コラム

林修三先生のなるほど人事講座


面接時にカミングアウトされたらどうする?(精神障害・発達障害編)

2017.02.01

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ご存知の方も多くいらっしゃるかとは思いますが、2016年4月に障害者雇用促進法の改正法が施行され、障害者の採用や勤務管理に関する規定が大幅に変更となりました。その中で採用面接に直接的に関わってくる部分として、

(1)障害者に対する差別の禁止
(2)合理的配慮の提供義務

の2点が規定されたのですが、これにより、従来以上に障害者に対する採用選考をデリケートに対応していくことが必要になってきています。

今回は、特に精神障害・発達障害をカミングアウトされた場合の、この2点を踏まえた採用面接への影響と対応法について解説していきます。
まずは上記2点の概要からご説明します。

目次
  1. (1)障害者に対する差別の禁止
  2. (2)合理的配慮の提供義務
  3. 応募者への評価に対する根拠や判断プロセスについて、細かく記録しておく
  4. 合理的配慮を徹底する

(1)障害者に対する差別の禁止

採用選考において、障害者であること自体を理由とした不採用判断が禁止となります。したがって、もし不採用にした障害者からその理由を問われた場合、「その障害ではウチでは働けない」という趣旨の説明では法令違反となります。

とはいえ、障害者を不採用にすることが直ちに違法になるわけでは当然ありません。業務遂行能力の確認を適切に行っていった結果として、「自社が求める必要な能力要件を満たしていない」という判断をした場合であれば、その障害者を不採用にしても問題はありません。

ただ、身体障害者の場合であれば、障害部位と応募職種における必要な能力要件との関連有無を比較的説明しやすいのですが、精神障害や発達障害の場合は、正直説明が難しいのが実情です。事前準備として募集職種における能力要件をしっかり設定しておき、その上で、応募者が精神障害や発達障害を抱えているとわかった場合、その能力要件をクリアできるかどうかを把握するための質問を丹念に時間をかけて行っていくことが求められます。

(2)合理的配慮の提供義務

応募してきた障害者から、選考試験に関して合理的な配慮を提供して欲しいという旨の申し出があった場合、採用側はこれに対応する義務が生じます。(例:気が散ると話せないので他の社員が出入りしない個室の会議室で面接して欲しい、対人恐怖が強いので集団面接は行わないで欲しい、緊張が激しい時は面接を一時中断し時間をおいて再開させて欲しい、など)

例外として、企業側がその対応をするのに「過重な負担」がかかる場合には、申し出に全て対応する義務からは免れられます。ただしその場合でも、対応できない理由を障害者に説明し、過重な負担にならない範囲での合理的配慮を講ずることが引き続き義務として生じますので、完全に拒否することはできません。
(ちなみに、何をもって「過重な負担」とするかはケースバイケースです。最終的には、万一トラブルになった際に当局がどう判断するかが全てとなります)

これらのことを踏まえ、改めて「面接時に精神障害あるいは発達障害であることをカミングアウトされたらどうする?」という点を考える場合、重要な点として以下のことが挙げられます。

冷静に、誠実に応対する

精神障害あるいは発達障害であることをカミングアウトされた瞬間に表情や態度が豹変するというのは、最もよろしくない対応になります。先回のLGBTの件と同様、(内心がどうであれ)冷静に、かつ誠実に向き合っていくようにしてください。

応募者への評価に対する根拠や判断プロセスについて、細かく記録しておく

精神障害や発達障害だとわかった応募者を不採用にした場合、最悪のシナリオとして、「不採用になったのは障害者差別のせいだ」として訴えを起こされることが考えられます。万一このような状況になった場合、応募者を不採用とした根拠や判断プロセスに非が無かったことを証明しなければなりません。そのため、どのような質問をどのような言い回しや態度で行ったか、それに対してどのような表現でどのような回答がなされたか、その回答を自社の判断基準と照らし合わせるとどのような評価になるのか、など、事細かな記録を残しておくことが望ましいでしょう。

合理的配慮を徹底する

先に述べましたように、応募してきた障害者から合理的な配慮を求められた場合、原則として対応義務が生じます。ここをおざなりにしてしまうと、万一訴訟沙汰になった際に非常に分の悪い状況になりますので、過重な負担にならない範囲での最大限の配慮を実行していってください。

応募者が障害者であったとしても、採用するという判断に至った場合には特に何の問題もありません。(厳密には入社後の差別禁止や合理的配慮も必要になりますが)

採用活動に関して問題になり得るのは不採用にした場合ですので、万一の事態にも対応できるよう事前の対応を進めておきましょう。


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執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。

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