残業大国ニッポンの岐路
「惰性の残業」は今日でおしまい。「複業」で賢く時間を投資しよう
2016.08.22
今年も例に漏れずあっという間にお盆休みが過ぎ去ってしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。「次の大型連休はいつだっけ」と「休み」が恋しくなってなかなか仕事に身が入らない方もいれば、リオオリンピックでの日本人選手の活躍に刺激を受けて「よし、自分も頑張ろう!」と奮起した方もいらっしゃるかもしれません。
ところで皆さんは「残業」していますか?
「労働時間に関する調査」によれば、全体のうち約6割が「残業を命じられることがある」と回答しているので、「残業は全くしていない」という人は少数派かもしれません。
「残業大国ニッポン」において、もはや「残業が当たり前」という価値観が染み付いてしまっている人も少なくありませんが、冷静に考えれば異常なこと。「延長戦が当たり前」って、よく考えてみたらおかしい話ですよね。
なぜ、私たちは残業するのか?
そもそも、なぜ私たちは残業をするのでしょうか。
前述の「労働時間に関する調査」にもある通り、残業をする理由の中で一番多かったのが「仕事量が多く時間内に処理しきれない」ことや、「多すぎる仕事を分担できるメンバーが少ない」など、「業務量の多さ」が一番の原因のようです。
一方で、「職場に長時間労働が評価される風潮がある」「残業代を稼ぎたいと思っている」「残業を前提に業務を組み立てている」などの理由で残業をしている人が一定数いることも見逃せない事実です。もしあなたがこうした理由で残業をしてしまっているとしたら、すぐにでも見直すべきです。なぜなら、「残業」は自分の時間を蝕むだけでなく、「残業手当」という形で会社のリソースに負担がかかることに加え、周囲もつられて残業してしまうという「諸悪の根源」だからです。
「惰性の残業」はもうおしまいにしよう
もちろん、中には「寝食を忘れて仕事に没頭していた」というようなケースもあるでしょうし、このような「ポジティブな残業」は自分自身を大きく成長させてくれる機会になることもまた事実です。「残業」という概念を忘れてしまうほど、本気で仕事に没頭できるというのはとても幸せなことですよね。また、突発的なトラブル発生による残業など、やむを得ない残業ももちろんあります。
一方で、そのようにポジティブな理由ややむを得ない理由で残業している人は実際にはごく僅かで、ほとんどの残業は「惰性」によって生まれています。本人に「惰性」という認識がなく「仕事量が多すぎるので残業はやむなし」と思っていたとしても、時間内に仕事を終わらせる工夫を怠っていて、結果的に残業が日常的になっているならば、それは「惰性的な残業」と言わざるを得ません。
そのような惰性的な残業は、「残業手当」という形で会社の利益を毀損するだけでなく、自分の時間を切り売りすることで自分を消耗させてしまうことになります。(残業代が発生しない「サービス残業」がもっと悪い、というのは言うまでもありません)
AI・IoT時代において、「たくさんの時間働けるだけの人材」は機械やテクノロジーに代替されてしまいます。これからの時代において会社や市場から本当に評価されるのは、限られた時間の中で大きな成果を上げられる人材や、アルゴリズムの延長線上にはない、非連続なアイデアを生み出せる人材です。
そんな時代において、残業代や周囲の視線という短期的なものに囚われて惰性で残業し続けるのは、自らの首を絞めるようなものです。
複業は「時間」の賢い「投資先」
24時間365日というのは、人類に平等に与えられた有限かつ貴重な資源です。だからこそ、この「時間」という貴重な資源をどう使うか?が人生を分けると言っても過言ではありません。そう考えると、「惰性な残業」がいかにもったいないことか、ピンと来るかもしれません。
限りある資源である「時間」を生み出すには、ムダな時間を減らすほかありません。「終わるまでにとにかくがむしゃらにやる」のではなく、「限られた時間の中で高い成果を上げる方法を考え抜いて実行する」というやり方にシフトすれば、自ずとムダは省けます。
次に重要なのは、ムダを省くことで生まれた「時間」という資源をどこに投資するか?です。自分自身の知識の幅を広げるために読書やセミナーなど「学び」に没頭するもよし、リフレッシュするために「趣味」に没頭するもよし、家族をお持ちの方であれば、家事や育児など家族のために使うもよしでしょう。時間の使い方は自由自在、十人十色ですが、個人的にオススメな時間の投資先が「複業」です。
「複業」は単なるお小遣い稼ぎ的な「副業」とは異なり、「もう一つのナリワイ」を持つことを指します。こうした「パラレルキャリア」という働き方も最近では珍しくなくなってきました。
「フクギョウ」というと、ひと昔前までは「株式投資・FX」や「せどり」、「アフィリエイト」くらいしかありませんでしたが、今ではランサーズやクラウドワークスといったクラウドソーシングサイトや、ビザスク、ココナラなどのスキルシェアサービスが普及していて、インターネット上で誰でも簡単に個人で仕事ができる時代になりました。
そういったサイトをのぞいて見て、自分のスキルが活かせそうな仕事にチャレンジしてみるのもよいですし、ビジョンに共感して友人がやっている会社やサービスを手伝ってみるのも面白そうです。もし仮に会社が「副業禁止」をしているならば、お金をもらわずに、「プロボノ」としてコミットしてみるのもよいでしょう。そこで得られた経験や実績は間違いなく本業にも役立ちますし、複業でつながったご縁がきっかけで思わぬ仕事が生まれ、成功につながることも少なくありません。
「残業ありき」の仕事の進め方を見直して、いま残業に使ってしまっているもったいない時間を複業に投資してみませんか? 「惰性の残業」を減らして時間という限られた資源を有効に投資することで「替えの効かないビジネスパーソン」を目指しましょう。
執筆者紹介
西村創一朗(にしむら・そういちろう) HRイノベーター/複業研究家。1988年、神奈川県生まれ。首都大学東京法学系を卒業後、2011年に新卒で株式会社リクルートキャリアに入社し、法人営業、新規事業企画、人事採用を歴任。本業の傍ら「二兎を追って二兎を得れる世の中をつくる」をビジョンに掲げ、2015年に株式会社HARESを創業。2016年末にリクルートキャリアを退職し、独立。 プライベートでは三児のパパ。NPO法人ファザーリングジャパン理事。週末は地域の少年サッカークラブのコーチも務める。2017年9月より「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(経産省)の委員を務める。
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