失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム
昇進、雑用、飲み会……「断る社員」に人事担当者がとるべき対処法
2017.03.08
4月は人事異動の時期という会社も、また人事的な新体制を今まさに構築中という会社も多く、人事担当として、その準備に大忙しという状況の方も多いのではないでしょうか。順調に人事異動の準備が進み、新体制に移行できればよいですし、それが人事の責務なのですが、なかなかそうはいかないもの。前回の記事では、転勤(転居を伴う配置転換)を断る社員について述べましたが、今回はいろいろなケースの「断る社員」について、話を進めたいと思います。
昇進を断る社員がいた場合
人事異動で「昇進」することは、だれでも嬉しいものでしょう。会社側も期待値をもって、新役職・新職務に就くことを社員に命じ、社員も昇進に伴い待遇がアップすることが期待できますので、断る社員などいないと考える方も多いと思います。しかし最近人事を悩ませているのが、「昇進・昇格を断る社員」が出始めているという事実です。
断る理由としては、業務量が増加するから。責任が大きくなるのはつらいというものが多いようです。また別のケースでは、自分の進むキャリアプランと違うから(職務の変更・キャリアコースビジョンの変更)という理由も。しかし本当の理由は、実質賃金が減るというものも多い模様です。時間外労働手当が支給されない管理職になると、損が生じる社員にとっては、断りたいと思うのも心情でしょう。
会社としては期待値をもって昇進昇格を命じているのですから、できれば受けて欲しいというのが心情でしょう。しかし、このような「後ろ向き」の状態でたとえ受けたとしても、個人的には「仕事をやらされてる感」が強くなってしまいます。そこでその対策を考えなければならないのですが、企業で管理職を重視するのであれば、管理職が活力をもって働ける環境・処遇を会社として整えることが重要ではないでしょうか。まず処遇としては、たとえ時間外労働手当は減っても、賞与金額で減額分を調整するなどの対策は必要でしょう。役職が上なのに年収が低いといういびつさは、管理職の士気が低下することにつながりますし、その低下するラインの役職が「忌避される役職」と社内で悪い噂になることが避けられません。適切な賃金ピラミッドを築く上で「へこむ」ポジションは作るべきではありません。
次に昇格後の管理職は責任が増加するから嫌だという社員に対する対応です。基本的に管理職は責任が増大し、時間外労働も増加するのが常といえます。このような場合、異動後の処遇・勤務内容等について十分説明を行いある程度納得の上で昇進させるべきです。昇進にやる気をださない社員を昇進させることは、今後の会社の業務運営にも支障をきたす可能性が高く、そのような人事は避けるべきといえるでしょう。それでも昇格させたいという社員については、「会社が十分なフォローをする」ということを約束して、管理職として素人である社員のフォローをすることを覚悟しなければなりません。
雑用を断る社員がいた場合
業務を遂行する上で必要なものは、会議・実際の仕事だけではありません。コピー取りなどの雑用も重要な仕事です。よく雑用は仕事ではないと考える社員もたまに存在しますが、 雑用なくして、本当の仕事とは言えないでしょう。しかしそれでも断る社員がいた場合は、ただちに降格・降給にするのではなく、まず業務貢献度が低いと見なして、賞与をカットして様子を見る。それでも改善されない場合には、適切な指導を行ったのちに、重要でないポジションに人事異動(降給降格)することも可能であるといえるでしょう。
しかし、その準備のために、雇用時の契約書に、◯◯業務とそれに付随する業務(つまり雑用のこと)といれておく必要もあります。
宴席への参加を断る社員がいた場合
飲みニケーションという言葉があります。業務終了後に飲みに行くことがコミュニケーションの向上につながるという考え方です。たしかに業務が終わった後に、本音で話し合える機会が多い会社はコミュニケーションという点では優れていると言えるでしょう。しかしアルコールハラスメントという言葉があるとおり、過度に酒席に誘うことは禁物といえます。あくまで任意の場であることは理解すべきでしょう。しかし業務時間内に行われる宴席であるお疲れ会やパーティなどに参加拒否することは、業務命令違反になりますので、宴席が業務であるか否かという点はしっかり区別しておくべきでしょう。
いかがでしょうか。今回は3パターンの「断る社員」の例をあげましたが、その他にもいろいろと「断る社員」はいるはずです。断られる前に環境を整備することも重要ですが、いざとなったら人事権を発動できる環境作りもまた大切です。
執筆者紹介
田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
コラム
失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム
電通過労死事件から学ぶ、社員の過労死(過重労働)撲滅方法
目次 電通過労死事件、事態は労働局による強制捜査に発展 電気を消すだけで時間外労働が減り、業務環境が改善するのか? 過重労働防止対策 パワハラの撲滅電通過労死事件、事態は労働局によ...
2016.11.09
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第3回
シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
シニア層の活躍: 未経験業界への挑戦第1回は、シニア層の就業実態および意識をシニア個人と企業双方の視点からお伝えし、第2回では、積み重ねたキャリアで得たスキルや専門性を生かして生き...
2023.08.25
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第2回
シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
シニア人材の採用と活躍:スキルと経験を生かす方法第1回では、リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した「シニア層の就業実態・意識調査(個人編・企業編)」をもとに...
2023.08.18
-
コラムニュース・トレンド
「人的資本経営」の実践のポイント 第4回
人的資本経営の実践に向けて――マネジャーのリスキリング
人的資本経営の実践の要となるミドルマネジャーの「リスキリング」に注目本連載では、人的資本経営の実践のポイントとして、「人的資本の情報開示」「人事部の役割変化」「ミドルマネジメントの...
2023.08.10
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?