特集

企業ブランドと人材戦略のカギを握るCHRO(最高人事責任者)【第3回】


CHROの役割は、会社として一番大切なものを共有すること

2017.06.07

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CHRO特集第3回は、スタートアップ企業こそブランディングが重要であると語り、創業者の「思い」をカタチにする支援を行う、パーソナルベンチャーキャピタル代表のチカイケ秀夫氏へのインタビュー。経営者の強い思いを言語化し、それを社内へ徹底的に共有させることこそがCHROの役割であり、そのことがより良い採用へ直結することを熱く語る。

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第1回「すべてのベースにあるのは『対話』であって『交渉』ではない」

第2回「理念の共有力」が「採用力」へつながり、業績アップが始まる」

チカイケ秀夫(ちかいけ・ひでお)

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パーソナルベンチャーキャピタル CEO
すべての人にスタートアップを」をミッションに、GMOグループ上場企業での企業理念策定/社内浸透新党に参画。2008年よりGMOグループにてベンチャー企業の立ち上げと、全グループ5000人に関わるプロジェクトのにリーダーとして、グループ内ブランディングを経験。「ブランディング」を通して、スタートアップ/ベンチャー企業に特化した支援事業を展開。
HP:http://personal.vc/

経営者はブレるもの。CHROはそのブレた理由を社内に共有する役目

CHROとは、大槻氏と深澤氏と同じく、「ビジョンや理念を会社の最上位に置き、CEOの思いや戦略を一気通貫で社内外へ確実に伝達できる人」という定義をしています。

たとえば、経営者の発言がコロコロ変わり、社員としても何を信じていいのかわからなくなっているケースがありますが、経営者としてはもちろん気分で発言を変えているわけではなく、世界を広く見て、いろいろ考えた末に変えているわけです。しかし、社員には伝わっていないし理解できていない。CHROが入ることで、仮に経営者がブレても「なぜブレたのか」をしっかり共有できるようにして、可能な限り社長と社員の溝を埋めていくことが必要です。

会社として最も大切なものを共有すれば、自然といい人が集まってくる

社員に対し「会社として(経営者として)最も大事にしていることはこれだ」と確実に伝えることが必要だと思っています。社長の細かい一言ひとことではなく「社として大切なことはこれなんだよ」ということを社員が共有できれば、軋轢は生まれないし、信頼も作れます。

これが実現できれば、これから入社してくる人も、「何を信じたらいいのか」が見えますから、自己の考えと照らして正しい選択ができるようになります。結果、自社のカラーに近い人を採用できるという流れが出来上がります。
社内の共有がしっかりできていれば、入社後に「イメージの相違」も起こらず、離職率を下げることにもつながります。

10人を超えたあたりからCHROの概念は必須になる

企業がスタートアップする際、組織として10人くらいを超えて資金調達を行うあたりから、CHROの概念を入れていくことが必須になります。

いよいよこれから採用を強化して人を増やし、業務拡大をしようという段階になって、さてどうしようという企業がとても多いので、ここで単に人だけ増やそうとして失敗させるのではなく、CHROを置くことで組織拡大に関与できる人材を採っていけるようになります。

SI_chro3rd_3_170607 (図:CHROのポジション/役割/責任 Tokyo Branding labより)
図の説明:企業内でのCHROのポジションとして、人事部は上からの数値と現場の感情との間をマネジメントする立場であるため、最高人事責任者として3つのコミットが必要であることを示す。 「①ビジョン実現 ②経営責任 ③企業の人事においての最高の責任判断」という、全体を俯瞰しCEOと同等以上の立場で、企業成長を『人』を通して最大化していくポジションのイメージであり、極端にいえば人事部の経験がなくてもこの3つのコミットができる人がCHROとして企業に入り、成功へ導いている事例もある。

先にポジションと責任を与え、ストレッチさせる

先ほど話した「10人を超えたあたりから」という話ですが、創業社長の場合、ほとんどが「社長プラス社長以外の社員」というスタイルになりやすく、いわゆるCOOやCMOなどの最高責任者を置いて組織化するという活動になりにくい。

そのため、仮に人事担当にあたる社員がいたとしたら、その人にその段階でCHROという役職をつけてしまいます。もちろん狙いとする活動がすべてできる必要はなくて、単に採用担当かもしれませんが「意識を持ってもらうこと」が重要だと考えているからです。他の責任者も同様で、こうするとスケールする余白も出てきます。CHROが足りないからあとから付け足すのではなく、最初からCHROを目指して行動してもらうスタイルです。先にポジションと責任を与えて、それに沿ってストレッチさせていきます。

CHROを最初に立てておけば、経営者からのリクエストに対して人事部がそれに応える、という形がまずは出来上がります。そこに責任が発生し、CEOとともにジャッジしていくスタイルが固まってきます。この段階ではCHROの定義もまだあいまいな部分もあります。であれば、その企業ごとにCHROはこうあるべきというのを定義して、それに沿うように行動して形作っていくしかないわけです。ある日突然、知らない人が「CHROです」と入ってきても、うまくいくはずがありませんから。

ブレない組織は、採用活動がやりやすい

そもそも自分の会社をどこまでスケールさせたいのか、というポイントも重要です。

IPOを目指すとかいうことはあくまで資金調達の手段であって、「企業の拡大や発展をしたい理由はどこにあるのか」が一番重要です。単に大きくしたいだけ、となるとそこに集まる人は特に強い思いもない人ばかりになり、企業を成長させることは非常に難しくなるでしょう。

スタートアップではブランディングは(まだ)必要ない、というのが世間の認識かもしれませんが、ここ2年間の支援活動の中で見えているのは、やはりブランディングしっかり固めておくことで、企業として組織や戦略のブレもなくなり、結果として良い人材が集まってくるケースが徐々に増えている点です。CHROも同様で、人に関する課題が出てきたときに、CHROがいるといないでは大きな開きが出てくるのは間違いないでしょうね。

CHROの概念を普遍的なものへ押し上げたい

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すでにこの考え方を20年も前から取り入れて、企業としてのブランドや価値観を世間へ発信できている先進的な企業ももちろんあります。CMOとCHOがガッチリと手を組んで、市場への発信と採用を着実に結び付けて成長しているのです。これができるか否かは、経営者がどういう体制で世間へ自社の理念を発信し、それに共感できる人を集めるという思考を持てるかどうかにかかっているといえますね。

課題としては先ほどもお話したように、多くの企業でCHROという定義がまだ固まっていないという点があり、企業として何をどう目指してどう行動すべきかが見えにくいというところです。

もちろん各社で個別に定義してもいいのですが、まずは普遍的な概念として作りたいし、私の今の活動の目的も実はそこにあります。模索をしていく中で、最も成果の出る手法を探りたいと考えていますが、ベースになるのは理念とビジョンですから、まずはそこから徹底的に支援すべく活動しているところです。

執筆者紹介

高井 直樹(たかい・なおき)(株式会社スキマタイズ 代表) 「感動」「驚き」「満足」「発見」「喜び」の5感覚で伝達力を強化し、エンジニア出身ならではの論理的課題解決をコンテンツメイクで実現する、ドキュメンテーションアートディレクター。徹底した取材と言語化翻訳、映像、Webとメディアを問わず"表現代行"を生業とし、車とゲームと電子楽器をこよなく愛する無類の速いモノ好き。

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