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特集

新卒採用~売り手市場時代の勝利者~ 第1回 タクシー業界・国際自動車編Vol.1


「不人気業界」でも開始4年で100人超の新卒採用に成功したワケ

2017.04.26

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新卒採用が売り手市場にあるなか、成功している企業の取り組みを人事担当者のインタビューを通じて紹介する新企画。第1回は、学生から「不人気業界」として見られているタクシー業界にあって、ここ数年連続して100人以上の採用を達成している国際自動車株式会社の採用活動に注目した。中途採用が当たり前だったタクシー業界で、どのようにして新卒採用を開始し、成功させていったのだろうか。管理部人財採用課の青木雅宏氏に話を聞いた(2017年1月下旬取材、聞き手・撮影:編集部)。【メイン写真:151人が入社した2017年度入社式。(東京都港区の東京アメリカンクラブ)提供:国際自動車】

国際自動車株式会社 管理部 人財採用課 係長の青木 雅宏氏①

青木 雅宏(あおき・まさひろ)

国際自動車株式会社 管理部 人財採用課 係長
2009年に新卒で国際自動車株式会社へ入社。総合職として配属先の営業所でドライバーの運行管理や総務系の業務を3年半担当。その後、4カ月ほど本社営業課の勤務を経て2013年より管理部人財採用課へ異動。新卒採用担当として、説明会の企画、運営から選考、入社対応までを行うとともに、リーダーとして新卒採用チームのマネジメントを任せられる。2015年には管理部人財研修課を兼務し、産業カウンセラーの資格を取得。

目次
  1. 社内インターンの社員が採用活動をサポート
  2. 1人の新卒社員の存在が常識を変える
  3. 学生は待っていても来ない。だから自分から会いに行く

社内インターンの社員が採用活動をサポート

採用活動を成功させるための有力な手段の1つは一般社員を巻き込み、協力を取り付けること。国際自動車は、人事制度を活用してドライバー自身が採用活動に協力する仕組みを構築している。

――青木さんは現在、人財採用課の中で新卒採用チームのリーダーを務めています。同じチームには何人ぐらいが所属しているのですか?

採用課全体で20人所属していて、新卒採用を担当するチームは10人います。16年9月から係長になったものの、それ以前からやっているチームのまとめ役として仕事は変わりません。説明会の一番前に立って学生に語りかけるというのは16年卒採用の途中までで、それからはメンバーの教育やマネジメントが中心になりました。

――10人というと決して少なくはないと思いますが、150人規模の採用を掲げているとなると、人事以外の社員の協力は不可欠ですよね。たとえば、リクルーターを活用していますか?

弊社は現時点で、リクルーター制度というのはできていません。実は人事制度の一環で「ジョブトレーニング」という社内インターン制度があり、ドライバーに採用活動を手伝ってもらっています。ドライバーとして入社したとしても、ずっとその先もドライバーだけをやると決まっているわけではない。次のキャリアを考えるという意味で、4カ月から半年間という期間を定めて、別部署に出向き「採用」や「研修」という普段とは違う仕事を経験できるのです。インターンは公募制で半年に1回程度実施しており、応募理由書を書いて、面接を受けてからインターンが決まります。今、チームにいるメンバーの中には、ジョブトレーニングを通じて新卒採用の仕事にやりがいを感じて、正式に異動した社員もいます。

1人の新卒社員の存在が常識を変える

2000年代に入るとタクシー業界は高齢化が進み、ドライバーの平均年齢は60才近くになろうとしていた。業界全体で若返りが必要だという危機感が高まってきたなか、同社の新卒採用は偶然始まったという。

国際自動車株式会社 管理部 人財採用課 係長の青木 雅宏氏②

――タクシー業界は中途採用が当たり前だった時代に、貴社が新卒採用を始めた経緯を教えてください。

タクシードライバーの新卒採用が始まったのは2010年卒採用でしたが、最初は偶然でした。当時は総合職のみで募集をしていて、たまたま入った1人にドライバーをやってみないかと声をかけたら、「やる」と言って始まりました。
私たちも半信半疑で、タクシードライバーに応募する人はある程度社会経験がある大人という見方しかなかった。そこで、その社員には、ほかの中途入社の人より手厚く研修をしたり、周囲がフォローをしたりということをしました。そうしたらものすごく適性があって、生き生きと働いたんですよ。周囲もどんどんアドバイスをしてあげて、積極的に営業に出ていました。タクシーの営業は歩合制のため、ベテランドライバーからすれば彼はライバルになる存在だったわけですが、自分の息子のように可愛がって売上を伸ばす方法を惜しげもなく教えていましたね。

――彼の存在が成功体験となり、「新卒でもタクシードライバーができる」という手ごたえを掴んだわけですね。

それまで新卒採用は「無理だろう」「どうせやっても入らないだろう」と思っていたものが、適性がある人もいるし、やりたい人もいるかもしれないと思えるようになった。会社が本腰を入れてやってみようと、タクシードライバーも募集職種に入れた新卒採用へと舵を切りました。
2010年にたった1人だったのが、2011年は4人、2013年には一気に42人に増えました。この年に初めて女性のドライバーが2名誕生しています。2014年には100人を超えて113人です。

――わずか4年で100人を超えたのは驚きです。同時に数字以上のすごさがあるように思えます。学生のイメージからすると、タクシー業界は「不人気業界」のカテゴリに位置づけられますし、簡単に達成できる数字はなかったのではと感じますが、どのような工夫をされたのですか?

確かにいろいろな工夫はしましたが、一番注力したことは、丁寧に説明をしたことです。
「長時間労働で働くのが大変」というイメージを持つ学生に対して、誤解を解いていきました。たとえば、隔日勤は月に11~13回の勤務なので、1日の労働時間は長いかもしれないけど、その分、自分の時間がたくさんとれる。入社したばかりの新卒1年目であっても、月に50万を稼ぐ人もいます。そういう事実を一人ひとりの学生に丁寧に説明していきました。
“一人ひとりに伝わる、理解してもらえる採用手法”に変えたのです。そうすると、「この会社、良いな」と言ってくれる学生は意外と多くいました。それに加えて、業界的に新卒採用がまったくフィーチャーされていなかったなかで、大企業ではなく中小企業の規模で「新卒採用を本気でやるんだ」と採用活動をしていたので、学生にも「自分たちで業界を変えていける」というイメージや期待感を与えられたのではと感じています。そういった要因も重なって採用数が一気に増えたのではないでしょうか。

学生は待っていても来ない。だから自分から会いに行く

「学生に丁寧に説明する」。これはどの企業も心がけているはずだ。多くの企業の人事担当者が頭を悩ませているのは、「説明する機会を得られないこと」。国際自動車はどのようにして、機会をつくり出しているのだろうか。

――説明会の集客はどのように工夫されていますか?

集客は積極的に行っています。結局、「待っていても来ない」会社なんですよ。待っていても来ないのなら、どうしたら知ってもらえるかというところからスタートしました。こちらが一方的にWebで何かを発信したとしても、そもそも興味がなければ来ないこともわかっていたので、ナビサイトではなく、合同企業説明会の場で集客しようと考えたのです。
とにかくイベントには積極的に出展をしようと決めましたが、オーソドックスな机を置いて、学生を挟んで話を聞いてもらうようなスタイルはしませんでした。基本的に若い年代の社員、その中でもドライバーの仕事を楽しんでいる人、ドライバーの仕事に可能性を感じているような人を呼んで、前面に出てもらい学生と話をしてもらうようにしました。
そうすると、「タクシー会社に若い人がいる」というギャップだけで最初は人が集まってきました。何だろうって思うんですよね。そうやってブースの前に足を運んだ学生に声をかけていきました。学生も興味がある分、少し聞いてみようかなと思うので、そこで学生とも比較的歳が近いドライバーが語りかけることで、さらに興味をもってもらえるように仕掛けるのです。

社員が協力して行った合同説明会(提供:国際自動車)

社員が協力して行った合同説明会(提供:国際自動車)

――最初から、新卒採用チーム以外の社員も協力していたということですか?

私が採用課に異動して説明会に行き始めた段階で、多い時は15、6人ぐらいの若手社員が協力してくれました。そこに新卒採用で入った社員も加わっていくのですが、最初はみんな何を話していいのかわからなかったものの、場数を踏んでいくうちに慣れていきました。チームの方もやるたびに集客のコツやノウハウがわかってくるので、主体的に考え、動けるようになっていきました。

――ぶしつけな質問になりますが、協力しているドライバーは普段、歩合制で営業をしているため、採用活動へ参加は自分の収入が減ることになります。どのようにフォローをしているのですか?

今は採用活動への協力に対して、基本給または待機手当というような形で保障しています。協力してくれるドライバーは、収入面だけではなく、学生に自身の体験を伝えることで、より自分の仕事への誇りを感じ自信をつけることに意味を見い出していると思います。

――採用活動に協力する社員のモチベーションとはどういうものだと感じていますか?

「若者を増やすぞ」と手を上げてくれた彼らもまた若者なのですが、「自分たちと同じ世代が増えれば、この業界のイメージが変わっていくはずだ」という強い気持ちを持っていました。説明会で学生に前に立つときは、「一緒に働きたい仲間を探そう、増やそう」という姿勢で臨んでくれていましたね。その熱意はしっかりと学生にも伝わっていたと思います。

――社員自身が課題感を持っていて、採用活動に積極的に関わろうという意識の高さを感じます。

新卒採用を本格化させる頃から「最重要課題は採用だ」ということは、社長や役員から、社員に向けて発信しているため、全社的にも協力をしてもらえる、もしくは協力しやすいような体制はすぐに構築されていきました。言葉だけでなく、社長や専務は精力的に大学のキャリアセンターへ出向いています。僕たちが逆に「今月は回らなくて良いのか」と怒られるくらい協力的です(笑)。
やはり会社のトップが行くことの効果は大きく、社長らが訪問した後は、キャリアセンターの方が会社に来てくださるようになり、学生を推薦していただけるようになりますね。

Vol.2に続く

国際自動車株式会社の西川洋志社長が保護者向け会社説明会「オープンカンパニー」で保護者に語り掛ける様子

西川洋志社長(写真右)も積極的に採用活動を支援する(保護者向け会社説明会「オープンカンパニー」で保護者に語り掛ける様子。【提供:国際自動車】)

企業プロフィール

会社名:国際自動車株式会社
所在地:東京都港区赤坂二丁目8番6号 km赤坂ビル
企業概要:タクシー・ハイヤー・バスをはじめ、リース、自動車保険、自動車整備、自動車運行管理サービス、駐車場事業に至るまで、自動車運行に関わるあらゆるサービス部門を有する旅客運送事業の総合企業
設立:(創業)1920年
社員数:6,713人(2016年12月時点)※グループ統計
URL:https://www.km-group.co.jp/

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