企画

M&Aと人事制度


大事なのは、人事制度よりも文化の融合。M&Aを経てひとつになれたBCC株式会社の秘訣

2017.02.24

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写真右:安原弘之氏(BCC株式会社の人事責任者)
・肩書:取締役(事業統括本部長 兼 営業創造カンパニー社長)
・経歴:日本電気株式会社(NEC)、外資系IT企業を経て、営業創造株式会社(現BCC株式会社)に入社。 現在は、事業統括本部長として営業創造カンパニーとスマイル・プラスカンパニーを統括。

写真左:小出契太氏(BCC株式会社スマイル・プラスカンパニーの事業責任者)
・肩書:執行役員
・経歴:ITセキュリティ系のベンチャー企業を経て、営業創造株式会社(現BCC株式会社)に入社。 現在は、スマイル・プラスカンパニーの事業責任者。

BCC株式会社は、現在「IT 営業アウトソーシング事業」を行っている営業創造カンパニーと「介護レクリエーション事業」を行っているスマイル・プラスカンパニーの2つのカンパニー体制をとり、事業を行っている。2012年に介護レクリエーション事業を行うスマイル・プラス株式会社をグループに迎え入れた際、人事面でどのような工夫を行い、異なる会社同士の統一を図ったのか。BCC株式会社取締役であり、人事責任者でもある安原氏と、グループ化当時からスマイル・プラスの人事面を統括する小出氏に話を伺った。

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――まずは営業創造カンパニーの特徴を教えてください。

安原:営業創造カンパニーでは、IT営業人材の派遣事業を行っています。IT技術者の派遣事業には、多くの会社が参入していますが、IT営業職の派遣事業には競合がほとんどいません。他にはない弊社だけの強みです。

−―現在、人事面で特に取り組んでいることはなんでしょうか?

安原:人の派遣をしていますので、社員の増加は会社の成長に直結します。そのため、とにかく採用を大事にしています。以前はIT業界経験者を採用していましたが、今は売り手市場でなかなか採用ができない。そのため現在では業界未経験者を多く採用し、育てていこうとしています。私はベンチャー企業の面接は、我々の営業の場だと考えています。大手のようには志望者がどんどん来てくれませんし、面接に来てくれた方にこちらがプレゼンし、弊社に来てもらうという姿勢が必要です。採用は事業の要、そのため今でも私が自ら一次面接をすべて対応しています。 実際に働く社員ですが、弊社内で5年前と比較し、女性比率が15%から42%に上がったのが特徴的です。IT系というと、皆男性の方が得意だというイメージを持つようで驚かれます。しかし、私は女性に非常に向いている職種だなと感じています

――なぜでしょうか?

安原:例えば車のディーラーや、住宅などの営業は、自分対お客さま1対1の営業です。しかし、ITの営業はクライアントや技術者、または多くの関係部門の意向などをうまくバランスをとり調整することが求められる多対多の仕事なんです。二つのチームをうまくハンドリングする、いわばコーディネーター的な動きが求められます。そのためマルチタスクを行う能力や、気配りが求められます。そのあたりは女性の方が得意なので、弊社では沢山の女性社員が活躍してくれています。

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―—次にスマイル・プラスカンパニーの特徴を教えてください。

小出:スマイル・プラスカンパニーでは、介護レクリエーションを中心とした事業を展開しています。介護レクリエーションとは、介護現場において高齢者の方向けに行うレクリエーションです。単なる遊びではなく、高齢者のQOL(=Quality of Life:生活や人生の質)を高め、心豊かに生活できるようなレクリエーションを提案しています。当社では、レク素材やレク企画ネタの提供プラットフォーム「介護レク広場」やレクリエーション介護士資格制度の運営、そしてレクリエーション介護士によるレクリエーション代行サービス「介護レクサポーター」などを行っています。

―−M&A後に、人事面で何か取り入れたことはありますか?

小出:営業創造カンパニーのコミュニケーション方法を取り入れることで、より働きやすい職場作りができたと感じています。 スマイル・プラスカンパニーは、8~9割は子育て中の女性社員。時短勤務のメンバーも多く、社員の働く時間にばらつきがあり、朝礼のような全員の意思共有ができる場がありませんでした。グループ企業になった際に、営業創造カンパニー側が全体会議以外にも色々な工夫でこまめに意思共有をしていることを知り、スマイル・プラスでは、こまめに意思共有をするためにメッセンジャーを導入したんです。それまで、スマイル・プラスではITツールはほぼ活用しておらず、コミュニケーションは対面か電話が主でした。チャットツールを取り入れることで、気軽にコミュニケーションができるようになり、些細な気付きや相談を早めに共有できるようになったんです。何か不具合があっても問題が大きくなる前に改善できるのは大きなメリットですね。

―−コミュニケーションが活発になったことでどんな変化がありましたか?

小出:これまでは、子供が熱が出たから休むといった連絡は上長に電話をし、その上長が各自に共有するという流れで行っていました。しかしメッセンジャーで行えることになり、即座に共有でき、お互いの状況を理解することで、例えば保育園へのお迎えを誰かが代わりに行ってあげるとかそういった助け合いが生まれています。また急なことで面倒を見る人がいないときは、子供を職場に連れて来ることも。社員の状況を早め早めにキャッチアップできたことで、長く安心して働ける環境が作れたと感じています。

―−御社は今までM&Aを推進して来られましたが、M&Aに伴う人事制度の統合のプロセスと、工夫した点についてお聞かせください。

小出:グループになったのは2012年なんですが、当初はBCCホールディングス傘下の、独立した会社として運営していました。営業創造は創業10年、スマイル・プラスは創業3年のタイミングで、企業としてのステージが全く違う。人数も営業創造の方が多かったので、そのまま合併してしまうとスマイル・プラスが飲み込まれてしまったと感じる人も出ていたでしょう。まずはお互いに対等な会社として企業文化の融合を先に目指しました。人事制度は、お互いにフィットしそうな良いところだけを取り入れ、統一はしませんでした。

その過程を経て、2016年の9月にBCC株式会社として合併し、それぞれをカンパニーにしました。安原が事業統括本部長として、2つのカンパニーを統括しているのですが、まず最初にやったことが、オフィスのフロアにあった2つのカンパニー間の物理的な壁を取っ払うことだったんです。

安原:カンパニー間の壁を取っ払って「一つのオフィス」にしました。どんなに今日からは同じ会社だと言っても、壁が存在すると違いを感じてしまいます。互いの働く姿が見えることはすごく大事だと思います。

小出:東京オフィスは、座席も事業関係なくごちゃまぜで、事業をまたいで仕事をするメンバーも出てきています。営業創造の社員が得意としていたテレアポをもって、自然とスマイル・プラスの介護施設へのテレアポを始めたときは、シナジーを感じて嬉しかったですね。ですが、ステージの違う二つの会社の壁をいきなり取っ払っていたら上手くいっていなかったと思うんです。まずは互いの文化を尊重しながら融合したことにより、ひとつの会社にまとまってきたと感じています。本当の意味でひとつの会社になれたことは、今後私たちの大きなエネルギーとなるでしょう。

―−人事制度をいきなり統一しなかったことがよかったんですね。

安原:そうですね。通常M&Aのあと、どちらかの人事制度にいきなり統一する企業が多いと思います。しかし、それではアレルギー反応を起こしてしまう社員もいるのではないのでしょうか。本質的にひとつの会社になるために、文化の融合から始めたのは良かったと思います

小出:9月に合併してから、3ヶ月半くらいで、会社がひとつになったなと実感できる空気が作れたように感じています。互いの事業を対等に尊重し合える風土が醸成できたので、今統一の人事制度を作っているんです。制度より風土を作るほうがずっと大変です。制度に囚われず、ひとつになれるよう工夫することが大事なのではないでしょうか?

−―制度ではなく人を大事にされているんですね。

安原:はい、社員とのコミュニケーションもとても大切にしています。私は新人と特に仲が良くて、新人メンバーたちと私だけで飲みに行くなんてこともあります。転職してきたある社員は、前職より社員数が多いのに、社長とこんなに距離が近いなんてと驚いていました。

―−最後に、今後人事面で会社をどのように成長させていきたいですか?

安原:我々は営業組織がメインではありますが、人の成長をとにかく大事にしています。いずれは人を育成するような事業ができればと思っています。例えば「BCCアカデミー」とも言えるものが作れると面白いですね。営業のテクニックやスキルを教えるのではなく、生き方働き方のマインドを教えられるような会社にしていきたいと思います。

小出:現在新しい統一した人事制度を作ってはいますが、完成したら終わりではありません。その時々に応じて、従業員全員が満足できるように改良改善をしていくつもりです。仕事は人生設計に関わる大事な存在です。現場の従業員に寄り添い、従業員が働きやすい環境作りをし続けたいと思っています。

執筆者紹介

井澤梓(いざわ・あずさ) 金融機関を経て、2010年人材系企業の新規事業立ち上げに参画。新規事業の法人営業担当、人材エージェントの新規営業と既存営業に携わる。現在はフリーとしてライターや企業広報を行っている。

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