「組織内サイレントマイノリティ」須東朋広
社員がイキイキ働けるために―【第三回】自己不安感・組織不適応感に対処するためのマインドセットの在り方
2017.01.20
以前は活躍してイキイキしていた人が「職場になじめない」「あきらめ感を漂わせている」……そんな人を職場で見かけたことは誰しもがあるのではないだろうか。またそういう人ばかりで満ち溢れた職場の存在をどう感じるだろうか?
私はそうなってしまった人達10人にインタビューした。インタビューでは、「現状の状態についてどう思うか?」を伺った。組織・職場での人間関係や仕事、キャリア、現在の心理状態のことを中心にヒアリング。中には自身のプライベートのことまで話してくれた方もいた。
そのインタビュー結果から質問票をつくり、5件法(選択肢が5段階に分かれているもの)で行った。全国の民間企業に勤務する正社員に対し、Webによる質問紙調査(アンケート)を行った。回答は無記名で行い、2307名分の回答が集まった。因子分析した結果、下記のようになった。
一つめは「自己否定感」と命名した。
・ついつい自分を否定してしまう
・今更チャレンジングな仕事に取り組むのも嫌である
・自分が行動して恥をかくのが怖い
・今の処遇に甘んじるしかない
・今までの仕事に対して受身であり、言われた仕事だけをこなしていた
・本来のポテンシャルを引き出してもらっていない
・仕事や会社への興味を失っている
・自分は居なくても差し支えのない人間である
二つめは「組織不適応感」と命名した。
・自分はどちらかというと傍流の仕事をやらされてきた
・現在、傍流の仕事をやらされている
・会社や部署、チームの中に溶け込めない
・会社行事への参加や社内ネットワークの構築に意義を感じない
企業で働いている人は、自分が組織とどう関わっていくのか常に考えている。そう考えると、「自己否定感」「組織不適応感」がそれぞれ独立しているとは考えにくい。人によっては「自己否定感」「組織不適応感」の両方が高い人もいれば、両方が低い人もいる。また、どちらかが高くて、どちらかが低いというケースも考えられる。そこでこの2つの因子をそれぞれ高低で4タイプに分け、分析し特徴を抽出する。「自己否定感」の平均因子得点は2.80、「組織不適応」は2.99であった。結果、対象者2307名のうち、
・自己否定感得点2.80未満‐組織不適応感得点2.99未満(低‐低)は673名(29.2%)
・自己否定感得点2.80以上‐組織不適応感得点2.99未満(高‐低)は235名(10.2%)
・自己否定感得点2.80未満‐組織不適応感得点2.99以上(低‐高)は217名(9.4%)
・自己否定感得点2.80以上‐組織不適応感得点2.99以上(高‐高)は1182名(51.2%)
であった。
自己否定感・組織不適応感とも高く感じている人が半分を超えている結果となった。
では、どのようにして自己否定感・組織不適応感が高まっていくのか?インタビューの中で特徴的な事例を挙げる。
「今までのように仕事を通じた成長感や刺激(ワクワクする・達成感など)が得られなくなる時期がある。しかし、会社のMBO(目標管理制度)で短期成果を設定、コミットメントする。そこでは今まで取り組んできた仕事の中で短期に成果が挙がる目標を設定することが求められる。期末評価では上司からは特にフィードバックもなく、評価の仕方も曖昧でいつもやるせない気持ちになる。目標設定通りに出来ても昇進も賞与も上がらないのは、本当に人事部のせいなのだろうか? 自分は会社・組織に役に立っているのか、そもそも期待されているのだろうか? モチベーションダウンする中、意欲の減退から職場の人達と関わるのが面倒になり、仕事依頼されても雑なアウトプット、納期遅延などから疎遠され険悪な雰囲気になる。今までに取り組んだことがある仕事しかやらない『マンネリ感』から漠然とした不安感・孤独感に襲われる。自身の仕事のやり方に固執し、チャレンジ精神を失ってどうにもならなくなる」とのことであった。
自己否定感と組織不適応感を無くすためにはどうすればいいのだろうか? 最終的には雇用されうる能力(ここでは独立転職可能性自信という因子名)を身に付けることが重要である。共分散構造分析(SEM)を行った結果を、図に示した。
組織不適応感を下げるためにはどうすればいいのか? 変化の激しい時代において、スキルの早期陳腐化によって市場価値が無くなる、そもそも必要なくなることが少なくない。よってこれといった集中的に取り組む専門領域コミットメントをなるべく決めずに、様々な能力開発を行い、多様なスキルを身につけ、必要に応じてスキル統合して専門力を高め実績を出し、雇用されうる能力として身に付け自信をもつことである。
では、自己否定感を下げるためにはどうしていくべきか?仕事向上心を高め、職場環境の変化に対応できる行動をしてリーダーシップを発揮し、マネジメント職に就任する、またマネジメント職であれば実績を挙げ、雇用されうる能力の自信をつけることである。
再びイキイキ働くためには自己不安感・組織不適応感に対処し、そのためのマインドセットの在り方を変えていかなければならない。
執筆者紹介
須東朋広(すどう・ともひろ)(一般社団法人組織内サイレントマイノリティ代表理事) 2003年、最高人事責任者の在り方を研究するため、日本CHO協会を立ち上げ事務局長として8年半務める。2011年7月からはインテリジェンスHITO総研リサーチ部主席研究員として日本的雇用システムの在り方の研究から中高年、女性躍進、障がい者雇用、転職者、正社員の雇用やキャリアについて調査研究活動を行う。組織内でなんらかの理由で声を上げられない社員が増え、マジョリティ化しつつあることに対して、2016年10月、誰もがイキイキ働き続ける社会を実現するために『一般社団法人組織内サイレントマイノリティ』を立ち上げ。
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