「大手企業のLGBTQに関する意識・取り組み調査」Works Human Intelligence調べ
86.1%の大手企業がLGBTQへの取り組みを実施または検討中。「従業員からの要望」が推進の原動力
2023.12.25
~取り組み企業が約2年で15ポイント以上増加、一方で障壁は依然「優先順位の低さ」~
Works Human Intelligence(東京・港、以下 WHI)は12月19日、同社が提供する統合人事システム「COMPANY」のユーザーを対象に実施した「大手企業のLGBTQに関する意識・取り組み調査」の結果を発表した。調査期間は、2023年8月10日〜2023年10月6日。有効回答数は36法人。
調査結果によれば、大手企業の86.1%がLGBTQに関する取り組みを実施または検討中であり、これは過去2年で15.3ポイントの増加を示している。具体的な取り組みに焦点を当てると、「戸籍上の異なる通称名の使用」が50.0%で最も進んでいる施策であり、「ホルモン治療や性別適合手術の休暇制度」は2.8%の実施率にとどまっていた。
最も推進を後押しした要因は「従業員からの要望」で45.2%であり、社員からの要望や経営層の支援が大きな影響を与えていることが示唆された。一方、取り組みが進まない理由としては「優先順位が高くない」が半数以上を占めており、課題の優先順位の低さや具体的な対応策の不明確さが取り組みの障害となっている。以下、リリースより。
関連記事:【大手65法人調査】LGBTQに関する取り組みを実施または検討中は7割。一方で「優先度低い」が6割
本調査の背景
近年、組織のダイバーシティ&インクルージョン推進の一要素として、「LGBTQ」等と総称される性的少数者への配慮の必要性が可視化されつつあります。2020年6月には改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行され、性的指向・性自認に関するハラスメントおよび、性的指向・性自認の望まぬ暴露(アウティング)がパワーハラスメントの対象となり得ることが明記されました。
2022年11月には、性的少数者の人たちのパートナーシップ関係を公的に認める「東京都パートナーシップ宣誓制度」が開始。今年の6月には、性的少数者に対する理解を広めることを目的とした「LGBT理解増進法」が施行され、従業員のへの普及啓発・就業環境の整備・相談の機会の確保等が企業の努力義務として定められました。
そんな中で、当事者の働きやすさ向上、職場における障害の除去に向けた取り組みを行っている法人も多くあります。WHIでは、お客様からの「他社の取り組み状況を知りたい」「課題意識を共有したい」といった声を受け、2021年に大手法人の人事部門を対象に「LGBTQに関する意識・取り組み調査アンケート」を実施しました。約2年を経て、現在の取り組み状況や、最新の課題意識について改めて調査を実施しました。
- 調査結果の概要
調査結果
1.86.1%の企業がLGBTQに関する取り組みを実施または検討中(2021年から15.3ポイント増加)。
「差別禁止の明文化」「同性パートナーを福利厚生の対象に」といったLGBTQに関する15施策のうち、少なくとも1つ以上の施策を実施中または検討中と回答した企業の割合は、2021年調査では70.8%であったのに対し、2023年調査では86.1%となりました。約2年間で15.3ポイント増加しました。施策ごとに取り組み度合いの差はあるものの、全体としてLGBTQに関する取り組みは広がりつつあると見受けられます。
一方で、15施策について「いずれも検討していない」と回答した企業からは「ダイバーシティ&インクルージョン施策として女性活躍推進を少しずつ進めているが、性の多様性・LGBTQに関してはまだ検討を進められていない段階」といった回答が寄せられました。
2.実施中の施策のうち最も多いのは「戸籍上の氏名と異なる通称名の使用」、最も進まないのは「ホルモン治療や性別適合手術の際の休暇制度等」。
2023年の調査において、全15施策のうち「全社的に施策を行っている」と「一部部署/エリアにて施策を行っている」の合計割合が最も高かったのは、「戸籍上の氏名と異なる通称名の使用」で50.0%、次いで「研修、eラーニング(従業員全体向け)」で41.7%でした。
反対に、最も進んでいない施策は「ホルモン治療や性別適合手術を受ける際の休暇制度および運用上の支援」で、わずか2.8%の実施率となりました。
それぞれの施策の取り組み状況は以下の通りです。なお、15施策を「基本施策」「研修・文化形成」「相談窓口・メンタルケア」「その他」で分類しています。
基本施策
2021年調査と比較して、「全社的に施策を行っている」と回答した企業の割合は「同性パートナーやその親族を福利厚生(結婚祝金、結婚休暇等)の対象とする」では13.8%から22.2%へ8.4ポイント増加、「戸籍上の氏名と異なる通称名の使用」では29.2%から47.2%へ18.0ポイント増加しました。通称名だけでなく、本人の自認する性を別途「社内性別」として、人事システム上で管理している例もありました。この2年間で、具体的な施策の検討・実行が進んだことが窺い知れる結果となりました。
研修・文化形成
2023年から「研修、e-ラーニング」に関する項目を「従業員全体向け」と「管理職相当向け」の2つに分類して調査したところ、特に従業員全体向けについては、41.7%が「全社的に施策を行っている」と回答しました。その他の施策は、2021年調査に比べて微増しました。
相談窓口・メンタルケア
「相談窓口の設置」に関して、「全社的に施策を行っている」と回答したのは、2021年調査では24.6%であったのに対し、2023年調査では36.1%と11.5ポイント増加しました。
その他
「履歴書から性別記載欄をなくす」という項目に関して、2021年調査に比べ2023年調査では「全社的に施策を行っている」「一部部署/エリアにて施策を行っている」の合計割合が9.3%から22.2%と、12.9ポイント増加しました。
「その他」の自由記述(回答抜粋)
- BME(Business for Marriage Equality)への賛同表明。
- 取引企業との協業・社内SNSを使用したコミュニティ。
- 会社として多様性に取り組む宣言をしており、ボトムアップ型のワーキンググループ(LGBTQ、女性活躍、障がい者、人種等各テーマに沿ったグループ)を設置し活動をしている。
3.取り組み推進の後押しになった特に大きい要因は、約半数が「従業員からの要望」と回答。次いで「経営層の支援宣言」と続いた。
「その他」の自由記述(回答抜粋)
- 人権尊重の機運、人的資本経営に関する諸要請を受けての社内議論の進展。
- 立案担当者の考え。
取り組み推進の後押しになった要因として特に大きいものについて、2023年調査より「従業員からの要望」という項目を新設したところ、45.2%と最も回答割合が高い結果となりました。次いで「経営層の支援宣言」が35.5%という結果となり、ボトムアップとトップダウンの両方からの働きかけが大きな後押しになっていると見受けられます。
4.取り組みが進まない理由は、「優先順位が高くない」が半数以上。次いで「何をすればよいかわからない」が25.0%だった。
「その他」の自由記述(回答抜粋)
- 当事者からの要望がないため。
- 社会的に重要であり優先すべきテーマであるものの、他の課題が優先されている。
取り組みが進まない理由については、「優先順位が高くない」が最も多く52.8%、次いで「何をすればよいかわからない」が25.0%となりました。「従業員からの要望」が出ることによって、優先順位が高まったり、具体的な対応方針の検討が進んだりする等、施策が進まない要因の払しょくにつながっているようにも見受けられます。要望が顕在化しないからといって、当事者がいない・要望がないとはいえませんが、日頃から従業員の声を広く集める機会やしくみ、そして声をあげやすい社内文化の形成により、施策推進の後押しにもなると期待できます。
「取り組みによる自社へのメリット」についての自由記述(回答抜粋)
実際に取り組みを進めている企業に「自社へのメリット」を伺ったところ、以下の回答が得られました。
- エンゲージメント向上
- 当事者の安心感
- 職場の雰囲気改善(話題にしやすくなった)
- 当事者の応募・採用時カミングアウトの増加
- 従業員の正しい知識・理解度の向上、ALLY※の増加
- アルバイトから経営層までの意識の向上、お客様対応への拡大など
- 採用の定着
- 会社のブランディング
※LGBTQについて理解・支援する人を指す言葉
5.取り組みにあたって困っていること(自由記述)では、アウティング防止やインフラ整備に関する課題が複数挙がった。
LGBTQに関する取り組み・運用にあたって、困っていることや課題に感じていること
制度整備・運用 |
|
---|---|
情報管理 |
|
インフラ整備 |
|
理解・文化形成 |
|
対応リソース・優先順位 |
|
特にインフラの整備や制度刷新にあたっては、金銭的・人的な対応コストが大きいこともあり、経営や従業員の理解なしに進めることは難しいと思われます。カミングアウトするか否かは本人の自由意思によるものであるため、要望を上げてもらうことの難しさもありますが、何か声があがったときに対応を進められるよう、日頃の情報収集や、自社における対応方針の検討に取り組むことが重要だと考えられます。
本アンケートの実施に当たり、回答者から以下のコメントも寄せられました。
「現在、社内に向けての多様性の一環としての基礎構築がメインですが、今後、リーディングカンパニーとして社外に向けた社会的なアクションについて、重要な課題でありつつも、会社の周囲であまり聞かないため課題が表面化していないだけにも思えています。今後に向けて他社の皆さんの現状と課題、取り組み状況を知りたいです」。
WHIは、すべての人が真価を発揮できる社会の実現に向け、今後もユーザー様とともに「はたらく」にまつわる課題の解決を目指してまいります。
<調査概要>
- 調査名 :LGBTQに関する意識・取り組み調査アンケート2023
- 期間 :2023年8月10日~10月6日
- 調査機関 :自社調べ
- 対象 :WHI製品ユーザーである国内大手法人で、人事制度の設計等の担当者
- 調査方法 :Webアンケート形式
- 有効回答数:36(回答法人規模:従業員数平均約2,500名)
WHI調査レポートとは ~HR領域における大手法人の実態を調査~
当社の製品・サービスは、約1,200の日本の大手法人グループにご利用いただいており、そのほとんどが当社のユーザー会「ユーザーコミッティ」へ加入しています。オンライン会員サイトをはじめとしたユーザーコミッティのネットワークを通じて、当社では適宜、社会・経済情勢に合わせた諸課題について調査を実施。その結果を製品・サービスに反映するとともに、ユーザー法人様・行政機関・学術機関への還元を行っています。
(ユーザーコミッティについてはこちら https://www.works-hi.co.jp/service/user-committee)
WHIについて
WHIは大手企業および公共・公益法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートの他、HR関連サービスの提供を行っています。「COMPANY」は、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント等、人的資本マネジメントにまつわる業務領域を広くカバーしており、約1,200法人グループへの導入実績を持つ、ERP市場 人事・給与業務分野 シェアNo.1※の製品です。
私たちは、「人に真価を。」というコーポレートブランドのもと、経営者と従業員の両者の価値を最大化するソリューションを提供することで、すべての人が「真価」を発揮し、情熱と貢献意欲を持って「はたらく」を楽しむ社会を実現します。
※2021年度 ERP市場 – 人事・給与業務分野:ベンダー別売上金額シェア
出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2023」
- 株式会社Works Human Intelligence Webサイト https://www.works-hi.co.jp
* 会社名、製品名等はそれぞれ各社の商標または登録商標です。
* 本リリースに掲載された内容は発表日現在のものであり、予告なく変更または撤回される場合があります。また、本リリースに掲載された予測や将来の見通し等に関する情報は不確実なものであり、実際に生じる結果と異なる場合がありますので、予めご了承ください。
【プレスリリース「【大手企業のLGBTQに関する意識・取り組み調査】86.1%がLGBTQに関する取り組みを実施または検討中、推進の後押し1位は「従業員の声」」|2023年12月19日・株式会社Works Human Intelligence】
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