残業ゼロを目指して
仕事を先送りするときには、先送りした日時の予定も確保しよう!
2017.05.18
仕事は、先送りせずに予定した作業をきちんと終わらせさえすれば、ちゃんと終わるという傾向があります。
それが難しいから困っているのだ、と言われることでしょう。それに異論はありません。私自身、予定した作業をきちんと終わらせているかといえばそうは言えず、なんだか先送りしてばかりいる作業が、どうしてもあります。
先送り対策はいくつかありますし、有効なものもあります。この連載でもご紹介していくつもりです。
今回は、最近これがなかなか有効だという方法を1つご紹介します。これで100%先送りを撲滅できるというようなものではありませんが、どうしてもやらなければならない仕事はこれでだいたい先送りを防止できていますし、おかげでこちらの@人事ONLINEの連載なども遅れずに書き進めることができています。
その方法とは、先送りを厳禁にするのではなく、ある条件を満たしたら、先送りにしていいことにするものです。
「とにかく先送り」にはしない
事前に計画したとおりに作業をしたくなくなるのは、1つにはその「事前の自分」の想像能力に欠陥があるからです。
たとえば、5月6日のお昼に、@人事ONLINEの原稿を書く!などと計画していても、実際その時間になってみると、連休最後にとてもそんな仕事に手は回らないし準備も不足している、ということがよくあります。
これは、計画段階の「私」が想像していたような日時に「作業できる」などと考えた、その考えが浅はかだったと言わざるを得ません。
こんな産業心理学の説があります。 ●月×日の12時から、▼▼のことをする!と決めておくと、それができる、というものです。
ですがこれは、
1.その時間にその作業が現に可能であること
2.その作業のことを実行以前からきちんと意識しておくこと
3.その作業をすることに必然性があること
などの条件を満たしているときにおいて、実行可能性が高くなるのです。
逆に言えば、
・ほかにやりたいことが山のようにあるので、適当な日時にただ先送りにした
・先送りにしたとたん、やるべきことをぱっと忘れる
・必ずしもその日時でその作業をやる必要はない
などということでは、「その日」がやってきたとして、またしても作業を先送りにするだけになってしまうでしょう。
このような先送りの繰り返しを断ち切るには、確実に作業できる日時をきちんと確保し、その「予約先」で必ず作業ができ、かつやらなければならないということを意識することが大事です。
よく、計画は自分との約束を守ることと言われますが、「約束」とは先の3条件を満たすはずです。
他人と約束したのに、その日が空いているかどうか分からないとか、そのときやることを事前にまるで意識しないとか、そんなことはあり得ないでしょう。
しかし私たちが作業を「先送り」にするときには、先送り先の日時が空いているのか確かめもせず、そのときにやる作業を十分検討もせずに、ぱっと決めることがよくあります。
予定を確かめてやることを詳細に決めるとき心の中で起こること
さらに大事なことがあります。
明日の午前中とか、来週の午後ならなどと、安易に先送りしてしまうとき、私たちは心理的負担を避け、熟慮せず、ぱっと直感的に「そのときなら疲れてないだろうから」などと考えがちです。
経済心理学者のダニエル・カーネマンはこのような思考回路を「ファスト(拙速)」と呼び、結論をすばやく出せるが、難しい問題を考えるのには全く向かないと述べています。
1+1=2
という問題なら、脳の「ファスト回路」でいいのです。しかし、来週の午後なら本当にこの仕事をきちんと仕上げられるのか、といった「難題」を解くには、もっと熟慮する必要があるのです。ダニエル・カーネマンのいう「スロー回路」でゆっくり考える必要があるのです。
バーティカルの日程表を取り出し、その日のほかの時間にはなにをするのかということや、先送りにしてしまう面倒な作業を確実に進める手順はどうなのかまで、「スロー」できちんと解明してやる必要があるわけです。
そうすることによって、ついつい先送りにしてしまうやっかいな仕事でも、「スロー回路」でじっくりやれば、片付くことが見えてきます。
つまり「ファスト」で安易に先送りするだけでは、その後も先送りにした作業を推し進めるための意識も発想も心構えも手に入れることはできません。しかし、「ファスト」で安易に先送りにするのではなく、「スロー」でじっくりと日程調整すれば、その先送りにするタイミングで、仕事を進める意識とやり方と心構えも手に入れることができます。
つまり「ファスト」が先送りするのはダメで、先送りはするにしても「スロー」がそう決定する必要があるのです。
そうすれば、仕事を先送りにするまさにそのタイミングで、次は先送りにしないための、意識を切り替えるきっかけまでゲットできる、というわけです。
連載コラム〈残業ゼロを目指して〉
執筆者紹介
佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック
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