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【働き方改革】成功事例に学ぶ「脱残業のススメ」CASE02~セントワークス


トップのリーダーシップと部署ごとの働きかけでワーク・ライフ・バランスを実現

2017.05.22

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WLBを経営戦略に位置付けトップ自らが改革を推進した働き方改善の成功例

セントワークス株式会社は2012年4月より「集中力と生きがいの創造」をテーマとした、ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)のプロジェクトに取り組み、8カ月で残業時間をほぼ半分にすることに成功。労働時間は減ったものの、生産性は高まり、売上は前年比114%、経常利益155%アップを達成した。また、自社の成功体験をもとに、企業へのWLBを推進する事業を展開する(取材:2017年2月下旬)。
【写真:今回、取り組みを紹介してくれた人事サービス部の一之瀬幸生氏。ワーク・ライフ・バランスコンサルタントの資格を持つ】

ワーク・ライフ・バランスは重要な経営戦略

セントワークスがWLBに取り組んだきっかけは、クライアントの課題解決だった。人事サービス部ワーク・ライフ・バランスコンサルタントの一之瀬幸生氏は当時の様子を語る。

「当社の業務の1つに、人材派遣紹介サービスがあり、現在は介護に特化した求人サイト『かいごのひと』を運営中です。当時、看護師の人材派遣事業を展開していたところ、病院が慢性的な看護師不足だったのがわかりました。一方で派遣の登録会員者は、働く意欲はあるものの子育て中の人も多く、土日や夜勤は不可というケースが少なくない。マッチングさせることがなかなかできない状態でした。この問題を解消する方法はないかと考えているときに、WLBという概念に出会ったのです」

それまでは福利厚生の一環というぐらいの認識だったが、WLBに取り組むことは重要な経営戦略であると確信。まずは2011年に大西徳雪社長自らが「WLBコンサルタント」の資格※を取得し、会社全体でWLBに取り組むことを宣言。翌年4月には、社内にワーク・ライフ・バランス・プロジェクト事務局を立ち上げ、大西氏と専任担当者の2名で運営を開始した。

※WLB コンサルタント資格/株式会社ワーク・ライフバランスが運営するWLB(ワーク・ライフ・バランス)コンサルタント養成講座を受講し、認定試験後に得られる民間コンサルタント資格。

社員が取組の重要性を理解することで成果が上がる

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    まず、全社員にアンケート及び「WLBセミナー」を実施し、ワーク・ライフ・バランスがいかに重要なのかを説いた。セミナーの講師は大西氏自ら率先して務め、注力した。「トップが本気で導入しようとしている姿勢もアピールした」(一ノ瀬氏:写真)。
    初年度に全社員を対象だったセミナーは、2年目以降は新しく入社した社員を対象に実施している。全社員を対象とした理由について一之瀬氏はこう説明する。

    「WLBについて『ほどほどでいいんじゃない』『プライベートを優先するものでは?』『女性のためのものでしょ』という意識の人がいると、それが抵抗勢力になって成果を上げることができません。全社員がセミナーを受け、一定の理解を得てもらうことが大切なのです」

    また、意識調査アンケートは継続的に毎年全社員に対して実施。その内容は、「プライベートで突発的なことがあったときに遅刻早退がしやすいか?」「仕事の効率化は図れているか?」「改善の余地はあると思うか?」「この会社に長く勤めたいか?」など。約60の多岐にわたる問いに無記名で答える形式だ。アンケート結果は、WLBを高めるためのさまざまな施策に活用される。

    労働生産性を高める「時間管理」と「改善」に注力

    一之瀬氏は、この取組で重要なポイントとして次の4つを挙げる。

  1. トップの本気度を伝える
  2. 意識改革
  3. 現場のスタッフが主体的に行動すること
  4. 情報共有
  5. 同社では現在、各部署にもワーク・ライフ・バランス担当を置き、各現場単位で課題に取り組むようにしている。具体的な取組としては、毎日の「朝・夜メール」、月1回の「カエル会議」、年度始めの「WLB目標」のアップなどがあげられる。

    「朝・夜メール」

    「朝・夜メール」とは1日のスケジュールを時間に落とし込んで作成し、朝、そのスケジュールを部署全員にメール送信。業務終了時にはその日に実施した業務スケジュールとコメントを再び部署全員に送信するというもの。
    「これにより1日の予定と結果が一目瞭然に。個人のタイムマネジメント能力が上がり、誰が何をしているか、チーム内で共有することができます。仕事が増えたときに、誰かに手伝ってもらったり、優先順位をつけて予定をずらしたりのやりくりもつけやすくなり、その結果、残業を削減することができるのです。また、上司は部下に対して、仕事の改善点などを具体的にアドバイスすることができます。夜メールを送るときに書くコメントは、仕事の反省や気付きだけでなく趣味や子供のことなどでもいいのです。書くことで、チーム内でのコミュニケーションが自然と増えます」

    「カエル会議」

    月1回の「カエル会議」では、各部署で業務の問題点を洗い出し、改善のためのアクションプランの決定や進捗確認を行う。また、夜メールから業務分析を行い、中長期的な業務改善を実施する。また、これらとは別に、部署を超えて情報共有や意見交換を行う場も用意されている。

    「WLB目標」

    「WLB目標」とは、年度始めにチーム目標、個人目標を具体的に書き、共有ホルダーに入れるというもの。目標を書いて、公表することにより、意識が高まり、実行できるようになるという。

    取組の成果は、徐々にだが確実に表れる

    今でこそ全社員の協力を得て実行している取組も、当初はすべての社員に歓迎されたわけではない。
    「朝・夜メールにしても、カエル会議にしても、『仕事が増えた』と不満に感じた社員も多くいたと思います」
    朝メールの作成に最初は20分くらいかかっていたのが、慣れて5分くらいでできるようになるころ、不満を口にしていた社員も意識が変わった。
    「毎朝、たった5分の作業が、さまざまな効果をもたらしてくれることが実感できるようになると、この取組が優先順位の高いことだと理解を得られるようになりました」

    取組後8カ月で、会社全体の残業時間が半分に

    社内は活気にあふれ、明るい雰囲気がただよっている

    社内は活気にあふれ、明るい雰囲気がただよっている

    こうした作業の積み重ねと、現場社員が主体的に取り組む話し合いが、仕事に日々追われるマイナスのスパイラルを、プラスのスパイラルに変える原動力になっていった。

    事実、同社のWLBプロジェクトは、取組8カ月で、会社全体の残業を従来の半分に減少させる成果を上げた。さらに業務が効率化されたことにより、社員たちは余暇を十分にとることができるようになった。

    平成24年度が終わる頃には売上げが前年比114%アップ、経常利益は同155%アップという数字がはじき出された。企業の業績を上げるためにこそ、WLBに取り組むことが重要だと実証されたのである。

    ワーク・ライフ・バランスからダイバーシティーへ進化

    このノウハウを生かした社外でのコンサルティング業務は、当初医療・介護業界を対象と考えていたが、その重要性から一般企業へと間口を広げた。この事業の業績も着実に伸びている。

    2012年に発足した社内の「ワーク・ライフ・バランス・プロジェクト事務局」は、2017年度より「ダイバーシティー事務局」に変わる。今までに培ったノウハウをさらに一歩進め、障がい・性・年齢・家庭環境・価値観などの多様性を受け入れ、理解を深めるセミナーを社内外で実施していく予定だ。

    限りある人的資源で成果をあげるために

    労働人口の減少はもはや避けられないなか、企業が生き残り、業績を上げていくためには、限りある人的資産の中でいかにして生産性をあげられるかが問われている。 そのためにもWLBの問題は避けて通れない。

    目標だけ掲げて、現場に任せるばかりではなく、時には同社のようにトップが自ら行動し、全社を巻き込んでいくことも必要になってくるだろう。

    【構成:編集部、撮影:D.C.カンパニー】

    企業プロフィール

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    会社名:セントワークス株式会社
    法人向け・個人向けに介護・福祉事業に関連するサービスを幅広く提供する。訪問看護やケアサービスなどトータルな介護サービスを全国で展開するセントケア・グループの企業。
    所在地:東京都中央区八丁堀2-9-1 RBM東八重洲ビル7階
    事業内容:介護経営サポートシステム「Sui sui Remon」、訪問看護アセスメントシステム「看護のアイちゃん」の販売。一般労働者派遣事業、有料職業紹介事業、企業向けワーク・ライフ・バランス・コンサルティングサービス。企業向け介護と仕事の両立支援サービス、請求回収・総務・人事・情報システム関連業務に係るシェアードサービス。
    設立:2006年11月1日
    従業員数:137人(2016年4月時点)※派遣登録者を除く
    URL:https://www.saint-works.com/

     

執筆者紹介

土井ゆう子(どい・ゆうこ)(ジャーナリスト) インテリア雑誌の編集者を経てフリーに。インテリア、料理、旅など日々の暮らしの楽しみをテーマにしたものから、ビジネス関連まで幅広いジャンルで取材・ライティングを行う。「英国カントリーサイド 庭の美しいB&Bに泊まる旅」(NHK出版刊)、「大学生まれの食品 美味しいお取り寄せ」(双葉社刊)、「日経住宅サーチ 快適リノベLIFE」など多数手がける。

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