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林修三先生のなるほど人事講座


面接時に「○○」とカミングアウトされたらどうする!?(政治思想編)

2017.03.21

  • ダイバーシティ
  • 採用
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これまで2回に渡って続けてきました「面接時に『○○』とカミングアウトされたらどうする!?」シリーズですが、ひとまず今回が最後となります。

今回は「政治思想編」です。

採用活動と、応募者の個人的な思想信条との関係に関しては、「三菱樹脂事件」と呼ばれる重要な最高裁判決(昭和48年12月12日)が存在します。詳細に関心のある方はぜひ検索して調べて頂きたいと思いますが、この判決で示された内容を端的に表現すると、

「特定の思想・信条の持ち主を有する者に対し、その思想・信条を理由に不採用にしても、当然に違法となるわけではない。」

 

ということになります。

これを読むと「なんだ、じゃあ心配いらないな」と思いがちですが、残念ながらそうはいきません。
問題になるのは、最後の「当然に違法になるわけではない」という表現です。この表現、判例解釈的には“違法である可能性が十分にある”ということと同じ意味になりますので、違法性回避のためにも、また万一の訴訟リスク回避のためにも、応募者の思想・信条を理由に不採用にするということを避ける必要があります。

ただ、そうは言っても採用する側からすれば、左であれ右であれ、偏った政治思想の持ち主は正直歓迎できないという心情もあるでしょう。

では、その歓迎できない政治思想をカミングアウトされてしまった場合、どのような対応をすればよいのでしょうか。

過去2回、「LGBT編」「精神障害・発達障害編」として寄稿させて頂きましたが、政治思想においても、原理原則はこれらと変わらず、「冷静に、誠実に応対する」ということになります。採用側の内心がどうあれ、カミングアウトされた瞬間であっても表情や態度を豹変させることなく、冷静に、かつ誠実に向き合っていくことが重要です。

そのうえで、個人的な政治思想と、勤め人としてのケジメを守ってもらえるかどうかの確認を行うことがポイントとなってきます。

個々人がどのような政治思想を持つかは(それが明らかに反社会的なものでない限り)本来自由であるべきですが、その自由の行使により勤務先に損害を及ぼすようなことは、良識ある社会人として厳に慎まなければなりません。

そこで、本人の政治思想そのものに対しては「ああ、そうなんですね」と受容を示したうえで、少なくとも「社内での政治活動」と「自社の社員であることを公開したうえでの社外での政治活動」の2点についてはNGであることを伝えておくのが良いでしょう。

社内での政治活動については、多くの場合就業規則で禁止されていると思いますので、そのことを客観的事実として伝えて頂ければ結構です。ただ、就業規則にその旨の規定が無い場合は、「業務遂行に個人的な政治思想を持ち込むべきではない」という一般論を盾にするしかありません。

また、社外での政治活動についてですが、業務外のプライベートにおいては会社が本人の活動を制限することはできませんので、特定の政治活動に参加すること自体は止めようがありません。しかしその場合であっても、政治活動に自社での肩書きやリソースを使用して万一自社に何がしかの損害を生じさせた場合は、懲戒の対象になり得るということを伝えておくべきです。

たとえ応募者が偏った政治思想の持ち主であったとしても、そのことが業務に影響を及ぼさなければ基本的には問題ないわけですので、その点を押さえたうえで、通常の応募者と同じように必要能力要件の精査を行っていけば結構です。

まとめると、一個人としてどのような政治思想を持とうが政治活動をしようが本人の自由である、という基本スタンスをまずは明確に示してください。そのうえで、個人的な政治活動と自社社員としての活動とを明確に切り分けることを了承してもらうという流れになります。了承の旨の言質をしっかりと取ることができれば尚良いですね。

この作業と並行して通常と同じように能力要件の確認を行い、仮に不採用にする際は、あくまでも能力要件を満たしていないと判断したからだという説明ができるよう、面接での受け答え記録を丹念に残していくことが求められます。

ちなみに、今回は「政治思想編」と銘打っていますが、これが「宗教思想」であってもポイントは同じです。

本人の思想・信条自体は受容しつつ、そのことで業務に支障を生じさせることはNGであるという点をしっかりと伝えていき、採用側のリスクを最小化できるよう進めていってください。

執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。

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