企画

人事のキャリア


【第6回・前編】巨大なチアリーダーとして、メンバーが200%の力を発揮できる環境を整える(グロービス・林 恭子さん)

2017.01.11

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さまざまな業種の人事担当者に、仕事のやりがいやキャリアについてインタビューする「人事のキャリア」。第6回は株式会社グロービスの林恭子さんに話を聞いた。採用や育成など人事全体の責任者であり、同社の経営会議のメンバーでもある林さん。自らが率先して行動するだけでなく、周囲に働きかけチームとしての力を発揮できる環境づくりに力を入れる。前編は、林さんが営業担当者から人事のトップに至るまでのキャリアを紐解く。(2016年10月取材、聞き手:編集部、撮影:熊谷徹)。【写真:グロービスのオフィスにて

林 恭子(はやし・きょうこ)

株式会社グロービス マネジング・ディレクター 経営管理本部 本部長
大学卒業後、米系電子機器メーカーのモトローラで、半導体、及び携帯電話端末の法人ビジネスに携わった後、ボストン・コンサルティング・グループへ。人事担当リーダーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用、能力開発、リテンション・プログラム開発、ウィメンズ・イニシアチブ・コミッティ委員等、幅広く人材マネジメントを担当する。2007年1月よりグロービスへ。人材・組織に関わる研究や教育プログラムの開発を担当した後、2014年より経営管理全般を統括。またリーダーシップ、人材マネジメント、ダイバーシティマネジメント、キャリア開発、パワーと影響力等の領域を中心に、グロービス経営大学院での講義、および、企業研修、講演などを多数務める。共著書に『【新版】グロービスMBAリーダーシップ 』(ダイヤモンド社)、『「変革型人事」入門』(労務行政)、『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』(ナカニシヤ出版)がある。経済同友会会員。組織学会、産業・組織心理学会、及び経営行動科学学会員。

人事の責任者であり経営メンバー

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林さんが表紙を飾った@人事第6号(2017/1/16発行)

――林さんの仕事内容について詳しく教えてください

マネジング・ディレクターという役職で経営会議のメンバーも務めています。担当業務は人事以外に総務、経理やIT部門を含むバックオフィス全般です。バックオフィスに関しては、最終決定をする立場にありますが、グロービスは経営チームで合議制をとっているため、経営会議が最終の意思決定の場となります。そこに、人事責任者と経営メンバーという2つの顔を持つ私が居る。私が実現したいことやチームで出したアイディアを経営会議のメンバーに伝えるということもやっています。

一般企業の人事部にあたるメンバーは10人ほどいて、大きく2つのチームに分かれています。1つが採用や育成、文化醸成など比較的ソフト面を担当している人材開発のチームで、もう1つが評価や労務・労政、各種制度設計・運用、異動などのいわゆる人事領域を扱うチームです。

――グロービスの経営戦略と人事戦略の整合性を取る林さんの存在は貴重であるものの、重責をともなう

もちろん努力しないといけませんね。ですが、どちらかと言えば私の存在は「巨大なチアリーダー」だと思っています。私の最大のミッションは、私と一緒に仕事をしてくださる皆さんが各々の力を200%発揮できる環境を整えること。一人でできることは限りがあるため、一人ひとりの良さを生かしながら、チームの力を強くしていきます。そのために必要なことは、一人ひとりをよく理解できるよう努力すること。プライベートの事情や得手不得手などの情報などもランチや日頃の対話などを通じて広く得るように心がけています。

――グロービスは、新卒採用はなく中途採用のみ。しかも優秀な人材が集まってくる。優秀がゆえにチームとして率いるのに苦労もあるのでは

確かにグロービスは中途のみ採用しているということもあり、チームとしてまとめるのが大変と思われますが、そもそもグロービスの主たる事業である「教育」は「人の可能性を信じる」ということであり、その本質的な企業理念に共鳴できる人を採用の段階で選んでいます。
人事担当者は、「人の可能性を信じられる」人の中で、さらに「人が好き」というメンバーが集まっているため、非常に関係は良好ですし、とても良いチームだと思っています。

自分がやりたいことだと見つけた人事の仕事。実践と学びを繰り返し、究める

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BCGで人事のキャリアをスタートさせた林さん

――林さんは現在、人事のトップにいますが、社会人のスタートは営業を担当していた。どのようにして人事の世界に進んだのか

モトローラに在籍中、「自分がやりたいこと、好きなことは何か」を考え抜いた結果、「人間が好き」という答えを出しました。「人」と「コミュニケーション」に関する仕事を求めて、人事の仕事を募集していたボストン・コンサルティング・グループ(BCG)へ入社しました。当時はコンサルティング会社が脚光を浴び始めていた時期で、マッキンゼーの大前研一さんや、後に上司となるBCGの堀紘一さんがメディアに出始めていました。「無形の知恵が最先端のビジネスになる。こういう会社って今までにない。面白いな」と転職を決意しました。

BCGでは、人事担当リーダーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用を皮切りに、幅広く人材マネジメントに関わりました。採用したコンサルタントが辞めないようリテンションレイトを高めることや、女性コンサルタントのキャリア形成を考えるウィメンズ・イニシアチブ・コミッティ委員なども務めていましたね。

――林さんのBCGでのキャリアは人事としてのベースをしっかりと形作った。どのようなきっかけで新たなステップを踏むことになったか

大好きなBCGで長く働き、マネジメントとしてたくさんの部下を育成していく中で、「自分がボトルネックになる」感覚があったのです。かつて会社が小さかったころは私一人で新卒から中途まで採用していましたが、それでは会社の成長に追いつけないと、部下を採用し採用チームを組成・拡大していきました。若い部下は1,2年の間でとても成長します。その様子を見ていてとてもうれしい一方、徐々に自分はこの1,2年でどれだけ成長できたのかという思いが生まれた。若い時は仕事をしているだけでいろいろなことを吸収し、学んで成長することはあります。ですが、ある程度キャリアを重ねていくと、仕事をしているだけでは成長しづらくなる。
「ここで、自分でペダルを漕がないと進んでいかない。学びを自ら行い成長する必要がある」と感じました。

自分のためだけでなく、部下のため、仕事のために修行しようと、同社に在籍したままある大学院に入学し、改めてビジネスを学びました。社会人大学院では、「大人が勉強するのはこんなにも楽しいものだ」というのが分かり、また、経営戦略など既に理解していることでも、教授との深いディスカッションを通じて、自分の考えを整理することができました。他社人材との交流を通じて、自分について社内とは違うベンチマークができたのも大学院で得た大きな財産の1つです。

大学院では博士課程の前期という形で修士を取得したので、修了後は、少し休んで今度は後期に進んでドクター論文を書こうかとも考えていました。そんなとき、縁のあるグロービスの人からのお誘いがあり、BCGを退社することになりました。

――グロービスには人事の仕事をしてほしいと誘われたのか

最初は人事ではありません。当時のグロービスは、株式会社立の経営大学院を設立したばかりでしたので、教育の根幹となるコンテンツ開発、講師開発を担当する部門に参画しました。過去のリクルーティングやMBAホルダーとのつながりや、コンサルティング業界のつながりを生かし、優秀な方々を講師にスカウトしました。 また、同時に自分が講師として学生に教える立場にもなりました。

自分が教えつつ、リクルーティングした講師の“教える技能”を上げていくためのトレーニング「ファカルティ・ディベロプメント」というものを実践していましたね。
私が教えるのはやはり「人」に関わる部分です。グロービス経営大学院は、従来のMBAで学べる「ヒト・組織」「マーケ・戦略」などに加え「志(キャリアを含む)」という領域があります。「志」系科目では、自分は何を実現するためにMBAを学ぶのか、あるいは、この企業は何を実現するため存在しているのかという、個人のキャリアや企業の経営理念に踏み込みます。この「志」と「ヒト・組織」の2領域を担当しています。

小泉純一郎政権時代の2004年に、それまで学校法人にのみ設立が認められていた大学設立(私立)が、構造改革特別区域に限り、特定非営利活動法人及び民間企業(株式会社)にも認められた。

――再び、人事の現場に戻ることになった

しばらくして、グロービスでの人事をやらないかとの声がかかったのですが、当初はかなり迷いました。人に関わることが好きな自分は、当時も、教員という立場で人や組織に関れていたわけです。でも、あらためて、今までのキャリアを振り返ると、(モトローラ、BCGで) 実務をやって、(大学院で)学び、また実務を経験して学ぶことの繰り返しなのかなと。実務の立場から行っていることを組織行動学や、心理学の観点からアカデミックに学ぶことでさらに深めることができていましたし、自分が研究・勉強してきたことをもう一度現場で試してみても良いかなって思えたんですね。それで人事の現場への復帰を決めました。

2013年に人事の責任者として管理本部に異動し、翌年に管理本部のトップとなり現在に至ります。

後編に続く

企業プロフィール

会社名:株式会社グロービス
所在地:東京都千代田区二番町5-1 住友不動産麹町ビル
事業内容:「ヒト」の面では、グロービス経営大学院、グロービス・エグゼクティブ・スクール、グロービス・コーポレート・エデュケーション、「カネ」の面では、グロービス・キャピタル・パートナーズによるベンチャー企業への投資、「チエ」の面では、出版や情報発信サイト/アプリ「GLOBIS知見録」などを通じて経営ノウハウの発信を行っている。
設立:1992年
社員数:388人※平成28年11月1日現在
URL:http://www.globis.co.jp/

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