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株式会社リクルートマネジメントソリューションズ調べ


【人事データ活用に関する実態調査】65%以上が従業員エンゲージメントの指標を把握

2023.06.06

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リクルートマネジメントソリューションズ(東京・港)は5月29日、「人事データ活用に関する実態調査」の結果を公開した。対象は、従業員規模300名以上の企業に勤めており、人事業務に携わっている管理職以上の社員325名。
調査結果によると、現在把握している人事データとして全体の65%以上が「従業員エンゲージメント・従業員満足度・コミットメント」を挙げ、実際の人事データの活用場面のトップは「ストレスマネジメント」であることが分かった。以下、リリースより。

調査結果の詳細

https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001158/?theme=personnelsystem,assessment,survey

調査の概要

昨今、人的資本開示に向けた動きもあり、企業のピープルアナリティクス、HRアナリティクスへの関心が高まっています。事実や根拠に基づく人材マネジメント(エビデンス・ベースドHRM)を推進し、人的資本を高めようという動きです。

本調査では、エビデンスの1つである人事データの活用を「組織・人材に関するさまざまなデータを用いた、現状把握・分析・意思決定・実行・振り返りなどの一連の活動」として広く捉え、その実態、課題について、人事部門(本社人事・部門人事)の管理職へのアンケートを基に明らかにしました。

調査のポイント
  1. 人事に関するモニタリング・成果指標として現在把握している人事データのトップは、「従業員エンゲージメント・従業員満足度・コミットメント」(図表1)
  2. 人事データ活用場面について、すでに取り組んでいるもののトップは「ストレスマネジメント」(図表2)
  3. 人事データ活用の役立ち度は「人事業務の効率化」が総じて高く、「従業員の主体的な選択のサポート」が最も低い(図表3)
  4. 人事データ活用の課題は「人事スタッフの分析・活用するスキルが足りない」がトップ(図表4)
  5. 自由記述から見る人事データ活用のポイントは、「目的や意図、問題意識をストーリーで語ること」「データを多角的に組み合わせ、現場と対話しながら実効性のある解決策につなげる力」(図表5)
  6. 人事として意識して学んでいる知識・スキルについて、人事データ活用役立ち度高群では実践知や理論・学術的知見について有意に選択率が高い(図表6)
  7. 人や組織に関する論理や学術的知見の活用に対する考えは、「現場で起きている現象への理解を深める際に参考になる」が高群で7割を超える(図表7)
  8. 調査担当研究員
  9. HR Analytics & Technology Lab所長のコメント
  10. 調査概要

人事に関するモニタリング・成果指標として現在把握している人事データのトップは、「従業員エンゲージメント・従業員満足度・コミットメント」(図表1)

  • 人事としての活動のプロセスや成果を測定するデータとして「現在把握しているもの」は、本社人事、部門人事、両群共に「1.従業員エンゲージメント・従業員満足度・コミットメント」(本社人事68.3%、部門人事60.2%)の選択率が最も高かった。
  • 次いで、「17.時間外労働時間」(同59.9%、60.2%)、「18.有給休暇取得率」(同60.4%、55.1%)、「2.経営・リーダーシップに対する信頼度」(同54.6%、55.1%)、「20.離職率」(同 51.5%、41.8%)についても多く選択され、本社と部門の間で有意差はなかった。
  • 一方、「生産性・コスト」「多様性」「採用」に関する指標の多くは、本社人事の選択率が高かった。役割によるモニタリング指標の違いがうかがえる。

図表1 人事に関するモニタリング・成果指標(役割別)

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人事データ活用場面について、すでに取り組んでいるもののトップは「ストレスマネジメント」(図表2)

  • 人事データ活用場面について、すでに取り組んでいるものとしては、本社人事、部門人事、両群共に「14.ストレスマネジメント」(本社人事55.5%、部門人事48.0%)が最も選択されていた。

制度として普及・定着してきたストレスチェックのデータ活用や、コロナ禍において従業員のコンディション把握が進んできたことの表れかと思われる。

  • 続いて、「11.従業員のエンゲージメント・働きがいの実態把握」(同48.0%、41.8%)が選ばれている。また、「4.成果を上げている管理職・一般社員の特徴把握」(同47.1%、42.9%)、「10.従業員のスキル・能力の把握」(同47.1%、42.9%)といった従業員のパフォーマンスを高めるための取り組みについても、両群共に多く選択されていた。
  • 役割によって有意差が確認されたのは「1.応募書類・面接評価・適性検査データなどを用いた選考プロセスの振り返り」(同48.0%、29.6%)、「5.昇進選考時の評価と昇進後の活躍の関係分析」(同38.8%、25.5%)、「6.適材適所のための候補者や異動先のレコメンデーション」(同 37.4%、27.6%)、「8.研修効果の測定」(同38.3%、27.6%)で、本社人事の選択率が高かった。

⇒採用、配置など全社としての人材パイプラインや、研修効果など生産性に対する関心の高さがうかがえる。

図表2 人事データ活用場面(役割別)

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人事データ活用の役立ち度は「人事業務の効率化」が総じて高く、「従業員の主体的な選択のサポート」が最も低い(図表3)

  • 人事データ活用は総じて、「人事業務の効率化」「経営・人事の意思決定の質の向上」「従業員経験の質の向上」の順に役立ち度が高い様子が見てとれる。
  • 肯定的回答(役立っている・やや役立っている)の選択率を見ると、本社人事、部門人事、両群共に「1.人事業務の効率化」(本社人事60.5%、部門人事46.0%)が最も選択されており、「4.人事施策の検証や改善」(同54.8%、40.2%)がそれに続く。
  • 本社人事では「2.経営・人事の意思決定支援」(同54.8%、33.3%)も同じ選択率である(この項目のみ群間で5%水準の有意差が確認されている)。
  • 両群共に「7.従業員の主体的な選択のサポート」(同44.8%、32.2%)の役立ち度が最も低い。

⇒人事業務の効率化に対する成果を感じつつある一方で、現場の従業員に役立つものとして活用できている企業はまだ少ないようだ。

図表3 人事データ活用の役立ち度(役割別)

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人事データ活用の課題は「人事スタッフの分析・活用するスキルが足りない」がトップ(図表4)

  • 人事データ活用の課題について、役割別にみると(図表4-1)、本社人事、部門人事、両群共に「5.人事スタッフの分析・活用するスキルが足りない」(本社人事37.9%、部門人事35.7%)の選択率が最も高い。
  • 群間で有意差があったのは「13.結果の変化に一喜一憂してしまう」(同 8.8%、2.0%)、「14.社内への開示内容、範囲の判断が難しい」(同35.2%、 25.5%)、「15.社外への開示内容、範囲の判断が難しい」(同15.0%、7.1%)である。

⇒本社人事は、開示に関連した課題とそれに付随すると思われる結果への反応に関する選択率が高い。

  • 人事データ活用役立ち度の高群、低群それぞれで、人事データ活用の課題について、選択率が高い上位5位までのものを挙げた(図表4-2)。
  • 「14.社内への開示内容、範囲の判断が難しい」(高群43.3%、低群30.2%)は高群で最も選択率が高い。

⇒社内への情報公開やデータを用いた現場との対話を進める際に、人事データという性質上、配慮が必要な繊細な情報もあるだろう。効果的なデータ活用をする上での重要なポイントであることがうかがえる。

  • 「5.人事スタッフの分析・活用するスキルが足りない」(同40.3%、50.9%)は低群で1位、高群でも2位の選択率である。「2.経営陣の関心が低い」(同 32.8%、35.8%)も合わせると、上位5項目中3項目が共通している。

⇒これらは活用が進むからこそ生じる課題、活用を阻む課題の両面があるようだ。

  • 高群に特徴的なのは「9.従業員の協力を得るのが大変だ」(35.8%)、「7.社外の専門家によるアドバイスが必要だ」(32.8%)である。

⇒データ収集・活用場面で従業員に展開する範囲が広がること、分析・ 活用のレベルが高まることによるものだろう。

  • 低群に特徴的なのは「4.経験と勘が重視され、データは軽視される」(34.0%)、「8.手間がかかるので、費用対効果を感じられない」(30.2%)である。

⇒データの有用性を社内で証明しながら活動を推進することの必要性がうかがえる。

図表4 人事データ活用の実態

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自由記述から見る人事データ活用のポイントは、「目的や意図、問題意識をストーリーで語ること」「データを多角的に組み合わせ、現場と対話しながら実効性のある解決策につなげる力」(図表5)

  • 人事データ活用の課題についての自由記述を抜粋して紹介する(図表5-1)。
  • 図表4になかった視点として、「開示」について、社内に展開する際に上層部から順に降りてきて「なんの役にも立たない情報に変化」とあり、ストーリーが伴わないと、意味のない情報の伝達になってしまうというエピソードがあった。打ち手につなげられていないという「課題解決」に関する記述も多く見られた。

⇒分析だけをする、ただ結果を共有するということではなく、経営や現場のどんな問題を解決したいか、どんなメッセージを伝えたいかという目的や意図、問題意識が大切ということだろう。

  • 人事データ活用について人事として感じる限界や、データだけでは分からないと思うことについての自由記述を抜粋して紹介する(図表5-2)。
  • 「データ」の捉え方として現場の実態と乖離があることに限界を感じたまま課題解決につなげられていないケースと、乖離がある前提で定性情報を含めて多角的に捉えて活用しているケースとが確認された。

⇒課題として挙がっていた人事データ分析・活用スキルには、データ解析などのスキルだけでなく、各種人事データの性質を理解した上で多角的に組み合わせ、現場と対話しながら、実効性のある解決策につなげる力が含まれているといえそうだ。

図表5 人事データ活用の課題に関するコメント

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人事として意識して学んでいる知識・スキルについて、人事データ活用役立ち度高群では実践知や理論・学術的知見について有意に選択率が高い(図表6)

  • 図表6は、人事として意識して学んでいる知識・スキルを人事データ活用役立ち度別(高群と低群を抜粋)に示したものである。
  • 高群では、「8.統計解析に関する専門知識」だけでなく、「1.自社の戦略・ビジネス」といった現場の実践知や、「2.人的資源管理論」「3.組織行動学」「6.心理学」などの理論・学術的知見についても有意に選択率が高い。

⇒この結果は、会社の人事データ活用と人事に必要な知識・スキルの関係を直接示したものではないが、実践知と理論・学術的知見をあわせもつことの有効性が示唆される。

図表6 人事として学んでいる知識・スキル(人事データ活用役立ち度別)

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人や組織に関する論理や学術的知見の活用に対する考えは、「現場で起きている現象への理解を深める際に参考になる」が高群で7割を超える(図表7)

  • 理論や学術的知見の活用に対する考えを見ると、群間で差が最も大きいのは「1.現場で起きている現象への理解を深める際に参考になる」で、 高群では7割を超える選択率である。

⇒定量・定性など多角的なデータを活用して現場の実態を捉える際に、理論や学術的知見を参照しながら理解を深めていくことが、実効性の高いデータ活用のポイントとなりそうである。

図表7 人や組織に関する論理や学術的知見の活用に対する考え

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調査担当研究員

rs_rms-hrdata_230605 10) (1)株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 主任研究員 藤村 直子
株式会社人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)、株式会社リクルートにて人事アセスメントの研究・開発、新規事業企画等に従事した後、人材紹介サービス会社での経営人材キャリア開発支援等を経て、2007年より現職。リーダーシップ、社会人学習、中高年のキャリアに関する調査・研究を行う。

HR Analytics & Technology Lab所長のコメント

rs_rms-hrdata_230605 10) (2)株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HR Analytics & Technology Lab所長 入江 崇介
2002年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻にて修士課程(学術)修了後、HRR株式会社(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。アセスメント、トレーニング、組織開発の商品開発・研究に携わり、現在は人事データ活用や、そのための測定・解析技術の研究に従事する。一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会上席研究員。日本学術会議協力学術研究団体人材育成学会理事。昭和女子大学非常勤講師。新たな公務員人事管理に関する勉強会委員。

組織の実態は、データで捉えられるものもあれば、日々の仕事経験のなかで捉えられるものもある。「現場のことは、現場が一番分かっている」という言葉に象徴されるように、日々の仕事経験のなかで捉えられるものが多いことは確かである。それゆえ、現場から離れている人事の提案が、なかなか現場に受け入れられないこともある。このようなとき、組織の実態を示すデータが、現場と人事の距離を近づける架け橋となる。データで表された「お互いに共有できる事実」によって、同じ目線で対話ができるようになるからである。データのもつ力は、それにとどまらない。データで表された事実と日頃の実感にはギャップが生じることもある。そのようなギャップを注意深く掘り下げることで、新たな事実が浮かび上がり、本質的な問題が発見されることもある。データと現場の担当者が抱いている直感を組み合わせることも大切だと考えられる。

エビデンス・ベースドHRMのプロセスを遂行するのは、実践知をもつ専門家としての人事である。例えば、「日頃から現場を見つめ、自社の問題を定式化する」「社内外のさまざまなソースからエビデンスを収集する」「自分なりの基準で、エビデンスを吟味する」「吟味したエビデンスを、問題解決のために統合する」「エビデンスを用いて意思決定を行い、施策の実行などを行う」「意思決定や実行の成果を評価する」というようなことだ。過去の実践で積み重ねてきた経験や、学んできたさまざまな他社の事例に関する知識などが、このプロセスのなかで生きてくる。エビデンスは重要だが、さまざまなエビデンスを収集した際、時には矛盾する内容や、仮説とは合わない内容が得られることもある。このとき、どのエビデンスを選択するのか、事前の仮説と得られたエビデンスのどちらに基づくのがよいのか、悩ましい判断を迫られることもある。この時に大切になるのは、実務家の「信念」である。「エビデンスを重視する」というと、判断の基準を自分の外に置くかのような感覚があるかもしれない。しかし、最後に大切になるのは、自らのなかの基準であることを忘れないようにしたい。

調査概要

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※調査実施は株式会社マクロミルに委託

PDF版:「人事データ活用に関する実態調査」の分析結果を発表

【プレスリリース「『人事データ活用に関する実態調査』の分析結果を発表」より|2023年5月29日・株式会社リクルートマネジメントソリューションズ】

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