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「人的資本経営」の実践のポイント 第2回 


人事部門の役割が変化している――「管理」から「戦略策定・推進」へ

2023.07.25

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人事部の役割、人事部への期待がどのように変化しているのか

近年、「人的資本経営」が注目を集めています。これは、人材を「資本」と捉え、人材の価値を最大限に引き出すことで中長期的に企業価値を向上させていこうとする経営のあり方を指します。

本連載では、人的資本経営の実践のポイントとして、「人的資本の情報開示」「人事部の役割変化」「ミドルマネジメントの再定義」「マネジャーのリスキリング」などのキーワードに注目し、4回にわたってお伝えします。

前回は、「人的資本の情報開示」について、企業の現状や開示情報の種類、日立製作所と三井化学グループの事例などをご紹介しました。
第2回目となる今回は、人事部の役割・人事部への期待がどのように変わっているかについて、転職市場動向のデータも交えてお伝えします。

参考:第1回 人的資本の「情報開示」のポイント――2つの軸・4つの観点で考える

解説 リクルート HR横断リサーチ推進部 マネジャー/研究員 津田 郁

リクルート HR横断リサーチ推進部 マネジャー/研究員 津田 郁氏2011年リクルート海外法人(中国)入社。グローバル採用事業『WORK IN JAPAN』のマネジャー、リクルートワークス研究所研究員などを経て2021年より現職。 現在は労働市場に関するリサーチ業務に従事。専門領域は人的資本経営、リーダーシップ、人材マネジメントなどの組織論全般。経営学修士。

目次
  1. 人事関連職の求人件数・転職決定者数が急増
  2. 人事部の役割を再考する
  3. 異職種から人事職へ。固定観念にとらわれない視点・発想に期待

人事関連職の求人件数・転職決定者数が急増

人的資本経営を実践していくためには、第1回でお伝えした「情報開示」とともに、「投資戦略」を展開していく必要があります。人的資本の投資戦略の策定・遂行にあたっては、当然ながら人事部門が主体となり、企業人事への期待は高まるばかりです。

人事部門への期待は、転職市場に関するデータにも表れています。下記のグラフは、リクルートエージェントにおける人事関連職種の求人件数および転職決定人数の推移を表したものです。
新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年には一時落ち込んだものの、人事関連職の求人件数は2018年を基点に、4年で2倍以上に増加しました。比例して転職決定人数も伸びています

「『リクルートエージェント』転職決定者データ分析」(株式会社リクルート)

人事関連職をさらに細かく分類し、転職決定人数の推移を示したのが下記の図です。

「『リクルートエージェント』転職決定者データ分析」(株式会社リクルート)

この中で注目したいのは青のラインで示している「人事制度構築系・組織系人事コンサル」です。
2020年度までは他の「採用」「労務」「教育・研修」などに比べると数字の伸びは低いですが、その後伸長して、2022年度にはこの比較では2.03と最も高い水準となっています。
この数字の伸びは、人的資本経営の潮流と重なっていると見てとれます。もともと、2019年には働き方改革法案があり、人事部門を強化するという方針の企業が増えました。続く2020年には人材版伊藤レポートが発表され、人事が守りから攻めのスタンスに変わる潮流が濃くなり、求人も増加したと考えられます。「人事制度構築系・組織系人事コンサル」といった制度系の求人が増えているのは、人事のグランドデザインを新たに描くニーズが人的資本経営の潮流で増えたからと考えられます。

なお、「HRBP(HRビジネスパートナー)」の求人件数も、ここ数年で大きく伸びてきています。「事業の成長」を支える存在としての期待が高まっていることがうかがえます。

「『リクルートエージェント』転職決定者データ分析」(株式会社リクルート)

図の出典:「『リクルートエージェント』転職決定者データ分析」(株式会社リクルート)より

人事部の役割を再考する

このように転職市場では、人事関連職の求人・転職決定数が増えています。ただし、重要なことは単に人事部の人員を増やすだけではなく、この人的資本経営の潮流の中で人事部が果たすべき役割が何であるかを考えることでしょう。

経済産業省が人的資本経営のあり方についてまとめた「人材版伊藤レポート(2020)」※では、ある指摘がされています。それは、「日本の人事部門は『価値提供部門』とみなされていない」という内容です。
レポートの中で紹介されている人事部門の位置付け・役割についてのグローバル調査では、人事部門を「価値提供部門(バリュードライバー)」ではなく、「管理部門(アドミニストレータ―)」と考えている人は、グローバル平均では46%であるのに対し、日本では60%。15ポイントも高いというデータが示されています。

リクルートが企業の人事担当者を対象に行ったアンケート調査においても、同様の傾向が表れています。
現在在籍している人事部員や人事業務担当者について、「A:効率性やオペレーションに長けた人材」と「B:創造性やマーケティングに長けた人材」のどちらに近いかを聞きたところ、「A」という回答が半数以上(53.1%)に達し、「B」と回答した人は16.2%にとどまりました。

「人的資本経営の潮流と論点 2023 ミドルマネジメントによる人的資本経営の実践」P23 より (株式会社リクルート)

図の出典:レポート「人的資本経営の潮流と論点 2023 ミドルマネジメントによる人的資本経営の実践」P23 より (株式会社リクルート)

もちろん、労務管理のような人事の基本業務においては、オペレーションを正確かつ効率的にこなす力が重要です。しかし今求められているのは、適切な労務管理に加えて、多様な人を最大限活かし切り、そのエネルギーを戦略達成や企業価値向上につなげていくことです。これからの人事部門には、たとえば「経営視点」「戦略思考」「価値創出」といった観点がより一層求められてくるのではないでしょうか。
現代の人事部門の役割は何か、それを果たすためにはどのような人材や組織能力が必要なのか、そのために人事部へどのような投資をしていくのか。人的資本経営の要は、言うまでもなく人事部ですが、その役割を再考するタイミングに来ていると言えるでしょう。

※参考:
「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート~」(経済産業省)
レポート「人的資本経営の潮流と論点2023」(株式会社リクルート)

異職種から人事職へ。固定観念にとらわれない視点・発想に期待

前述の転職市場のデータは、興味深い動向を示しています。それは、企業内人事・人事コンサルティングの両方で、異職種から人事領域に転職する割合が増えていることです。
2022年に人事関連職へ転職者した方々のデータを見ると、「企業内人事」では5割近く(45.8%)、「人事コンサルティング」では約7割(70.1%)が、異職種からの転職を果たしています。

「『リクルートエージェント』転職決定者データ分析」(株式会社リクルート)

人手不足の背景から、人事・人事コンサル未経験者でも採用されているケースも多いと考えられますが、多くの未経験者が人事領域に流入しているこの状況には、期待が持てると思います。
新たな価値を創造する、人を通じて企業価値を高めていく取り組みにおいては、既存の「人事」の固定観念にとらわれない、新たな視点・発想が重要です。さまざまな経験を持つ方を受け入れることで、人事の変革を促進し、人的資本経営の実現に近づけるのではないでしょうか。

次回は、人的資本経営の実践に向けた「ミドルマネジメントの再定義」についてお伝えします。

編集部注:この記事は画像含めリクルート社から提供の寄稿です。2023年5月23日時点の情報をもとに作成しています。

>>>第3回 人的資本経営の実践に向けて――ミドルマネジメントの再定義

 「人的資本経営」の実践のポイント(連載)

第1回 人的資本の「情報開示」のポイント――2つの軸・4つの観点で考える
第2回 人事部門の役割が変化している――「管理」から「戦略策定・推進」へ
第3回 人的資本経営の実践に向けて――ミドルマネジメントの再定義
第4回 人的資本経営の実践に向けて――マネジャーのリスキリング

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