【調査レポート】働く女性と「小一の壁」に関する市場調査(株式会社OKAN)
育児に関する勤務先の制度や支援について2割以上が「有無がわからない」と回答
2025.04.07

OKAN(東京・豊島)は、小学校低学年の子どもを持つ働く女性515名を対象に実施した、「小一の壁」に関する調査結果を発表した。
調査の結果、小学校低学年の子どもを持つ働く女性の64.5%が、「小一の壁」を感じたことが「ある」と回答。また、転育児に関する勤務先の制度や支援について、平均23.5%が「有無がわからない」と回答していたことが明らかになった。以下、リリースより。
関連記事:転職前の会社独自の介護支援制度について、全体の約6割が「制度・支援が存在しなかった」もしくは「制度・制度の有無がわからない」と回答
「望まない離職」に関する調査の実施
OKANでは、企業のリテンションマネジメント(人材定着)推進のため、「望まない離職」に繋がる恐れのある社会課題や離職理由に関する調査を定期的に実施しています。このたび介護を理由にした転職について、「制度や仕組みが整っていれば同じ会社で働き続けたかった」と感じている正社員にフォーカスした調査を実施いたしました。企業が「望まない離職」を防ぐための制度設計や環境整備を進める上での参考データとしてご活用いただくことを目的としています。
<調査サマリ>
- 小学校低学年の子どもを持つ働く女性の64.5%が、「小一の壁」を感じたことが「ある」
- 育児に関する勤務先の制度や支援について、平均23.5%が「有無がわからない」と回答
- 「小一の壁」の要因で最も課題だと感じるのは「柔軟な働き方が選択できないこと」
- 「小一の壁」に有効だと感じる施策として「休暇制度」や「柔軟な働き方」に次いで「制度を利用したいと言いやすい雰囲気・人間関係」が挙がる
働く女性と「小一の壁」に関する認知調査
- 調査主体:株式会社OKAN
- 調査方法:インターネット調査
- 調査委託先:株式会社マクロミル( https://www.macromill.com/ )
- 調査期間:2025年2月21日(金)~2025年2月24日(月)
- 調査対象:小学校低学年の子どもを持つ働く女性
- 調査人数:515名
本調査の利用について
本調査の内容を引用される際は、引用元として「株式会社OKAN」とご記載ください。
回答者属性
- 2025年2月時点で第一子が小学校低学年である
- 第一子の小学校入学「前」「後」ともに被雇用者として働いていた(雇用形態は問わない)
- 女性である
▼調査結果
「小一の壁」について
「小一の壁」という言葉を知っていますか [単一回答/n=515]
子どもの小学校入学を期に仕事と育児の両立が難しくなることを指す「小一の壁」という言葉を「知っている」と回答した人は84.7%で、「小一の壁」という言葉は小学生の子どもを持つ働く女性の間で広く認知されていることがわかります。
子どもの小学校入学を期に、仕事と育児の両立が難しくなったと感じたことがありますか [単一回答/n=515]
小学校入学を機に「仕事と育児の両立が難しくなったと感じたことがある」と回答した人は64.5%で、働く女性の過半数が「小一の壁」を感じたことがあることが明らかになりました。
子どもの小学校入学を期に、仕事と育児の両立が難しくなったと感じた時期を教えてください [単一回答/n=332]
「小一の壁」を感じた時期として最も多かったのは「入学直後」で56.0%、次いで「1年生の夏休み前後」が20.8%、「入学前」が19.9%と、入学前後〜夏休みまでの数ヶ月間で困難を感じていることがわかりました。
平日の小学校と仕事の生活リズムの違いや、夏休みなどの長期休暇によって仕事と育児の両立が難しくなることが示唆されており、企業が柔軟な働き方の推進を検討する場合はこれらの時期に合わせた支援策も重要であると考えられます。
勤務先の制度や支援について
現在の勤務先について、以下の制度や支援の有無とあなたの利用状況について教えてください [単一回答/n=515]
勤務先の制度や支援の有無については、多くの項目で「制度・支援が存在しなかった」と回答した人の割合が高い傾向にあります。特に、「テレワークの導入」「保育施設の設置運営」「育児や育児と仕事の両立に関するセミナー」「子連れ出社の実施」「メンタルヘルスの支援制度」は60%を超える人が「制度・支援が存在しなかった」と回答しています。一方で、3歳に満たない子を養育する労働者に対しては設置が義務化されている「短時間勤務制度」は、制度の存在を認知している割合が高くなっています。
制度・支援が存在する場合の利用率を見ると、「子連れ出社の実施」が最も高く74.1%、「テレワークの導入」が60.4%と続いています。一方、「育児や育児と仕事の両立に関するセミナー」「メンタルヘルスの支援制度」などは利用率が低い傾向にあります。
以下の制度を利用していない理由として最も近いものを選んでください [単一回答/n=図内参照]
前問で「制度・支援は存在していたが、利用していない」と回答した人に、利用していない理由を尋ねたところ、「育児支援に関する情報提供」「育児サービスの費用助成」など、情報提供や経済的支援に関する制度では「制度についてよく知らなかったため」という理由が比較的多く、制度の周知不足が課題として考えられます。
また、「公的な制度を上回る子の看護休暇」「テレワークの導入」「メンタルヘルスの支援制度」は、「制度が必要ではなかった」以外で「利用したいと言いづらい雰囲気・人間関係だったため」を理由に制度を利用していない人が最も多いことがわかりました。
2025年4月から改正育児・介護休業法の施行によって、企業による育児と仕事との両立支援の強化や制度の拡大が見込まれますが、企業側は制度や支援の設置だけではなく、従業員が安心して利用できるよう、わかりやすい説明やオープンで柔軟な職場環境づくりを目指することも求められます。
「小一の壁」の要因
職場において、子どもの小学校入学後の育児と仕事との両立を妨げる要因だと感じるものを全て選んでください [複数回答/n=515]
職場において、子どもの小学校入学後の育児と仕事との両立を妨げる以下の要因のうち、最も課題だと感じるものを選んでください [単一回答/n=515]
子どもの小学校入学後の育児と仕事との両立を妨げる要因については、Q6の複数回答・Q7の単一回答ともに、最も多かった回答は「柔軟な働き方が選択できないこと」で、次いで「休暇が取得しづらいこと」となりました。
「適切な情報を入手できないこと」は回答割合が低いものの、複数回答で19.2%と、働く女性の約5分の1が、情報不足が育児と仕事との両立を妨げる要因だと感じていることがわかります。
どのような理解が得られることで、子どもの小学校入学後の育児と仕事を両立しやすくなると思いますか [自由記述/n=50]
前問で「周囲の理解が得られないこと」を最も課題だと回答した人に、どのような理解が欲しいか尋ねたところ、職場全体で育児に関する知識や理解を深めることを求めているという状況が明らかになりました。
- 子供が体調を崩しやすいことを理解してもらう
- 1年生は給食が始まるのも遅く、下校が早いため、入学直後は特にやむを得ず時短勤務などにすることを理解してほしい
- 意外と小学校は帰宅時間が早かったり、保護者の出番が多いという小学生生活の内容が理解されるといい
- 親も子供の急病で休むことを申し訳なく思っているし、休んだ分頑張りたいと思っている
- 習い事の送り迎えがあってテレワークを多めに許可してもらえること
- 周囲が子育て世代への理解を持ち、仕事を分担できるようにすること
(自由回答より一部抜粋)
「小一の壁」に有効な施策について
あなたが、子どもの小学校入学後の育児と仕事との両立に有効だと感じる施策について、1位から5位まで順位をつけてください [1位から5位までを選択/n=515]
仕事と育児との両立に関わる制度のうち「小一の壁」に有効だと感じる施策を1位から5位まで選択してもらい、加重平均により順位づけしたところ、休暇制度や柔軟な働き方に関する施策が上位に挙がりました。
休暇制度や柔軟な働き方に次ぐ7位には「制度を利用したいと言いやすい雰囲気・人間関係」が挙げられています。適切な情報の入手に関わる施策の順位は低くなっていますが、約1割の人が有効な施策の上位5位以内に選択しており、軽視することはできません。
前問の選択肢以外で、小学校入学後の育児と仕事との両立に有効だと感じる制度や支援があれば教えてください [自由回答/n=137]
前問の選択肢以外で「小一の壁」に有効だと感じる施策を尋ねたところ、以下のような回答が得られました。
【休暇に関する制度や支援】
・夏休み期間に合わせた休暇
・子供の熱など証明があれば、有給のような扱いになる制度
・子供の体調不良や行事で休むことを、申し訳ない…という気持ちではなく、当たり前にできる社会になってほしい
【柔軟な働き方に関する制度や支援】
・教員や保育士、介護士などの対人関係の仕事でも、月に何日かは在宅勤務ができるなど、柔軟な働き方ができるような人員配置
・4月はリモートや、短時間勤務、または休職するくらいして慣れるまでのんびり働いていいようにして欲しい
・例えば1ヶ月だけの時短やフレックス等、年単位で設定するのではなく月単位で勤務内容を選択出来るような制度や、時間有給(有給を時間単位で取れる)
【預け先の確保に関する制度や支援】
・放課後、始業前の子どもの居場所
・どうしても休めない時の子連れ出社
・保護者が参加する授業の時だけ、中抜けができたり、子供の下校後に利用できる学童保育が職場にあれば負担が減るのではないかと思う
【経済的な制度や支援】
・時短でしか働けない人への金銭補助
・勤務時間が減ってもその分を助成金が出る制度があったらいいなと思います
・育児に関わるお休みで手当てがでるようにしてほしい。本当は子供のために休みたいが、休むと手取りが減るため半ば無理やり登校させた事が何度かあったため
【その他の制度や支援】
・制度だけではなく周りの協力も必要不可欠だと思います。制度があっても周りの方へ配慮して、引け目を感じながら仕事したり頑張りすぎてしまうママさんも見てきました。子供がいない方で代わりに働いてくださる方の支援や研修等もあると心が楽になるのかなと思います
・現場の人手が足りないので休みや時短を選択しにくい。制度や支援については思いうかばないが、人員の補充が1人でもあれば柔軟な働き方ができるのにと思う。日によっては1人でも欠員がでたら仕事が回らないので人手不足を解消してほしい
(自由回答より一部抜粋)
長期休暇や急な休校・体調不良に合わせた休暇制度の充実、子のスケジュールに合わせられる柔軟な働き方、学童保育や預かりサービスの拡充、休暇や時短による収入減少への対策など、幅広い課題に対する支援策が挙げられました。
また「頑張って子育て前のように働いていると、支援は不要という見方をされる」といった意見も見られました。家庭によって状況の異なる「育児」を企業が支援するにあたって、企業からの情報提供と面談等での情報収集などといった双方向のコミニュケーションは今後も重要になりそうです。
制度と環境の両面から「望まない離職」を生まない社会へ
今回の調査では、企業の育児支援において制度の導入が遅れている、制度があっても利用しにくいなど、小学生の子どもを持つ親のリアルな課題が浮き彫りになりました。「小一の壁」を感じている子育て世代にとって、柔軟な働き方ができない環境や休暇の不足は大きな課題となっていることがわかります。さらに、「小一の壁」の当事者だけではなく、育児に取り組む従業員をサポートする周囲の知識不足や理解不足も課題の一つと言えます。
2025年4月・10月に順次施行される改正育児・介護休業法では、仕事と育児・介護との両立強化のための企業による様々な施策が追加されています。しかし、その多くは就学前の子どもを持つ親を対象にしたものであり、多くの親が直面する「小一の壁」を原因とした「望まない離職」を防ぐためには、育児・介護休業法で定められる制度以上の取り組みが必要となります。
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概要」によると、出産・育児を理由とした離職は男性よりも女性に多い傾向がありますが、本来「小一の壁」は子どもを持つ全ての親が直面する課題です。働き盛りでもある子育て世代の離職は企業にとって大きな損失となります。企業、従業員、そして行政が一体となって、仕事と育児とを両立しやすい社会を実現するための取り組みを進めていくことが重要です。
株式会社OKAN 企業概要
株式会社OKANは「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションに、望まない離職を生まない組織づくりを支援する、リテンションマネジメントカンパニーです。
働く人を支援するサービスが溢れる社会を創造し、働く人と組織がハイジーンファクター(衛生要因)を理由に働きつづけることを諦めてしまうことがない「働きつづけられる」社会を実現することを目指しています。
そのために、組織の問題を可視化し、その解消を実践支援する意識調査・組織課題改善サービス「ハタラクカルテ®︎」と、健康な従業員の創出を支援する置き型社食®︎サービス「オフィスおかん®︎」を展開しています。
・会社名:株式会社OKAN
・代表者:代表取締役 沢木恵太(Keita Sawaki)
・住所:東京都豊島区西池袋2-41-8 IOBビル6階
・設立年月:2012年12月10日
・URL:https://okan.co.jp/
※「ハタラクカルテ」「オフィスおかん」「置き型社食」は株式会社OKANの登録商標です
【プレスリリース「【調査レポート】働く女性と『小一の壁』に関する市場調査」(PR TIMES)より|2025年3月25日・株式会社OKAN】
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