人を超えそうです。もっと「あれもしたい」「これもしたい」という思いが湧き上がってきて、そういうことを考えるのがすごく楽しいです。
社外と積極的に情報交換
――多くの採用に立ち会ってこられています。人を見るときに気を付けている点は?
三戸 見ている時は「見られているという意識」を持つことですね。当たり前ですが、誠意をもって対応するよう心掛けています。
選考では、私たちの想いやビジョンを理解してもらうよう努めるのはもちろんですが、その方のやりたいことが何なのか、なぜ弊社でなければならないのかなどを、面談を通して理解するようにしています。ときには、事業についてメンバーとディスカッションをしていただいたり、実際の業務を体験していただいたりすることもあります。
そういったやり取りを経て、ご本人自身で納得していただき、入社していただけるよう取り組んでいます。
――人事同士の社外のつながりも多いのですか?
三戸 ITベンチャー企業の横のつながりは増えました。過去に勤めていた会社の上司や取引先の方などとも定期的に食事をしながら情報交換をしています。
相談したいことがあれば、チャットで気軽に連絡したりもしていますし、お互いが会社を盛り上げるために採用・PRの視点から一緒に何かできないかと、イベントなどの企画を行ったりもしています。
目まぐるしく変わる環境に身を置いていると、自社のことが中心になり主観的になりがちですが、こうした社外とのつながりは、フラットな思考を保つことができるのでとても貴重です。
――今後の目標を教えてください。
三戸 人事は直接利益を生み出せる部隊ではありませんが、まずは、『Relux(リラックス)』(一流ホテル・旅館の宿泊予約サイト)を世界中の人々に使ってもらえるサービスにするために、採用と組織づくりの面で貢献していきたいと思っています。人事という領域にあまりとらわれずに、できることはどんどんやっていきたいですね。
三戸さんのキャリアアップのポイント
・任された仕事に全力を傾ける
・違う環境から自分を見つめる機会をつくる
・社外とも積極的につながりを持つ
三戸さんの「ある日の1日のスケジュール」
7:00 起床
9:00 出勤
9;40 オフィス到着
10:00 出社 メール/今日の面接チェック、採用案件対応
13:00 同僚とランチミーティング
14:00 エージェントとの打合せ
15:00 人事制度についての企画立案
16:00 人事定例MTG(週次報告、今後の施策について検討)
17:00 採用施策の実行(スカウトメール送信、求人のアップデートなど)
18:00 学生とのイベント打合せ
19:00 面接
20:00 人事懇親会
22:00 帰宅
24:00 就寝
企業プロフィール
会社名:株式会社Loco Partners
所在地:東京都港区東新橋2-14-1 コモディオ汐留4F
事業内容:一流旅館・ホテルのみを厳選した、会員制の宿泊予約サービス『Relux』の運営を行っている。単に宿泊施設を紹介するだけではなく、すべての宿泊施設との交渉・打ち合わせを重ね、
より特別な宿泊を体験できるRelux限定プランも提供している。日本語のほか、英語、中国語(繁体字、簡体字)、 韓国語に対応。
執筆者紹介
尾越まり恵(おごし・まりえ) フリーランスライター。福岡県北九州市生まれ。結婚情報誌ゼクシィの制作に携わり、2011年に独立。「女性の生き方」をテーマに取材・執筆を続けている。福山雅治、ホークスが好き。
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