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失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム


【脱・長時間労働】定時退社をよしとしない企業風土の革新方法

2016.11.28

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日本の労働特色としてあげられる「とにかくモーレツに仕事をこなすことが美徳」という意識が崩れつつも根強く生きています。すなわちそれは、「遅くまで仕事している人ががんばっているとして評価される」「常に◯時くらいが退社時間になっている」という長時間労働状態のことを指します。

しかしながら、この状態は企業の健康状態としては好ましいものではありません。なぜかというと、まず挙げられることは時間外労働=賃金効率が悪いということであり、例えば1日10時間労働で考えた場合、1人の人間に10時間労働させると、通常労働時間8時間+時間外労働手当(125%)発生労働時間2時間となるのに対し、2人の人間にそれぞれ5時間労働させると、通常労働時間5×2=10時間となり、割り増し25%×2時間分を支払う必要がない分、後者の方が賃金効率の向上となります。賃金効率とはいかに時間外労働・深夜労働・休日労働の割り増し支払いを避けるかという効率を示します。そしてもう一つの問題は、過重労働=過労死につながること。第二の電通とならないように早急に対策が必要です。

全社の賃金効率について、これを計算式に当てはめると……、
(A社、社員100名、時給相当額を1000円、1日10時間労働と仮定)

1時間の割り増し支払いは250円
2時間で毎日500円の損失
月間20日労働で合計10,000円の損失
年間では120,000円
社員100名で、12,000,000円

このA社では年間1千万円以上の時間外労働賃金が発生しています。これはどの会社でも発生するものであり、当たり前のことですが、長時間労働をさせればさせるほど、1時間あたりの単価が増えてしまう非効率状態になるのです。

しかし、なかなか定時退社ができる状態まで改善されないのが、その次の悩みとなるのではないでしょうか。この対策として考えられるのが、次の4つです。

1.時間外労働を美徳としないことを企業トップが社是として設定する
2.時間外労働が多い人間を評価しない効率主義を導入する
3.残業時間を公表する
4.ウイーク・フレキシブルも取りいれたノー残業習慣の形成

1.時間外労働を美徳としないことを企業トップが社是として設定する

一見単純そうにみえて効果的なのが、この社是設定です。上司部下の関係でついつい長時間労働が発生する環境の改善をトップが宣言し、トップ―社員間で協力して時間外労働0(賃金効率100)を目指すことを掲げるのです。それを実現するには、時間管理を徹底して行うことも大切ですが、管理による締め付けよりも、早く帰ってもなにも批判されない、むしろ良いんだという意識付けや社風を創り出すことなどアナログ的政策のほうが、効果があることもあります。かつ長時間労働が企業風土となっている場合は、徐々に浸透させていくことが大切です。

2.時間外労働が多い人間を評価しない効率主義を導入する

「時間外労働が長い=会社に貢献している」という時間貢献主義を捨て、むしろ時間外労働をしている人間を非効率状態と断定し、評価する効率主義評価制度の導入も効果的です。「~の仕事があってつい……」という時間外労働もばっさりと切りつけ、全ての時間外労働のうち一定レベルを超えた社員の評価を下げる=賞与査定を下げることで、賃金効率を上げます。そして早く仕事を終える社員をあえて評価することで、早く帰っても遅く帰っても年収は同じなんだという意識付けをし、定時退社を促進できます。ただし気を付けたいのが、過重労働の社員にそれを強要することです。ろくに増員による時間外労働の解消や業務効率の向上教育、一人あたりの業務量削減などの施策を取らずに闇雲に「時間外労働を減らせ、とにかく減らせ」という強要をすると、社員の不満が増大するだけでなく、過労死などの大問題に発展することもあります

3.残業時間を公表する

先月の時間外労働を全員社内に公開してしまうことも、時間外時間軽減につながることがあります。「あの人はあの仕事ぶりでこの残業時間の多さは不思議だ」などの社内の噂をあえてつくることで、つきあい残業・だらだら残業など、もっとも賃金を支払いたくない時間外労働に全社で注目し、(本人の意思に関係なく結果的に)時間外労働手当目当て残業をしにくくする社風を形成します。これはかなり効果的な時間外労働の解消ファクターとなり得ます。

4.ウイーク・フレキシブルも取りいれたノー残業習慣の形成

ノー残業デー制度を導入している会社も多いですが、もっとバラエティに富んだノー残業習慣を自然と取り入れさせるものに、例えば一週間時間外労働0とするノー残業ウィークなどを導入している企業も見受けられます。人間誰でも一週間残業0となると、その習慣(社風)に慣れていくことができるようになります。また、「水曜日は帰れないほど忙しいのにノー残業デー指定はつらい」ということがないように、一週のうち1日を任意かつフレキシブルにノー残業デーとして設定する方法も考えられます。

いかがでしたでしょうか。残業を徹底的に削減することは、企業利益につながります。これを機に、長時間労働を美徳とする企業風土を徐々に変えていくことも必要になってきている時代と言えるのではないでしょうか。

執筆者紹介

田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。

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