「ひとり人事」の職場改善計画
「クラウド勤怠管理」を採用する、会社にとっての3つのメリット
2016.09.14
これまで、衛生委員会を活用した長時間労働削減への取り組み(衛生委員会を活用して、長時間労働削減に取り組もう)や、就業規則による人材定着(「就業規則」が人材定着・採用力強化ツールになる?)のお話をしてきましたが、これらの取り組みを順番に行っていくと、しばしば勤怠管理方法の問題が出てくることがあります。衛生委員会の場で時間外労働の状況などを共有しようにも、「誰がどうやって勤怠の集計をおこなうのか?」「せっかく就業規則で整備した時間管理のルールを実現する際に、遅刻や早退の申請承認などはどのように行うのか?」など現実的な問題にぶつかってしまうのです。これでは、かえって業務量が増えてしまいます。
これらを解決するのに有効な一つの手段としては、勤怠管理のシステム化があげられます。その中でも、ひとり人事が運用するのであれば、クラウド型の勤怠管理システムの活用をお勧めします。簡単に言うと、出退勤を打刻すると、その記録がクラウド上のサーバーに保管され、自動的に勤務時間の集計が行われるものです。交通系ICカードやスマートフォンなどからの打刻が可能なもの、休暇の申請や管理が可能なものもあります。
クラウド型勤怠管理システムには下記の3つのメリットがあります(クラウドそのものについてや各システムの詳細などについては省略いたします)。
- 事務効率改善とコスト削減
- 正確かつリアルタイムな労働時間の把握による労務リスクの予防
- 柔軟な働き方への対応
それぞれ見てみましょう。
1.業務効率改善とコスト削減
労働時間の集計は、時間と手間がかかるものです。集計以前に、勤務表の回収と内容の確認作業に時間がかかることも特徴であり、人事だけでなく、勤務表を提出する本人、承認する上司など、すべての従業員が関わる作業なのです。月末になって慌てて1か月分の休暇を申請する従業員と、承認に追われる上司…という光景もみられるのではないでしょうか。事業場が複数に分かれていたり、外出で連絡がつきにくい従業員がいたりする場合などは、さらに多大な時間と労力がかかることとなります。クラウド上で勤怠管理を行っていれば、これらの作業を大幅に削減することができます。
また、多くの中小企業では、専任のシステム担当者がいないため、システム導入後の保守やバックアップなどの作業を誰が行うのかが問題になりがちです。労働時間の記録については保存が義務づけられているものですが、事故や災害まで考慮して安全に保管するには実は高度な知識と作業が必要となります。にもかかわらず、ひとり人事がボランティア的に対応せざるを得ないケースもあります。クラウド系のシステムであれば、これらの作業も不要となるため、安価で安全なシステム運用が可能になるのです。
2.正確かつリアルタイムな労働時間の把握による労務リスクの予防
勤怠の締め日を過ぎてから勤務表を回収する方式では、回収後でないとその月の時間外労働などの稼動状況がわかりませんが、勤怠管理システムでは、リアルタイムな労働時間把握が可能となります。時間外労働については36協定に定める時間内に収める必要がありますが、事前に警告を発することも可能になります。上司にとっても部下の勤務状況の把握が容易になります。
その他、トラブル社員が発生する初期兆候としては、勤怠に乱れ(遅刻など)がみられることがよくありますが、こういった社員に対しても早期に注意を払うことができます。客先常駐などで状況の把握が難しい社員に対するケアも可能になります。人事施策を行う上で必要となる勤怠データを、手間なく早く正確に押さえることができるのです。
3.柔軟な働き方への対応
クラウド型の勤怠管理システムは、インターネットに接続できる環境さえあれば、場所や端末を問いません。オフィスにしばられない働き方も可能になりますし、上司が遠方の部下の勤怠管理を行うことも可能になります。東日本大震災の直後、一時的な在宅勤務が行われたケースについても、クラウド型勤怠管理システムが導入されていたために勤怠管理も給与計算も止まらずに処理できたという例もあります。
また、勤怠管理システムを導入したところ、有給休暇をとりやすくなったという声が上がったケースもあります。対面だと遠慮して言い出しにくかったところが、システム上からだと申請しやすくなったというのが理由のようです。もちろん、休暇の取得については対面でもきちんと伝え合える関係作りも必要ですし、それが好ましいかどうかは別の議論もあるところですが、休暇の取得率向上そのものは好ましいことといえるでしょう。
クラウド型の勤怠管理システムにも何種類かあり、特徴がありますが、システム選定や導入にあたっては、衛生委員会のメンバーにモニターとして試験運用の協力を仰げば、より実態に則した運用が可能になります。
長時間労働の削減や働き方の見直しのためには、ベースとなるデータの収集が必須です。勤怠管理のシステム化は、ひとり人事の作業軽減のみならず、働きやすい会社づくりの土台となります。労働時間管理手段の一つとして検討されてみてはいかがでしょうか。
【編集部おすすめの「ホワイトペーパー」】
体系的にまとめられた情報の中から必要な部分をパッケージングした業務に役立つ資料です。
執筆者紹介
郡司果林(ぐんじ・かりん)(社会保険労務士) office role代表、第1種衛生管理者。日本大学卒業後にIT企業のSEとなるが、過酷な労働環境に疑問を持ち、社会保険労務士の資格を取得して外資系IT企業の人事担当に転職。10年あまり人事担当として、社内の規程整備、衛生委員会の構築運営、メンタルヘルスケア対応等を行ってきた。現在は独立し、労務相談実績1500件を超える。
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
コラム
「ひとり人事」の職場改善計画
「就業規則」が人材定着・採用力強化ツールになる?
「人材が採用できない」「せっかく採用した社員がすぐ辞めてしまう」といったご相談が増えてきています。人材採用難にすぐ効く特効薬はありません。魅力的な言葉や媒体の活用で人材獲得できたと...
2016.08.05
-
コラム
安全衛生委員会の活用によって、長時間労働削減が可能になる?
衛生委員会を活用して、長時間労働削減に取り組もう
長時間労働に対する労働基準監督署の調査が厳しくなっています。ひとり人事としても対策を取りたいところですが、人事主導で進めようとしても苦戦してしまうのが現状ではないでしょうか。なぜな...
2016.07.13
-
コラム
「ひとり人事」の職場改善計画
「ひとり人事」が職場で健康診断の受診率を上げるには?
新年度も始まり、春の健康診断が始まっている会社も多いことと思います。皆様の会社の健康診断受診状況はいかがでしょうか?受診率があがらなくて困っている、またはなかなか受診してくれない社...
2016.06.01
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第3回
シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
シニア層の活躍: 未経験業界への挑戦第1回は、シニア層の就業実態および意識をシニア個人と企業双方の視点からお伝えし、第2回では、積み重ねたキャリアで得たスキルや専門性を生かして生き...
2023.08.25
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第2回
シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
シニア人材の採用と活躍:スキルと経験を生かす方法第1回では、リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した「シニア層の就業実態・意識調査(個人編・企業編)」をもとに...
2023.08.18
-
コラムニュース・トレンド
「人的資本経営」の実践のポイント 第4回
人的資本経営の実践に向けて――マネジャーのリスキリング
人的資本経営の実践の要となるミドルマネジャーの「リスキリング」に注目本連載では、人的資本経営の実践のポイントとして、「人的資本の情報開示」「人事部の役割変化」「ミドルマネジメントの...
2023.08.10
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?