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人事の10分読書vol.23『LGBTとハラスメント』

2023.01.20

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@人事が、本の要約サイト「フライヤー」とコラボし、人事のスキルアップにつながる書籍の要約をお届けする連載企画「人事の10分読書」。
第23回は、『LGBTとハラスメント』(集英社)を紹介する。

>>>「人事の10分読書」シリーズ

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目次
  1. おすすめポイント
  2. 著者プロフィール
  3. 『LGBTとハラスメント』の要点
  4. 性の多様性についての基本知識
  5. LGBTへのよくある勘違い
  6. 気にしているようで相手を傷つけているかもしれない
  7. 【必読ポイント!】 SOGIハラ・アウティング防止策は措置義務へ
  8. 一読のすすめ

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おすすめポイント

セクシュアルマイノリティを表す言葉のひとつである「LGBT」は、すでに広く知られる言葉となった。しかし、いまだにその定義が正しく認識されているとは言いがたい。現在でも政治家などの著名人が失言し、インターネット上で炎上する事例はあとを絶たない。そうして表には出てこない日常の一場面でも、誤解や何気ない言葉に傷つけられている人はたくさんいるのではないだろうか。

2020年6月に施行された「パワーハラスメント防止法」では、性的指向や性自認に対するハラスメントであるSOGIハラや、他人の性的指向や性自認などの極めてプライベートな個人情報を本人の同意なく周囲に暴露するアウティングも、パワーハラスメントのひとつに含まれるようになった。セクシュアルマイノリティに対しての正しい認識を持っていなければ、人を傷つけてしまうことがあるのはもちろん、今後は法的に加害者になってしまう可能性もあるということだ。

本書は、セクシュアルマイノリティに関する基本的な解説から始まり、日常的に起きがちなLGBTに対する勘違いや差別を豊富な実例とともに紹介している。また、パワーハラスメント法に含まれるSOGIハラやアウティングの詳しい内容など、職場における実務面でも具体的に役立つ教科書だ。

LGBTという言葉だけを何となく知っているという人や、セクシュアルマイノリティに対しての理解をより深めたい人だけでなく、これまで関心がなかった人にこそ通読していただきたい一冊である。

【池田明季哉(ライター詳細)】

著者プロフィール

神谷悠一(かみや ゆういち)
1985年岩手県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。労働団体の全国組織本部事務局を経て、現在は約100のLGBT関連団体から構成される全国組織、通称「LGBT法連合会」事務局長。

松岡宗嗣(まつおか そうし)
1994年愛知県生まれ。明治大学政治経済学部卒。ライター。政策や法制度などのLGBT関連情報を発信する一般社団法人fair代表理事。

『LGBTとハラスメント』の要点

  1. LGBTという言葉自体は認知されてきているが、現在においても正しい認識が十分になされているとはいえない。悪意のない差別や偏見、性的指向・性自認に対するハラスメントであるSOGIハラや、他人の性自認・性的指向など機微な個人情報を本人の同意なく暴露するアウティングがまだまだ見られる。
  2. 2020年6月に施行されたパワハラ防止法により、SOGIハラ、アウティングもパワーハラスメントに該当することとなった。
  3. 誰もがSOGIに関する正しい知識を身につけ、ハラスメントの発生防止に努める必要がある。

性の多様性についての基本知識

LGBTとは

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LGBTとはレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の4つの頭文字を取った言葉である。レズビアンは自分のことを女性だと認識していて、同性の女性を好きになる「女性同性愛者」、同様にゲイは「男性同性愛者」、バイセクシュアルは女性も男性も好きになることがある「両性愛者」を指す。トランスジェンダーは、「生まれたときに割り当てられた性別と、自分の認識している性別が一致していない人」を指す。

このように、性のあり方が多数派に属さない人たちはセクシュアルマイノリティ(性的少数者)と呼ばれるが、L・G・B・Tの4つ以外にもさまざまな性のあり方を持つ人たちがいる。LGBTに「Q」を加え、LGBTQとする場合もある。この「Q」はクィア、またはクエスチョニングの頭文字である。クィアは「規範的な性のあり方以外のセクシュアリティ」、クエスチョニングは「自らの性のあり方等について特定の枠に属さない人、わからない人。典型的な男性・女性ではないと感じる人」を表す。

SOGIハラとは

少し視点を変えてみると、「性別」ひとつとってもいくつかの要素に分けて考えられることがわかる。特に、セクシュアルマイノリティについて考える際は、次の4つに分解してみるとよい。

ひとつは「法律上の性別」だ。出生時に身体、性器の形等から医師などによって判別されて割り当てられ、役所に届けられる。次に、「性自認」がある。自分は「男である」、「女である」、もしくは「性別に関係のない生き方をしたい」など、自身の性別をどう認識しているかを表している。そして、「性表現」という要素。これは社会的にどのように振る舞うかというもので、一人称や服装などについてどのような性別の表現を行うかに関わっている。最後の要素は、「性的指向」である。自分の恋愛や性愛の感情がどの性別に向くか、あるいは向かないかを指す。

これらの要素から導き出される性のあり方は非常に多様であり、突き詰めていけば一人ひとり違うパターンなのではないかということも感じられる。

前述の4つの要素のうち、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字を取った言葉が「SOGI(ソジ)」だ。SOGIという属性は、セクシュアルマイノリティだけでなく、すべての人に関わるものだ。いわゆる〈多数派〉の異性愛者の男性であっても、性自認は「男性」で性的思考は「女性」に向く、というように表現することができるからである。ちなみに本書で取り上げられる「SOGIハラ」とは、性的指向や性自認のいずれか、もしくは両方に対するハラスメントを指す。SOGIは目に見えにくい属性なので、安易なレッテル貼り等によって「全ての人」に関わる問題となり得る。

LGBTへのよくある勘違い

LGBTは「特殊」?

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セクシュアルマイノリティの人は特殊で、そうではない人は「普通」だと認識してしまう人は多い。それはマイノリティには特別な「名前」がつけられるからかもしれない。女性の医者のことを「女医」と呼ぶのと同じだ。しかし、セクシュアルマジョリティにもさまざまな名称はある。

たとえば、生まれた時に割り当てられた性別と自認する性別が一致している人は「シスジェンダー」と呼ばれる。また、異性愛者のことは「ヘテロセクシュアル」という。
マジョリティを「普通」と認識することは、マイノリティに「異常」というレッテルを貼ることにつながってしまう。社会の制度や人々の認識はシスジェンダーのヘテロセクシュアルの人が「普通」であるとし、それ以外は「病気」だと認識されてきた歴史がある。たとえば同性愛は治療が必要な「精神疾患」として扱われてきたが、多くの人の尽力により脱病理化の動きが進んだ。それでも、セクシュアルマイノリティを「自然の摂理に反する」と考える声は根強く残っている。その背景には、「動物は子孫を残すことが予め本能としてセットされている」といった考えがあるのだろう。

しかし、ライオンやゾウなどさまざまな動物の同性愛行為は多数確認されているし、一番大きい個体がメスに変わるカクレクマノミのような生物もいる。同性愛や性別移行は自然界では珍しいものではないのだ。それは人間界であっても同じのはずである。

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