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特集

採用の流儀~「森下仁丹」編


オッサンも変わる。ニッポンも変わる。「第四新卒採用」と進化する老舗

2017.05.26

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森下仁丹の新たな挑戦、「第四新卒採用」

「オッサンも変わる。ニッポンも変わる。」――。印象的なキャッチフレーズで話題を呼ぶ森下仁丹(大阪市中央区)の「第四新卒採用」。同社社長の駒村純一氏も出演する、モノトーンの募集広告ムービーが話題を呼んでいる。創業120年を超える老舗企業が、この募集を行った背景には“会社がつぶれかけた危機感”があったという。その詳細を、経営企画部の磯部美季氏に聞いた。

目次
  1. 求めるのは40、50代の幹部候補
  2. 倒産の危機を味わい、社長の駒村氏が採用の一新を決意
  3. 駒村社長の社内大改革。社員の約半数が入れ替わる
  4. エントリーシート全件を社長がチェック
  5. 「求める人物像」を言語化しない
  6. 第二創業期の“老舗ベンチャー”

求めるのは40、50代の幹部候補

森下仁丹経営企画部の磯部美季氏

経営企画部の磯部美季氏

磯部:「第四新卒採用」が想像以上の反響をいただき、うれしく思っています。17年3月1日に募集をスタートし、4月19日現在で2000件以上の応募をいただいています。
今回の採用で一番のターゲットにしているのは、40、50代の幹部候補です。ただし、応募に際して、年齢・性別は不問です。これまでの経験やスキルよりも、新しい仕事に対するやる気を重視します。
新卒採用と同じぐらい、まっさらな気持ちで飛び込んできてほしくて、「第四新卒」と名付けました。(※注1)

中途採用で、今回のような公募を行うのは、初めての取り組みです。これまでは、人材紹介会社などのエージェント経由でクローズドな採用を行っていました。エージェント経由であれば、こちらが求める要件を満たした人材のみをピンポイントで紹介してくれる。私たちのような社員数300名にも満たない中小企業には、とても効率的で王道の採用手法だと思います。
ただしこの手法では、良くも悪くも「ある程度事前に想定した人材」の中からしか採用することはできません。もしかしたら、エージェントのフィルターにはじかれた人材の中に、当社にぴったりの人材がいるかもしれない。

倒産の危機を味わい、社長の駒村氏が採用の一新を決意

今回、従来の募集を一新して公募に踏み切ったのは、社長・駒村の人材不足に対する強烈な危機感からです。1893年創業、120年を超える歴史を有する森下仁丹を、優良な老舗企業と思い浮かべてくださる方も多いかもしれません。
しかし、創業以来の看板商品だった銀粒「仁丹」の売れ行きは、1980年代をピークに低下する一方。2000年代には出荷高がピーク時の10分の1にまで落ち、赤字は約30億にまで膨れ上がりました。完全に倒産の危機です。2006年を最後に、2012年までは新卒採用もストップしていました。

ところが、駒村が入社した2003年時点でも、「社内には、まだ“優良・老舗ブランドの森下仁丹”として、危機感とはかけ離れたのんびりした雰囲気が蔓延していた」と言います。

駒村社長の社内大改革。社員の約半数が入れ替わる

磯部:2006年に駒村が社長に就任して以来、様々な改革が行われ、ここ数年は黒字経営となり持ち直しています。改革に伴い、社内人材も大きく入れ替わりがありました。昔ながらのゆったりした空気が好きだった社員や、改革のスピードについていけない者の中には、会社を去った人間も多くいます。

2000年代初頭までは、ほとんどの社員が新卒入社の生え抜き社員だったのが、今では全体の約半数は中途入社です。今なら幹部候補の上司が新たに入社しても、スムーズに受け入れられる土壌はかなり育っています。

エントリーシート全件を社長がチェック

磯部:ありがたいことに、想像を大きく超えるエントリーをいただいたので、いったん3月までに応募くださった方の中から、会社説明会に招待する方を慎重に精査し、4月に東京と大阪で会社説明会を実施しました。

選考は、社長を筆頭に執行役員や本部長など、40~60代の選考メンバー9名で応募データを精査中です。エントリーシートは、社長も全件余すことなく目を通しています。

実は「応募は気軽にしてほしい」と、エントリーフォームはごくシンプルにしていました。自由記述欄は「職務経歴」「自己PR」のみです。

私も選考メンバーの一人ですが、みなさんとても丁寧に、熱い思いを込めてこの二つの欄を記述くださっています。応募者は、約8割が40、50代、最高齢は今のところ70代後半です。みなさん年齢に関係なく、すごくやる気を感じる方々ばかりで、読んでいて胸が熱くなります。

「求める人物像」を言語化しない

磯部:森下仁丹が「現在どんな人材を求めているか」と聞かれた場合は、「とにかくやる気がある人」と答えています。なぜかと言うと、細かいスキルの部分や経験の部分で、どのような人材が良いのか、私たち自身がまだ言語化できていないからです。「あえて言語化していない」といったほうが、正しいかもしれません。

どんなポジションが空席なのかはもちろん伝えることはできますが、そこにどんな人材がふさわしいかは未知数なのです。

例えば、ヘルスケア事業本部の開発部長。ここでは、新商品を開発するだけでなく、体脂肪を減らす機能を見出したローズヒップ由来のティリロサイド(注2)のような、機能性素材の研究開発も行っています。

他には、カプセル事業本部の開発メンバーも不足しています。この事業部では従来、食品や医薬品業界との取引がメインでしたが、“粉末から液体、微生物までなんでも包める”というシームレスカプセルの技術特性から、幅広い業界との取引が拡充。「レアメタル回収カプセル」や「シロアリ駆除用の擬態カプセル」など、思いもよらなかった業界へ応用が広がっています。

すべてのポジションにおいて、新商材・新業界の取引が広がっているので、一概に「この経験を持つ人がよい」と限定しづらいのです。

第二創業期の“老舗ベンチャー”

磯部:森下仁丹は、現在、第二創業期の真っただ中です。一時期は足かせにすらなりつつあった“強力なブランド”が、本来の力を取り戻しつつあります。看板は老舗ですが、様々な仕組みをゼロから構築しなおす実態は、むしろベンチャー企業に近い。“老舗ベンチャー”です。

今後、会社説明会以降の選考方法は、まだ実は具体的に決めていません。まずは、森下仁丹の事業や現状を正直に正確にお伝えして、それでもやりたいと手を挙げてくれる人と一人でも多く直接お会いしたい。

給与に関して、今回の募集では想定年収を記載していません。駒村は「できる限り支払う」と公言していますが、場合によっては給与が下がることもありうるかもしれません。
そこは、一人ひとり丁寧にすり合わせていく必要があると考えています。

第四新卒採用は、予定調和ではなく、まったく未知数の挑戦ですが、これからどんな方との出会いがあるか、とても楽しみです。

人材採用ワンポイントQ&A

Q:中途採用では30代前半以下の人材をターゲットにしてきましたが、近年、採用がうまくいかなくなってきました。しかし40代以上の採用は、過去に例がなく現場の理解が得られません……。

A:「前例がない取り組み」は、いつでも難しい問題ですよね。森下仁丹が第四新卒採用を実施できているのは、人材不足に対する強力なトップダウンのメッセージがあったからです。社長自らがメッセージを発し続けることによって、少しずつ社内が変わり、これまでは最終選考の面接に立ち会うだけだった役員たちも、もっと初期の選考から携わるようになりました。会社一丸となって、人材採用の大切さを共有しています。

ですが、当社も最初からこのような文化だったわけではありません。私自身、社内がまだ生え抜き社員ばかりの頃に中途入社したので、肩身が狭い思いをしたことも一度や二度ではありません。(もちろん、現在ではそんなことはありませんが)

これからは人口減少の時代です。健康寿命が延び、「人生百年時代」が来れば80歳まで働くことも珍しいことではないかもしれない。これまでのように「学業」「仕事」「リタイア」と人生が単純な3つのフレームには収まらないかもしれない。
いまでこそ、40代以上の転職が注目を集めていますが、今後はもっと当たり前になってくると思います。

ついでに言えば、“ひとつの会社に終身雇用されて終わり”ではなく、常に“次のキャリア”を考えて、自分のスキルを高めることが、当たり前の世の中になってくる。むしろ、もうなっていると感じます。
時代がどんどん変わっていく中、「前例がない」ことにチャレンジしないと、取り残されるだけ……、かもしれませんね。

※注1 一般的に「第二新卒」は新卒入社後、数年以内に離職し転職活動を行なう若手求職者、「第三新卒」は大学院博士後期課程修了者の採用を指す。

※注2 ローズヒップ由来ティリロサイドは、森下仁丹が独自に研究開発を進めた体脂肪を減らす機能のある成分。同社の機能性表示食品の「ヘルスエイド ローズヒップ」などに含まれる。

※情報は、取材日2017年4月19日時点のもの。

【編集部より】
「採用の流儀」シリーズの記事一覧

執筆者紹介

玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。

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