「人事評価と目標管理に関する定量調査」パーソル総合研究所
コロナ後の目標管理制度に強まった不満。「部署によって目標の難易度が違う」「同じポジションでも人によって目標の難易度が違う」
2021.10.12
パーソル総合研究所(東京・港)は、全国の人事、経営層、従業員らを対象に実施した人事評価・目標管理に関する調査結果を発表した。
調査結果によると、自社の評価制度に対して不満を抱いている人は38.3%で、評価のプロセスに不満がある人が36.3%、評価の結果に不満がある人は33.2%だった。
また、テレワークの普及によって、組織内部で目標の水準を合わせることが難しくなっている傾向も現れており、目標管理制度に関してコロナ後に強まった不満を聞いた質問では、最も多かったのが「部署によって目標の難易度が違う」35.6%で、次いで「同じポジションでも人によって目標の難易度が違う」34.8%だった。以下、リリースより。
1.自社の評価制度に対する不満
自社の評価制度に対して不満を抱いている人は38.3%。評価のプロセスに不満がある人は36.3%、評価の結果に不満がある人は33.2%。
図表1.自社の評価制度に対する不満
2.コロナ後に強まった目標管理制度への不満
自社の目標管理制度に関してコロナ後に強まった不満を尋ねたところ、1位は「部署によって目標の難易度が違う」で35.6%、2位は「同じポジションでも人によって目標の難易度が違う」で34.8%となり、コロナ禍による事業への影響の強弱や、テレワークの普及によって、組織内部で目標の水準を合わせることが難しくなっていると推察される。
図表2.コロナ後に強まった目標管理制度への不満
3.目標管理制度に関する課題
自社の目標管理制度に関する企業側の課題について尋ねたところ、「モチベーションを引き出せていない」「成長・能力開発につながっていない」「成果に報いる処遇が実現できていない」などの回答が過半数となった。
図表3.目標管理制度に関する課題
4.評価結果に関する課題
評価結果に関する企業側の課題について尋ねたところ、1位は「評価結果に差がつかず、中心に偏る」で52.1%。
図表4.評価結果に関する課題
5.低評価者への処遇変更
低評価者への対応について尋ねたところ、どのような処遇変更であれ、実施されている割合は低いという実態が定量化された。降給・降職・降格はいずれも2%台。
図表5.低評価者への処遇変更
6.目標管理の実態(制度)
何かしらの目標管理を行っている割合は53.8%。MBO(Management by Objectives:個人目標を各自が設定し、その達成度合いで評価する制度)による目標管理は34.6%。360度評価を行っている割合は20.9%。
図表6.目標管理の実態(制度)
7.目標管理の運用実態
目標管理と評価プロセスにおいて、上司による中間面談やフィードバックは多くの会社で制度化されているが、そのうち、制度通りに実施できている上司は3割前後。制度化されているにも関わらず「非実施」の上司も2割強おり、制度の形骸化が見られる。
図表7.評価プロセスの制度化率と実施率
分析コメント~目標管理を従業員の成長につなげるには、評価制度に対する従業員のポジティブな認識が鍵~(上席主任研究員 小林 祐児)
今回の調査では、人事評価・目標管理に関する様々な課題や不満を定量的に確認できた。特に目標管理が従業員の成長につながっていないという課題について、企業がどうすべきか提言したい。
今回の調査によって、目標管理プロセスが成長につながるかどうかには、従業員が自社の人事評価に対して感じている、「暗黙の評価観」の影響が確認できた。
暗黙の評価観とは造語だが、人事評価そのものに対するマインドセットや考え方を意味する。人事評価について「自分の課題を明らかにするためのもの」「成長できているか確認するためのもの」などのポジティブな評価観を持っている従業員は、評価の積極的活用や、フィードバックを求める行動をとっていた。逆に、「無理にでも仕事をさせるために人事評価がある」といったネガティブな評価観は、「目標にないことをやらない」といった行動に結びついていた。そうした評価観は、上司の傾聴行動(話を聞く姿勢)や、メンバー同士が助け合う組織風土によって影響されていることも重回帰分析で確認できた。
企業は評価の公平性を担保しようと、評価プロセスや等級要件などをやたらと精緻化しようとすることが多いが、そもそも従業員から自社の評価制度や評価結果がどのように見られているのかなどもしっかり意識し、ポジティブな暗黙の評価観を醸成すべきだ。
図表8.暗黙の評価観(ポジティブ・ネガティブな評価観の例)
※調査結果の詳細
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/activity/data/personnel-evaluation.html
調査概要
調査名称 | パーソル総合研究所 「人事評価と目標管理に関する定量調査」 |
---|---|
調査内容 | ・日本企業の人事評価と目標管理制度について、制度実態と運用実態を把握する ・従業員・上司における人事評価と目標管理制度についての意識と行動実態を明らかにする |
調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査時期 | 【企業調査】2021年3月11日 – 3月15日 【従業員調査】2021年5月6日 – 5月11日 |
調査対象者 | 【共通条件】全国の正規雇用従業員/20-59歳男女/企業規模100人以上/第一次産業、学術研究、公務等除く 【企業調査】合計サンプル数:800s -人事部(主任クラス以上)ないし経営層・経営企画部/自社の人的資源管理の全体動向について把握している者 【従業員調査】合計サンプル数:8000s -一般メンバー層:役職なし。有効サンプル数:5000s -上司層:役職が係長-事業部長クラス・直接評価を担当する部下あり。有効サンプル数:3000s |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
【株式会社パーソル総合研究所】<http://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開しています。グループの経営理念・サステナビリティ方針に沿って事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも積極的に取り組み、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX組織構築支援を行う「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。
【プレスリリース「パーソル総合研究所、人事評価・目標管理に関する調査結果を発表 評価制度に不満を持つ人は38.3%。評価結果に不満も33.2%。 評価結果に関する企業側の課題1位は『評価に差がつかず』で52.1%」より|2021年10月6日・株式会社マイナビ】
編集部おすすめ関連記事
■ハイブリッド型勤務にも対応。afterコロナを見据えた人事評価
afterコロナで想定されるフレキシブルな働き方に合わせた人事評価について、具体的な制度運用の設計方法を紹介。人事評価を単純に評価のためだけに行うのではなく、上司・部下、チーム間のコミュニケーションや相互のサポートという観点から、「組織の活性化やチーム力の向上」という形で評価運用を活用するための方法を解説します。
【おすすめポイント】
・(1)コミュニケーション ~ハイブリッド型勤務時代の最重要要素
・(2)心理的安全性 ~自発的なコミュニケーションの基盤
・(3)事前共有とフィードバック ~心理的安全を保つための手法
【解説:伊藤 裕之 (株式会社Works Human Intelligence)】
【レポート】従業員のパフォーマンスを高める人事評価の理論と実践
『図解 人材マネジメント入門』の著者・坪谷邦生氏による基調講演に加え、多くの企業の人事評価や制度作りに携わってきた4人の専門家が、パフォーマンス向上のために有効な人事評価の運用方法やモチベーションアップを可能にする評価制度の作り方など、変化の時代に対応できる人事制度構築のヒントとなりうる視点を語った
>>詳細をチェックする【@人事編集部(株式会社イーディアス)】
奥田和広×坪谷邦生が語る「人と組織が成長するために今、必要なこと
『本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR』の著者・奥田和広氏と、『図解 人材マネジメント入門』の著者・坪谷邦生氏の対談。人と組織を成長させるために人事や経営者、現場の管理職が実践できる考え方やノウハウを語ったテーマを抜粋して紹介する。
>>詳細をチェックする【@人事編集部(株式会社イーディアス)】
数値化できない部署を無理に評価する方が問題。曽和利光×北野唯我
HR業界のキーパーソン、人材研究所の曽和利光さんとワンキャリアの北野唯我さんによる対談企画。今回のお悩みは「数値化しにくい部署(特に労務)での人事評価をどうするべきか」。人事の永遠の課題である人事評価について、2人は「そもそも人事評価って必要ですか?」と疑問を投げかけます。
>>詳細をチェックする【@人事編集部(株式会社イーディアス)】
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
ニュース・トレンドプレスリリース
株式会社パーソル総合研究所調べ
【オンライン研修の実態】企業の75%が「増えた」と回答。コロナ禍で進む集合研修のオンライン化
一方で研修後のフォローは3割以上が行っておらずパーソル総合研究所(東京・千代田)は7月5日、「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」の結果を発表した。有効回答数【人事調査...
2021.07.16
-
ニュース・トレンドプレスリリース
パーソル総合研究所「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」
定年後の再雇用で年収半分以下は約5割。一方で再雇用者の過半数が定年前と業務内容は「ほぼ同様」と回答
同一労働同一賃金やシニア人材のモチベーションの課題が浮き彫りに2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法により、70歳まで就業機会を確保する努力義務が企業に課された中、企業のシニア...
2021.06.04
-
国内・海外ヘッドライン
パーソルホールディングス株式会社
パーソルHDがパーソル総合研究所とパーソルラーニングの組織統合を発表。グループの4事業を21年4月からパーソル総合研究所に集約
パーソルホールディングス(東京・都)は1月12日、子会社のシンクタンク・コンサルティングファームであるパーソル総合研究所(東京・千代田)と、研修事業を展開するパーソルラーニング(東...
2021.01.13
-
ニュース・トレンド
ビズリーチ WorkTech研究所
直近1年での退職者が増加傾向。大企業では7割超が「退職者が増えている」と回答
ビズリーチ(東京・渋谷)が運営する、働く人の活躍を支えるテクノロジー“WorkTech”に関する研究機関「ビズリーチ WorkTech研究所」は10月22日、ビズリーチまたはHRM...
2024.10.24
-
ニュース・トレンド
KDDI株式会社
社員の自律的なキャリア形成・スキルアップ支援を目的に「ジョブ図鑑」を公開
KDDI(東京・千代田)は10月21日、社員の自律的なキャリア形成・スキルアップ支援を目的として、社員向けに「ジョブ図鑑」を公開した。【TOP写真はジョブ図鑑のイメージ(リリースよ...
2024.10.22
-
ニュース・トレンド
【就活生が望む企業の適切な連絡(頻度・内容・方法)調査】株式会社No Company調べ
Z世代就活生の約3割が “連絡を理由” に選考を辞退
企業の人事部門向けに採用広報(採用マーケティング)支援を行うNo Company(東京・港)は10月7日、「就活生が望む企業の適切な連絡(頻度・内容・方法)調査」の結果を発表した。...
2024.10.16
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?