特集

新卒採用~売り手市場時代の勝利者~ 第1回 タクシー業界・国際自動車編Vol.2


学生だけでなく役員も本音で話す選考。ありのままを伝え、仮面就職も認める

2017.05.10

  • 新卒採用
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社長や専務が大学訪問に出向き、若手社員が合同説明会に積極的に参加するという国際自動車の採用活動。学生が抱くタクシー業界への負のイメージを払拭し、志望意欲を醸成するためには、会社説明会へ学生を誘致できるかが鍵だと考える。では、いかにして集客を行っているのか。年間100回におよぶ採用イベントへの参加の他、独自の採用企画など、同社の採用戦略と取り組みについて話を聞いた。話し手:管理部人財採用課 青木雅宏氏(2017年1月下旬取材、聞き手・撮影:編集部)。【写真は会社説明会やインターンシップなどの採用イベントを行うことが多いホスピタリティhouseの入口に立つ青木氏】

青木 雅宏(あおき・まさひろ)

国際自動車株式会社 管理部 人財採用課 係長
2009年に新卒で国際自動車株式会社へ入社。総合職として配属先の営業所でドライバーの運行管理や総務系の業務を3年半担当。その後、4カ月ほど本社営業課の勤務を経て2013年より管理部人財採用課へ異動。新卒採用担当として、説明会の企画、運営から選考、入社対応までを行うとともに、リーダーとして新卒採用チームのマネジメントを任せられる。2015年には管理部人財研修課を兼務し、産業カウンセラーの資格を取得。

まずは興味を持ってほしいので、合説では会社のことをほとんど説明しない

学生がそもそも興味を持ちにくい業界ゆえに、「待っていてもしょうがない」と、Webを使った情報発信より、イベントに積極的に参加する足を使った戦略で会社説明会への集客を行う同社。では、どれくらいイベントに参加しているのか。

合同説明会へは年間100回ほど参加する(提供:国際自動車)

合同説明会へは年間100回ほど参加する(提供:国際自動車)

――合同企業説明会は年間でどのくらい参加していますか?

大学が主催して行うものも含めると、年間100回程度です。参加する地域は都内を中心に関東周辺で、それ以外の地方は17卒採用で少し回りました。基本的な考えとして、自社で実施する会社説明会に誘致するために(合説などのイベントに)参加しています。
だから、ここでは会社のことをほとんど説明していない。学生は1つの企業の話を15分や20分で聞いて、1日に何社も回らなければなりません。全部の会社の話をすべて覚えきれるわけではないと思うんですよね。そこで、私たちはまず会社のことを知ってもらうよりも、興味を持ってもらうことを第一に考え、その後の会社説明会や選考を通じて会社のことを丁寧に全部説明していくようにしています。

――では、自社で行う会社説明会ではどのような話をするのですか?

企業理念や事業についても説明はしますが、それよりも学生が知りたいと思うことを伝えます。採用担当者がもともとドライバーをやっていたりするので、新卒入社でドライバーとして働いたときのリアルな話ができます。語られる言葉に自分がやっていたからこそ説得力が生まれて、学生にも伝わりやすくなると思うんですよね。
もちろん、良いことばかりではなく、大変だったことや苦労したことも話してもらっています。自分を良く見せたり、噓をついたりする必要はない。チームのメンバーには、しっかりと学生に向き合って話をしようと言っています。

――本音を話す、ということですか。

そうです。それをモットーにした採用プロモーションを展開しています。17年卒向けの「すっぽんぽん採用」、その前は「ありのまま採用」です。ありのままをそのままに、嘘偽りなくちゃんと話しましょうということで、採用担当者だけでなく、学生にも自分を着飾ることなく語ってもらいました。採用活動を通じて、本当に自分が何をしたいのかを一緒に考えようという企画です。

会社説明会に参加する社員は学生の質問に対して本音で答える(提供:国際自動車)

会社説明会に参加する社員は学生の質問に対して本音で答える(提供:国際自動車)

ありのままを伝えあうことで生まれる関係性。他社への就職を決めた学生が御礼を言いにくる

学生に問うのは「この会社に就職したいか」ではなく、自分が働いて何ができるのか、何が残るのか、何がしたいのか。社長や役員も参加し、学生一人ひとりと向き合い、一緒に考えるのが国際自動車の選考だ。

――そういったユニークなアイディアは誰が考えるのですか?

新卒で入社した社員です。若い人材が入ってきたからこそ出てきたアイディアだと思います。ちなみに、「仮面就職」という企画もやりました。働きながら本当にやりたいことを見つけたい就活生を応援するために、フリーターではなく「正社員」として社会人をスタートさせる機会を提供するものです。私自身、入社を決めたときも、この先はどうなるかわからないし、とりあえず入ってみようぐらいの、軽い考えだったんですよ。
でも入ってみて、会社の良さがわかったし、それまで抱いていたイメージが一変したんです。みんな殺伐とした感じで働かされているのかなと思っていたら、とても厳格そうなおじさんが満面の笑顔で「今日はめっちゃ売り上げ良かったよ!」と言いながら帰ってくる。「なんだこれ(笑)。思っていたイメージと全然違うぞ」って気持ちになりました。やはり、働いてみてわかる良さがあるし、そうなると自分の将来に対する考え方なんかも全然変わってくるんです。

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学生に2030年の自分の姿を考えてもらうグループワーク。インターンシップの段階からも選考のスタンスは変わらない(提供:国際自動車)

――だからこそ、仮でも良いから受け入れるというわけですね。

新卒は一生に一回しかありません。誰もが本気で入りたいと思う会社はあるものの、みんながそこに入れるわけではない。そういう意味では、多くの人が実は仮面就職をしていると言えるかもしれません。
いまは転職前提の時代でもありますしね。仮面就職をして、しばらく働いたのち、夢が見つかって旅立っても構わないのです。最初に自分は何をしたいのかをありのままに伝えてもらったうえで入ってきても良いです。プロのミュージシャンを目指していると言って仮面就職した人もいます。

――それでは誰でも入社できるということでしょうか。採用基準はないのですか?

弊社の場合、選考フローが30時間ほどあります。会社説明会だけでも3時間をかけ、1日9時間の選考もあります。その時間内で会社のことを理解してもらい、自分がこの会社に合うかどうかを判断してもらいます。
もちろん私たちの方でも採否の判断はしますが、一方的に上から、「合格」「不合格」を決めるというやり方ではなく、「あなたのどういうところがうちの会社に向いているのか、活躍できるのかを一緒に考えていこう」という考えのもと学生と面談をしていきます。

――他社と比較してもかなり時間をかけていますね。

会社説明会が3時間、一次選考3時間、二次選考が朝の9時から夜19時まで丸一日かけて行います。ここでは最初から最後まですべてグループワークを行います。次が個人面談を1時間。1回で済めば1時間ですが、人によってはもう1回行うこともあるので合わせて2時間になることもあります。
最後は役員面接ですが、一般的な対面式ではなく特定のテーマを決めて話をしてもらいます。1つのテーマに対して役員と学生、役員だけ、学生だけと分かれていて、学生だけが話すのではなく役員も話すという特殊な選考ですね。

――なぜそのような形式で面接を行うのですか?

最終面接って一方通行になりがちじゃないですか。役員が学生に聞くだけで終わってしまう。でもそれだと「御社が!」というような定型文しか返ってこない。それではその学生のことが何も分からないだろうという意見を役員の方からいただきまして、いまの形式になりました。
役員も自身の考えや自分の体験を話すことで学生と相互通行になるようにして、学生からの本音が聞けるような選考になることを目指しています。

――それが最終的に採否を決める面接になっている。

このやり方の方が分かりやすいと思います。体裁だけを取り繕えてもしょうがないじゃないですか。それは学生だけでなく我々の方にも言えます。自分が働いて何ができるのか、何が残るのか、何がしたいのか、本当に自分に合っているのかを確認することが一番大切だと思っています。役員もその点をしっかりと考えて、本質の部分をしっかり見ていく選考にしようと面接に臨んでいます。
役員面接には社長も参加しますし、役員全員が協力的です。

――採用人数の規模を考えても、人事部長クラスではなく社長、役員が参加するのは本気度が違いますね。

毎回スケジュールをしっかりと抑えていただいています。1回に10人の学生、役員は5,6人が参加して2時間程度かけて行います。それが150人分です。
時間をかけるのは、欲しい学生を見極めようとふるいにかけるためではなく、あくまで学生自身に自分のことをじっくりと考えて判断してもらうためです。

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――学生に選んでもらうというスタンスで選考を行う企業はありますが、一緒に将来を考える過程で自社にマッチしないこともわかってしまうのでは?

基本的に学生が自分の将来を考えてもらうことを主体に置いて選考をしています。グループワークや面談を通じて、会社のビジョン、タクシー会社とタクシードライバーという働き方をしっかりと伝え、同時に学生に自分の将来のビジョンを考えてもらう。周りからどう見られるかではなく、自分がどうありたいかを一緒に考えるのです。
そうすると、「タクシー業界はこう見られているから自分がああいうふうに変えていきたい」と言ってくれるようにもなるし、魅力に気づいてもらえるようにもなります。そこで、響かない学生は自分から「違うかもしれない」と言ってくれます。それでも構わない。それが選考中に言いだせないことの方が良くないですし、ミスマッチにもつながる。だから選考では常にしっかりと人間関係がつくれるように意識しています。

――選考辞退もポジティブに捉えているのですね。

合説で興味を持って選考を受けに来た学生でも、面談の途中で「合わないから他の会社を受けてみます」と去っていく人もいます。なかには「おかげさまであの会社の内定をもらいました」と御礼の連絡をくれる学生もいます。
最近では、選考を途中で辞退して他の会社に就職した人が営業をしに来ましたね。普通は選考を辞退した会社に顔を見せるのって気まずいと思うのですが、「あのとき、面談で自分ことをいろいろと気づくことができたから良かったんです」と言ってくれました。そういう話を聞くと、時間をかける分大変ではあるものの、良い採用活動はできているのかなと思います。

――それを聞くと、最終的に入社を決めた人はしっかりと納得しているようですね。

新卒社員の3年以内離職率は20%を切っていますね。仮面就職を打ち出したときは50%程度も覚悟していたのですが、そんなことはありませんでした。

――その数字は、貴社の採用戦略がうまくいっていることの証左でしょう。集客のために精力的に動く一方で、集まった学生を囲い込もうとしない。

極端な話になりますが、弊社を辞めて自分の夢に向かって行動しようとしたときに、弊社で働いていたことがどういうメリットになるのかというところまで一緒に考えて、お互い納得できればと思うんです。こちらの思いはしっかりと伝えますけどね。
それも、話す機会があればこそ。話が戻りますが、新卒で就職活動を始めようとしたときに最初からタクシードライバーに興味を持つ人なんていないんです。
だからこそ、まず興味を持ってもらうことが大切だと考えています。

Vol.3に続く

 

 

 

企業プロフィール

会社名:国際自動車株式会社
所在地:東京都港区赤坂二丁目8番6号 km赤坂ビル
企業概要:タクシー・ハイヤー・バスをはじめ、リース、自動車保険、自動車整備、自動車運行管理サービス、駐車場事業に至るまで、自動車運行に関わるあらゆるサービス部門を有する旅客運送事業の総合企業
設立:(創業)1920年
社員数:6,713人(2016年12月時点)※グループ統計
URL:https://www.km-group.co.jp/

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