企画

ウォンテッドリーの人事責任者・大谷氏が考える


小さな企業でも採用に勝つための考え方と実践

2023.02.14

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VUCAの時代、採用を取り巻く環境が大きく変わり、競争は激化している。求職者の就労観の変化と就職・転職活動の変化に対応しきれず頭を悩ませる採用担当者や経営者も少なくない。こうした採用難の今、「採用活動がうまくいっている会社はどのような考えを持ち、何をしているのか」。

その答えの1つとして、新刊『すごい採用』の中で、ウォンテッドリー株式会社の人事責任者・大谷昌継氏は、“採用市場で会社が選ばれるための考え方”を記している。
今回、大谷氏に@人事のメーン読者である中小企業が今後、採用で成果を出すための方法を聞いた。【2022年12月2日取材、@人事編集部】

プロフィール

大谷昌継(おおたに・あきつぐ)
ウォンテッドリー株式会社 人事責任者
1974年生まれ 東京都出身。東京大学経済学部経営学科卒業。新卒でソフトバンク株式会社に入社後、2001年オイシックス株式会社に入社。物流責任者として基礎を作ったのち、2005年から人事を担当。2014年にウォンテッドリー株式会社に人事責任者として入社。二度の東証マザーズ上場を行い、現在採用から労務、人事制度など人事全般を業務としている。

目次
  1. 現場の人事だけが変わるのではなく、経営層も危機的状況を認識する
  2. 採用がうまくいっている企業はマーケティングと営業の手法を実践
  3. 採用活動でのSNS発信が大手と中小企業・スタートアップの差を縮める
  4. これからの人事に求められること
  5. 人事のキャリアを考える
  6. 書籍紹介『すごい採用―考え方を変えれば採用はうまくいく』著・大谷昌継

現場の人事だけが変わるのではなく、経営層も危機的状況を認識する

――大谷さんは著書の中で、企業が「選ぶ側」から「選ばれる側」にルールが変わったことを認識し、行動変容ができることが必要とおっしゃっています。多くの企業は採用難の時代に突入し、この必要性自体は理解しているように思えますが、実際の行動が変わりきれてない印象があります。

大谷昌継氏(以下、大谷氏):結局はまだ採用できているからだと思います。特に大きい企業は、それでもやっぱり入りたいという方がまだいる。私たちのようなスタートアップは、逆に早く変わらざるを得なかった。

しかし、大企業の採用現場でも危機的な状況は起きています。特に専門職は、昔ならば大手のブランド企業の著名な研究所に入ることが理系学生・院生のエリートコースとして認識されていたのが、今はグーグルやアマゾン、マイクロソフトから学生にオファーが届きますし、新卒でも給与が1,000万円を超えるところもある。こうした状況が現実に起きている中で、現場の採用担当者が少し頑張れば良いとか、あの人材紹介会社を使ったら採用できるといった話ではなくなってきています。
そもそも、この本を出した理由の1つとして、現場の人事の方だけが意識や考え方を変えても対応できない状況になってきていて、経営者の方にもしっかりと知っていただくことが大事だと考えたからです。この本が今現場で困っている人事の方の後押しになってほしいですね。

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採用活動でのSNS発信が大手と中小企業・スタートアップの差を縮める

――今、「採用がうまくいっている会社」と「うまくいかない会社」の両者を分けるものは何だと思いますか。

大谷氏:労働市場の変化に伴って、1人の人材に多くの会社が声をかける引く手あまたの状況になるので、就職・転職活動が顕在化した時には既に知っている会社の中だけで活動する傾向が強くなっています。うまくいっている企業は採用にマーケティングと営業の手法を取り込み、就職・転職活動を活発に行う前から求職者の認知を得て、選択肢の中に入る活動をしています。

もう少しかみ砕いて説明します。まず今までの採用方法・在り方としては「仕入れ」に近かったと理解をしています。つまり、人数が揃うことは当たり前で、「いかに質の高いものを安く買えたか」が、仕入れとして高く評価された。
新卒採用のケースですと、例えば、今年は去年に比べてMARCH以上が何人採用できたかを経営層に報告するみたいなところがあったと思います。それが今はもう、そもそもの採用人数が足りていない状況が起きている。
各社で取り合いになるから、例えばベンダーさんを介してコントロールしようと、「リクルートさんは何ができますか」「エン・ジャパンさんは何してくれますか」「いくら仕入値を下げられますか」をといったやり方も当然できなくなります。

そこで何が必要になるかというと、自分たちでこの会社はどういう会社でどのような人に向いているのか。こういった良いことがあります、だから来るべきです。といった紹介の仕方をしっかりと考えて、来てほしい人に届くように、広報をしたり、イベントに参加したりといった活動をする。最後にはきちんと選んでもらって会社に入ってもらう。
つまり、自社の製品を買ってもらえるように、自社の会社を選んでもらうような考え方で採用活動を行うことが採用活動のマーケティング・営業です。

採用がうまくいっている企業はマーケティングと営業の手法を実践

――先日の報道※によると、主に専門性の高い人材を対象に、政府と経済界が2026年春に入社する現在の大学1年生から、一律で定めている就職活動の日程ルールを見直す方向で調整に入ったというニュースがありました。今後は大学1年生から、自社を知ってもらう採用活動が求められていきそうですが、ブランド力のある大手企業に対して中小企業やスタートアップでも始められることはありますか。

大谷氏:この見直しが行われる前から、例えば消費財を扱っていてテレビCMなどで知られているような大企業はすでに認知度が高い状況があります。そういった企業と同じように、学生たちが就活を意識する際の思考のテーブルの上に乗ってないと、勝負にならないということが起きるのです。

そこで、どのようにして中小企業やスタートアップが対抗できるか。例えば、エンジニアの例で紹介すると、特定の技術を使っているプログラミングの言語に関するイベントを毎年1~2回開催する。新しい技術が出た、新しい機能が付け加えられたといったことを発表したり、事例を紹介するような場をつくることで、「こういうことをやっているこの企業は優秀なエンジニアが会社にいるんだ」という認知のされ方をするケースがあります。一生懸命エンジニアが 良いものを作るだけじゃなくて、それを外部に発信することをやってみるのも良いでしょう。「こういう使い方をしてみたら、こういうことができました」とブログで報告していると、勉強している学生や社会人の人たちが、「〇〇という会社でこういう事例を発表していて、レベルが高いな。調べてみたら面白いことをやっているなと」と興味を持ってもらうこともできます。

そういった情報発信の手段としてSNSが有効になってきていて、Twitterで情報収集する学生や社会人も多い。技術的なことだけでなく、関心の高い企業の社会貢献や地方創生といった取り組みもSNS経由で伝えることできます。

※参考:「専門人材、採用日程を弾力化 26年春入社―政府検討」(時事通信:2022年12月1日)

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――インターネット、SNSの普及で学生・求職者側がそれらを使って企業を探すニーズが今高まっています。中小企業やスタートアップが大手企業に勝てる土壌に入ってきているイメージはありますね。

大谷氏:1年間で何百人も採用する規模であれば、やはりマス(の採用手段)に頼らざるを得ないと思いますが、例えば、地方創生に興味がある10人に来てもらって、その中から1人採用できれば良いという話だとすれば、別にSNSであっても良いわけじゃないですか。人数をそこまで多く必要としないので、逆にそこが勝ち筋につながる。絞り込むことが結構大事です。

それがマーケティングだと思うんですよね。できるだけ大きく、広く呼び掛けてその中から選んでもらうやり方もあるし、すごくニッチなところに働きかけて、少ない母集団ながら興味関心が高い学生を集める方法もある。一律にナビサイトに掲載する必要はないということです。

SNSの良いところは、お金をかけずに色々試せる点ですね。例えば社会問題にすごく特化して興味がある人に来てほしい話でいう と、学生全体ではなく、そういう問題に興味があるサークルに刺さるような訴求での発信をしてみるとか。関連する学生イベントの協賛に手を挙げて興味のある学生たちを応援するみたいなこともできます。
実は、それは採用活動につながります。同じ学生との接点を作るという意味で従来の合同説明会や採用イベントに出ていくよりもお金はかからない。SNSはやりやすいと思っていますね。検証の面でも、この発信には「いいね」がどれだけついたのか、どの画像を見せたときが反響が大きかったのかといったことも確認しやすいです。

これからの人事に求められること

――著書には、これからの採用の姿の1つとして「採用の主体が人事から各部署がリードしていくことになる」と書かれています。懸念としてあるのが、各部署が主体となって採用活動を行うと、統制が取れにくくなり、採る人材が部署ごとに求める人材像に寄ってしまい、会社が本来求めている人材が採れなくなってしまうのではないでしょうか。

大谷氏:ここで書いていることは若干乱暴なところはあるのですが、前提として終身雇用制や解雇規制の考え方にとても大きく影響している点があります。今までは一度採用してしまうと、解雇ができないという背景があった。しかし、トヨタさんはじめ大手企業から「もう終身雇用は無理です」という話がこの1、2年ぐらいから公に聞こえるようになっています。方向的には将来、解雇規制がだんだん緩くなっていくのではと思っています。

一方で、特に若い人たちは、「別にこの会社で定年までいるつもりがない」という考え方が、ある程度前提になってきている。だとすれば採用で求める人材像も、「この今の事業に必要な人をあの必要な給与で契約する」もしくは、「このプロジェクトを成功させるために、この人を採用したい」という姿になっていくのではないかと思っています。
その考えからすると、採用の主体は必ずしも人事ではなく、各部署の方に移ってくる。あと3~4年ぐらいでしょうか。

採用の主体が人事から各部署に移ると、今後の人事は何をすれば良いのか。具体的に、各部署が主体となって人事がサポートしていく採用を成功させているパターンとして、この本ではウォンテッドリーの事例を紹介しています。
他にもよく知られているケースであれば、メルカリさんは人事の方が関わりつつも、エンジニアやビジネス部門の方が、自分たちで欲しい人たちに声をかけやすくなっていて、例えば気になる人を誘って会食に行く際の費用を会社が出したり、食事会場となるレストランを会社で契約して支払いをしなくても良いといった仕組みがあります。

――本で書かれていたように御社では実際にエンジニアの部署の方による自主的な採用が成功例としてできていますが、うまくいくまでに例えば、どのようなところでつまずいたり、課題が出てきたりするのでしょうか。

大谷氏:難しいのは、「採用は自分の仕事ではない」と思っているところから、「自分たちが関わることだ」と考え方を変えてもらうことでした。結構時間がかかりましたね。

ウォンテッドリーの新卒エンジニアの採用は、インターンを経験してもらうことが必要で、特に夏休みの2~3週間に学生を20~30人受け入れて、各部署で仕事を体験してもらいます。場合によっては、所属エンジニアの半分が学生の対応をすることになり、自分の仕事が滞ってしまうわけです。ここには抵抗がありました。エンジニアからすれば、インターン生を見るために会社に入ったわけではないという思いもありました。この状況が好転したのは、結局そのインターンを経由して、新卒で入ってくれた子たちが、「自分たちがやってもらったから、自分もちゃんと学生に接するのが当たり前だ」という姿勢でインターンに対応してくれて、それが次第に文化として根づいたところが大きかったですね。

先輩のすごいエンジニア方から教えてもらって、そこに感化されて良いなと思って入社してくれた人たちは、「なんで自分たちが」という疑念は抱きません。新卒に限らず中途で入った人も、「こういうことをやる会社なんだ」というのが当たり前のものとして受け取りやすくなるので、採用活動に協力的になります。
ですので、最初に元々いる社員の方のマインドチェンジが1つ壁になりますね。ここはおそらく、経営層やトップが「これは会社として必要なことだ」と働きかけることが必要になってくるのではないでしょうか。人事だけでは難しいですね。

もう1つ、社員から協力を得られるようにする仕組みづくりとして、採用活動を人事評価に組み入れることです。ウォンテッドリーの場合は、積極的に関わっている人がとても評価されるというよりは、全くやってない人に関して、特に上の方のグレードへの昇格に影響が出てきます。あらかじめ、そういう人は昇格できないと結構明確に言ってはいます。
逆に言えば、採用には関わりたくないという方からは好かれない会社という印象を与えることにもつながります。こういうことをやっている会社で、それでも良いなと思える人には来てもらえますし、これがブランディングだったり、マーケティングなんだという風には思っています。

人事のキャリアを考える

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――最後に大谷さんが考える採用活動の意義と、人事としての関わることの魅力、楽しさをお聞きしたいと思います。人事の業務が複雑・高度化していくなかで、常に学んでいくことが求められています。大谷さんが実践しているスキルアップや学習方法を教えていただけますか。

大谷氏:採用で言いますと、各職種・部署のことをより知らなくてはいけないようになってきています。人事とは全く違う知見が必要になってくる。例えばデザイナーの採用であれば、どういったデザイナーがウォンテッドリーにフィットするのかはもちろん、デザイナーのどこの部分の何をどう見れば良いのか、そもそもデザインってどういうことが求められるのかといったことをかなり勉強しなければいけない。純粋に面白いことではあるのですが大変です。

デザイナーに直接、どういう人が欲しいのかを聞くこともしますし、本を読んで知識を入れていくこともします。大事なのは、デザイナーに聞いてみて、「いや、ここはなんか違う」みたいな感覚的な表現や考え方をしっかりと言語化することですね。
他にも採用だけでなく労務もやっているので、新しい法律が出てくるたびに勉強が必要です。

学ぶことが大事なのは、特に人事の方って、キャリアの終着になることが多いのではと思っているからです。営業の方であればマーケティング部署に異動したり、いくつかの部署をローテーションしたりすること多いと思いますが、人事に1回入ってしまうと、やはり給与や評価の情報をはじめ機密情報にある程度触れることもあり、人事以外の部署に異動しづらくなる。
転職する時も、人事という職域の中で転職することがやはり多くなると思うのですが、ひとりのビジネスパーソンとして長くやっていくことを考えると、人事だけで40年以上のキャリアをやるのはなかなか大変だと思っています。

本来的には、他の事業とかもしっかり経験したうえで、それこそ、マーケティングの最新のやり方なんかをちゃんと勉強した方が良いんじゃないかと。私も人事以外の部署を経験してから人事になっています。
人事業界のロールモデルで言うと、サイバーエージェントの曽山哲人さんや元メルカリの石黒卓弥さんが代表例ですが、事業部長としてとても優秀な人が、人事の責任者になるケースです。事業側で活躍した人が人事をやってまた事業の方に戻ったり、人事が事業の方を見てから人事にまた戻る。こうした最終的なキャリアとして人事に戻ってくるみたいなことが結構大事なんじゃないかなと思っていて、こうしたキャリアを描くためにも人事領域以外の学びも大切になってくると思っています。

――ありがとうございました。

※情報は取材時点

書籍紹介『すごい採用―考え方を変えれば採用はうまくいく』著・大谷昌継

必要な人材が来てくれる「すごい採用」

書影画像:『すごい採用―考え方を変えれば採用はうまくいく』大谷昌つぎどうすれば人が来て,正しく選べて,やめないのか,採用担当者はみな同じ悩みを抱えます。
就活情報サイト・説明会に人が来ない,サイトの掲載費や転職エージェントの費用ばかりかさんでいく,優秀な人材が見極められず入った人が活躍しない,せっかく入った人材が活躍しないうちにやめていく……。

新卒一括採用の比重が高く,解雇規制の厳しい日本では,採用は重大事です。ところが実際には「採用シーズン」だけの一発勝負に出てしまったり,ほとんどフィーリングで進めてしまったりと戦略不在の行き当たりばったりで採用に失敗するケースが無数にあります。

本書ではこれらの問題を,採用の考え方を変えることでで解決します。リクルートメントマーケティングという技法に基づき,採用の全体像とそこから見えてくる課題を提示。カジュアル面談などの技法を取り入れた新しい採用を提示します。株式会社技術評論社の書籍案内ページより

書籍情報

著者:大谷昌継
発売日:2022年10月26日(紙版)
発行所:技術評論社
判型:A5
ページ数:296
定価:2,420円(本体2,200円+税10%)
ISBN:978-4-297-13140-1
技術評論社;https://gihyo.jp/book/2022/978-4-297-13140-1
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4297131404

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