キャリアセンターに聞いてみました
「企業の面接方法にモノ申したい…!」法政大学 キャリアセンター大山賢一氏
2016.09.07
日々、大量の求人依頼が届く有名大学のキャリアセンター。企業と学生の懸け橋となり、双方を見続ける彼らは、日々どういった視点を持ち、業務に取り組んでいるのか。今回は法政大学キャリアセンターの大山賢一氏に、16年卒採用の振り返りと、17年卒の現状、企業の人事に求めたいことなどを聞いた。(取材:2016年7月下旬)
17卒はすでに8割が内定保有
法政大学 キャリアセンター市ヶ谷事務課課長・大山賢一氏
――大幅なスケジュール変更があった16年卒の採用・就職活動について。学生たちの活動時期の実態はどのようなものだったか?
大山賢一:例年に比べると、「広報開始3月1日」を素直に信じて、2月ごろまではのんびりしていた学生が一定数いました。やきもきしていましたが、企業側の採用熱が高いこともあり、就職率(卒業生のうち、就職希望者の就職決定率)は15年卒の97.5%に引き続き、16年卒も98%と高い水準をキープすることができました。
――17年卒では、学生たちの動向はどうか?
大山:16年卒の先輩たちの動向を見ているせいか、就職活動への取り掛かりは17年卒のほうが早かったです。3年生の冬頃には就活を意識している学生も多い。市ヶ谷キャリアセンターへの個別相談も、15年2月(主に16年卒)だと848件だったのが、16年2月(主に17年卒)では1050件。3月以降も同様に、月200件程度、個別相談の件数が増えています。7月1日時点のサンプル調査では、17年卒の学生はすでに約8割の学生が内定を得ています。想像以上に、動きは早いようです。
――法政大学の学生には、どのような特徴があるか?
大山:あくまでも個人の感覚ですが、以前に比べるとまじめに授業に出て勉強する学生が増えていると感じます。早朝からキャンパス内にたくさんの学生がいます。法政大学の学生を採用した企業からは、「礼儀正しくまじめで、素直な学生が多い」「困難に立ち向かう強い精神力を持つ」「社交的」といったような声を頂いています。
就職支援を目的に、同窓会組織を立ち上げ
――キャリアセンターでは、低学年向けにどのような支援を行っているか?
大山:新入生向けガイダンスでは、キャリアセンターの使い方のアドバイスをするほか、『アルバイトを考えている新1年生のみなさんへ』という小冊子を作って配布しています。就職活動で「学生時代に頑張ったことは?」と聞かれて「アルバイト」と答える学生は多いと思いますが、ほんの少しの心構えの違いで、身につくものが変わってくるはず。せっかくアルバイトをするのであれば、「知的好奇心を持って周りを見よう」「学びの視点を持とう」といった視点を案内しています。
インターンシップガイダンスや低学年向け業界セミナー、マナー講座など、1、2年生のうちから全員参加できる、勉強会やワークショップを多数設けています。
今年開催したインターンシップガイダンスには、18年卒の学生も増え、低学年のうちからインターンシップに対する意識の高まりがうかがえます。
――3年生以上の支援では、どのようなことを行う?
大山:年間約100社が参加する学内企業説明会の開催や、個別面談の強化を行います。法政大学には、卒業生の同窓会組織がなかったので、卒業生同士同志の交流と在校生の就職支援の目的から、2012年にキャリアセンターが主体となり「法政BCP」を立ち上げました。BCPは、Business Persons Community(企業人コミュニティ)の頭文字です。
年に3回程度、様々な業界に属する若手・中堅の卒業生有志と「はじめてのOBOG訪問」「業界“本音”研究」といった会を設けています。昨年度は延べ170名の卒業生と、現役学生550名が参加しました。
また、内定が決まった4年生の学生がボランティアで、3年生のサポートを行っています。直近で就職活動を行ってきた学生ならではの視点で、「就職活動、具体的な第一歩の踏み出し方」「ゼロから始める自己分析」などのテーマで座談会、グループディスカッションを行ってくれています。
「志望動機」よりも聞いてほしいこと
――市ヶ谷キャンパスのキャリアセンターは、立地がすごくいい。
大山:確かに、1階にコンビニがあり人通りが多い校舎の2階、エレベーター通路のすぐ横と、非常に好立地です。法政大学の「キャリア支援」に対する姿勢だと思います。キャリアセンターに付きまとう「入りにくさ」を払拭すべく、職員一同となり、掲示物の見やすさなども、かなり工夫しています。
――キャリアセンターに紹介依頼がある求人票は、どう取り扱う?
大山:一度、学内のイントラネットにすべて入力を行い、学生がどこからでも検索できるようにしています。広報開始時期ぐらいのタイミングでは、大手のナビを中心に活動している学生たちも、活動が本格化するにつれて、やはり「大学に来た求人」への興味は高まるようです。
――多数の企業の人事担当者が訪れる中、印象に残るのは、どのような担当者か?
大山:やはり何度も足を運んでくださる担当者は自然と覚えます。ありがたいことに、年間約2万件の求人が寄せられるので、なかなかセンター職員個人では、すべての求人を把握しきれません。専任職員で17名、サポートメンバーも合わせると30名で対応していますが、きめ細やかな個別マッチングがやり切れていないことが、われわれの課題です。
――企業の人事担当者に求めたいことは何かあるか?
大山:「センターへのアプローチ」という点では、むしろきめ細やかな対応ができていないわれわれのほうに課題があるので、特に企業側に求めたいことはありません。
ただし、面接方法については、思うことが2つほどあります。1つは、「志望動機」や「業界研究」に関する質問をされた学生が、うまく回答できずにつまずいているケースにでは、もどかしさを感じます。これから社会に出る学生、まだ働いたことがない学生たちには、同業他社の細かい差などはやはり分かりづらいもの。特に「興味があるから詳しく知りたくて、選考会に行った」というような学生の場合、いきなり「当社への志望動機は?」と面接で質問されても、うまく答えることはできません。
もちろん、それだけで企業が判断されているとは思いませんが、もっと学生たちの人間性を見るような質問をたくさんしてもらえたら、と感じるときはよくあります。
もう1つ、大学生活で勉強を頑張ってきた成績優秀な学生が、就職活動で苦労するケースにも、もどかしさを感じています。勉強を一生懸命やってきた分、サークル活動やアルバイトなどを行っていないと、確かに表面的なコミュニケーション能力が、他学生に比べて劣っているケースもあるのですが…。
勉強をコツコツ頑張れる学生は、必ず仕事もコツコツ頑張れると信じています。われわれも学生に対して、「学生時代は、勉強を頑張った」と胸を張って答えていいとアドバイスはしていますが、面接官の方もどうか、勉学を頑張ってきた学生の魅力も引き出すような質問をしてくださると、本当にありがたいです。
・大山賢一(おおやま・けんいち)
法政大学 キャリアセンター市ヶ谷事務課 課長。1991年、法政大学文学部卒業。法政大学施設部、学生センター、大学院事務部を経て、2005年からキャリアセンター市ヶ谷事務課に勤務。
執筆者紹介
玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。
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