失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム
多様化する◯◯ハラスメント。職場ではどのように対策する?
2017.01.18
職場で起こるハラスメントがますます増加してきており、かつ多様化している。しかしながら、ハラスメントという言葉自体は認識されてはいるものの、現場では「ところでハラスメントって何?」と認識不足なことも多く、この認識の甘さが、大きな問題となっている(電通過労死事件はパワハラが原因とも言われる)。それが企業イメージを大きく損なうだけでなく、従業員同士の一体感の低下、モチベーションダウン、メンタルヘルス問題の発生、モラルリスクの発生など、企業の戦力を大きく減少させるいうことを人事として認識すべきであろう。では人事部として「ハラスメント」対策をどのように行うべきなのかを、以下で考えてみたい。
セクハラ(セクシャルハラスメント)
もっとも古く、そして代表的なハラスメントだ。従業員同士の関係で性的な関係を強要することであるが、以前は職場に性的な雑誌やポスターなどを置くことがセクハラだという認識であった。現在ではセクハラの範囲は広範囲に渡っているが、中でも気を付けたいのが、ネット上などに従業員の性的情報をアップするなどの卑劣なセクハラ行動も増えていることである。人事としては、セクシャルハラスメントに対する罰則を設けるだけでなく、なにがセクシャルハラスメントに当たるのかを明確にすることで、従業員に意識づけをすることが重要な方策である。セクシャルハラスメントをしている人間は、セクハラをしているという認識がないことも多い。
パワハラ(パワーハラスメント)
セクハラという言葉が浸透してきた頃にでてきたハラスメントだ。職権・上下関係などの序列(パワー)を背景に、部下や後輩、年下に対して、本来の業務命令の範疇を超えて人格否定や業務否定を行うことである。パワーハラスメントの問題は、被害を受けている従業員がうつなどのメンタルヘルス的な問題を抱えることも多く、結果、人事として最も解決が難しい心的疾患社員を抱えてしまうことにある。
これを未然に防ぎ、解決するには、パワーハラスメントの相談窓口を設け、軽微なうちに対応することである。これは業務命令なのか、パワーハラスメントなのかという判断を人事が率先して行うことで、従業員の信頼を相談窓口が勝ち取り、パワーハラスメントを確実に撲滅できる。
スモハラ(スモークハラスメント)
完全禁煙や分煙がすすんでいない職場で、喫煙者が非喫煙者に対して受動喫煙をさせ、たばこを吸うことを強要するなどがスモークハラスメントにあたる。また、喫煙者が勤務中に取る「喫煙休憩」の時間が非喫煙者の休憩時間より多い状態も、スモハラになる可能性がある。
これを防ぐには、総務部門と協力して喫煙スペースを設ける分煙オフィスの実現や、さらに思い切って完全禁煙環境を導入するなどが必要である。また喫煙者の喫煙によるサボタージュ時間を人事考課に導入して減点することも、実現できれば有効なスモークハラスメント対策になる。「喫煙が業務に必要なのか」という議論の機会を、一度持つことも必要であろう。
モラハラ(モラルハラスメント)
いわゆる「いじめ」であり、相手に対して言葉や態度などで人格を否定するなど、心身に損害を与え、個人・団体問わず職場の雰囲気をきわめて悪化させるハラスメントである。周囲からは「そんなことで」と思える行為でも、反復継続して行われることで、自殺に発展したり、心身障害に発展したりするなど、決して軽視してはいけない問題である。
職場でのモラルハラスメントは、子供のいじめと同様に繰り返し行われる。また隠れて進行していくため、表面化するときは、いじめられる側は精神疾患にかかっていることが多い。
人事としてこれを防ぐのは非常に難しいことであるが、パワーハラスメントと同様、相談窓口の設置が有効な解決方法である。また普段から人事が社員同士の人間関係を把握し、少しでもおかしいと感じたら、積極的にヒアリングすることができる権限を有することも必要だ。
アルハラ(アルコールハラスメント)
アルコールハラスメントは飲酒に絡むハラスメントで、一気飲みに代表される飲酒の強要や許容量以上の飲酒をさせるなど、飲めない人への配慮を欠く行動ハラスメントである。とくに忘年会・新年会シーズンに問題視されるハラスメントであるが、飲酒は業務時間外に行われることが多いため、人事が把握しづらいという一面がある。
酒の席での人間関係に困っているという人を救うためにも、忘年会・新年会シーズン前に飲酒の強要がハラスメントになることを全社通達するなどの対策が有効であろう。アルコールハラスメントという単語の意味を全社徹底するだけでも効果は大きく違う。人事担当者は、ハラスメントを受けたと認識される事象に対して適切に対処することが最も重要である。
テクハラ(テクノロジーハラスメント)
いわゆるパソコンスキルの得意不得意に発するハラスメントがテクノロジーハラスメントだ。パソコンスキルが無い者に対してスキルのある者が、「そんなこともできないんですか」といった発言をしたり、パソコンの操作を教える側が乱暴であったりすると、業務にパソコンを常に使用する環境であればあるほど、受ける側がストレスに感じることが多い。無論、パソコン操作はできた方が企業にとってはありがたいが、できない人間がストレスに感じる環境もまた問題である。
これに対応するには、パソコンスキル向上について、企業として教育する外部教育機関を活用したり、補助制度を形成したりすることなどの対策が有効だが、社風においても「誰もが苦手な分野はある」という認識を植え付けることも肝要である。パソコンが業務に直結している以上、これから増えていくハラスメントであろう。
いかがだっただろうか。ハラスメントのほんの一部を例として挙げたが、いずれも「ハラスメントは会社の成長にとって害である」ということには変わりない。人事としては、どのようにハラスメントの存在を発見し、対処するかという点が腕の見せ所になる。
執筆者紹介
田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。
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