株式会社リクルート調べ
【中小企業への転職者】1割以上の賃金が増えた割合は2019年度→2023年度で約5%上昇
2025.03.03

リクルート(東京・千代田)は、四半期に一度公表している「転職時の賃金変動状況」(※1)を分析し、中小企業(※2)への転職時に「前職と比べ賃金が1割以上増加した転職者数の割合」について発表した。
それによると、2023年度の中小企業への転職者数は、2019年度の1.68倍と、大企業(1.43倍)の増加率を上回ったほか、中小企業への転職で1割以上賃金が増えた転職者の割合の推移は、2019年度の30.1%から、2023年度は35.4%と約5%上昇したことが分かった。以下、リリースより。
発表の詳細:中小企業への転職者 前職と比べ賃金が1割以上増えた割合は2019年度比5.3pt増加(1MB)
(※1)「転職時の賃金変動状況」は、転職支援サービス『リクルートエージェント』において、“転職者の賃金は転職前後でどのように変化しているのか”という点に着目し、「前職と比べ賃金が明確に(1 割以上)増加した転職者数の割合」の経年変化を見ている調査データです。https://www.recruit.co.jp/newsroom/data/i-a009/
前職(転職前)の賃金は時間外労働等の「変動する割増賃金」を含む一方、転職後の賃金にはそれらが含まれないため、「前職と比べ賃金が 1 割以上増加した転職決定者数の割合」は実態よりも低めの値となる傾向があります。
(※2)本リリースでの『リクルートエージェント』求人データ・転職者データにおいては、従業員数 300 人未満を中小企業、300 人以上を大企業とし、調査時点での従業員数を基にデータを抽出しています。
中小企業は大企業より深刻な人手不足。2023 年度は大企業と比べ賃金が増加した転職者の割合が高い
解説:HR横断リサーチ部 HRリサーチセンター長 津田 郁
中小企業に賃上げの流れがどれだけ波及するかが、日本経済にとって重要な課題です。労働組合の中央組織・連合の 2024 年春闘の集計では、組合員数 300 人以上の大手組合の賃上げ率が 5.19%、300 人未満の中小組合では 4.45%と、大企業と中小企業との間に差が見られます。
中小企業は大企業よりも人手不足が深刻で、キャリア採用のニーズは高まっています。『リクルートエージェント』のデータを分析すると、2023 年度の中小企業への転職者数は、2019 年度の 1.68 倍と、大企業(1.43倍)の増加率を上回っています。
中小企業が求職者にいかに賃金を示しているか、同じく『リクルートエージェント』における動向を調べました。中小企業への転職で 1 割以上賃金が増えた転職者の割合の推移は、2019 年度の 30.1%から、2023 年度の 35.4%まで上昇。直近では大企業と比べて賃金が増えた転職者の割合が高くなっています。特に、事業成長を背景に民間の採用支援サービスを活用し、積極的に採用を進める中小企業は、自社の将来を左右する戦略分野の人材を確保するため、求職者に選ばれるべく魅力的な賃金を提示する傾向にあると言えます。
採用競争で劣後しないためには、定期的な賃金水準の見直しが不可欠です。他社の賃金水準と比較し、必要に応じて自社の賃金水準を見直す企業ほど、採用が進みやすくなります。もちろん、求職者が企業に求めるのは賃金だけではなく、特に地方では転勤の有無や年間休日数などの就業環境も重要な要素です。いずれにせよ、求職者のニーズを把握し、自社が提供できる価値を適切に伝えることが、採用を進める上で優位に立つ条件と言えるでしょう。
中小企業の求人数は 2019 年度比 1.48 倍。採用ニーズの高い職種で、賃金上昇が顕著な傾向に
『リクルートエージェント』における大企業の 2023 年度の求人数は、2019 年度の 1.69 倍、中小企業は 1.48倍に上った。
また、2023 年度に賃金が 1 割以上増えた転職者の割合を代表的な5つの職種別に見ると、「接客・販売・店長・コールセンター」が最も高く、40.2%に上った。ホテルなど観光関連企業への転職が目立っており、新型コロナウイルス感染症の収束後、旅行需要が高まったことを背景に、人材ニーズが高まったためとみられる。
次いで、「IT 系エンジニア」(38.9%)が続いた。生産性向上のため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で必要な IT 人材のニーズは、中小企業でも高いことがうかがえる。
最も低かったのは「機械・化学・電気エンジニア」(30.9%)だったが、転職者の 3 割以上で賃金が 1 割以上増加していた。
中小企業は大企業より人手不足が深刻。応募者と折り合わなかった最多の項目は「賃金水準」
日本銀行が公表している全国企業短期経済観測調査(短観)の雇用人員判断指数(DI)は、2024 年、大企業がマイナス 28pt で、中小企業はマイナス 37pt だった。企業規模を問わず人手不足感は強いが、とりわけ中小企業はより深刻な状況がうかがえる。
多くの企業がキャリア採用を強化しているが、応募者が求める条件と折り合わず、採用できないケースも多い。リクルートが 2024 年 3 月に行った「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査」では、中小企業と応募者の間で折り合わなかった内容として回答が最も多かったのは、「賃金水準」(45.5%)だった。
賃金・報酬制度の改革に積極的な企業は、社外の賃金水準を意識。人材獲得も進む傾向
リクルートが 2023 年 3 月に実施した「企業の人材マネジメントに関する調査 2023」では、賃金・報酬制度の変更や見直しの必要性を感じている企業は 52.3%に上る。このうち、実際に賃金・報酬制度の変更や見直しが「できている」と「ややできている」の合計は 32.7%にとどまる。
賃金・報酬制度の見直しが必要と感じる理由については、「従業員の フォーマンスを引き出すため」が最多の 57.3%。次いで、「業界や外部労働市場と照らして、競争力のある報酬水準にするため」(40.9%)が続いた。賃金・報酬制度の変更にあたり、企業内だけでなく、社外の相場や業界の水準を意識していることがうかがえる。
賃金・報酬制度に関する具体的な取り組みと、採用との関係を分析したところ、採用できている企業は、社外にも目を向けた賃金・報酬制度の見直しができている。採用できている群では「業界や外部労働市場の賃金・報酬水準をモニタリングしている」割合が 59.2%だったのに対し、採用できていない では 31.6%にとどまる。「社内外の状況に応じて、定期的に賃金・報酬水準の見直しを行っている」割合も、採用できているでは 57.6%だったのに対し、採用できていない では 31.9%だった。
調査概要
調査方法:『リクルートエージェント』求人データ・転職者データの分析
調査対象:『リクルートエージェント』での求人、『リクルートエージェント』を利用し、転職した方
有効回答数:非公表
調査実施期間:2024年12月~2025年1月
調査機関:リクルート
発表の詳細:中小企業への転職者 前職と比べ賃金が1割以上増えた割合は2019年度比5.3pt増加(1MB)
【プレスリリース「中小企業への転職者 前職と比べ賃金が1割以上増えた割合は2019年度比5.3pt増加」より|2025年2月21日・株式会社リクルート】
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