企画

人事のキャリア


【第6回・後編】人事の実務と教育の両方ができるというキャリアを生かしていく(グロービス・林 恭子さん)

2017.01.13

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さまざまな業種の人事担当者に、仕事のやりがいやキャリアについてインタビューする「人事のキャリア」。第6回は株式会社グロービスの林恭子さんに話を聞いた。前回は人事の責任者であり、同社の経営会議のメンバーでもある林さんのキャリアについて迫った。後編はグロービスの人事責任者となった林さんが実践してきたことや、仕事のやりがい、今後の目標について語ってもらった(2016年10月取材、聞き手:編集部、撮影:熊谷徹)。【写真:グロービスのオフィスにて

林 恭子(はやし・きょうこ)

株式会社グロービス マネジング・ディレクター 経営管理本部 本部長
大学卒業後、米系電子機器メーカーのモトローラで、半導体、及び携帯電話端末の法人ビジネスに携わった後、ボストン・コンサルティング・グループへ。人事担当リーダーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用、能力開発、リテンション・プログラム開発、ウィメンズ・イニシアチブ・コミッティ委員等、幅広く人材マネジメントを担当する。2007年1月よりグロービスへ。人材・組織に関わる研究や教育プログラムの開発を担当した後、2014年より経営管理全般を統括。またリーダーシップ、人材マネジメント、ダイバーシティマネジメント、キャリア開発、パワーと影響力等の領域を中心に、グロービス経営大学院での講義、および、企業研修、講演などを多数務める。共著書に『【新版】グロービスMBAリーダーシップ 』(ダイヤモンド社)、『「変革型人事」入門』(労務行政)、『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』(ナカニシヤ出版)がある。経済同友会会員。組織学会、産業・組織心理学会、及び経営行動科学学会員。

全社を動かすには、経営会議で合意をとったうえで、現場に何度も説明をし、最後は人となりで勝負

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グロービスでは人事の改革にも着手した

――林さんが現場に戻って、どのようなことを実践したのか

私が異動してきてから変えようと思ったことのいくつかは実現できています。一番大きなものは人事メンバーのマインド。「組織サービスのプロであれ」ということで、サービスのクオリティに責任とプライドを持ち、最新の知見をもとにタイムリーに適切な対応を行い、社内で活躍する人の真のパートナーとなり、最高の職場にすることを意識してもらっています。もちろん、マインドだけを変えるのではなく評価への反映もきっちりやっています。期待に応えてくれるメンバーが集まっているので、その点はとても良かったと思いますね。

また、使い勝手が悪いと感じていた社内のイントラネットの改修を、人事・総務や経理、ITインフラの人も加わって横断プロジェクトで実施しました。私が人事の側に染まってしまうと、使いづらいことが当たり前になってしまうので、ユーザー感覚が失われてないときに敢行できた点が良かったです。今はとても使いやすくなり評判は良いですよ。

――ダイバーシティの推進も成功している

ワーキングマザーのコミュニティを創り、その中で情報交換や悩み相談ができるような仕掛けや、外国人スタッフにも綿密なヒアリングを行い、すべての人が働きやすい環境を創っています。
働きやすい組織という観点では、今年度より「働き方のフレキシビリティ」として、大幅なフレックスタイムや、夜遅くまで仕事をした場合は翌日の業務を軽減できるなど、さまざまな働きかたをもつ部門ごとにフィットした柔軟な制度の導入を実施しています。

また、今後は、これまでも一部導入はしていたのですが、リモートワーク制度のさらなる充実にも力を入れていく予定です。たとえば、安全に社内の環境にアクセスできたり、職場に居なくてもチームメンバーとしっかりコミュニケートできるツールを導入したり、一方で、自由度を上げるからこそ皆がオフィスに集まりたくなるような仕掛けを作ったりするということを今後実施していく予定です。

――管理本部発でいろいろと社内変革を実現しているが、どのように全社を巻き込んでいるのか

まずは、経営会議でしっかりと議論し、合意を形成することです。各部門のトップの皆さんに理解いただけない限りは、いくら現場に持ち込んでも浸透しません。合議でやることが決まり、納得してもらった上で協力していただく。これは私が責任を持ってやるべきことだと思っています。それから、何度も全社アナウンスを行います。私だけでなくチームのメンバーに協力を仰ぎます。メンバー自身も持ち前の人間力やコミュニケーション力を駆使して、説明責任を果たしていく。誰も眉間にシワを寄せて「やってくれ」とは言いません。「これはきっと楽しくなる」「やったらもっと良くなるよね」とアプローチをしていています。そして、やると決まればみんなポジティブに実行されていきます。グロービスの特徴と言えますが、やはりポジティブに行われている鍵は、会社の理念にフィットする人を採用しているからです。

自由と自己責任のもと、キャリアを自ら切り拓く

――普段、どのように勉強をして、人事担当者としてキャリアを磨いているのか

社会は変わっていくので、常に勉強が必要です。関連する書籍や、セミナーへの参加など。自分が参加するだけではなく、メンバーにもどんどん外で勉強してきてもらい、後にチームに共有してもらうことで、人事全体のナレッジを高めています。いわゆる組織学習ですね。

――貴社の人事担当者のキャリアパス、キャリアモデルを教えてください

まず、グロービスの人事に所属しているのは、「人事をやりたい」を思っている人です。社内から人事未経験で異動した例も多い。バックグラウンドはさまざまですが、以前に人事担当をしていたという場合は、法制面での幅広い知識や、採用の深いノウハウを生かし、チームメンバーの指南役として活躍してもらっています。

グロービスの人事の方針は「性善説に基づく、自由と自己責任」。もし性悪説でマネージするとなると、社員を信じないということですから、ルールや制度で人を縛るしかない。でも我々は性善説ですから、社員を信じます。彼らはしっかりと会社の重要な理念やバリューを理解してくれるはず。そして、自主的にグロービス・ウェイに沿った判断や行動をしてくれるはず。一方で、ここは大人の組織ですから、自分が行ったことはきっちりと自分で責任をとってもらう。これさえ守っていれば、個々人の活動は自由であり、人事も個人が自己実現できる場所を徹底的に提供できます。

人は、自分の力を思い切り発揮できると嬉しいものであり、グロービスでは異動希望や処遇の希望も自己申請できるようになっています。これは、キャリアパスを考えるのも、自由と自己責任という考え方に基づいているためです。

後人の育成に注力しつつも、自らのキャリアを磨き続ける

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グロービスが掲げる新たなスローガンの1つは「テクノベート」(テクノロジー+イノベーション)と、ポーズを交えて紹介してくれた林さん

――仕事のやりがいは

人事の仕事は、点(採用)を線(成長)に変えることです。部門のつながりは、面へと拡張します。個々人が成長しているときは会社が成長するとき。人の成長を直接見られることがやりがいです。一方で、人事の仕事には人を評価するという難しい面もあります。そんな局面でも誠意をもって対応することが大事だと考えており、常にフェアネスという観点を持つことを心がけています。

――仕事の難しさと、それを克服するにはどのような知識と経験が必要されるか

難しいのは、担当範囲が広いことから、全体に目を配りながら管理部門としてのバランスをとりつつ、全社にとって最適な運営ができるかという点です。会社には多様な事業ラインがあり、さまざまな働き方をしているメンバーがいます。その全員にとって良い制度やシステムを創るというのは大変難しいことです。ゆえに、制度を創るだけではなく、どう運用することでなるべく多くの人が快適に働ける環境が作れるかを工夫しています。

幸い、以前の会社で人事をしていたため土地勘があったことと、また、大学院時代に学んだMBAの知識が生かせることは良かったと思います。一方、社会は常に進化・変化しているので、管理部門に関する新しい情報にアンテナを張り、時間が許す限りセミナーや勉強会、学会にも出かけています。

また、カバーする範囲が多岐にわたるため、当然一人ですべてをできるわけではありません。これも幸運なことに、各分野には大変優秀なマネジャーがおり、彼らとチームとして管理本部全体を運営しています。信頼できる仲間と協働する、という経験は、社会人になってから、また、社会人大学院時代にもずっと培ってきたものかと思います。

――今後の目標を教えてください

メンバーがいかにしっかり人事の仕事を回していけるかという環境を創るための、後人の育成と、メンバーが思い切り活躍できる土壌を創ること。また、教員としては、多くの社会人に成長のヒントを与え続けていきたいですね。
また、会社としては従来のリアルの場での学習だけでなく、オンラインでの新しい教育方法にも力を入れており、子育て中や遠隔地など、従来教育の機会が少なかった方にも、機会を提供していきたいと考えています。リアルの場とオンラインを組み合わせて今後どのようなより良い教育が提供できるかということも目標です。

 

人事としては、新しい働き方の提案を続けていきます。働く時間の柔軟性の方はすでに実現できたので、働く場所のさらなる柔軟性はこれからのチャレンジです。
今後も、実務と教育の両方ができるという自分のキャリアを生かし、自己成長していきたいですね。

――ありがとうございました

インタビューおわり

※林さんが表紙モデルを担当した、フリーマガジン版「@人事」第6号は、2017年1月16日発行予定です。

林さんの「ある日の1日のスケジュール」

6:00
起床。朝日に向かい5分間瞑想した後、シャワーを浴び朝食。急ぎのメールを確認
8:30
出勤。電車の中で日経電子版、News Picksなどを読む
9:30
オフィス到着。メール確認後、採用チームとの戦略会議
11:00
経営チームでの定期会議
13:00
女性管理職メンバーとランチ。相談に乗ったり、情報交換など
14:00
社内研修実施後の振り返りMTGと、次回の企画のブレスト
15:00
会員である経済同友会の活動としての、中学校での講演の準備
16:00
企業研修の担当者と、次回の研修の依頼内容について確認
17:00
採用面接
19:00
大学院で、リーダーシップについての講義に登壇
22:00
講義後、社会人大学院生達と懇親会
24:00
帰宅
1:00
就寝

林さんの年間スケジュール(取材時時点)

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「オールスタッフ・リトリート」とは、国内外の全スタッフが集い(4組に分かれ)、1泊2日で年初発表の全社方針に基づき戦略議論をしたり、理念の読み合わせをしたりする、合宿行事です。
「ランチギャザリング」とは数か月に一度、会社がテーマを企画しケータリングで昼食を用意し、全スタッフが集って食事と他部門のメンバーとの懇親を楽しむイベント。例として、インドの回、中華の回、地中海の回、ハロウィーン仮装で集まる回etcです(林さん)。

企業プロフィール

会社名:株式会社グロービス
所在地:東京都千代田区二番町5-1 住友不動産麹町ビル
事業内容:「ヒト」の面では、グロービス経営大学院、グロービス・エグゼクティブ・スクール、グロービス・コーポレート・エデュケーション、「カネ」の面では、グロービス・キャピタル・パートナーズによるベンチャー企業への投資、「チエ」の面では、出版や情報発信サイト/アプリ「GLOBIS知見録」などを通じて経営ノウハウの発信を行っている。
設立:1992年
社員数:388人※平成28年11月1日現在
URL:http://www.globis.co.jp

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