マイナビ「若者は『管理職になりたがらない』は本当か?!今の若者にとってのキャリアとは」詳細レポート
若者の「管理職離れ」から考える、キャリアアップのニーズに応えるアプローチとは?
2024.03.08
いわゆるZ世代と呼ばれる年代の若者にいま、「管理職離れ」が起きているという。企業の人事担当者にとっては、単なる就業観の多様化だけでは片づけられないこの課題は、人材育成にとどまらない企業の成長戦略にまで影響を及ぼしかねない。
学生の「管理職離れ」の実態と理由、これからの時代に必要なアプローチなどについて、株式会社マイナビ キャリアリサーチラボ 研究員の長谷川洋介氏が解説する。
関連記事:マイナビ「2025年卒新卒採用・就職活動の展望」レポート|25年卒の内々定は早期化の見通し。企業は就活生と密なコミュニケーションを
- 目次
-
- 「管理職離れ」の実態と理由
・Z世代の印象として挙げられる「管理職離れ」
・学生にとって、キャリアアップと管理職になることは必ずしもイコールではない
・「管理職離れ」の理由は働き方に対するネガティブなイメージ
・学生が思い描く「キャリアアップ」 - 日本型雇用における「管理職のポスト不足」問題
・日本経済の成長鈍化とともに、ポスト不足問題が起きた
・管理職以外のキャリアアップの道が必要 - 「管理職離れ」と「ポスト不足」の時代に必要な3つのアプローチ
【1】管理職以外でキャリアアップ・昇給を実現する豊富なキャリアパスの提示
【2】管理職に対するネガティブなイメージの払拭
【3】管理職になりたい人のためのキャリアパスの用意
- 「管理職離れ」の実態と理由
「管理職離れ」の実態と理由
長谷川氏はまず、マイナビニュースで連載されている「Z世代と働く」という漫画の紹介を皮切りとして、Z世代に対して抱かれている「出世欲がない」「昇進に興味がない」「管理職になりたがらない」といったイメージを紹介し、その実態と理由をマイナビの調査を基に解説した。
長谷川洋介
新卒採用領域を担当。2017年中途入社。「マイナビ転職」の求人情報や採用支援ツールの制作に携わった後、現職。就職活動中の学生を対象にした調査や、就職活動生の保護者調査などを担当し、若年層の思考や世代間ギャップなどに関心を持つ。その他関心領域は、エッセンシャルワーカー、SFプロトタイピングなど。
(マイナビキャリアリサーチラボ著者詳細より)
Z世代の印象として挙げられる「管理職離れ」
アメリカのZ世代を中心に広がっているとされる「静かな退職」と呼ばれる現象も、キャリアアップや昇進を目指さない働き方を指しており、今年度就職活動を行った学生を子どもに持つ保護者を対象に行った調査の結果でも、Z世代である子どもたちから「1つの会社に勤めあげるというイメージが少ない」「出世欲がない」といった印象を受けるという回答があった。
こうした、Z世代は管理職になりたがらない、出世やキャリアアップに消極的、といういわば「管理職離れ」というイメージは、果たして本当なのか。
学生にとって、キャリアアップと管理職になることは必ずしもイコールではない
学生に対し、給与を上げていく方法として「出世して管理職になる」という方法と「働き方と仕事のレベルを上げていく」という2つの働き方があると仮定した場合に、自分の希望する働き方について最も近いものを選んでもらった。
結果として、最も多かったのが「仕事のレベルを上げつつ出世して管理職にもなりたい」という回答だったが、その割合は42.1%と、半数には届かなかった。次いで多かったのが、「仕事のレベルを上げていきたいが、管理職にはなりたくない」という回答で、38.8%と4割近くに迫った。
これらはいずれも「仕事のレベルを上げていく」という部分は共通しており、Z世代や最近の若者が向上心がないわけではなく、仕事のレベルアップを通じて給料を上げていくこと、すなわちキャリアアップを目指している。ただ、管理職になるということ自体は望んでいない学生も多く、キャリアアップをして給料を上げていくということと出世して管理職になるということが必ずしもイコールでつながっていないことが分かる。
「管理職離れ」の理由は働き方に対するネガティブなイメージ
仕事のレベルは上げていきたいが管理職にはなりたくないと回答した学生にその理由を自由記述で回答してもらった結果、管理職という働き方に対して、忙しい、業務量が多い、責任ばかり増える、仕事量と給料の釣り合いが取れていない、ワークライフバランスが取れないといったネガティブなイメージを抱いていることが伺えた。
Google検索で「管理職」と検索した際、サジェスチョンに「管理職 罰ゲーム」というワードが出ており、最近ではこのワードに関する記事や書籍も刊行されている。それ以外のサジェストワードを見ても、「なりたくない」「休日出勤」「残業」といったネガティブなイメージを連想させるワードが多く見られる。学生が管理職に抱いているネガティブなイメージも、世間一般のイメージに近いものと思われる。
学生が思い描く「キャリアアップ」
では学生が実際に思い描いているキャリアアップとはどういったイメージなのか。
「あなたにとってキャリアアップとは何ですか」という質問に対して最も近いものを1つ選んでもらった。最も多かったのが「自分の業務スキル・レベル・難易度を上げていくこと」、次いで多いのが「新しい業務領域に次々と挑戦して幅広く経験値を上げていくこと」で、「出世して管理職になること」は3番目という結果に。
ここでも学生が「キャリアアップ」という言葉に対して抱いているイメージが決して一様なものではなく多様な働き方を含んでいることが分かる。
最も多かった「自分の業務スキル・レベル・難易度を上げていくこと」と回答した理由として挙げられているのは、「自分のスキルを上げていくことで自身の市場価値を上げていく」「どんな環境や部署であっても対応可能なスキルを獲得する」「専門性の高い職業人として成長する」といったものであり、VUCAと言われる現代において、働き手として高いスキルを身につけることで自律的にキャリアを築こうとするZ世代の姿勢が見えてくる。
次に多かった「新しい業務領域に次々と挑戦して経験値を上げていくこと」を選んだ理由としては、「まず自分自身のコアとなるスキルを身につけてそれを生かしながら他のフィールドに挑戦することで全社的な広い視野を獲得したい」といった趣旨のコメントが見られた。1つのことを極めることを美徳とする観点から見れば「忍耐力がない」「飽きっぽい」といった印象を持たれかねないこの考え方も、決してそうではなく、1つのフィールドでスキル的に習熟したことを自分自身の成長と捉えてさらなる成長、持続的な成長に向けて次なるフィールドを選んでいくという姿勢が現れていると言える。
3位となった「出世して管理職になること」を選んだ理由としては、自分が獲得したスキルを部下や部下の育成・指導を通じて部下や社内に還元したいという気持ちや、出世とは周囲から得られた高評価の結果であるという受け止め方が見られ、出世自体を目的化せずに周囲から十分な信頼や評価を得られるような働き方をし、その結果として出世があるという考え方が垣間見える。
日本型雇用における「管理職のポスト不足」問題
長谷川氏はここでいったん話題を変え、日本型雇用システムが抱える「ポスト不足」の問題に言及した。
日本経済の成長鈍化とともに、ポスト不足問題が起きた
日本の高度経済成長を支えてきた日本型雇用の特徴の一つが「長期雇用慣行」である。長期雇用慣行ではポスト競争によって従業員のモチベーションを維持することが不可欠であり、高度経済成長期には企業の規模も右肩上がりに拡大していたため、従業員に対して十分なポストを用意することができた。ところが成長期を過ぎ、企業の成長が鈍化するのに加え、団塊の世代がちょうど管理職の年齢に差し掛かったことも重なって、ポストが足りなくなるという事態が発生した。
この事態に対して従業員の動機づけを維持するために生み出されたのが、ポスト増設のための「部下なし管理職」である。多くの企業が従業員のモチベーション維持のために本来であれば用意できなかったはずのポストをいわば力技で用意したということからも、出世して管理職になることが日本においてはほぼ唯一のキャリアアップの手段であったと言える。
管理職以外のキャリアアップの道が必要
学生の思い描いているイメージがキャリアアップのイメージが多岐にわたっていることを考えれば、管理職になるという道だけではZ世代の働き手たちの希望するキャリアを実現することはできない。ましてや、管理職のポストが不足する時代には、「管理職にはなりたくないがキャリアアップはしたい」という学生のニーズをかなえることが重要になってくる。
一方で管理職になりたいという学生も一定数いるので、それも決して無視できる割合ではない。ポスト不足の時代にあっても、部下あるいは後進の後輩たちの育成を通じて社会に貢献したい、あるいは評価の結果として管理職になりたいというモチベーションを持つ学生のニーズも、同時にくみ取っていく必要がある。
「管理職離れ」と「ポスト不足」の時代に必要な3つのアプローチ
ここまでの解説を踏まえ、長谷川氏はこれからの時代に必要とされる3つのアプローチを提示した。
【1】管理職以外でキャリアアップ・昇給を実現する豊富なキャリアパスの提示
1つ目に考えられるアプローチは、「管理職になる」以外でキャリアアップ・昇給を実現できる豊富なキャリアパスを提示すること。
どのようなキャリアパスがあればその企業への志望度が上がるかという質問を学生にした結果、最も多かったキャリアパスは「社内公募などにより自分のやりたいことにチャレンジできる」で45.9%だった。その他の項目としては、「管理職として出世していく」「育児や介護などライフステージに応じて職位や役職を変更できる」「リスキリングなどを通じて働きながら新しいスキルを学べる」といったキャリアパスも同じくらいの割合の回答があった。
こうした結果から考えられるアプローチとしては、社員が自分の希望するキャリアを自律的に社内で選択してキャリア構築できる社内公募制度を拡充・浸透させていくこと、リスキリング支援を通じて社員が新しいスキルを学び直す機会を提供すること、ライフステージに応じて職位や業務・責任の幅を柔軟に加減できる人事制度を導入することなどが考えられる。
【2】管理職に対するネガティブなイメージの払拭
2つ目は現役管理職世代の負担軽減により、若手が持つ管理職に対するネガティブなイメージを払拭すること。
マイナビが正社員を対象に、現在の役職と今後出世したい役職を調査した結果を見ると、「これ以上の出世を望まない」という割合が高く、実は管理職離れは現役の管理職世代でも起きていることなのではないか、むしろ現役世代の管理職離れ、管理職疲れが若い世代の管理職離れを引き起こしているのではないかとも考えられる。冒頭の学生のコメントにも、管理職になるとデメリットの方が多いと親から言われたといったものがあり、この考えを裏付ける。
現役世代の管理職疲れ管理職離れを改善して次世代の働き方にとって管理職へのネガティブなイメージを払拭していくこと。そのためには、まず現役世代の管理職の負担軽減が欠かせない。特に学生のイメージで多かった「業務量が多い」「ワークライフバランスが保てない」といった不安に対して管理職の長時間労働の是正や待遇面の改善による納得感を増していくことが重要になってくる。
また昨今話題になっている、AIによる業務負担の軽減といった方法も考えられるかも知れない。
【3】管理職になりたい人のためのキャリアパスの用意
3つ目には、管理職になりたい人にポストを用意するためにできることを検討することが考えられる。
管理職になりたいと望む学生も一定数おり、そうした学生に対してもキャリアバスを用意するために、これまで管理職の業務としてまとめられていたタスクをいくつかに分解し、タスクごとに担当を割り振って管理職の業務を分担するという考え方がある。実際にとある企業で導入されている事例を参考にすると、例えば部下の育成指導担当、業務管理担当、事業推進担当、あるいは会社の上層部との折衝・調整担当など、業務を細分化し、それぞれに対して得意な人材を割り振る。「~専門部長」のような管理職を増やしていくというもの。これはポスト不足の解消につながる可能性もある。
また、学生の志望度が上がるキャリアパスで出てきた、「ライフステージの変化に応じて自由に上り降りが可能なキャリアパス」を実現できる制度が普及すれば、結婚や出産育児、あとは介護などで一時的にキャリアのステージを一段下りて、落ち着いたら復帰するようにすれば、ワークライフバランスも維持でき、そのポストを預かる代理の人材にとっても管理職の業務を経験できて個人のスキルアップにもつながると考えられる。
関連記事:マイナビ「2025年卒新卒採用・就職活動の展望」レポート|25年卒の内々定は早期化の見通し。企業は就活生と密なコミュニケーションを
【編集部注】本記事は2月22日にマイナビが開催した、報道向け発表会の内容をもとに制作しています。記事中の画像(資料)も同日配布されたもので、無断使用はご遠慮ください。
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