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城繁幸氏が語る、日本企業でテレワークがいまいち普及しないわけ

2016.11.22

  • ワークライフバランス
  • 働き方
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政府が働き方改革の柱の一つに掲げる“テレワーク”だが、報道によれば、省庁での導入がなかなか進んでいない状況だという。昨年度の国家公務員本省勤務者のうち、制度利用者は3%にとどまる。

政府は導入の進まない理由として端末不足やセキュリティ課題を上げているが、もちろんそんな些末な理由によるものではない。テレワーク問題を紐解けば、日本型組織の抱える構造的な課題がうっすら見えてくる。

テレワーク導入で発覚する不都合な真実

テレワークでも在宅勤務でもなんでもいいが、実際にこうした裁量の大きなワークスタイルを導入しようとすると、日本型組織はいくつかの課題に直面することになる。

まず解決せねばならないのが担当業務の明確化だ。採用時に職務内容を明確にした契約書を作成する他国と違い、日本は“正社員”という身分として採用され、いざ配属されるまでどこで何の仕事をするのか皆目見当もつかないという特殊な雇用慣行がある。

職場の中でも担当業務は曖昧で、大部屋で皆で共同作業し、手が空いたものから仕事が割り振られる式のスタイルだ。これでは家に仕事を持って帰らせようとしても、そもそも誰にどの仕事を担当させるかを明確化することから始めねばならない。

そして、次に解決せねばならない課題が成果で評価する評価制度の導入だ。日本型組織は担当業務範囲が曖昧だった分、評価基準もきわめて不透明で、個人ごとの売り上げが出せる営業マンなどを除けば、日頃の働きぶりでなんとなく評価されるのが一般的だ(これが長時間残業文化の温床でもある)。

オフィスを離れるのなら“働きぶり”や残業時間は見えなくなる。かわって、成果をきっちり評価する評価制度が不可欠となる。具体的に言えば、担当業務をしっかり割り振り、目標管理制度等を通じてしっかりミッションと追求すべき成果を共有し、評価するプロセスの構築が必要ということだ。これは結構な難作業であり、「来月からテレワーク始めろ」で済む話ではないだろう。

さらに言えば、上記2つの課題をクリアしたとしても、その先に本当に重要かつ高ハードルな課題が待ち構えている。それは「業務内容をしっかり割り振って評価する仕組みも作ったけれども、賃金制度がぜんぜんそれと釣りあっていない」という問題だ。

たとえば「ものすごく高度な業務を担当している割に、処遇的には並」という人間の存在が発覚するだろう。逆に「大したことしてないけど、年功賃金のおかげで高給取り」というオジサンも存在しているはず。

仮にオジサンの賃金を見直そうとでもしたら、オジサンは真っ赤になってこう反論するに違いない。
「自分は会社の指示で与えられた仕事をやってきただけだ。自分の高給はその年功へのご褒美だ。今になってその仕事に価値がないから賃下げするとは何事だ」

要するに、成果を評価する=賃金に手を付けるということは、「会社に与えられた仕事はなんでもこなす代わりに、年功に応じて必ず報いる」という現状の日本型雇用の根幹を否定することに必ずつながるわけだ。

逆にそこまで行かない改革はその前段階のどこかで必ず骨抜きにされているので、実効性は低いということになる。これが、テレワークやフレックス勤務といった裁量を伴うワークスタイルがなかなか日本で普及しない共通の原因であり、いつまでたっても朝の満員電車が無くならない理由でもある。

とりあえずやっておくべき処方箋

とはいえ、労働力不足はこれから深刻化する課題でもあり、働き方の効率化は避けては通れない。そこで、筆者なら、まずは上記2つのプロセス、つまり業務範囲の明確な切り分けと、きちんとした評価制度の構築をオススメする。

賃金への反映はこれから昇給する若手に限定し、45歳以上は据え置きでも構わない。代わりに若手には、配属や異動時に、本人の希望を最大限生かせるようなキャリア選択権を与えることで、しっかりと自己のキャリアに対するリスクを取らせるべきだろう。

執筆者紹介

城繁幸(じょう・しげゆき)(人事コンサルタント・作家) 1973年生まれ。東京大学法学部卒。富士通を経て2004年独立。06年よりJoe’sLabo代表を務める。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社)、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』(筑摩書房)、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』(PHP研究所)など。

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