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中小企業の働き方改革実践


「早上がり制度」で1,000時間削減・生産性向上を実現。ハタメタルワークスの働き方改革とは?

2024.10.04

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働き方改革の一環として、長時間労働の改善と生産性向上を両立させることは、中小企業にとって大きな課題である。今回、株式会社ハタメタルワークス(東大阪市)が導入した「早上がり制度」によって、実際に業績を向上させながら労働時間を削減することに成功した事例を紹介する。代表取締役の畑敬三氏に、制度導入の背景から、運営の工夫、効果までを伺った。【取材・文:@人事編集部】

プロフィール

畑 敬三(はた・けいぞう)
株式会社ハタメタルワークス 代表取締役
1975 年大阪府生まれ。関西学院大学卒業後、繊維・化成品の専門商社に就職。2006年にハタメタルワークス(旧社名:畑鉄工)に入社し、専務取締役。2015年、社長就任。

目次
    1. リーマンショックから生まれた「早上がり制度」
    2. 早上がり制度が生んだ成果は業績にとどまらず職場の人間関係にも
    3. 制度運営で直面する課題と解決策
    4. 制度導入における注意点と成功へのヒント
    5. まとめ

リーマンショックから生まれた「早上がり制度」

 畑 敬三(はた・けいぞう)氏 株式会社ハタメタルワークス 代表取締役

――「早上がり制度」の導入経緯について教えてください。
リーマンショックの影響で、仕事が3割ほど減った時期がありました。当時、社員は少ない仕事を定時までかけてゆっくり進めるようになり、ダラダラとした雰囲気が蔓延していました。そこで「これは良くない」と感じ、仕事が終われば定時に関係なく帰れるようにしようと決めたのです。これが早上がり制度の始まりでした。

導入当初、社員の反応は非常に好意的で、特に職人さんたちは、ゆっくり仕事をするのが嫌だという人が多く、早く帰れることを喜んでいました。当時は仕事量が少なかったため、午前中に仕事を終わらせ、昼食をとって帰宅する社員もいるほどで、それが、業務効率を自然と上げる結果につながったのです。

――社員の皆さんが早く仕事を終わらせるために、具体的にどのような工夫をされたのでしょうか?
特別なルールや仕組みを設けたわけではありません。社員一人ひとりが「どうすれば早く終わるか」を考え、自発的に工夫をし始めました。
例えば、作業スペースの整理や道具の配置、業務の進め方の改善といった細かい部分の積み重ねです。それが結果的に、大きな効率化につながりましたね。

整理整頓されたハタメタルワークスの工場内

早上がり制度が生んだ成果は業績にとどまらず職場の人間関係にも

――制度導入後にどのような成果が得られましたか?
まず、業務効率が大幅に向上したことで取引先が増えました。先ほど紹介した細かい積み重ねによって無駄な時間を削減できたことで、短納期の仕事にも柔軟に対応できるようになった点が大きく影響しています。

特に弊社が対応している電気関連の仕事では、銅製品の接続部分が設計の最後に決まることが多く、急な納期に対応する必要があるのです。このような短納期の仕事をこなせるようになったことが、会社の成長に大きく貢献し、制度導入前は5社だった取引先が、今では300社にまで増加しています。
また、売上も4億円から10億円へと成長し、一人当たりの就業時間も大幅に減少しました。労働時間ですと、以前は年間2,800時間働いていたのが、今では1,700時間以下になっています。

ハタメタルワークスの売上と労働時間の推移|@人事

想定していなかったこととしては、人間関係が良くなったことですね。
以前は、職人同士で仕事を分担する際、特定の人とは一緒に働きたくないという私情が絡むこともありました。しかし、早上がり制度を導入してからは「早く帰るために協力する」という共通の目標ができたことで、ライバル同士でも自然と助け合うようになったのです。特に印象的だったのは、仕事が終わらなければ自分も帰れないという意識が芽生え、社員全員が積極的に他の人の仕事を手伝うようになったことです。

弊社は現在、30代の若い社員が中心ですが、制度導入時でいうと20代の若手が、歳が40くらいも離れたベテランとしっかりとコミュニケーションをとっていました。仕事ですから当たり前といえば当たり前ですが、制度がきっかけに職場の雰囲気が変わったのは間違いないですね。

若手と打ち合わせをする畑社長(ハタメタルワークス|@人事)

制度運営で直面する課題と解決策

――制度運営での課題や今後の改善点はありますか?
早上がり制度の最大の課題は、どこまで仕事を終わらせれば早上がりできるか、その基準を決めることです。急な仕事が入ることもあるので、日々の業務状況に合わせて柔軟に対応しています。
経営者としては、できるだけ定時まで仕事をしてもらった方が良いという気持ちもありますが、早上がりのモチベーションで効率が上がるという利点が大きいため、今後も制度を改善しつつ継続していきたいと考えています。

――分かりやすい制度で、確かに社員のモチベーションや働きやすさに良い影響を与えていると思います
社員からの直接の声を聞く機会は少ないですが、家族との時間を持つために早く帰れることは、特に子育て世代の社員には大きなメリットだと思います。実際、保育園へのお迎えや家庭での時間を大切にしている社員も増えていますし、結果として、社員の定着率も高く、離職率は非常に低いです。

制度導入における注意点と成功へのヒント

 畑 敬三(はた・けいぞう)氏 株式会社ハタメタルワークス 代表取締役

――制度導入における注意点や、これから導入を考える企業に向けてのアドバイスはありますか?
早上がり制度を導入する際には、経営者がある程度の割り切りが必要です。すべてを完璧にしようとすると難しい部分もありますが、ある程度の柔軟性を持って制度を運営することが大切です。また、実際にやってみると、思った以上に社員が協力的になり、効率を上げようとする姿勢が生まれます。制度の成功は、社員のやる気次第ですが、まずは一度試してみることをお勧めします。

――今後、早上がり制度をどのように活用して会社を発展させていく予定でしょうか?
特に若い人材の獲得を重視していきたいです。早上がり制度をはじめとした働きやすい環境を整えることで、若い世代が働きたくなるような会社にしていきたいですね。また、売上が増えれば人材も増やす必要があるので、制度を柔軟に運用しながら、引き続き業務効率を高めていくことが重要だと考えています。

――最後に、同じように働き方改革を検討している企業に向けて、メッセージをお願いします。
働き方改革では、ただ労働時間を減らすだけでは効果が出ません。効率を上げることが最も大切です。社員が自発的に仕事を改善し、協力し合うことで、効率が飛躍的に向上します。自社に合った方法を見つけ、試行錯誤しながら改革を進めることが、成功への鍵だと思います。

――ありがとうございました。

まとめ

株式会社ハタメタルワークスの「早上がり制度」は、単なる労働時間短縮を超えて、社員のモチベーション向上と業務効率化を実現する成功例である。畑敬三氏が示したのは、経営者としての柔軟な考え方と、社員の自主的な努力を引き出すリーダーシップの重要性である。働き方改革を進める上で、効率の向上を重視し、社員と協力して変革を進めることが、企業の成長につながるポイントだと言える。

会社情報

株式会社ハタメタルワークスのオフィスがいかん@人事社名:株式会社ハタメタルワークス
本社所在地:大阪府東大阪市高井田16番8号
従業員数:20名
設立年:1988年10月4日
業種:金属製品製造業
事業内容:金属製品の製造業では珍しく銅加工に特化し、プレス加工やマシニング加工、ロウ付け加工技術で顧客からのさまざまな依頼に応える。主力製品は鉄道車両部品、産業用電池部品、配電盤や制御盤の部品など高品質・短納期で銅加工製品を全国展開中。
HP:https://www.hata-metal.co.jp/

※情報は2024年9月12日取材時点

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