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特集

「経営判断ツール」「企業価値創出ツール」としてのISO 30414実務完全マニュアルvol.1


ISO 30414とは――日本企業が労務と人事企画で取り入れる価値

2022.02.04

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人事界隈でもISO 30414への関心が高まっている。2018年12月に国際標準化機構(ISO)が発表した「人的資本の情報開示のためのガイドライン」の考え方を、組織開発や人材開発へと取り入れようと、人材戦略/経営戦略の見直しを検討する企業の動きも出始めている。
しかし、人事担当者や経営者が現場で実践していくための方法論や活用方法についてはまだ情報があまりない。

そこで@人事は、ISO 30414を「経営判断ツール」「企業価値創出ツール」として実践していくための情報を体系的にまとめた(マニュアル)特集を企画した。ISO 30414リードコンサルタントとしてすでに企業を支援している社会保険労務士や専門家の執筆・監修協力を仰ぎ、5回にわたり解説する。

第1回は、ISO 30414を日本企業が労務と人事企画で取り入れる価値を考えていく。解説は社会保険労務士・ISO 30414リードコンサルタントの松井勇策氏、監修はSP総研代表でHRテクノロジーコンソーシアム理事の民岡良氏。

目次
  1. ISO 30414の機能、人に関する合理的な「経営判断ツール」、信用力や価値向上の要としての「企業価値創出ツール」
  2. 国内の専門家や団体の間で、現場的な解釈が検討されている
  3. 日本国内の労務法務上の運用や、人事企画上の運用との接続が必須
  4. ISO 30414の位置づけや背景、人的資本の開示や活用の意味

ISO 30414の機能、人に関する合理的な「経営判断ツール」、信用力や価値向上の要としての「企業価値創出ツール」

画像:「経営判断ツール」「企業価値創出ツール」としてのISO 30414(@人事編集部)

人的資本開示に関する国際標準ガイドライン「ISO 30414」とは、2018年12月に国際標準化機構(ISO)が発表した、人的資本の開示のためのガイドラインのことです。大きく11領域と58指標で経営を捉えるフレームワークであり、2020年8月に、アメリカにおける証券取引を監督・監視する連邦政府機関、米国証券取引委員会(SEC)が、上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化しました。この流れを受けて、アメリカだけではなく日本国内でも、人的資本の情報開示に関するガイドラインISO 30414に対する関心が高まっています。

ISO 30414は、その目的・内容を実質的に見るときに、企業規模を問わず使うことができる、多面的で完成度の高い、“人”の側面からの「経営判断ツール」であると言えます。
この側面から、あらゆる企業で活用すべきものであると考えます。

そもそもの目的が人的資本の可能性と価値を把握するため、外部に明示を行う機能であることから、ISO 30414の観点で経営上の整備をして外部開示を行うことで企業価値に対する評価を飛躍的に高め、大きな信頼性向上をもたらす価値があることも間違いありません。
上場企業や上場を目指す企業においては開示情報として「企業価値評価」に与える価値が大きいことはもちろん、“人”に関しての対応を誠実に行っている企業であるという「ブランディング」にもなります。職場環境や働き方の有用な情報となるため、採用広報上も大きな意味を発揮します。
また、一般金融やベンチャーキャピタルなどからの融資を受け入れる際、あるいはM&Aを行う場合の信頼性向上などにおいても大きな価値があるものであると言えます。

ISO 30414は、現時点では国内において先行者利益も持っていると言える、「企業価値創出ツール」なのです。

しかしながらこうした「経営判断ツール・企業価値創出ツール」として使用するにはISO  30414の全体の項目を網羅して捉えるとともに、社会的に納得できるロジックで現状と方針を決定し、それを表現する必要があります。
重要なポイントは日本ですでに行われている労務法務上の制度や慣行、通常行われている人事制度やHRテクノロジーの活用などの実務がISO 30414の項目との関係性が極めて強いことです。
よって、通常行われているそういった実務の一般水準を理解する必要があり、その上で全体を有機的に捉えていく必要があるものの、そうした認識や方法が一般的にまだあまり定まっていないということです。

画像:「経営判断ツール」「企業価値創出ツール」としてのISO 30414(@人事編集部)

本特集では、上記の認識に基づいて、ISO 30414の各カテゴリー・各領域・指標をどのように捉え、実務の中でどう分析し、活用できるのかを具体的にお伝えします。

国内の専門家や団体の間で、現場的な解釈が検討されている

国内でもさまざまな専門家や団体において研究や発信の動きがあります。私は社会保険労務士として、企業の制度構築や上場時の人事労務監査などに日常的に関わっています。

東京都社会保険労務士会に、私が責任者を務めている社労士の新業務領域を研究している研究団体・先進人事経営検討会議があります。この組織でも、社会保険労務士がIPOやM&A時に従来から行っている人事労務監査業務で「ISO 30414の基準を活用できるのではないか」ということで、事例や基準の研究を行っています。実際、IPOを予定している企業の関与・分析事例も出始めています。

また、国内では先行して、HRテクノロジーや人事データ分析などを広く扱う一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアムが有識者によるセミナー開催や研究発表を行い、非常に活用できる情報源です。

こうした情報源を活用することで、特に、次項以降に述べるISO 30414のローカライズ運用や日本における労務法務上の制度、制度上の整備の一般的な水準を知ること。また人事企画上のHRテクノロジーの現場運用や現在の活用の一般的な水準などを理解するのに(必ず意識することが必須)役立てられます。

日本国内の労務法務上の運用や、人事企画上の運用との接続が必須

ISO  30414の基準に書かれていることですが、実際に運用するにあたって、人事業務の慣行が国によって大きく違うため、それぞれの領域・指標の本質に基づき、説得力を持ってローカライズされた形でISO 30414の基準を用いることが必要です。

本特集でも解説しますが、ISO 30414の各領域は、現在の日本の労務法務において行われている制度と直接につながりがあると思われるものが非常に多いです。また、人事業務上のデータ測定を前提とした内容も多くあります。そのため、日本の人事慣行を前提とした、国内で行われているHRテクノロジーの活用方法とリンクさせて捉えていくことが必要です。
ローカライズされた基準で、現実の人事業務と紐づけた理解での活用をしていくことで、ISO  30414は有用なツールとして存在感を示すことができます。

たとえば、労働安全衛生法上のストレスチェックやパワハラ防止法、育児休業関連の措置義務などに対応するための研修が行われることがあると思います。こうした法令や制度への理解、一般的に行われる水準への理解が薄いままで、ISO 30414の「倫理とコンプライアンス」の数値把握や分析を行うことは非常にナンセンスです。これは一例であり、他にも影響する領域・指標は多数あります。

画像:「経営判断ツール」「企業価値創出ツール」としてのISO 30414(@人事編集部)

ISO 30414は、どちらかというと中~大規模な企業では内部監査やIR部門で扱われることが多いため、そういった労務運用との接続性が薄いままで考察がされていることが散見されます。労務法務上の日常の運用や、人事企画上の情報管理や活用との接続性を強く意識して活用することが必須であり、そのために日本国内の人事・労務法務・現在のHRテクノロジーの関連した領域の理解と一般水準の強い体系的な認識が必須です。

ISO 30414の位置づけや背景、人的資本の開示や活用の意味

一度前提に立ち返って、そもそも「ISO 30414」として示されている体系の位置づけを整理します。そもそも「人的資本」とは、人間が持つ能力を資本として捉える経済学の概念「ヒューマンキャピタル(Human Capital)」の訳語です。人的資本の情報開示とは、人的資本を公表することで、企業の人材戦略を定性的かつ定量的に社内外に向けて明らかにすることです。

ISO 30414は人的資本の情報開示のための「ガイドライン」として位置づけられ開示されています。そもそもISOは、スイスのジュネーブにある非政府機関、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称で、商取引を行うためのさまざまなルールを標準化、つまり規格化している機関です。

ISOの規格には、ISO 30414が該当する「ガイドライン規格」と、もう一つ「要求事項規格」があります。現時点で、ガイドライン規格には日本国内における公的な第三者機関の認証制度はありません。よって、「ISO 30414の認証取得」ということは現時点ではありえないということです。もちろん日本において将来的に認証機関が設けられる可能性はありますが「認証を取得する」ということだけがISO 30414の意味ではありません。

米国においてはSECにより上場企業に対して人的資本の開示が義務化されており、開示の枠組みとしてISO 30414が重視され中期的には義務化の方向性になっています。これはISO 30414の「認証」を前提としたものではありません。さらにドイツなどではガイドラインの認証がされており既に認証されている企業もあり、国際的に各国の状況は違います。
しかし、そういった流れの中で広く認識され、認証取得に関わらず汎用的な基準として有効に用いることができる点などから、包括的なISO 30414が重視され、国際的に一気に「基準化の流れ」になっているのです。

画像:「経営判断ツール」「企業価値創出ツール」としてのISO 30414(@人事編集部)

日本において人的資本が注目されるきっかけとなった大きな出来事として、2020年9月に経済産業省の発出した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書(人材版伊藤レポート)」があります。同報告書において「持続的な企業価値の向上を実現するためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠である」と記載されています。行政でも人的資本についての計測や開示が推奨される動きは高まっており、今後より一般的なものになっていく可能性が極めて高いと言えます。

次回は、ISO 30414を活用する場合の体系理解と活用方法の全体像などを解説します。

【vol.2「明日からISO 30414を『使う』ための最重要ポイント~使う目的と方法~」につづく】

※情報は記事公開時点

この記事の執筆と監修

執筆:松井勇策

画像:松井勇作(社会保険労務士・公認心理師・ISO30414リードコンサルタント、WEBエンジニア。東京都社会保険労務士会 先進人事経営検討会議 議長・責任者。フォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所代表。)社会保険労務士・公認心理師 (人的資本の国際資格)GRIスタンダード公式講座修了認証ISO30414リードコンサルタント
東京都社会保険労務士会 先進人事経営検討会議議長・責任者。㈳人間能力開発機構 評議員。人的資本については国際情報から関連する国内の制度までを2020年当時から研究・先行した実務に着手。ほか関連するIPO上場整備支援、人事制度構築、エンゲージメントサーベイや適性検査等のHRテック商品開発支援等。前職の㈱リクルートにおいて、組織人事コンサルティング・東証一部上場時の上場監査の事業部責任者等を歴任。心理査定や組織調査を研究機関で研究中。
著書「現代の人事の最新課題」日本テレビ「スッキリ」雇用問題コメンテーター出演、ほか寄稿多数。
https://forestconsulting1.jpn.org

監修:民岡良

画像:民岡良(株式会社SP総研 代表取締役、人事ソリューション・エヴァンジェリスト、HRテクノロジーコンソーシアム 理事)株式会社SP総研 代表取締役、人事ソリューション・エヴァンジェリスト、HRテクノロジーコンソーシアム 理事。慶應義塾大学 経済学部を卒業後、日本オラクル、SAPジャパン、日本IBM、ウイングアーク1stを経て2021年5月より現職。日本企業の人事部におけるデータ活用ならびにジョブ定義、スキル・コンピテンシー定義を促進させるための啓蒙活動にも従事。「人的資本の情報開示」(ISO  30414)に関する取り組みについても造詣が深い。著書に「HRテクノロジーで人事が変わる」(2018年労務行政、共著)等がある。労政時報セミナー、HRテクノロジーカンファレンス等、登壇実績多数。
https://www.sp-inst.com/
https://hr-technology.or.jp/

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