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新卒採用~売り手市場時代の勝利者~ 第1回 タクシー業界・国際自動車編Vol.3


内定辞退対策で効果大の「オープンカンパニー」。中途採用向けでも奏功

2017.05.17

  • 新卒採用
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母集団形成に次いで、不人気業界の企業が採用活動で苦労するのが「内定辞退」だ。特に保護者の反対によって学生が内定を辞退するケースは、学生と違って直接フォローがしにくいため、どの企業も対策に頭を悩ませる。タクシー業界では、学生より保護者の方が「新卒でタクシードライバーになる」ことに抵抗感があると言われ続けているなか、国際自動車は保護者を会社に招いた見学会を実施して効果をあげている。話し手:管理部人財採用課 青木雅宏氏(2017年1月下旬取材、聞き手・撮影:編集部)。【写真は「オープンカンパニー」で内定者の保護者がコールセンターについて説明を受ける様子:提供・国際自動車】

青木 雅宏(あおき・まさひろ)

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国際自動車株式会社 管理部 人財採用課 係長
2009年に新卒で国際自動車株式会社へ入社。総合職として配属先の営業所でドライバーの運行管理や総務系の業務を3年半担当。その後、4カ月ほど本社営業課の勤務を経て2013年より管理部人財採用課へ異動。新卒採用担当として、説明会の企画、運営から選考、入社対応までを行うとともに、リーダーとして新卒採用チームのマネジメントを任せられる。2015年には管理部人財研修課を兼務し、産業カウンセラーの資格を取得。

内定辞退対策は「見て、聞いて、納得してもらう」。保護者やキャリアセンター担当者が参加できる「オープンカンパニー」

毎年、採用目標人数の150人を大きく下回ることなく継続して成果を上げ続けている同社。不人気業界が苦労する「内定辞退」においても、有効な対策を講じている。新卒向けで成果をあげたことで、いまでは中途採用、さらにはキャリアセンター向けに対象を広げて実施しているほどだ。

――タクシー業界は保護者が反対しての内定辞退が多いと聞きます。どのような対策を実施していますか?

まずはご家族よりも本人(学生)にいかに「この会社に入りたい」という自覚を持ってもらうかが大事です。最終的にどうするのかを決めるのは自分自身。ご家族が働くわけではないので、学生には自分がきちんとご家族に対して「ここで働きたい」と説明できることが大切だという話をしています。
それでもご家族が反対するということはあるので、「オープンカンパニー」という保護者向けのイベントを開催しています。

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オープンカンパニーの「車両見学」で社員から運転手席について説明を受ける保護者(提供:国際自動車)

――「オープンカンパニー」とは、どのような取り組みですか?

文字通りオープンキャンパスのようなもので、会社のことを知ってもらうために、学生がご両親や祖父母を連れてきます。たとえば、東雲営業所で開催するときは、タクシー以外にハイヤーや観光バスもやっている様子を確認してもらえますし、社員が使う食堂などの施設も見学できる。それに、新卒で入社した社員の実体験を知ってもらうために、説明会と合わせてパネルディスカッションも実施しています。

――反対していた親も、自分の目で確かめられることで意識が変わりますか?

何が何でも反対というご家族はそもそも来ないですね。学生の説明がきっかけとなって、「実際はどうなんだろう」と気になって参加するケースが多いです。ただ、そういった方々でも、「タクシー会社は年配の人が多くて、タクシー乗り場でタバコを吸って雑談している」といった昔のタクシー会社のイメージを持っているので、そのイメージを払拭させることはできています。
実際に新卒で入社して活躍している社員がいて、しかもその数は数百人もいるということがわかれば、息子が新卒でタクシー会社に入社することに抵抗感があったご家族も意識は変わります。単純に抵抗感がなくなるだけでなく、タクシー業界へのイメージも変わってくるはずです。

――オープンカンパニーはいつからはじめたのですか?

2015年の9月からです。営業所の見学自体は学生に向けては実施していましたが、ご家族に向けてどんな情報でも開示して安心してもらおうという目的で開始しました。
開催自体は毎月1回実施していますが、参加できるのは内定を出した学生とそのご家族になります。平均して1回あたり10組程度の参加があります。年間のトータルで参加した内定者からの辞退は2、3名程度なので、参加した学生についてはかなり効果があると言って良いでしょう。いまでは、対象をキャリア採用の方にまで広げて実施しているほどで、こちらは毎回20組程度の申し込みがあります。

――中途採用でもオープンカンパニーを実施しているのは意外です。

中途採用の方がニーズはありますね。ご両親だけでなく、奥様やご子息を連れて参加しています。心配されているからこそ関心が高いということなのかもしれませんが、参加していただいた方からは好評です。
このイベントに手ごたえを掴んだので、今年(2017卒採用)からは、新たに大学のキャリアセンターの担当者向けにもオープンカンパニーを開始しました。1月に初めて実施して25名の方が参加しています。
これは内定辞退対策ではありませんが、
タクシー業界に対するイメージを変えてもらうという意味では目的は同じです。2018卒採用でも実施していく予定です。

営業所単位で新卒社員をサポート。活躍する先輩の新卒社員の姿を見せることが一番の離職防止に

採用という入口にだけ力を入れても入社後に離職する新入社員が多ければ、会社のイメージダウンにつながり、それこそ採用にも悪影響をもたらしてしまう。新卒採用を強化するのであればこそ、入社後の研修・教育体制が問われる。ドライバーで採用する社員の中には、ペーパードライバーが少なくないという同社は、どのように教育を行っているのか。

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入社時はペーパードライバーだった社員も手厚い研修でプロへと成長させる。写真は2種免許対策の地理試験の勉強会(提供:国際自動車)

――具体的にどれほどの期間を研修にあてているのですか?

約3カ月です。ベテランドライバーが同乗して横で指導をするのがメインになります。中途入社の方だと現場に配属後は1週間程度で初乗務になりますが、運転以外の営業所の中の仕事も体験したり、接客も学んだりするので、乗務・運転技術が上達すればすぐに営業開始というわけではありません。
トータルで一人前になってもらうための研修が終了するまでには3年かかります。入社から半年ごとに大きな研修があり、一般常識からビジネスマナー、新しい法令の勉強、各自の乗務後の振り返りなどを行っています。振り返りでは営業所から新卒社員を一か所に集めて、報告書を書いてもらいます。そこで、一人ひとりの状況を確認して、各営業所の管理者へフィードバックをしています。

――各営業所との連携で新卒社員を育てていく体制ができていますね。

基本的に管理は現場になるので、現場の方が新卒社員を集めて研修もしますし、飲み会をして意識的にフォローしていこうと動いてもらっていますね。辞めさせたくないのはみんな一緒で、「せっかくうちに入社してくれたんだから、仲間を大切にしたい」という考えを持っている人たちがとても多い。
同じ営業所ということで仲間意識が強いのかもしれませんが、営業所単位で「新卒社員が来たら歓迎会をやろう」「こういう勉強会や研修をやったら良いんじゃないか」という提案もあがります。それに加えて、全社規模の大きな研修を定期的に行っていくのです。

――すでに新卒で入社した社員が指導役を担当もしていますか?

新卒社員が必ず担当するという制度化はしていませんが、営業所単位では先輩の新卒社員が教育をしていますね。同じ新卒で入社した立場なので、自分たちの経験を通じて彼らに伝えることができる。運転以外の部分でもフォローもしやすい。彼らのモチベーションを上げるのにも一役買ってくれていると思います。

新卒の先輩社員の中には、100名ほどのドライバーを管理する「班長」になっている人もでてきている。そういう人が身近にいて指導をしてくれる姿は新卒社員にとって大きいはずです。「自分も頑張れば班長になれる」とキャリステップがイメージできることも離職防止につながっていると思います。

――新卒社員が約1割を占めるだけでなく、キャリアチェンジするドライバーも出始めている。

タクシー事業だけですでに500人が新卒採用の社員で、その中から班長になる人、職種変更をしてドライバーから総合職になるような人も出てきている。当初は「入社したらずっとドライバー」という見方もされましたが、そうではないことを実証できています。こういうキャリアパスを見せられるようになっていることも、採用の成果に結びついていますね。

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新卒で入社した先輩社員が「班長」や総合職で活躍していることは彼らにとってモチベーションにもなるだろう。写真は2017年度入社式【提供:国際自動車】

Vol.4に続く

企業プロフィール

会社名:国際自動車株式会社
所在地:東京都港区赤坂二丁目8番6号 km赤坂ビル
企業概要:タクシー・ハイヤー・バスをはじめ、リース、自動車保険、自動車整備、自動車運行管理サービス、駐車場事業に至るまで、自動車運行に関わるあらゆるサービス部門を有する旅客運送事業の総合企業
設立:(創業)1920年
社員数:6,713人(2016年12月時点)※グループ統計
URL:https://www.km-group.co.jp/

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