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【NTERVIEW】株式会社パートナーズ 清家良太氏


中小企業の人材獲得と定着のための戦略

2025.04.03

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中小企業の人事担当者や経営者が直面している採用の課題。特に「Z世代の採用で苦戦している」という声をよく耳にする。しかし、本当に問題はZ世代という世代の特性なのだろうか。アクセンチュア、DeNA、ビズリーチなどで人事・事業領域を経験し、現在は株式会社パートナーズのCHROのほか、起業した会社で数十社の社外人事顧問を務める清家良太氏に、採用戦略の本質と中小企業ならではの強みを生かした人材獲得のヒントについて話を聞いた。【取材・構成:編集部】

清家良太(せいけ・りょうた)

新卒で旭硝子(現・AGC)に入社し、2,000人規模の工場で総務・労務などを含む人事業務に携わる中で、「人はロジックではなくハートで動く」という信念を培う。その後、アクセンチュアで人事・組織コンサルタント、DeNAではHRビジネスパートナー、ビズリーチでは人事企画部長と事業推進室長を務めるなど、多くの一流企業の経営陣とともに組織作りや事業推進を経験。現在はパートナーズで、CHROとして人事戦略の最前線をリードしている。また、自身の会社を起業し、人事領域での新たな挑戦を実施。数十社の社外人事顧問を歴任。

目次
  1. 採用に苦戦する本当の理由は「戦略のアップデート不足」
  2. 多様化する価値観と企業文化の一致
  3. 中小企業ならではの強みを生かすには
  4. マーケティング思考が不可欠な人事の役割
  5. 長期的視点での採用投資の考え方
  6. 理念と一貫性を持った人材戦略の重要性
  7. 人材の離職と定着に関する考え方

採用に苦戦する本当の理由は「戦略のアップデート不足」

──従来の採用戦略がZ世代の採用に苦戦してしまうのは、どのような理由があると思われますか。
おそらく、昨今の中小企業の戦略戦術が、採用媒体に代表されるようなマスでの採用から進化していない可能性が一番高いと思っています。

例えば、3年前までは普通に大手のナビ媒体を使って人が採用できていた。「うちの会社に行きたいという人だけを採用できれば良い」という時代から、「自分たちの採用におけるポジショニングをどう取って、どういう母集団を集めて、どういうメッセージを出していくのか」という一般的な採用戦略をたてる必要が出てきています。

これはZ世代うんぬんの問題ではなく、今まで採用戦略というものをたてていなかったことに近いんじゃないでしょうか。結局、採用媒体に人が集まらない時代になってきているなかで、「個別最適」を重視する時代が来ています。その中でマスの戦略がはまらないことに気付けていない人事担当者が、多いことが一番の理由だと思います。

──Z世代を理由に採用が難しいと考えがちな企業にとっては、そもそもそこが問題ではないということですね。
個別最適を図れていないという前提もありますが、それ以上に自分たちの戦略・戦術をアップデートできていないことに尽きるのではないでしょうか。

──ナビ媒体への掲載は、確かに今でも掲載数が過去最高を記録するなど根強い人気はあるようです。
求人数は増えているとしても、学生のアクティブユーザー数が減っているはずなんです。実際に学生に聞いても、「就活スタートの儀式的に登録するけど、一回も開いていない」という方々がいて、これは決して少数ではないと思います。

多様化する価値観と企業文化の一致

株式会社パートナーズのCHRO清家良太氏|@人事ONLEINE

──Z世代は個々の価値観やキャリア観が異なるという点について、採用活動で具体的にどのような違いを感じていますか。
一つは「成長機会」を重視する人が増えた気がしますね。企業文化や成長機会、価値観が一致しているからという理由で企業を選ぶことが最近多くなっています。同じ価値観が続く中での「安定」が喜ばれた時代から、個人ごとに多様な価値観がある中で、その価値観を殺さずに個別にキャリアを形成していけるかどうかを問う世代になっていると思います。
これはZ世代特有の変化というよりも、情報社会の進展によって多様な価値観がより可視化され、それを尊重する姿勢が求められるようになった結果だと考えています。

──そういったことを期待させてくれる企業かどうか、実際にそうした取り組みをしているという情報を発信することも求められますね。
自そうですね。ただ、発信しているビジョンや企業文化への共感はもちろん必要ですが、それだけではなく、それが本当にその会社に浸透しているかどうかを学生が見ています。「言っているけどやってない」ということでは意味がなく、発信と実態が一致したときに、双方の未来的な価値が一緒だからという理由で会社を選ぶようになっています。もちろん、それ以上に大手企業という肩書が良いという人や給与を重視する人もいます。

私は学生に「たくさんの社員と会ってください」と伝えています。人事は企業文化のエバンジェリストである場合が多いので、(人事以外の)より多くの社員と接点を持ち、言動の一致があるかどうかを見ることが重要です。彼らは賢いので、そういった不一致は見抜きます。

中小企業ならではの強みを生かす

──戦略や戦術、考え方などをアップデートする重要性は分かりましたが、中小企業であっても採用活動で優位に働く部分はありますか。
例えば、候補者の体験を個別に設計できることです。応募者から入社までのプロセス、この候補者にはこういう体験をしてもらおうという形で、リクルーター側が起案して選考プロセスを調整する。これは大手企業では難しいことで、そういった柔軟性こそが中小企業の強さだと思います。

一斉に一次試験、二次試験という流れではなく、個人やグループに合わせて調整すると学生の反応が全然違います。「こんなに早く回答してくれるんですか?」と驚かれることもあります。
パートナーズでは意図的に面接の最中に合格を出すこともあります。また、リクルーターが「どうしてもこの人と一緒に働きたい」と感じた場合、現場の部長とも十分に議論を重ねた上で、当初の判断(不採用)を変更して採用に至ることもあります。リクルーターが一番学生を見ているので、30分や1時間の面接だけでは見切れない部分があると思っているからです。

また、個人ごとに「毎月何名採れ」というノルマを課さないことも重要です。目の前の候補者を「絶対に採用しなければ」という感覚を持つと、リクルーターの柔軟性がなくなってしまいます。ニュートラルな姿勢がとても大事です。ある意味で、キャリアカウンセラーのように候補者に接し、学生がパートナーズを良いと思ったときにグッと推せるかどうか。恣意的に「この人を何とか入れよう」としていると学生が感じとってしまうと、相談しなくなります。

中小企業が、Z世代の採用で成果を上げるためにできること

個別対応

企業の独自性や魅力の発信

Z世代は、自分にあった働き方や価値観を重視する傾向があるため、求職者一人ひとりに寄り添った採用体験を設計することが求められる。

ただし、企業側が求職者の希望に迎合するのではなく、自社の価値観や軸をしっかりと維持することも重要。そのうえで、企業の基準や条件を満たす人材には積極的にチャンスを提供することで、双方にとってより良い関係を築くことができる。

Z世代は、自社のビジョンや働く環境、企業文化の独自性に注目する。福利厚生などのハード面も魅力の一つではあるが、昨今では多くの企業が充実させており、大きな差別化にはつながりにくい。

重要なのは、制度の充実度ではなく、それを独自の視点で策定しているかという点。ここで言う独自性とは、単なるハード面の違いではなく、企業のミッション・ビジョン・バリューに基づいた経営軸の独自性を指す。

マーケティング思考が不可欠な人事の役割

株式会社パートナーズのCHRO清家良太氏|@人事ONLEINE

──中小企業が大企業と採用市場で競争するためには、どのような差別化が可能だと思われますか。
1つは、個別対応と企業の独自性をしっかり発信することが重要です。万人に当てはまるような採用施策で数を追うのではなく、ペルソナを明確に設定し、その特徴に合ったアプローチを行うことで、カルチャーマッチした採用が実現しやすくなります。
中小企業だからこそ、一人ひとりにじっくり向き合い、個別最適な形で採用活動を進めることで、結果的にピンポイントで理想的な人材を採用できるのではないでしょうか。

もう1つは、採用活動をマーケティングと同じ発想で考えるべきです。中小企業の人事担当者は、マーケティング思考をもっと持つべきだと思います。商品を売るときと同じく、採用においても「どういうポジショニングを取るか」「どういう人に魅力を感じてほしいのか」「そのためにどういうメッセージを出すか」といった視点が重要です。

──企業の独自性や魅力の発信については、具体的にどのような方法がありますか。
単なる発信の問題ではなく、どういうメッセージを出すか、どのフィールドで戦うかという定義が重要です。中小企業でも商品があり、生き残っている理由があるはずです。同じことを学生に対してもするだけです。そういう発想を人事が持てるかどうかだと思います。

──人事担当者はもっとマーケティング思考を持つべきだということですね
マーケティング思考と営業力が必要です。ターゲティングした学生を集める力、会社のビジョンを理解し体現する力が重要です。人事スキルと言うと面接での見極めを重視しがちですが、30分や1時間の面接で完璧に見極められるものではありません。むしろ、ターゲットとなる学生を集める力や、学生の意向を上げるための営業力の方が大切です。

──清家さんはどうやってマーケティング力を身につけていったのですね
特別に身につけたというより、「この状況でどうしよう」という問題意識から生まれました。
当社も以前はナビ媒体を使って採用目標の90~100%の採用を達成していましたが、ある年にいきなり20%しか採れなくなったんです。採用予算のほぼすべてをナビ媒体に使っていたのに、3月、4月の段階で目標までの進捗が20%しかないという大事件でした。

そういう状況でも、最速で、最短で動けるかどうかが重要です。予算もほぼない中で、どうもがくかを自分なりに考えた結果、戦略を変えました。今、多くの中小企業がそういう状況で考え、行動に移す時期に来ていると思います。
もちろん、すぐに成果が出るとは限りません。私たちでも、成功していない施策もあります。例えばTikTokを積極的に活用していますが、まだ成果は出ていません。それでも継続しています。一発で成功することはそうないので、多面的に試みて、PDCAを回せるかどうか。トライ&エラーに対して躊躇しないことが重要です。

長期的視点での採用投資の考え方

──中小企業の場合、たくさんの施策を投じるほどの予算がありません。
コストの使い方が重要です。ギャンブルと同じで、ダラダラ続けていると負け続けます。初年度の投資はある程度コストがかかります。ブランディングを変える、Webサイトを変える、採用メッセージを変えるなど、一定のコストは必要です。

エージェントで1人80万、90万で採ろうとするだけでは大きな変化は起こせません。例えば、初年度や次年度にマーケティング企業に投資し、2年後、3年後にリファラル採用を20%、30%増やすことで、最終的にコストを下げられます。1年ではなく、3年、5年のスパンで見ることが重要です。

損失を恐れて大きな投資や計画ができないと、結局は大損につながりやすいです。難しい問題ですが、これは経営陣の意思決定の問題です。採用費用は「いくらかけるか」ではなく、「どれくらい投資してどれくらいで回収するか」という視点で考えるべきです。

優秀な学生が1年間で会社にもたらす価値はどれくらいか、採用費用を何カ月で回収できるかを考えるべきです。本来は、各社のビジネスモデルに基づいて採用予算を決めるべきであり、「業界の相場がこれくらい」という発想は危険です。

当たり前の話ですが、自社の事業戦略に基づいた採用戦略であるべきで、採用コストに合わせて事業戦略を決めるわけではないですよね。回収を前提に考えれば、相応の採用費用はかけられるのではないでしょうか。
問題は、そうした議論を経営者とできる人事担当者がどれだけいるかということです。経営と人事の紐づけが重要になってきます。

理念と一貫性を持った人材戦略の重要性

──優秀な人材を採用できたとしても、すぐに離職しては努力が水の泡です。中小企業が優秀な人材を引き留めるための戦略について教えてください
優秀な人材を引き留めるためには、企業としての価値観や方針を明確にし、それを一貫した形で施策に落とし込むことが重要です。具体的には、採用時点で企業のビジョンや文化をしっかり伝え、評価制度や人材育成の仕組みをそのポリシーに沿って設計することで、社員が企業とのマッチ度を実感できる環境を作ることが大切です。こうした一貫性のあるアプローチが、社員の定着につながるのではないでしょうか。

例えば当社では、11か条という会社のスピリットをベースに採用、評価、配置、育成を行っています。これが最優先の憲法です。各社でそういったものが定まっているか、そして定めたことを徹底しているかが重要です。

 11か条という会社のスピリット(株式会社パートナーズ)|@人事ONLEINE出所:理念|株式会社パートナーズ

私は顧問として多くの会社と関わっていますが、事例の話はほとんど出しません。事例は「幹」に対する「枝葉」の話だからです。他社の成功事例が自社に効果があるとは限りません。重要なのは理念を徹底すること。経営、役員メンバーが率先して理念を体現することが求められます。
いろいろな施策をやりすぎると、統一感がなくなり、うまくいかなくなります。そのためにも理念はシンプルであるべきです。

──理念を体現している社員をきちんと評価することも大切ですね
ただし、理念を体現していても成果が出ていない人がいるなら、その理念自体に問題があるかもしれません。理念を体現する人が成果を出せないなら、その理念は設計が甘いということです。優秀でなくとも、人材が離れていく要因になります。

人材の離職と定着に関する考え方

株式会社パートナーズのCHRO清家良太氏|@人事ONLEINE

──優秀な人材が会社を離れていく本質的な理由は何でしょうか
成長機会の不足と人間関係が主な理由です。特にさけなければならないのは、個人の成長機会の損失です。「この会社に行っても成長できない」と思わせる会社はダメです。また、人間関係も退職理由としてよくありますが、これは経営として極力解消すべき問題です。

個人の成長機会とは、丁寧に教えることと、環境を与えることの両方です。ただ、会社と個人の価値観にズレがあることも考えられます。例えば、細かく指示を出してほしいと期待する人と、自主性を重んじる会社の場合、価値観のズレが生じます。成長機会の不足は、適切な負荷や大きな目標設定がないことも含みます。

──優秀な人材はそういった成長機会がないと簡単に離れてしまうのでしょうか
実は、本当に優秀な人材はそれほど簡単には離れないと思います。体力があって、新しいチャンスを自分で作り出せるからです。むしろ「そこそこできる人材」が離れていく傾向があります。

各社の人事戦略において、どういう人に残ってほしいのか、どういう人は離れても良いのかを定義し、それに対する施策を打つことが重要です。問題は、そうした戦略なしに勝手に人が離れている状況です。最悪なのは退職理由だけを聞いて、それに対するポリシーがない場合です。

──自社の価値観に合わない人が離れることは問題ないということですね
その通りです。各社における価値観において「優秀」かどうか、「合う」か「合わない」かということだけの問題です。ただ、私の経験では、決める力や決めたことをやり抜く力は成功に必要な特性だと思います。例えば、4年間同じアルバイトを継続できている学生には胆力があると感じます。

──ありがとうございました。

情報は2025年2月26日取材時点

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