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人事キーパーソンインタビュー


【専門家に聞く】中小企業のテレワーク推進を阻む4つの要因と解決策

2016.11.02

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「テレワーク」とは時間と場所にとらわれない柔軟な働き方を指し、Tel(離れて)とWork(仕事)を組み合わせた造語だ。人材の確保や生産性の向上、ワーク・ライフ・バランスの実現など、テレワークには様々な効果が期待されている。政府も成長戦略の1つとして推進に力を入れているところだ。

こうした政府の施策をサポートし、企業のテレワークの普及・啓発活動をしている一般社団法人日本テレワーク協会の主席研究員、今泉千明氏(トップ画像)に企業がテレワークを推進する際のポイントを聞いた。

今泉千明(いまいずみ・ちあき)氏

一般社団法人日本テレワーク協会 主席研究員
名古屋大学大学院経済学研究科博士課程前期修了、1983年富士ゼロックス株式会社入社、サテライトオフィス勤務やモバイルワークの推進を担当し、2006年より現職。

目次
  1. 中小企業こそ、テレワークを導入するメリットがある
  2. 障壁をひとつずつ取り除こう
  3. 専門家の力を借りて、はじめの一歩を

中小企業こそ、テレワークを導入するメリットがある

2000年代に入り、ノートパソコンやタブレットの普及とともにテレワークは浸透してきた。導入した企業では、具体的な成果も現れ始めている。

例えば、営業担当者が会社の外でも仕事ができるモバイルワークを導入したところ、日報を書くために会社に戻るようなことがなくなり、取引先から直行直帰ができるようになった。その結果、残業時間が減少し、営業車のガソリン代やオフィスの電気代などのコストが削減できた。また、商談の際に取引先から聞かれる「現在の在庫状況は?」などの質問に対しても、その場で会社のサーバに入りリアルタイムの情報を伝えることができるため、商談スピードが格段に増したというケースがある。

とはいえ、会社に所属しながら週1日以上、終日在宅勤務をしている「雇用型テレワーカー」は、現在160万人、全労働者の2.7%しかいない。政府は2020年までにこれを10%以上にするという目標を掲げているが、達成までの道のりは遠い。

調査によると、資本金50億円以上の企業の導入率が44.9%であるのに対し、資本金1000万円~3000万円未満の企業は6.2%。大企業から導入が進んでいることが分かる。

日本の大部分を占める中小企業で導入が進まなければ、目標達成は難しいだろう。中小企業で導入が進まない理由として、「経営者がテレワークを福利厚生だと捉えており、そこにはパワーが割けないと感じている場合が多いんです」と今泉氏は話す。

「しかし、中小企業がいま抱えている最も大きな問題は、人材の確保、育成です。テレワークによって、育児中の女性や地方の優秀な人材を活用することができます。人材不足を解決するためにも、中小企業こそテレワークを導入するべきだと思います」(今泉氏)

ある建設業の企業はテレワークを導入し、採用募集の際にそのことを明記した。それが魅力となり、1人の技術者の募集に対して約600人の応募があったという。また、大手ソフトウェア開発会社では、離職率が27%から4%にまで下がった。

障壁をひとつずつ取り除こう

どうすれば、テレワークをスムーズに導入できるのだろうか。テレワークの浸透を阻む要因と解決策を1つずつ解説してもらった。

要因1・導入コストが掛かる→補助金を活用できる

企業の経営者がまず心配するのがコストの問題だ。初期投資に多くの費用が掛かると思っている人も多いが、実際には初期のシステム導入費用はそこまで高くない。

テレワークのためには、普段会社で使っているサーバに自宅など会社以外の場所からアクセスする仕組みが必要だ。一般的な方法は「リモートデスクトップ」。自宅のパソコンから認証サーバを通して会社で使っているデスクトップに入れる仕組みで、そこで作業したデータは会社のパソコンに上書きされる。使いたいパソコンにUSBのキーを差し込むだけで起動でき、利用料金は月に1台1万5000円程度だという。

「政府の助成制度があり、中小企業には導入コストに関して最大150万円、1人あたり15万円まで補助金が出ます。このような制度を積極的に活用することで、導入のハードルは下がります」(今泉氏)

要因2・情報漏えいへの不安→シンクライアントシステムを活用

社内のデータや機密情報が洩れるなどコンプライアンス上の懸念に対しては、「リモートデスクトップは会社にあるパソコン上で作業はできても、手元のパソコンにはダウンロードはできない仕組みになっているので、そこから情報が洩れる可能性は非常に低くなっています」と今泉氏。最初に仕組みを整えておくことでコンプライアンス上の問題はクリアできる。

要因3・在宅で働く社員の労務管理が煩雑→報・連・相を厚くし、むしろ生産性アップ

在宅勤務をしている社員の労務管理や評価をどうすればいいのかについては、「労働時間については、基本的に今は在宅勤務といっても、週に1回程度です。トライアル期間であれば、ほとんどの場合、現状の就業規則を変更する必要はありません。つまり、終日出張などと変わらない扱いです。ただし本格導入時にはテレワーク勤務規程を作成することが望まれます」と今泉氏。

マネジメントに関しては、「今日どんな仕事をするのか、始める前に上司に報告し、終了時に業務内容を報告することが多いです。どうしても不安が残る場合は、社員が見ている画面をランダムに何回か画像で残せる仕組みもあります。もしネットサーフィンなどをしてサボっていたらすぐに分かりますよね(笑)。でも、基本的には、離れて仕事をする社員はサボっていると思われたくないので、積極的に報告しようとします。結果、社内で仕事をしていた時よりも生産性が上がったという話をよく聞きます」(今泉氏)

要因4・中間管理職の反発→トップが強い意志で推進を

「浸透しない理由としてかなり多い」と今泉氏が話すのが、中間管理職の反対だ。

「日本の会社では、“おいちょっと”の文化が根強くあります。目の前の部下をおいちょっとと呼び止め、口頭で指示をする。これに慣れているマネージャーは、目の前から部下がいなくなることに強い不安を感じます。私たちはこの層を『粘土層』と呼んでいるのですが、テレワークを浸透させようとして上からいくら水を注いでも、この粘土層が立ちはだかり、下まで浸透していかないのです。この場合は、トップがテレワークは経営戦略であることを肝に銘じ、強い意思で説得して推進するしかありません。

例えばカルビーの松本会長は、反対した社員に対して『反対なら、テレワークを導入していない会社に移ればいい』と話したと言われています。それほど強い意思で推し進めなければ、浸透しないのです。

また、中間管理職からテレワークを始めるのも有効でしょう。自分が離れた場所で仕事をすると、部下にメールなどで丁寧に指示をする必要が出てきます。そうすると、これまでより業務の目的や進め方が明確になって、手戻りがなくなり効率がアップします」(今泉氏)

専門家の力を借りて、はじめの一歩を

労働力確保において有効な手段であるテレワーク。導入の際は、日本テレワーク協会をはじめ、社会保険労務士など、専門家と一緒に進めるとスムーズだ。

「我々は月に100社くらいの相談を受けています。国の事業の一環なので、何度でも相談は無料です。案ずるより産むが易し。実際にやってみると、そんなに難しくないことが分かっていただけると思います」と今泉氏は話す。

時代や環境の変化に対応して、新しい働き方を取り入れることで、人も企業も成長していけるのではないだろうか。

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