人事・総務担当者が知っておきたい知識を解説
2022年版 人事・総務業務に関する法改正一覧【社労士解説】
2021.12.03
2022年も人事・総務担当者や経営者にとって重要な法改正が予定されている。「育児・介護休業法」や「高齢者雇用安定法」、企業年金関連など人事・総務業務に関連性の高い法改正について、社会保険労務士でフォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所代表の松井勇策氏に解説していただいた。
※この記事の内容は2021年11月末時点の情報をもとに執筆しています。
執筆者より総論
「働き方改革」の路線の「多様な働き方の一層の進展」が徹底して行われている。企業・個人とも政策を活用していく意識が必要
2022年の法改正は、「多様な働き方の一層の進展」が主題であると言えるでしょう。2020年以前から続いてきた「働き方改革」の、基礎的な労働関係の法制度が成立した後の「政策の徹底」が進んでいると受け取れます。
その主題は、次の4つに大別できます。
それぞれにポイントとなる大きな改正と、補足ともいえる関連した法改正が行われおり、1~4を順に解説していきます。
また、今回の解説にはとり上げていませんが、支援策としての「くるみん認定」「えるぼし認定」「健康経営」などをはじめとした認定施策や助成金がより充実して設定されており、政策の実効性が図られている点も見逃せません。
政策の目的は「多様な働き方の徹底した実現」であり、これは「働き方改革」の目的である「年齢や属性にとらわれず多様な労働参加ができ、自助努力によってキャリア形成が図れる社会を実現し、少子高齢化を克服する」という背景があります。こうした意識をもって、ひとりひとりが政策と法令を活用して実現していくことが求められているのだと思います。
1.高齢者雇用関係の2022法改正
高齢者雇用安定法の改正が2021年に行われ、高齢者の雇用存続の努力義務が課されています。また助成金等をはじめ雇用継続への支援が行われています。また、より適正な労働や社会保障制度へ向けての制度改正も進んでいます。
雇用保険法 マルチジョブホルダー制度(2022年1月1月)
二以上の事業所に勤務する高年齢者が一定の要件のもとに「マルチジョブホルダー」として高年齢雇用保険被保険者になることができるようになります。
二以上の雇用保険適用事業に雇用される65歳以上の労働者について、二つの事業を合計した週の所定労働時間が20時間以上(各事業所での週の所定労働時間は一定時間以上20時間未満)の場合に、その者からの申出により高年齢被保険者となることができる制度で、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」と言います。
手続きは通常とは異なり、マルチジョブホルダーとなることを希望する本人が行います。
従来の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が1週間の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合に適用されます。
基本的な手続の流れ
【図:「事業者向け『雇用保険マルチジョブホルダー制度』を新設します2022年1月1日スタート」(厚生労働省)より】
【社労士からのひとこと】
高年齢の方の就業と生活保障を広げるために始まった制度です。高齢者雇用安定法が2021年に改正され、企業の高齢者雇用の拡大が促進されることになりました。マルチジョブホルダー制度は雇用保険に加入したくても加入できない労働条件で働かれている方の雇用の可能性を広げる制度だと言えます。
参考:「【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について~ 令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します~」(厚生労働省)
在職老齢年金制度の見直し(2022年4月1日)
在職中の年金受給者については60~64歳の在職老齢年金の支給停止の基準が緩和されます。
また在職時改定が開始され、現在の状況が年金額に反映されやすくなります。
在職老齢年金とは、賃金と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象として、全部または一部の年金支給を停止する仕組みです。
60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度(低在老)について、年金の支給が停止される基準を現行の28万円から65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)と同じ47万円(令和2年度の額)と同じ額になります。
65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)については、現行の基準は47万円で、今回の改正での変更はありません。
また、65歳以上で仕事を継続しながら厚生年金に加入(老後の年金の受給資格もあり)している場合、毎年決まった時期に年金額が改定される在職時改定が始まり、支払った保険料がより1年に1回年金額へと反映されることになります。
【図:「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|よくあるご質問(3)在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)」(厚生労働省)より】
【社労士からのひとこと】
今までは、65歳からの年金を受給しながら70歳まで働く場合、厚生年金の保険料は賃金に応じて70歳まで毎月控除されるものの、年金額への反映は退職した時、または、70歳に到達した時でした。これが1年毎の随時の改定が行われることになります。高齢者が働くことが一般化することに合わせた改正だと言えます。
参考:「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」(厚生労働省)
関連記事:
・70歳まで活躍できるキャリアプランとは? 高齢者雇用安定法の意義と2021年4月施行の改正点を整理
・「70歳定年」時代に上司は「シニア社員」のキャリアをどう活かせるか「第2回 シニア社員が意欲低下する原因とは」
年金受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月1日)
公的年金は、原則として65歳から受け取ることができますが60歳から75歳までの間自由に受給開始時期を選ぶ(繰り上げ・繰り下げ)ことができるようになり、今までに繰り下げの限度時期が70歳だったものが5歳延長されます。
【図:「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布) 」(厚生労働省)より】
【社労士からのひとこと】
繰下げで75歳から受給する場合に、繰り下げ1月あたり+0.7%の増額となり、最大84%増額することができるようになります。長期の就業で年金を増やすことなどを見込む方も増えるでしょう。この改正が、次の項目の「企業年金関係」の改正とも大きく関わっています。
【図:「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布) 」(厚生労働省)より】
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2.企業年金関係の2022年法改正
広い意味では高齢者関係であると言えますが、企業年金、特に確定拠出年金(DC)に関連するさまざまな改正が行われています。趣旨としては、公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大や、高齢者雇用の状況にあわせた改正となっています。
- 受給開始時期の上限が75歳に延長(2022年4月1日)
- 企業型DCの加入可能年齢の改正(2022年5月1日)
- 個人型DC(iDeCo)の加入可能年齢の拡大・対象者の拡大(2022年5月1日)
- 企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和(2022年10月1日施行)
- 公的年金・私的年金の全体像と法改正のまとめ
受給開始時期の上限が75歳に延長(2022年4月1日)
確定拠出年金の受給開始時期の選択の幅が75歳まで延長されます。
2022年4月から企業型DCと個人型DC(iDeCo)の確定拠出年金の老齢給付金の受給開始時期を60歳(※加入者資格喪失後)から75歳までの間で、ご自身で選択できます。
公的年金の繰り下げが75歳まで延長されたことに伴う改正です。
企業型DCの加入可能年齢の改正(2022年5月1日)
企業型DCの加入可能な年齢を70歳未満まで拡大することができるようになります。
現在、企業型DCに加入することができるのは65歳未満の方ですが、2022年5月から70歳未満(厚生年金被保険者)の方まで拡大されます。公的年金の加入可能年齢・受給年齢の上昇に伴う改正です。
※ただし、企業によって加入できる年齢などが異なります。
【図:「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布) 」(厚生労働省)
個人型DC(iDeCo)の加入可能年齢の拡大・対象者の拡大(2022年5月1日)
個人型DC(iDeCo)の加入可能年齢が65歳未満に拡大され、海外居住者にも拡大されます。
現在、iDeCoに加入できるのは60歳未満の公的年金の被保険者ですが、2022年5月から65歳未満に拡大されます。60歳以上のiDeCoについては、国民年金の第2号被保険者または国民年金の任意加入被保険者であれば加入可能になります。
また、これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになります。
【図:「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布) 」(厚生労働省)
企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和(2022年10月1日施行)
企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)への加入が原則可能になります。
企業型DCの加入者は規約の定めや事業主掛金の上限の引き下げがなくても、iDeCoに原則加入できるようになります。ただし、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金には一定の制限があります。また、企業型DCにおいて加入者掛金を拠出(マッチング拠出)している場合にはiDeCoには加入できません。
【図:「企業型DC・iDeCoの加入者・運用指図者の皆さまへ確定拠出年金制度が改正されます」(厚生労働省・国民年金基金連合会)より】
【図:「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布) 」(厚生労働省)
【社労士からのひとこと】
これまで企業型DC加入者のうちiDeCoに加入できるのは、iDeCo加入を認める労使合意に基づく規約の定めがあり、かつ事業主掛金の上限を引き下げた企業の従業員に限られていました。こうした制限が撤廃され上限額のみの制限となることで年金加入の選択肢が広がり、多様化する高齢期の働き方やニーズに合う形での選択が可能になります。
公的年金・私的年金の全体像と法改正のまとめ
【図:「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布) 」(厚生労働省)
参考:厚生労働省の公開情報
・確定拠出型年金制度「2020年の制度改正」
・受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月1日施行)
・企業型DC・iDeCoの加入可能年齢の拡大(2022年5月1日施行)
・企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和(2022年10月1日施行)
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3.育児支援・女性活躍関係の2022年法改正
日本は少子高齢化による労働人口減少の課題が深刻で、女性が長く仕事を続けていく環境づくりが日本の未来の社会維持のためにも重要です。また女性自身も、仕事と育児を両立させたいと考える方も増えています。またさらに日本の男性が、育児のために休みたいと思わないのではなく、育児のために仕事を休みたいと考える男性労働者のうち4割の方は休みを希望しても取得できなかったというデータもあります。
以下で紹介する一連の改正は、雇用環境整備・対象者への周知・育休取得要件の緩和・新しい「出生時育児休業」の創設などが含まれます。またこれらの動きに関連して、女性活躍推進法の拡大や、関連する認定の拡大も行われています。
- 育児休業等に関する雇用環境整備・個別周知の措置義務等(2022年4月1日)
- 有期契約労働者の休業取得要件の緩和(2022年4月1日)
- 求人不受理条項の追加[職業安定法](2022年4月1日)
- 出生時育休制度[産後パパ育休](2022年10月1日)
- 育児休業社会保険料の免除要件の見直し(2022年10月1日)
- 育児休業取得状況の公表の義務化(※2023年4月1日)
- 女性活躍推進行動計画の策定義務の対象拡大(2022年4月1日)
- 次世代法関係の「トライくるみん認定」の創設とくるみん認定の改定(2022年4月頃予定)
育児休業等に関する雇用環境整備・個別周知の措置義務等(2022年4月1日)
本人または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対し、個別に制度の周知や意向確認を行うなどの措置を講じることが義務化されます。
育児休業を取得しやすい雇用環境整備をし、育休を取得しやすい「社内の雰囲気づくり」を行うことが法制化されます。育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に個別の周知・意向確認を義務づけるものです。
全ての事業主に適用される義務であり、ポスターを貼るなどの啓発活動では足りず、必ず周知と意向確認が必要になってきます。義務なので怠ると、行政労働局による指導勧告の対象になり、最終的には企業名が公表されることもあるとされています。周知事項は次のように列挙されています。
雇用環境の整備を要する事項
- 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
- 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
- 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
- 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
周知を要する事項
- 育児休業・産後パパ育休に関する制度
- 育児休業・産後パパ育休の申し出先
- 育児休業給付に関すること
- 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
個別周知 ・意向確認の方法
- 面談
- 書面交付
- FAX
- 電子メール等
のいずれか。注:「1.面談」はオンライン面談も可能。「3.FAX」「4.電子メール等」は労働者が希望した場合のみ。
参照:「事業者向け 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 令和4年4月1日から3段階で施行」(厚生労働省)
有期契約労働者の休業取得要件の緩和(2022年4月1日)
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和が行われます。
有期契約労働者に係る育児休業・介護休業の申出要件を見直しし、「当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」の要件を削除すること、とされました。
育児休業の場合「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」という要件のみとされ、無期契約労働者と同じ扱いになります。
ただし「引き続き雇用された期間が1年未満」の方については労使協定の締結により除外可であるという要件は引き続き有効です。育児休業給付の受給要件についても要件が同様に緩和されます。
【図:「事業者向け 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 令和4年4月1日から3段階で施行」(厚生労働省)より】
求人不受理条項の追加[職業安定法](2022年4月1日)
ハローワークが育児介護休業法上の不利益取り扱いを行った事業主の求人を不受理にできるようになります。
育児・介護休業法の改正により、妊娠または出産等についての申出をしたことを理由とした不利益取扱いが禁止されますが、この規定に違反し、是正を求める勧告に従わずに公表された場合について、ハローワークで求人を不受理とする対象に追加されます。
出生時育休制度[産後パパ育休](2022年10月1日)
出生時育休制度の新規の創設が行われます。
目的は子どもの出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設であり、子どもの誕生直後8週間以内に父親が最大4週間を2回に分けて取得できる制度です。別枠でさらに2回取得することができるので最大で合計4回取得できます。
【図:「事業者向け 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 令和4年4月1日から3段階で施行」(厚生労働省)より】
育児休業社会保険料の免除要件の見直し(2022年10月1日)
出生時育休制度の施行に伴い、社会保険料の免除要件が緩和されます。
現行の育児休業制度での月の社会保険料の免除要件は「その月の末日に育児休業を取得しているか否か」でした。改正が行われ、月内に2週間以上育児休業を取得した場合は社会保険料が免除される、という要件が加えられます。一方賞与については、1カ月を超える期間の場合に限り免除される、という要件に変更されます。
育児休業取得状況の公表の義務化(※2023年4月1日)
従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。
従業員数1,000人超の企業について、育児休業の取得徹底の一環として、年1回、所定の方法で育児休業等の取得状況を公表するというルールができます。
公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」と省令で定める予定となっており、詳しい項目については今後詳細が広報されていく予定となっています。
女性活躍推進行動計画の策定義務の対象拡大(2022年4月1日)
一般事業主行動計画の策定等の義務の対象となる事業主の範囲が拡大されます。
一般事業主行動計画の策定等の義務の対象となる事業主の範囲が拡大され、策定・届出義務および自社の女性活躍に関する情報公表義務の対象となる事業主の規模を、常用雇用労働者数「301人以上」から「101人以上」とするものです。
【社労士からのひとこと】
女性活躍推進法は、すべての女性が輝く社会づくりを進めるため、2015年に成立した法律です。法改正により、2022年4月からはさらに範囲が拡大され、女性活躍の徹底が図られます。また、法改正では情報公表の強化や、「えるぼし」認定よりも水準の高い「プラチナえるぼし」認定の創設なども行われており、2020年6月に施行されています。
助成金についての改定も行われ、課題設定・解決を行った中小企業事業主には、両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の支給要件の拡大も行われる予定です。
次世代法関係の「トライくるみん認定」の創設とくるみん認定の改定(2022年4月頃予定)
現在の次世代法の「くるみん認定」の要件が厳格化され「トライくるみん認定」が新たに創設されます。
出生時育休制度(産後パパ育休)が創設されることにより、男性の育休ニーズの高い生後8週間以内に4週分を2回取得可能になり、最大4回取得可能になります。
これに伴い、男性育休率の向上を今まで以上に促進することを趣旨として「くるみん認定」の基準が改定されます。現行の「くるみん認定」の基準の「トライくるみん認定」を設けることとされています。
また、「くるみん」の見直し案として、男性の育児休業等取得率「7%以上」を「10%以上」 へ引き上げる、男性の育児休業等・育児目的休暇取得率「15%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」を「20%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」へ引き上げるなど。「プラチナくるみん」の見直しとして、男性の育児休業等取得率「13%以上」を「30%以上」へ、男性の育児休業等・育児目的休暇取得率「30%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」を「50%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」等の改定が予定されています。
参照:
令和3年改正法の概要(厚生労働省)
(事業主向け)説明資料「育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等(厚生労働省)
参考:厚生労働省の公開情報
・育児・介護休業法について
・女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
・くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて
関連記事
・中小企業がくるみんマーク取得で女性活躍推進の環境づくりを実現した方法
・小室淑恵氏が解説。法改正で注目の男性育休の課題と企業で推進させる方法
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4.多様な働き方(高齢者・育児以外)関係の2022年法改正
副業兼業の拡大や、治療と仕事の両立を促す両立支援の進展に合わせ、全年齢でのより柔軟な制度改正が進んでいます。
個人情報保護法の改正は情報社会の進展による一層の個人の保護の強化ということが趣旨ですが、「キャリアの選択肢の拡大や個人の働き方の選択肢の増大」と不可分の事象でもあるため、関連して理解するのが望ましいです。
- 傷病手当金の支給限度期間の変更[通算で1年6か月まで受給可能に](2022年1月1日)
- 中小企業に対するパワハラ防止措置の義務付(2022年4月1日)
- 個人情報保護法改正(2022年4月1日)
- 短時間労働者(週20時間以上勤務者)に対する社会保険の適用拡大(2022年10月1日)
傷病手当金の支給限度期間の変更[通算で1年6か月まで受給可能に](2022年1月1日)
健康保険の傷病手当金の支給期間の要件が変更され拡大されます。
傷病手当金は健康保険から支給される手当金のひとつで、病気や怪我のために働くことができない期間、被保険者とその家族の生活を保障する目的で支給されます。業務外の事由による病気やケガの療養のための休業で仕事に就くことができず給与の支払いがない場合、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったことで支給されます。
健康保険における傷病手当金は、現状、支給開始日から起算して暦日数で「1年6カ月」を上限に支給されることとなっていますが、法改正により2022年1月1日から、「出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるよう、支給期間を通算する」という取扱になります。
【社労士からのひとこと】
重要な改正です。コロナウイルス感染症や、治療と仕事の両立支援においても傷病手当金は重要な位置付けになっています。統計によっては、労働人口の3人に1人が病気治療と仕事を両立しているとも言われており、病気治療と仕事の両立支援の重要性に鑑み法改正に至ったものと考えられます。今後、多様な人材がそれぞれに社会で活躍していく上で、傷病手当金のさらなる活用が期待されます。
中小企業に対するパワハラ防止措置の義務付(2022年4月1日)
大企業には既に2020年6月に施行されているパワハラ防止法、改正労働施策総合推進法が、中小企業にも適用されます。
既に大企業に施行されているパワハラ防止法では、パワーハラスメントとは、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であり、労働者の就業環境が害される物のことを言います。
本法令においてはこうしたパワーハラスメントを防止するための防止措置が義務化されますが、
- 事業主による「ハラスメント防止に取り組む」ことの従業員への意思表示を行う
- 「ハラスメント」を防止するために、社内で研修等を実施する
- 「ハラスメント」をしてはならないことを就業規則等に明記し、懲戒処分等に設定する
- 相談・苦情処理窓口を設置し、発生時は迅速かつ適切な処理を行う
などが示されており、対応が必要です。
参考:厚生労働省の公開情報
・リーフレット「2022年(令和4年)4月1日より、「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!」
・職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
関連記事
・「ハラスメント対策最前線」―中小企業の人事・経営者が実践できる-2020年6月施行パワハラ防止法対策総まとめ 弁護士・専門家解説あり【再掲載】
個人情報保護法改正(2022年4月1日)
個人情報保護法が改正され、個人情報の対象の拡大・特にWEB上の個人の情報などへの拡大が図られ、漏洩事故などについての保護も強化されます。
個人情報保護委員会は、平成27年(2015年)の個人情報保護法の改正以来、社会・経済情勢の変化を踏まえて、令和元年(2019年)1月に示した「3年ごと見直しに係る検討の着眼点」に即し、3年ごとに個人情報保護法の見直しを進めてきました。今回の改正は、3年ごと見直しの過程で、得られた共通の視点を反映したものです。
改正のポイントは、以下の6点で、各点について、法令上の定義や義務を含んだ総合的な改正が行われます。
- 本人の請求権の拡充等
- 事業者の義務・公表等事項の追加
- 新たな情報類型の創設
- 新しい個人情報保護団体による認定の制度化
- ペナルティの強化
- 外国事業者関係の規制強化
具体的な内容としては、本人の情報保護について短期に保存したデータなどの情報も保護に加えられたことや、情報の消去等の請求画面をさらに拡充して保護の万全性をさらに図ったことがあります。同様の趣旨で、本人によるWEB閲覧履歴など、従来は個人情報に該当していなかった内容にも一定の保護が図られることになりました。
また、事業者による事故があった場合、本人や行政機関への申告が義務化されるなど厳格化が図られました。
参考:「個人情報保護法令和2年改正及び令和3年改正案について」(個人情報保護法委員会)
短時間労働者(週20時間以上勤務者)に対する社会保険の適用拡大(2022年10月1日)
現在でも501人以上の企業については行われている短時間労働者の社会保険の適用拡大の企業の人数規模が101人以上の基準に改定されます。
高齢者のマルチジョブホルダー制度などにもみられるような、多様な働き方の進展・社会的な副業・兼業者の増加に対する対応が進められています。短時間労働者の社会保険加入の拡大のため、101名以上の企業について、下記の要件の労働者について社会保険の加入が義務付けられます。
- 週20時間以上の勤務
- 賃金月額 88,000円以上
- 1年以上の雇用の見込み
- 学生以外
※この記事の内容は2021年11月末時点の情報をもとに執筆しています。
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執筆者紹介
松井勇策(まつい・ゆうさく)(組織コンサルタント・社労士・公認心理師) フォレストコンサルティング経営人事フォーラム代表、情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。東京都社会保険労務士会 先進人事経営検討会議議長・責任者。 最新の法制度に関する、企業の雇用実務への適用やコンサルティングを行っている。人的資本については2020年当時から研究・先行した実務に着手。国際資格も多数保持。ほかIPO上場整備支援、人事制度構築、エンゲージメントサーベイや適性検査等のHRテック商品開発支援等。前職の㈱リクルートにおいて、組織人事コンサルティング・東証一部上場時の上場監査の事業部責任者等を歴任。心理査定や組織調査等の商品を。 著書「現代の人事の最新課題」日本テレビ「スッキリ」雇用問題コメンテーター出演、ほか寄稿多数。 【フォレストコンサルティング経営人事フォーラム】 https://forestconsulting1.jpn.org
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【解説:松井勇策(社会保険労務士)】
「副業」新時代-企業の向き合い方
副業導入が企業に与える影響やメリット、実際に導入する際には就業規則や社内ルールの制度構築や法律違反リスクや懸念点にどう対処すればよいのかなどをまとめた。
>>詳細をチェックする【解説:松井勇策(社会保険労務士)、佐々木尊子(弁護士)】
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