株式会社SmartHR 事業戦略発表会
ARR100億円を達成。次の一手は「マルチプロダクト」
2023.03.17
SmartHR(東京・港)は3月14日、同社イベントスペースで事業戦略発表会を実施した。2015年11月にクラウド人事労務ソフト「SmartHR」をローンチした同社は、「ラクラク分析レポート」機能の提供を皮切りに、2019年から「人事評価」や「配置シミュレーション」といったタレントマネジメント機能も次々と公開。提供機能の深化、拡大に伴い、導入企業は業種も規模も多岐にわたる5万社(※1)を超え、5年連続シェアNo.1(※2)のクラウド人事労務ソフトに成長した。
ARR(年間経常収益)100億円を達成し、さらなる拡大戦略を描く同社。事業戦略発表会では、取締役COOの倉橋隆文氏が「これまでのSmartHR」を振り返るとともに、代表取締役 CEOの芹澤雅人氏が今後の方針を明らかにした。【取材:@人事編集部】
※1:SmartHR 上で事業所登録を完了しているテナント数(ただし退会処理を行ったテナント数を除く)
※2:デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTech クラウド市場の実態と展望 2022 年度版」労務管理クラウド市場・出荷金額(2022 年度見込) https://mic-r.co.jp/mr/02640/
タレントマネジメントシステムとしても進化
取締役COOの倉橋隆文氏【上写真】は、「SmartHR」が一般的に労務業務を効率化するサービスであるというイメージが強いものの、近年はタレントマネジメント機能の開発にも注力していることを強調した。
「SmartHR」は2019年9月、初めてのタレントマネジメント機能である「ラクラク分析レポート」の提供を開始して以降、「従業員サーベイ」「人事評価」「配置シミュレーション」と段階的に新たな機能を追加してきた。
現在の有料顧客数は、2023年2月に機能提供を開始した「配置シミュレーション」を除いて機能ごとにすべて500社を超えており、タレントマネジメント市場における先行企業に迫る勢いで急成長していることが明かされた。
倉橋氏は加えて、労務管理とタレントマネジメントの領域で幅広く収集・蓄積した人事データをいつでも活用できるという「SmartHR」ならではの強みにも言及し、「両方を網羅することで従業員に関する必要なデータが一通り揃うだけでなく、人員配置や組織開発といった(人事に関わる)あらゆるシーンにデータを活かすことができる」と語った。
また実績として、サービス登録者数が多いだけでなく、クラウド型人事労務システムとタレントマネジメントシステムのいずれにおいても満足度No.1を獲得しており、99%の企業が継続利用していることが紹介した。
労働環境の変化に対応できるサービスを
続いて代表取締役 CEOの芹澤雅人氏【上写真】が、コーポレートミッションに紐づけた事業状況の分析や今後の戦略・展望について発表した。
同社は昨年、コーポレートミッションを改定。「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくること」を目指して「well-working」というキャッチコピーを掲げている。
その上で芹澤氏は、企業活動を通して「『働く人の無駄を省き作業を効率化する』『働く人のポテンシャルを引き出しエンゲージメントを高める』の2点を実現したい」と述べた。
同時にこれらを重要視している背景として、これから日本で起こる労働環境の変化に言及。「労働人口の減少と働き方の多様化によって、今後まちがいなく働き方や生産性への注目が高まるだろう。こうした価値観の変化への対応が、従業員はもちろんのこと、働く場所を提供する企業にも求められている。私たちは、『働きたいと思う環境の整備』と『選ばれる組織づくり』をサポートするための実践を行っていきたいと考えている」(芹澤氏)
キーワードは「マルチプロダクト戦略」
先を見据えた事業展開によって、2022年4月にはSaaSビジネスにおける一つの指標である「T2D3」(ARR1億円の到達を起点に、1年で3倍の成長を2年続け、その後に2倍の成長を3年重ねる成長速度)を達成した同社。
だが日本の労務管理におけるクラウド浸透率はいまだ3.1%と推定されており、市場の成長余地は広大だ。
そんな中、次の一手として同社が掲げるのは「マルチプロダクト戦略」。芹澤氏は、コーポレートミッション実現という観点からも、事業領域のさらなる拡大が必要だと考えていると話す。
これまで数々のプロダクトを実装してきた「SmartHR」だが、それらが効果的に連携されてこそサービスシナジーが生まれる。継続的にプロダクトを拡大していくため、数年前から必要となる技術要素の研究開発に取り組んできている。
その成果として共通のプロダクト基盤を整備し、UIコンポーネント、権限基盤、ID基盤、従業員データベースを統一し、複数のプロダクトが利用できるようにした。これにより、「効率的なプロダクト開発」「統一されたユーザー体験の提供」が可能になった。
特にタレントマネジメント領域での新規プロダクト拡大に力を入れていく計画では、2023年中に「スキル管理機能」が追加される。
一方、「SmartHR」は使い勝手の点で人事担当者だけでなく従業員側にも支持されているため、従業員向けスマートフォンアプリの開発にも着手していることが明かされた。
さらに「SmartHR」と連携するアプリケーションを紹介するアプリストア「SmartHR Plus β版」でもサービスを増やしていく予定で、従業員データと認証基盤を外部パートナー企業に提供することで、システム連携の実現を目指す。
2023年2月時点で17のアプリが提供されており、安否確認、ストレスチェック、健康診断、勤怠管理など、それぞれに特化したサービスが利用できる。
芹澤氏は、SaaSが苦手とする「個社カスタマイズ」を克服する仕組みとして、プラグイン形式でもどんどん機能を増やしていきたいとしながら、最後に「将来的には人事業務のみならず、バックオフィスのあらゆる業務が『SmartHR』を中心につながっていくような世界を目指したい」と展望を語った。
SmartHR事業戦略発表会について
日時:2023 年 3 月 14 日(火)11:00~12:00
場所:SmartHR 8F イベントスペース「SmartHR Space」
登壇者:株式会社 SmartHR 代表取締役 CEO 芹澤 雅人/取締役 COO 倉橋 隆文
発表概要:SmartHR の概要、SmartHR の実績、コーポレートミッション、ARR 成長の軌跡、今後の事業戦略
【編集部注】記事中で使用の画像は編集部撮影およびSmartHR社より提供のものを使用しています。
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