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エンゲージメント向上、リスキリングなど利用目的にも広がり


「本の要約」や「食事補助」などリモートワーク下で見直される福利厚生

2022.01.12

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コロナ禍は企業の働き方をさまざまな面で見直すきっかけになった。その一つに福利厚生がある。リモートワークの浸透で、従来の出社を前提に導入していた制度では十分に役割を果たせないと廃止する企業も増えた。一方で、新たな福利厚生を活用してエンゲージメント向上やリスキリングを強化する企業も出てきている。
今回、コロナ禍で見直される福利厚生の動向を探った。実際に活用されているサービスの情報もあわせて紹介する。【取材:@人事編集部】

目次
  1. リスキリングやビジネスリテラシー向上に「本の要約」を福利厚生として導入
  2. 従業員エンゲージメント向上への期待、福利厚生の“不公平感是正”で注目の食事補助サービス
  3. 記事で登場した福利厚生サービスの紹介

リスキリングやビジネスリテラシー向上に「本の要約」を福利厚生として導入

「TSUTAYA BOOKSTORE則武新町」にあるフライヤーの企画コーナー。提供:フライヤー

「TSUTAYA BOOKSTORE則武新町」にあるフライヤーの企画コーナー(提供:フライヤー)

2021年10月27日、名古屋市のイオンモールNagoya Noritake Garden内「TSUTAYA BOOKSTORE則武新町」に、ビジネスパーソン向けの書籍コーナーが設けられた【上写真】。手掛けたのは、本の要約サービス「flier」を運営するフライヤー(東京・千代田)だ。
並べられた書籍は、書店の特徴やフライヤー内の要約閲覧数などから選書。書籍を紹介するPOPにはQRコードが表示してあり、読み込むとflierの要約が体験できる。
フライヤーのこの企画は書店に足を運ぶ人のニーズに応えた選書が好評で、2021年11月末時点で全国877店舗の書店で常設棚を設置している。

flierは2013年にBtoC向けのサービスとしてスタートしたが、企業の人材育成に活用したいというニーズの高まりから2018年に法人向けへの展開を強化。ビジネスパーソン向け書籍の要約も増やした。
画像:フライヤー・法人営業チームマネージャー島津知将氏「法人契約社数は、2019年の3倍強の増加率で急伸しています。今後は、87万人を超える個人会員と法人を合算した累計会員数を、2022年中に120万人超までに引き上げ、より多くのビジネスマンの学び直しやリスキリングに寄与したいと思っています」(フライヤー・法人営業チームマネージャー島津知将氏【右写真】

flierの法人契約が伸びている背景の1つには、コロナ禍を契機に企業側の人材育成の考え方が変わってきているからだと島津氏は話す。
「リモートワークの浸透が企業にデジタルシフトを突き付けた面はあります。コロナ以前もなんとなくは考えていた、“急速に変わる世の中の変化に対応する人材の育成”を本気で考えるようになったのではないでしょうか。我々が提案している“自ら学び続ける人材を育成しましょう”という呼びかけに耳を傾ける企業様が増えてきています」

PCだけでなくスマホやタブレットからでも時間や場所の制限を受けずに学べる利点や、独自のカリキュラムでビジネス知識を体系的に学べる機能などもあり、最近はリスキリング(学び直し)やビジネスリテラシー向上にも活用したいと、福利厚生としてflierを導入している企業も増えているという。

【関連記事】本の要約サービス「flier(フライヤー)」の法人向け読書プログラム 「フライヤースクール」にアプリ版が登場

従業員エンゲージメント向上への期待、福利厚生の“不公平感是正”で注目の食事補助サービス

10月1日は多くの企業で内定式が行われる。コロナ禍の影響から内定式を中止する企業もいる一方で、オンラインに切り替えて実施する企業も少なくない。エヌエヌ⽣命保険(東京・渋谷)の担当者はオンラインでの内定式開催の背景をこう説明する。
「昨年のオンライン内定式の評価も⾼く、今年の学⽣は採⽤段階からオンラインの選考を実施して慣れていることから、今年の内定式もオンラインにした。⼈事担当者はもちろん、内定者同⼠でも交流を深めて、4⽉の⼊社まで継続してフォローしたい」

同社は10月1日に2022年4月⼊社予定の内定者23名を対象にオンライン内定式を実施。 ⽬的は「内定者同⼠のコミュニケーション強化」だ。内定式のプログラムにはオンラインでのチームビルディング研修を取り入れたほか、OKANの「オフィスおかん仕送り便」を利用しながらの懇親会も企画した。

画像:「オフィスおかん仕送り便」の総菜を食べながらオンラインでの懇親会を企画した(提供:OKAN)

「オフィスおかん仕送り便」の総菜を食べながらオンラインでの懇親会を実施した(提供:OKAN)

「オフィスおかん仕送り便」はコロナ禍の2020年5月にリリースした福利厚生サービスで、企業側が従業員の自宅に食事を届けることができる。これまでのべ3,000件以上の利用実績がある(2021年10月時点)。リモートワーク中の日々の昼食や、社内コミュニケーション強化のための懇親会時での活用のほか、地方拠点や少人数の支店の福利厚生としての利用など、活用方法はさまざまだ。

画像:事前に内定者の自宅に「オフィスおかん仕送り便セット」が送付された(提供:OKAN)

事前に内定者の自宅に「オフィスおかん仕送り便セット」が送付された(提供:OKAN)

出社・リモートのハイブリッド勤務になっても公平性を保つ

背景にはコロナ前後では食事補助サービスの役割が変わってきている側面がある。リモートワークが増えたことで、社員と会社の関係性に変化が生じ、従業員に対して、会社からのケアを体現する手段として食事補助を新たに導入するケースもある。会社と従業員の距離感が希薄になる中で、従業員のエンゲージメントを向上させようとして、その1つの手段に食事補助を選ぶ企業も出てきている。

全国66,000店以上の飲食店やコンビニで常時利用できる食事補助サービス「チケットレストラン」を提供するエデンレッドジャパン(東京・千代田)は、2020年に発出された1回目の非常事態宣言と2回目の非常事態宣言時で比較し、コロナに起因する福利厚生の新設・見直しの問い合わせは約10倍以上に増えたという。

「これまでは、弊社のソリューション導入企業は社員食堂を持たない企業や、外勤の従業員が多く、例えばトラックのドライバーなど運送業や運輸系の会社様で社員食堂を設けても外で働く従業員を多く抱えており、社員食堂の設置があまり多くの意味を持たない企業が導入されていました。しかし、出社が前提の社員食堂で食事を提供されていた企業が、リモートワークの時も食事の補助をしたいということで、お問い合わせをいただくことが増えています」(同社)

こうしたOKANやエデンレッドジャパンの食事補助サービスの導入は、出社した際にのみ福利厚生として受けられる社食サービスと違い、在宅勤務時の社員も利用できる。出社とリモートワークを併用するハイブリッド型の働き方になっても、社員の働き方に関わらず公平性を保った福利厚生を提供できるメリットもある。

記事で登場した福利厚生サービスの紹介

本の要約サービス「flier(フライヤー)」/株式会社フライヤー
https://www.flierinc.com/

画像:本の要約サービス「flier(フライヤー)」1記事約4000字で、10分程度で読め、通勤や休憩時といったスキマ時間を有効活用し、効率よくビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたい知的好奇心の旺盛なビジネスパーソンの利用が多い。新刊(掲載書籍の8割)を中心に、毎日1冊の要約文をアップ。2021年10月時点で2600冊超を掲載している。

特長は「書評(レビュー)」ではなく「要約」である点。書き手の主観が入る書評とは異なり、著者の主張や論理(重要ポイントや全体像)を忠実にまとめ、読者に伝える。公開する要約はいずれも出版社や著者から許可を得たもので品質も保障されている。
ロジカルシンキングやマネジメントなどビジネスパーソンが身につけておきたい知識(テーマ)を独自の読書カリキュラムを通して体系的に学ぶことができる「スクール」機能があり、法人契約ユーザーは無料で利用できる。AIの音声読み上げ機能や、ユーザー同士で要約から得た学びを情報交換(シェア)するSNSサービスなど、新たな施策も企業からの好評を得ている。

利用プラン(料金例など)

法人向け 月額税込み22,000円(アカウント数20名まで)から
ほか、個人向けプランもあり

導入事例紹介:株式会社キットアライブ

【導入目的】
2020年の4月から在宅勤務にシフトし、外出自粛が続く中では気軽に書店に行けず、ECサイトのレビューだけを見ても、本を選ぶのは難しい。個人目標として「読書」を掲げている社員も多く、本を選ぶツールがほしいと思っていた。エンジニアは営業的な提案活動も行うため、高いビジネススキルが求められるため、ITリテラシーだけが高くても、ビジネスに必要な知識やスキルがなければ、お客様の課題は解決できない。flierが読書のハードルを下げてくれれば、ビジネスリテラシーの底上げにつながるのではないかと考えた。

【導入状況】
クラウドソリューション部では、各グループで行われる朝会で、読んだ要約の感想を発表。加えて、要約力を向上させることと、伝える練習をすることを目的に、要約を3分以内に「要約」してみることも。また、就業時間内に自由に利用できる学習時間を設けており、その時間を使ってflierを読む社員もいる。

そのほかの導入事例:https://www.flierinc.com/business/bizcase

オフィスおかん仕送り便/株式会社OKAN
https://office.okan.jp/blog/shiokuri_bin/

画像:オフィスおかん仕送り便(株式会社OKAN

オフィスおかん仕送り便は、調理済み個包装になったお惣菜を、10個セットで従業員の⾃宅にお届けする宅配社食サービス。福利厚⽣として、従業員の皆様に健康的な⾷事をとっていただくことができる。サブスクではなく単月契約のため、毎月のリモートワーク率にあわせて注文セット数もコントロールが可能、社内行事の食事としても単発で利用できる。

利用プラン(料金例など)

  1. 「仕送りプラン」企業担当者が配送先リストを集約し、月に1度 一括で配送。
  2. 「チケットプラン」企業がクーポンを購入し従業員へ配布し、従業員個々で割り当てられたクーポンコードと送付先住所をECサイト上から申請。従業員のすきなタイミングでの注文が可能に。

導入事例

導入事例:https://office.okan.jp/case/

働く人のランチサポート「Ticket Restaurant 」/株式会社エデンレッドジャパン
https://ticketrestaurant.jp/

画像:働く人のランチサポート「Ticket Restaurant 」 https://ticketrestaurant.jp/ 株式会社エデンレッドジャパン

チケットレストランは、食事のみに利用することができる電子マネーを発行することで、会社・外出先の周辺の、リモートワークの際にはご自宅周辺の飲食店を社員食堂代わりとして、会社からの補助を受け食事をすることができる仕組み。
福利厚生の一環として、全国2,000社を超える企業で採用され、食事に関する福利厚生としては国内最大級の加盟店ネットワーク、導入実績を誇る。
また、一定要件を満たすと会社からの補助が所得税法上・非課税で受け取ることができるなど税制優遇もあり、会社・従業員双方にとってメリットがあるサービスだ。

利用プラン(料金例など)

企業から提供される補助を非課税で受け取る場合、月々会社からの補助額の最大が3,500円+消費税と規定されており、同時に従業員が同額以上を負担することがルールとして決まっている。エデンレッドジャパンによれば利用企業のほとんどが、会社補助額と従業員負担分の7,000円+消費税を毎月チャージしているという。
この金額は上限額で、各企業の予算に応じ任意で調整することは可能だが、従業員の満足度を最大化したい理由で上限額での支給を行っている企業も多い。

導入事例

導入事例:https://ticketrestaurant.jp/cases/

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【おすすめポイント】
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職場のコミュニケーション活性化に役立つ施策8選【DL資料】

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職場のコミュニケーション活性化に役立つ施策8選をピックアップし、概要や効果をまとめました。職場のコミュニケーション活性化のアイデアを探している方はぜひ参考にしてください。
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