バックオフィスDX時代の旗手に聞く
マネーフォワードのAI活用を加速させるChatGPTの魅力とは
2023.10.16
ChatGPTはOpenAI社によって開発された生成系AIです。大量に蓄積されたテキストデータに基づいてユーザーからの質問やプロンプトに対して適切な回答をしてくれます。
その回答機能をHR領域のサービスにも取り入れ、人事労務業務の効率化を図ろうとする動きが活発化しています。ChatGPTをバックオフィス系の製品に導入すると、製品の機能をうまく使いこなせない・そもそもバックオフィス業務に関する深い知識がない、といったユーザーの悩みの解消に役立つためです。
2023年5月23日、マネーフォワードは「マネーフォワード クラウド給与*1」にChatGPTを用いた「AI提案」機能を実装しました。AI提案機能とは、クラウド給与のカスタム計算式*2を用いる際に、どんな計算がしたいかを日本語で打ち込むことで、計算式を提案してくれるものです。この機能は、給与に関する計算式を組み立てられないユーザーのサポートができます。マネーフォワードは、このAI提案機能を皮切りに、ChatGPTをはじめとしたAIを積極的に製品に活用していく方針です。
この記事では、同社がChatGPTを用いたカスタム計算式のAI提案を開発した狙いや経理担当者がAIによる効率化にChatGPTを活用するメリット、マネーフォワードのAI活用戦略の展望などについて、マネーフォワードビジネスカンパニーのカンパニー執行役員兼カンパニーCPO杉田圭(すぎた・けい)さんにお聞きしました。【2023年9月13日取材。聞き手:遠藤宇宙、撮影:加藤武】
*1 マネーフォワード クラウド給与:給与計算から振込、給与明細の配布までオンラインで完結できるマネーフォワードの給与計算ソフト
*2 カスタム計算式:ユーザーが自由度高く計算式を組んで複雑な給与計算を行える機能
プロフィール
杉田圭(すぎた・けい)
独立系ソフトウェアハウスに勤務後、個人事業主として立ち上げた事業を法人化。2009年にパーソルプロセス&テクノロジーに入社し、小売流通ソリューション部部長、兼サービス開発部の部長(プロダクト責任者)を経て、2018年7月にマネーフォワード入社。現在はマネーフォワード ビジネスカンパニーの カンパニー執行役員兼カンパニーCPO(SMB領域)に従事。
- 目次
-
- 誰でも簡単に計算式を立てられることを目指したAI提案
―カスタム計算式の「AI提案」で実現したかったことを教えてください
―ChatGPTを活用した機能であるAI提案を開発する際にこだわったポイントを教えてください - ChatGPTを用いた開発で「いつでも頼れる気軽な相談先」を目指す
―ユーザーのどんな課題をChatGPTによって解決できますか?
―ChatGPTを活用した機能の開発によって目指していることはなんですか? - 企業の成長をサポートするマネーフォワードのAI活用戦略
―ChatGPTを含むGenerative AIをこれからどのように製品へ活用する予定ですか?
―そのような機能の開発にChatGPTと専用AIのどちらも用いているとお聞きしましたが、どのように使い分けていますか?
―AI開発におけるマネーフォワードの強みを教えてください - 【記者の目】ユーザーフォーカスを実現する開発体制でさらに便利になるマネーフォワード製品
- 給与計算のできない・面倒くさいをなくすクラウド給与の「AI提案」
- 誰でも簡単に計算式を立てられることを目指したAI提案
誰でも簡単に計算式を立てられることを目指したAI提案
―カスタム計算式の「AI提案」で実現したかったことを教えてください
Excel関数の知識がないユーザーが、日本語だけで関数を設定できることをAI提案では目指しました。カスタム計算式はROUNDUPやROUNDDOWNなどのExcel関数を自由に組み合わせて、自社に合った計算式を柔軟に立てられます。一方で、関数の知識がないことでカスタム計算式を使いたいのに、難しくて計算式が立てられないユーザーも多くいました。
AI提案機能により、実現したい計算式の内容を日本語で入力することで、複雑な計算式の大枠をAIが提示してくれます。その結果、Excelに関するユーザーの知識が十分でなくとも、関数の設定が可能になりました。
さらに、AI提案はユーザーが1から計算式を組み立てる必要性をなくしています。そのため、Excelを使いこなせている人にとっても手間の削減や時間の短縮といった面で利便性を感じていただいております。
―ChatGPTを活用した機能であるAI提案を開発する際にこだわったポイントを教えてください
プロンプトを機能の中に大量に蓄積させて、回答の精度をできるだけ高めたことです。AI提案を開発した際、自社のエンジニアが、実際に想定される膨大な数の指示(プロンプト)を機能の中に組み込みました。
ChatGPTを含むGenerative AI(生成AI)は「新卒で入社したばかりの社員と同様である」、とよく言われます。つまり、的確に指示を与えればそれなりの回答をしてくれますが、指示が曖昧であったり、分かりにくかったりすれば正確な回答は得られません。しかし、当然ですが必要な計算式や指示の仕方はユーザーによって異なります。弊社はどんな指示を受けても、ユーザーの意図を汲んだ正確な式を提案できるような精度を目指して開発しました。
もちろん、リリース後の現在もユーザーの利用状況を確認しながらアップデートを繰り返しており、常に精度の向上を図っています。
ただし、どれだけ精度を高めたとしても、ChatGPTは技術的な特性上、精度が100%にはなりません。あくまで「提案」であって常に正しい計算式を提供できるわけではないのです。
そのため、AI提案では“提案内容を人間が確認する必要があることが伝わるUX設計”にもこだわりました。具体的には、AIから提案されたものをユーザーが確認したうえで式として反映する1ステップを挟んでいます。そうすることで、自然な流れで生成結果を確認していただくことが可能です【下画像参照】。
▼AI提案機能の生成結果をユーザーに確認させるために表示する1ステップ
ChatGPTを用いた開発で「いつでも頼れる気軽な相談先」を目指す
―ユーザーのどんな課題をChatGPTによって解決できますか?
社内での相談先がない企業の悩みを、ChatGPTに気軽に質問いただくことで解決できるようになります。ChatGPTは蓄積された膨大な質問やプロンプトをもとに回答するため、それぞれのユーザーに適したサポートの提供が可能です。適切な回答を得られることで、知識の有無にかかわらず製品を使いこなしていただけます。
大企業であれば相談先やマニュアルの整備が進んでいるため、給与の正しい計算方法や関数の設定について悩むことは少ないかもしれません。しかし、中小規模の企業は社内に相談先がなかったり、マニュアルの整備が進んでいなかったりすることで、業務が滞ってしまう場合が多いでしょう。そのような業務上の課題を解決する賢くて気軽な相談役としてChatGPTは役立ちます。
―ChatGPTを活用した機能の開発によって目指していることはなんですか?
私たちがChatGPTを含むGenerative AIの活用によって最終的に実現したいのは、業務上トータルで「いつでも頼れる相談先」となれるプロダクトの提供です。AI提案はAI活用サービスの第一歩としてリリースしていますが、AI提案だけでは「業務上トータルでいつでも頼れる相談先」を完全に実現できているとはいえません。
人間にとって手間がかかる作業の効率化や専門知識を要する判断のサポートなどの観点から、AIを活用できる場面はまだまだ多いことが分かるでしょう。私たちはそれらの場面に役立てるように、AIを活用したさまざまな機能の企画・開発を同時進行で迅速に行っています。
今後の機能開発や追加によって、バックオフィス業務を行うユーザーの役に立てるポイントを増やしていき、バックオフィスのあらゆる業務において「いつでも頼れる相談先」の実現を目指します。
企業の成長をサポートするマネーフォワードのAI活用戦略
―ChatGPTを含むGenerative AIをこれからどのように製品へ活用する予定ですか?
主に4つの観点でGenerative AIを積極的に製品に活用する予定です。
▼活用予定の観点
【1】情報を集め、ただしく処理する
(計算式をつくる、設定を簡略化する、データインプットの補助をする)
【2】現状を可視化する
(レポートなどを作成し可視化)
【3】未来を予測する
(現在の数値傾向から未来の数値を予測)
【4】予測情報を活用し、提案をおこなう
【1】~【4】の観点は、人間が仕事をするときにも必然的に行う流れだと思っています。必要なデータをインプットし、そのインプットを集計してレポートのような形で可視化する。作成したレポートの数値や傾向を参考に未来を予測したうえで提案を行う、というものです。その流れから必然的に【1】、【2】、【3】、【4】の順番で取り組んでいく必要があります。
これらの観点から【1】、【2】で企業の業務を効率化するお手伝いをしつつ、【3】、【4】で企業の未来を予測することで未知の領域へ到達した際の的確なサポートを行えるような製品の開発を目指します。これらの製品を使用いただくことで、ユーザーの企業がどんどん成長できる形を作れれば良いと思っています。
―そのような機能の開発にChatGPTと専用AIのどちらも用いているとお聞きしましたが、どのように使い分けていますか?
マネーフォワードは、精度が高く便利な機能をユーザーにスピード感をもって届けたいと考えております。その背景もあり、スピード感をもって機能を提供したいものはChatGPT、専門的な内容であり提供価値をじっくり高めたいものは自社の専用AI、というように使い分ける予定です。ChatGPTをAI開発に活用したことにより、スピード感をもった機能と、精度の高い機能の提供の両立が可能になりました。
―AI開発におけるマネーフォワードの強みを教えてください
マネーフォワードが掲げる強みは、「テクノロジードリブン」と「ニーズドリブン」の両輪で製品開発プロセスの実施や組織体制の編成を行っていることです。
テクノロジードリブンのみで開発を進めてしまった場合、技術活用によってさまざまな機能の提供が可能になりますが、ユーザーに必要でないものをどんどん作ってしまう点がデメリットです。しかし、テクノロジーの面から機能を考えられることで今まで無理だと思っていたことが一気に解決できるという側面もあります。
一方、ユーザー中心のニーズドリブンのみで進めた場合、開発する機能はニーズをもとにしているので、一見必要とされる機能を開発できる良い方法に思えます。しかし、革新的な形でユーザーの課題を大きく解決できたり、自社の独自性は出しづらかったりする点がデメリットです。
そのため、大切なのは「テクノロジードリブン」と「ニーズドリブン」の両輪のバランスを取りながら開発を進めることです。ただ、最先端の技術でできることの学習と、ユーザーが抱えている課題やニーズに関しての理解の両立を、開発担当者のみが行うのは現実的ではありません。
その課題を解決するために、自社では両輪を成立させられるような組織体制を作っています。実際にAI活用では、「ニーズドリブン」を担うプロダクトマネージャー、「テクノロジードリブン」を担うMoney Forward Lab・プロダクトAIソリューション部・AI推進部というように組織が分かれています。
プロダクトマネージャーチームはユーザーの課題を「ニーズドリブン」の視点で研究する組織です。一方で、Money Forward Labは最先端の技術研究、プロダクトAIソリューション部はAI活用の可能性の模索、AI推進部はAIの提供価値を高めるための自社AI開発をそれぞれ「テクノロジードリブン」の視点で行う組織です。これらの各組織同士が連携しながら、「テクノロジードリブン」と「ニーズドリブン」の両輪のバランスを取りつつ開発しています。
※情報は取材時点
【記者の目】ユーザーフォーカスを実現する開発体制でさらに便利になるマネーフォワード製品
これからもマネーフォワードはAIを活用した機能の開発を積極的に行うことで、製品はユーザーにとってさらに便利なものとなるでしょう。ChatGPTを開発に活用することで圧倒的な開発スピードで続々と新機能が提供されることも期待できます。
マネーフォワードの行動指針の1つに「ユーザーフォーカス(User Focus)」があります。ユーザーフォーカスは、ユーザーの本質的な課題を理解し、ユーザーの期待や想像を超えた価値を提供する、といったものです。このことから、マネーフォワードの開発の根底にあるのはユーザーへの熱い思いであるように感じました。
そのマネーフォワードの熱い思いを実現しているのは、ニーズドリブンとテクノロジードリブンの両輪での開発体制です。その2つが私たちの想像を超えつつ、私たちが欲しかったと感じる斬新な機能の提供を可能にしています。
ユーザーへの熱い思いと高い技術力を持ちつつ、圧倒的なスピード感で私たちの課題を解決する機能を提供するマネーフォワード。今後、開発されるであろう新機能やサービスがどれほどの便利さを私たちに与えてくれるのか、期待せずにはいられません。【遠藤宇宙】
関連記事:『マネーフォワード クラウド』、 ChatGPT API利用の第一弾として、『マネーフォワード クラウド給与』で新機能を提供開始
給与計算のできない・面倒くさいをなくすクラウド給与の「AI提案」
記事内で紹介したマネーフォワードのAI提案は、同社の製品である「マネーフォワード クラウド給与」に内蔵されている機能です。カスタム計算式を用いる際、ユーザーがどんな計算がしたいかを日本語で打ち込むとAIが適切な計算式を提案してくれます。
- Excel関数の計算ができず、計算式が立てられない
- 給与計算で関数を用いる際に式を1から立てる手間をなくしたい
このような課題を抱えている方は、ぜひ一度クラウド給与のAI提案を使ってみてください。面倒な手計算業務がなくなることで、業務の効率化が可能になります。
マネーフォワード クラウド給与の製品情報
●クラウド給与についての詳細を確認する
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会社情報
株式会社マネーフォワード
本社:〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-21 msb Tamachi 田町ステーションタワーS 21F
代表:代表取締役社長CEO 辻 庸介
設立:2012年5月
事業内容:PFMサービスおよびクラウドサービスの開発・提供
HP:https://corp.moneyforward.com/
【企画・制作:@人事編集部広告制作部】
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