残業ゼロを目指して
作業にかかる時間を減らしたければ作業時間を予測すべし!
2017.04.25
私は朝起きてから、夜寝るまで、全ての行動記録をiPhoneを通じてEvernoteというデジタルメモへ残すようにしています。
こういう記録をつけるのが習慣になって、だいたい10年くらいになりますから、いまではほとんど無意識のうちに記録が残っていて、いつ、誰と、どこへ旅行へ行っていたかということまでも、Evernoteが詳細に、誤りなく教えてくれます。教えてくれると言えば言い過ぎですが、検索すれば見つけ出すことができます。
これによって時間を節約するとか、仕事の効率を上げるということももちろんできるでしょう。しかし、残業をなくしたいという人にはぜひ覚えておいていただきたいのですが、行動の記録をとにかく残すだけでも、時間の使い方が少しは上手になります。これは、家計簿を残すことで、収入が増えるわけでなくても、少しはお金の使い方がうまくなるのと一緒です。「使い方」に注意が向かうからです。
ただ、[ライフログ]を自動的に残すということについては、注意してください。行動の記録を自動的に残すといったアプリやサービスがちょっと以前に流行しましたが、行動記録をいくら自動的に残しても、それだけで時間の使い方がうまくなることはめったにありません。自分の行動を振り返って、それに注意を向けるからこそ、使い方がうまくなるのであって、ただ記録が残っていればいいとは言えないのです。
全部残すのは面倒だ、という人のために
とはいえ、どれほど効果があっても、自分の全行動の記録を残すのは面倒だと思う人が多いでしょう。そんな人にも、残業がこれだけのことで減るならと思うのですが、面倒だと言われれば、たしかにそうかもしれません。
そこで、全行動記録を残すことなく、効果の上がる方法を提案したいと思います。
その都合のいい方法とは、いかにも時間のかかりそうな作業についてだけ、作業にかかるであろう時間を見積もって、その結果を計ることです。
作業をする前に作業にかかるであろう時間を見積もるのですから、その予測が100%的中するはずはありません。ですから見積もりのやり方は、適当でかまいません。適当でかまいませんが、当てる気持ちがゼロではいけません。たとえば、ふだんなら1時間くらいはかかりそうな、クレーム処理するという仕事なら、1時間を見積もりましょう。それを1分と予測したのでは何の意味もありません。
そうして、見積もっておいた作業が、はたして見積もりに対してどのくらいの時間でやれるか。これに注目します。
1時間と見積もっていたが、実際には50分しかかからないか。あるいは逆に2時間かかってしまったか。ズレがあったとすれば、そのずれた理由もわかる範囲で書いておきます。
これを、2~3日続ければ、10前後の作業についての、予測時間と実績時間が割り出せるでしょう。その中でも、もっとも予測とずれていた、トップ3について分析をします。見積もりより速すぎても遅すぎてもです。的中度が低いものを3つピックアップしましょう。
作業にかかる時間がわからない、ということは
作業にかかる時間を予測することにはいろいろな意味があります。まず、少なくとも作業にかかる時間のことを強く意識するようになります。それだけでも一般的には時間の節約になるのです。
もちろんそれだけではなく、作業にかかる時間を予測すると、予測しやすい作業とそうでない作業が現れるはずです。そして一般に、予測しやすい作業ほど、やりやすい作業になるものです。作業にかかる時間が予想できるということは、どんな作業を、どのように、どんなペースでやればいいか、分かっているということです。
そして、その逆の作業とは、そうではないということです。
つまり、どんなことを、どのような手順で、どんなペースでやったらいいのかが、さっぱりわかってないときほど、予測時間の精度が下がるのです。
そうした作業を減らし、作業内容、手順、ペースを明らかにすればするほど、作業効率が上がるはずですし、そもそも作業に取りかかる意欲が増します。
この、作業前に時間を予測して、実際に実測するというのは簡単にできます。手元にメモとペンと時計があればやれることです。効果はあるはずですので、1度やってみてください。実験的で面白いと思えるところもあるはずです。
もう一度強調しておきますが、予測を当てようという気持ちがなければ、効果があまりありません。この点は忘れないでください。予測を当てようという気持ちには当然、予想時間で終わらせようという意欲を含みます。私たちは純然たる科学実験をやっているのではなくて、残業を減らそうとしているのですから、予想することによる影響が発生しても、それが好ましい影響であれば、むしろ積極的に利用するべきでしょう。
最終的には、仕事全体にかかる予想時間が、定時前で終わるということになって、その予想精度が高ければ、残業ゼロが実現できるということになります。
連載コラム〈残業ゼロを目指して〉
執筆者紹介
佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック
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