人事の10分読書vol.18『対立を歓迎するリーダーシップ』
2022.08.30

@人事が、本の要約サイト「フライヤー」とコラボし、人事のスキルアップにつながる書籍の要約をお届けする連載企画「人事の10分読書」。
第18回は『対立を歓迎するリーダーシップ-組織のあらゆる困難・葛藤を力に変える-』(日本能率協会マネジメントセンター)を紹介する。
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おすすめポイント
組織で新しいプロジェクトを始める際は、反対意見が出ることがほとんどだ。用意周到なリーダーであれば、反論に対抗するデータや数字を入念に用意するだろう。しかし、それで抵抗勢力を納得させられるとは限らず、対立の構図が続く。また、組織のみならず国際情勢においても対立は色濃く存在している。
プロセスワークの創始者である著者は、そうした対立に、驚くべき切り口で解決の糸口を探る。その手法は、物理学、心理学、武術、シャーマニズムなど、あらゆる知恵を融合した「気づき」の極意とも呼べる。
たいていの物事には陰と陽の両方の側面がある。陰と陽は明確に分けられるものではない。同様のことが、組織や集団にもいえる。著者は、フィールドと呼ばれるその場のあいまいな空気や磁場のような作用を、人や場所、役割といった要素に分解し、それぞれに主張させたり、立場を入れ替えたりすることで、参加者に「気づき」を促す。その気づき、つまりアウェアネスこそが対立を解決に導き、その場を学びの場に進化させるのだという。
課題解決に必要なのはデータでもロジックでもなく、その場に寄り添い、気づくという「陰」の姿勢である。この発想は組織や社会の課題解決に臨むリーダーにとって大きな希望になるのではないか。本書をじっくり味わうことで見えてくる「気づき」の極意は、一生ものの財産となってくれるはずだ。
【菅谷真帆子(ライター詳細)】
著者プロフィール
アーノルド・ミンデル(Arnold Mindell)
著作に、『ドリームボディ―自己(セルフ)を明らかにする身体』(誠信書房 2002)、『プロセス指向のドリームワーク―夢分析を超えて』(春秋社 2003)、『Quantum Mind』、『シャーマンズボディ―心身の健康・人間関係・コミュニティを変容させる新しいシャーマニズム』(コスモス・ライブラリー 2001)ほか。夢とボディワーク、ユング療法とグループプロセス、意識、シャーマニズム、量子物理学、葛藤解決などを統合した革新的なアプローチで、世界中で知られている。米国内外を広く旅し、ワークショップを開催するほか、専門家会議やテレビ・ラジオ番組にも多数出演。現在は、オレゴン州ポートランドに在住。
『対立を歓迎するリーダーシップ』の要点の要点
- 集団の中で物事に対して力を働かせるものを「フィールド」と呼ぶ。フィールドは愛や嫉妬といった感情や、対立などの緊張関係を通じて知覚できる。フィールドにおける攻撃的な極と平和的な極は「タイムスピリット」と呼ぶ。
- ファシリテーターはグループワークにおいて、フィールドのエネルギーが陰と陽にふれながら自己均衡化する動きを感じ取る必要がある。ファシリテーターがフィールドのすべての要素を重要視し、参加者に何が起こっているかに気づくよう、アウェアネスを促すことで、集団自らが対立の解決をめざすことができる。
フィールドの要素
自然に従うワールドワーク
本書は、プロセスワークにおける集団へのアプローチ、ワールドワークについて述べたものだ。プロセスワークとは、人が気づいていない自分自身や組織、社会の可能性に気づいて、それを実現していくのをサポートする手法である。そしてワールドワークは、心理学、物理学、スピリチュアルな伝統の知識をそれぞれ活用して、集団の変容を促すものだ。著者はワールドワークによって、個人・組織いずれの観点からも、より有意義で楽しい世界の創造を目指していく。
このワールドワークは、ディープ・デモクラシーの姿勢があってこそ効力を発揮する。その姿勢とは、人間のすべての部分や世界のあらゆる視点は本来的に重要であると信じる特別な感覚(フィーリング)といえる。ディープ・デモクラシーの感覚は不変のものであり、武道や老荘思想などのスピリチュアルな伝統に由来している。
ワールドワークの土台には民主主義があるが、民主主義的感覚はほとんどの人が持ち合わせていない。たとえば、リーダーに不平不満をいう一方で、公的行事へ参加しないといった行動をとり、リーダーに独裁的な力を与えることもある。ワールドワークを成功させるためには、まず私たち一人ひとりの成長が欠かせない。
ワールドワークの中心には自然の概念がある。病気や憎悪という困難な事象すら、ありのままに受け入れ、思いやりとアウェアネス(気づき)を持って流れに従うと、それらを役立つものにできるという。このプロセスの姿勢を、京都・東福寺の福島慶道老師は「日日是好日」と表現した。
フィールド理論
組織を巨大な氷山として捉えてみよう。指導的立場にある人は水面よりも上に立って、氷山の行き先を見据えている。一方、従業員たちは水面下で集団全体を支えつつも、組織の方向性やビジョンを知らない。そして、より具体的に組織の現実を表すうえでは、スピリチュアルなビジョンや感情、ムードなどの影響がある。これらの目に見えない影響は、物理学ではシャドーエネルギー、ユング心理学では集合的無意識と表現されるものだ。
組織の性質は、その構造や目的によってのみ決まるのではない。組織内の人間関係の対立、嫉妬、妬みなどの感情的要素の影響も受けるものだ。著者は、集団における目に見えない磁場のようなもの、ある場所で物事に対して力を働かせるものを「フィールド」と呼ぶ。フィールドは人間を集団へと組織化するものであり、個人と集団の信念として姿を表していく。
フィールドには境界がなく、それはあらゆる場所に存在する。また老荘思想において、フィールドは「道(タオ)」という天道に沿って流れる力として経験される。老荘思想では、物事を動かそうとする際、抵抗が最も少ない線に沿って進むべきだとされる。フィールド理論においてこれは、内面の感覚と外部への状況の両方に従うべきだということになる。
私たちはこれらのフィールドを、愛や嫉妬といった感情や、人種間対立や内部者・外部者の対立などの緊張関係を通じて感じ、知覚する。このフィールドは恒久的なものではなく、進化していくものだ。その進化は危険な方向へ向かうこともあれば、平和な方向へ向かうこともある。
タイムスピリット
フィールドに緊張と対立をもたらすものは何だろうか。一つの見方としては、人々の差異や分極化がその引き金となる。フィールドもまた、人間関係の問題に影響する。ほとんどの場合、ワークは事象の起源を本人が知らないまま進んでいく。このようなフィールドを表現するために、著者は、その場における攻撃的な極と平和的な極を「タイムスピリット」と名づけた。
タイムスピリットは二極が対になって現れる傾向にある。例えばマジョリティとマイノリティの対立するフィールドには、世界共通でマイノリティに対する類似した性質がある。マイノリティは「異質で、奇妙で、危険」であり、「非難されるべき」といった信念を、人種、宗教、性別にかかわらず普遍的にもってしまう傾向にあるのだ。
マジョリティとマイノリティの衝突はフィールドによって組織されたものであり、分断のタイムスピリットであるといえる。タイムスピリットは恒常的なものでなく変容していくものであることに留意したい。
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