女性活躍推進の時代に、人事担当がするべきこと
【後編】女性管理職を増やすために、一般職の「人財」を確保しよう
2016.08.17
政府の成長戦略に後押しされ、女性活躍推進の機運は高まるばかり。ダイバーシティ推進室など、専門の部署を新設する企業も増えています。
数多くの企業のコンサルティングや、女性の新規事業開発を支援する経営塾「DIW(デュー)塾」などを実施しているクオレ・シー・キューブの代表・岡田康子氏と、シニアコンサルタント・稲尾和泉氏にお話を伺いました。後編では、女性管理職の育成について迫ります。【トップ写真は「DIW塾」の様子】
――管理職を目指す女性が少ないことが課題になっています。
岡田:自分のやりたい仕事をするためには力が必要になってきます。予算も必要です。だから企業は、自分が本当に実現したいんだ、これに賭けるんだと思えるくらい面白い仕事を女性に任せるべきでしょう。そうすれば管理職になった方が仕事がしやすいので、昇進したくなりますよ。
あと、女性にだけ「管理職になる?」って聞きますよね。男性に同じように聞くかというと、たいていはただ「なれ」と言われる。女性だって「なれ」と言われればやるのではないでしょうか。「やる?どうする?」って聞かれたら、よほどの自信がないかぎり手を挙げないですよ。
――それは確かに、男性と女性の大きな違いかもしれません。
岡田:管理職対象となる女性の人数が少ないと言われているのは、総合職だけで考えているからなんです。会社には一般職もいますよね。彼女たちは能力がないから一般職になったのではなく、自分の意志で一般職を選んでいます。基本的能力は非常に高い人が多いと実感しています。ただトレーニングされてないんです。事実入社した時は女性のほうが能力が高かかった、でも3年したら逆転していたという話はよく聞きます。そこに一番人財が眠っているとは思います。
――般職の女性をどういうふうに取り入れていけばいいんでしょうか?
岡田:事業全体を見せることでしょう。そうすれば、もともと実力はあるのだから、自分が会社にどう貢献できるかが見えてくると思います。
同じことを長く続けていると、その仕事を深掘ってしまうんです。うっかりすると、それが排他的になりかねない。「それはおかしい」とか「これまでこうやってきたんです」など、重箱の隅をつつくようなことをする可能性がある。もっと視野を広げたら、そんなに一つの仕事を深掘っている時間はないですよね。
また、そうした自分の居場所を守る姿勢が上司からのハラスメントを誘発したり、自分自身がハラスメントをしたりする要因になってくるんです。
稲尾:女性同士で足を引っ張り合ってしまうことがあるんですよね。「私たちの時代はそんなものじゃなかったのよ」とか。自分の経験が大事なのは分かるのですが、それが価値観の押しつけになると、職場がひずんでいき、元気がなくなってしまいます。
新しい価値観が入ってきた時に、それを楽しんで受け入れられるかどうかも大事だと思います。その新しい価値観が他の会社との差別化になるかもしれない。対立したり、これまでのやり方を守っていたりするばかりでは新しいものは生み出せないですね。
新事業立ち上げの仕組みができている会社は女性活躍推進に成功する
――女性活躍推進が成功しているのはどんな企業でしょうか?
稲尾:男女関係なくチャンスを与えてきちんと評価をしている会社でしょうか。みんなが健全な競争をしている。そういう企業は、数値目標すら必要ないという話になっていますね。
岡田:そういう会社では「女性活躍推進」というのがピッタリこないんですよ。そんなの当たり前すぎて、課題にしていないから。
あとは、事業立ち上げの仕組みがちゃんとできている会社でしょう。どこでも誰でも事業を提案し、立ち上げていくという風土ができている会社は、性別関係なく社員たちが生き生きしています。
DIW塾の受講生の中に、入社数年でマレーシアの新事業立ち上げを任されている女性もいました。事業を拡大していくには既存のやり方ではできないから、既存の組織では活躍でなかった人も含めて1人1人が活かされていくんです。
稲尾:自分たちの事業は、10年先、20年先、もっと先を見据えた時に、人口構成、メンバー構成を含め、どうやって稼いでいくのか、経営戦略として道筋を立てている会社はきちんとダイバーシティを進められると思います。一方で、そういうストーリーがない会社は、ブームとして終わってしまうでしょう。
――今、まさに奮闘している人事スタッフにメッセージをお願いします。
岡田:今の女性活躍推進は女性のための活動になっているので、女性だけで進めない方がうまくいくかもしれません。若手の男性は女性と同じような仕事観を持っているかもしれませんので、彼らをうまく仲間に引き入れるといいでしょう。例えば、「僕達だって休みたいんだ」などと発言してもらうことで、説得力が出てくると思います。ぜひいろいろな知恵を絞ってみてください。
稲尾:ダイバーシティ担当って、孤独になっている人が本当に多いんです。1人で頑張らないでください。私たちを含め、社外に仲間はたくさんいるので、一緒にやりましょう。
そしてその推進担当者たちがダイバーシティの領域でスペシャリストになって、会社の中で認められ高い評価を得てほしいですよね。「私はこの分野ではこの会社では一番ですから」と胸を張れるくらいのビジョンを持ってダイバーシティに取り組めば、主体的にいろいろな情報をつかんだり交流を広げたりすることができると思います。 今の役割を与えられたことがチャンスだと思って、どんどんやってほしいです。そのときは、いっぱい仲間がいますから。安心してください。
――ありがとうございました。
執筆者紹介
尾越まり恵(おごし・まりえ) フリーランスライター。福岡県北九州市生まれ。結婚情報誌ゼクシィの制作に携わり、2011年に独立。「女性の生き方」をテーマに取材・執筆を続けている。福山雅治、ホークスが好き。
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