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「ロボットの上司」は人間に優るか?―ハーバード・ビジネス・レビュー

2016.12.28

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ハーバード・ビジネス・レビュー誌より、「ロボットのマネージャーの賛否両論」と題した記事を紹介する。著者は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで教鞭を執るトーマス・チャモロ=プレムジックとゴルカン・アーメトグル。「ロボットの上司の下で働くことは、大半の人々が考えるほど突拍子もないアイデアではない」と著者らは述べ、その利点と課題について検討している。(以下、抄訳)

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マネージャー(管理職)の主なタスク――データを利用した問題評価、明敏な意思決定、チームのパフォーマンス管理、妥当な目標の設定、的確なフィードバックの提供など――において、ロボットは人間に匹敵する能力を持つだけでなく、すでにこうしたタスクを実行する上で効果的に人間の役に立っている、と著者らは言う。

あるいは、そもそも人間のマネージャーの多くが、満足に任務をこなせていないという現実もある。アプライド・サイコロジー誌に掲載された研究では、マネージャーの2人に1人が管理職として不適格とされた。その主な理由が「自身の有害あるいはマイナスの性質を抑制できない」というもの。

このような理由から、著者らは「AI(人工知能)が、平均的なマネージャーを上回るのは難しくはない」と主張し、「能力の低いマネージャーについては言うまでもない」と付け足す。

彼らは「マネージャーの自動化」の賛否両論について、以下のように検討している。

賛成意見

1. 衝突が避けられる
我々はテクノロジーに憤ることもあるが、機械と喧嘩するのは人間とそうするよりもはるかに困難だ、と著者らは指摘。たとえロボットのマネージャーにパーソナリティ(性格)を持たせたとしても、それは本物の感情ではないため、人間を相手に真剣に口論することは決してない。

我々が上司に苛立つのは、互いの考え方が衝突した場合であり、そこには感情の「往復」がある。だがロボットの場合は、常に感情はこちらから相手への一方通行なので、そこには衝突の心配はない。

2. 客観的なフィードバック
タレント・マネジメント(人材管理)は技術として確立済みであるにもかかわらず、多くのマネージャーは即興でそれを行っている。この「直感的判断」は、無意識にも意識的にもバイアス(偏見)を招く。それは一部の部下のえこひいきにつながり、残りの従業員の間では自分は不当に扱われているという対立感情が生まれる。

たとえ善意のマネージャーでも、的確なフィードバックを提供できないケースは多い。衝突や妬みを恐れたり、単に客観的な判断力に欠けていたりするためだ。ロボットは、部下のパフォーマンスやポテンシャルを正確に数値化できるので、人間よりも客観的なフィードバックを与えることができる。

3. より優れた意思決定力
情報過多の時代にあっては、データの洪水を適切に処理して、情報を知識へと変えていくタスクは人間の脳では処理しきれない。またインターネットへの依存も深刻で、我々は回線を遮断されたとたんに無知になった気分にさせられる。

意志決定の中には、複雑すぎて自動化できないものもあるが、大半の決定事項はそうではない、と著者らは言い、サイバネティクス研究のパイオニアであるノーバート・ウィーナーの台詞を引用する――「人間が明確かつ知的な方法で実行できるものごとは、すべて機械にもこなすことができる」。これはつまり、プロセスかアルゴリズムさえあれば、AIはそれを反復して完璧にすることができる、という意味である。

反対意見

1. AIもミスを犯す
アルゴリズムはすでに人間のために「エグゼクティヴ・デシジョン(重大な意思決定)」を下す存在となっている。たとえば配車アプリ「ウーバー」でどのドライバーを避けるべきか、アマゾンのショッピングサイトでどの売り手を信頼すべきか、フェイスブックで配信されるどのニュースを信用すべきか、などの判断はその一例である。

だがAIと言えども完全無欠ではない。たとえばAIは差別やバイアスを含む複合的な要因の帰結として存在する現象の中に、単純な因果関係を見出して誤った判断を下す可能性がある。例を挙げれば、上級管理職には女性が少ないことや、黒人の逮捕率が高いことを理由に、高賃金の仕事を男性に優先的に宣伝したり、白人の求職者を優先して採用してしまうかもしれない。

このケースでは、AI自身に偏見はないにもかかわず、その意思決定は性差別・人種差別的なものとなり、人間の偏見を食い止めるどころか、それを強化する結果となってしまう。

ロボットの能力は限られている
機械に創造性を持たせる試みは進展している。だがロボットが自主的に新しい事業を興したり、新製品を発明したりすることは、現時点ではとてもありえない話だ、と著者らは言う。

アルゴリズムとは、人間には不可能なスピードで大量の情報をつなげることで、既存の「目的を達成する手段」を最適化するもの。だが本物のイノベーション(革新)とは、様々な目的と手段の中に「新しいつながり」を見出すことであり、そこでは想定外の作用が生み出される。例を挙げれば、AIはどのホテルを予約すべきか推奨することはできるが、革新的な民泊サービス「AirBnB」を生み出すことはできない。

人間は人とのつながりを必要とする
ロボットのマネージャーは、部下が何らかの特別な事情(例:風邪をひいた、飼い犬が死んだ)で働きが鈍っていても、その理由を理解できない。

人間の上司でも同じ事態は起こりうるが、我々は人間相手の方が機械よりも寛容になれるし、相手からの共感も期待できる。そして複数の研究が示すとおり、人間はAIから評価や感謝を受けるよりも、別の人間からそうされることをはるかに喜ぶものだ、と著者らは指摘している。

The Pros and Cons of Robot Managers (December 12 2016)|Harvard Business Review

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