コラム

失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム


3つのステージで考える、自社がブラック企業と言われないための対策

2016.10.26

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ブラック企業に対する世間の風当たりが強くなっています。よく経営者の方が誤解しているのが、「ブラック企業=厚生労働省から企業名公表されたところ」というものです。厚生労働省から企業名公表されるという事態に陥っている企業は、ブラック企業のほんの一部に過ぎず、あくまで厚生労働省が考えている基準である「労働基準法等の法令違反を犯し、数度の是正勧告に従わない」というもののみです。世間一般の考えるブラック企業の基準や範囲とはまったく異なるものといっても過言ではありません。

ネットの普及でブラック企業が白日のもとに

世間一般でのブラック企業の定義は見解がいろいろと分かれますが、一番顕著にブラック企業と世間から認められる要因は、劣悪な労働環境を受け入れることを労働者に強いており、それがインターネットなど世間の情報網にあがってしまっていることではないでしょうか。1世代前までは、たとえ劣悪な労働環境であったとしても、「それを世間に知られることはなかった=情報が遮断されていた」のですが、インターネットの普及率・認知率がほぼ100%となったこの時代では、ブラック企業であることはすぐにネットに上がり、以下のような経営問題が発生します。

採用活動への影響

まず、採用活動への影響です。どのような企業でも優秀な人材を採用することを望んでいますが、ブラック企業と認知された瞬間に、応募者のレベルが極端に低下します。いままで採用できていた人数・人材の質が確保できなくなり、企業の収支活動に悪影響を及ぼします。

既存社員への影響

次に既存社員への影響です。劣悪な労働環境であったとしても耐えていた既存社員が、自社がブラック企業と認知されると、「やはりそうか」「転職のよいキッカケだ」と他社に流出していきます。その欠員補充が前述した低レベル人材となるのですから、まさしく負のスパイラルです。

取引先との関係悪化

最後に大問題なのが、取引先との関係悪化です。逆の立場で取引先を選べるとしたら、ブラック企業と好き好んで取引する企業がいるでしょうか。まったくいないと思われます。実際にいままで取引できていた取引先から「おたくはブラック企業だとネットで評判だよ。これを機に取引を停止(縮小)したいと思う」と言われる例も後を絶ちません。その結果、優良な取引先に見放され(あるいは新規取引が獲得できない)、既存社員からも就職希望者からも見放されている状態が簡単にできあがるのです。企業にとっては死を意味します。

ブラック企業、3つのステージ

ではどのような状態が、ブラック企業となる段階と言えるのでしょうか。
初期の初期としては、従業員が「うちの会社はブラック」と思い始めたら、ブラック企業化が水面下で進んでいるといえる段階にあります。それほどまでに会社のブラック化というものは、がん細胞のように企業の土台を崩しはじめるものなのです。がんにもステージがあるように、ブラック企業のレベルにもステージがあります。

ステージ1:従業員の士気が下がっている状態を感じている。
ステージ2:会社がブラックであることの情報が世間やネットに上がりはじめている。
ステージ3:社会(業界・地域など)を代表するブラック企業と完全に認知されている。

このステージ1、2の状態では対処法はありますが、ステージ3ではもはや末期であり、対処法はありません。ではステージ3になる前に対処するには、どのようにしたらよいのでしょうか。

ステージ1の場合

ステージ1の場合、社員との意思疎通が図れていないのが原因ということがよくあります。社員と経営陣(上司・部下・同僚と置き換えても良い)の温度差があるため、情報交換がおろそかであり、社員は報告/連絡/相談/提案/意見が上に上がりません。逆に経営陣(上司)の考えも下に降りてこない状態にあると、各種の不満を伝える機会が無く、本人の労働意欲が落ちるだけでなく、不満を外部に漏らして発散しようとします。そしてネットのサイトや第三者に不満や企業の内情を暴露しはじめることになります。

それを防ぐためには、不満だけでもよいので社員の言葉を聴く機会をできるだけ多く設けることです。不満を伝える場があるだけで不満が消えることもあり、さらにその不満の内容に対処することが本当に企業活動にとって有益と判断されるなら、経営陣から環境を変える努力を惜しまないことです。

ステージ2の場合

ステージ2になると、上記の段階を超えているということですが、例えばネット掲示板に自社の内部関係者でしか知り得ない自社の労働環境等、うわさなどの情報が書き込まれはじめたときに以下のような反応をする経営者がいます。

「書き込んだ犯人さがしをして処罰する。あるいは処罰をしたい意欲のみ強い。労働環境を漏らすことは企業秘密の漏洩だと考えている」

この反応は非常に愚かです。労働環境情報は営業上の企業秘密にあたらないケースが大半です。労働環境の改善もせずに、犯人を捜すことだけにやっきになり、意固地になり、社員との関係を更に悪化させてしまい、更に情報が流出することです。ワンマン経営や独裁経営の会社が陥りやすいのが、この「犯人捜し」に没頭して本末転倒になることです。ではどのようにしたらよいのでしょうか。

答えは一つです。すなわち「書き込みは社員の生の声と思って対処していく」ことが必要なのです。確かにネットに書き込むことは好ましい行為ではありません。しかしながら不満のはけ口がネット等の外部にしかなかったことを反省して、会社を変革させることは経営陣にしかできないことなのです。

経営陣(上司)に直接言える環境づくりを

いかがでしたでしょうか。今回はネット等に主眼を置きましたが、ブラック企業といわれないためには、その元となる情報=悪評をいう相手はネット掲示板や第三者ではなく、「経営陣(上司等でも可)」である環境作りが必要といえるでしょう。簡単なことなのですが、ほとんどの企業ではできていないのが現実です。

執筆者紹介

田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。

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