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企画

トランスジェンダーを30人以上採用してきた元人事が答える


人事が知っておくべきLGBTQ+の採用・雇用Q&A

2021.07.30

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日本企業の間でもダイバーシティ&インクルージョンの考えが浸透し始め、LGBTQ+にとって働きやすい職場づくりを推進する企業が近年増えてきている。これから、ダイバーシティを推進していこうという企業がつまずくのがLGBTQ+の採用・雇用に関する課題だ。LGBTQ+の正しい知識を身につけるだけでは、人事・総務担当者の実務レベルでの課題のすべてが解決できるわけではない。そこで、物流系人材会社の人事(採用担当)を務め、30人以上のトランスジェンダーの採用、雇用の実務経験を持つ、ミルメソリューションの須田淡子さんに、LGBTQ+の採用や雇用などに関する質問に人事・総務担当者目線で答えてもらった。
【2021年6月25日取材:記事・@人事編集部、撮影・加藤武】

解説

須田 淡子(すだ・あわこ)
ミルメソリューション株式会社/代表取締役
新卒で入った総合物流サービス会社から、物流系人材会社に転職し20年以上在籍。
ダイバーシティの第一歩が女性活躍であるとし、働く女性・マイノリティ人材を寄り添い型で支えるため専任部署を立上げ、ダイバーシティを推進してきた。男女雇用機会均等法第一世代でありながら、人事部門の管理職・執行役員を経験し、2020年10月に独立した。これまでの自身の経験を生かし、マジョリティ側の立ち位置からLGBTQ+を正しく理解するフレンドリー企業を増やしていくため、企業研修やコンサルティング・講演活動を精力的に行っている。

>>>須田さんがLGBTQ+の「働く」をめぐる課題と問題について語ってくれたインタビュー記事はこちら
新・ダイバーシティ経営への第一歩 LGBTQ+と共に働く環境づくりの課題と企業・人事がいまできること

目次
  1. <知っておきたいLGBTQ+の基礎知識>
  2. ★LGBTQ+ 雇用に関する全体的な質問
  3. Q1.企業としてLGBTQ+の当事者を含むだれもが働きやすい職場環境を構築するためには、 何から始めたら良いでしょうか。
  4. Q2.社内でLGBTQ+についての理解を推進するためにはどんな方法がありますか。
  5. Q3.なぜLGBTQ+に関する正しい知識を持つ必要があるのでしょうか。
  6. Q4.当社にはLGBTQ+の当事者は在籍していませんし、今後も採用予定もありません。何か対応する必要があるのですか。
  7. Q5.どのような発言や言葉がSOGIハラスメント(略称:SOGIハラ)に該当するのでしょうか。
  8. ★LGBTQ+ 選考に関する質問
  9. Q6.採用活動時、応募の段階で『わたしはトランスジェンダーです。選考してもらえますか』と問い合わせがありました。どうしたらよいでしょうか。
  10. Q7.面接の際に採用担当者が事前にできる配慮はありますか。
  11. Q8.面接でカミングアウトを受けました。どのような対応が望ましいのでしょうか。
  12. Q9.面接の際に見た目の性と履歴書に記載されている性にギャップがある場合に、どのように対応したらよいでしょうか。
  13. Q10.面接に来た当事者の方を採用したいと思うのですが、全社的にまだ知識や理解が不足しています。どのように対応したらよいでしょうか。
  14. ★LGBTQ+ 入社後に関する質問
  15. Q11.社員にカミングアウトされた場合、どのような対応が求められるでしょうか。
  16. Q12.カミングアウトされた内容について、人事から配属先の上司に伝えようと思いますが、 問題ないでしょうか。
  17. Q13.女性として入社した社員から、今後は男性の制服を着用したいと申し出がありました。 どのような対応をしたらよいでしょうか。
  18. Q14.どのように社内の当事者を把握すればよいでしょうか。
  19. Q15.同性パートナーのいる社員から『家族手当』の申請の申し出がありました。どうしたらよいでしょうか。
  20. Q16.当事者が安心して働くためにどんなサポートができるでしょうか。
  21. ミルメソリューションのコンサルティング(問い合わせ)

<知っておきたいLGBTQ+の基礎知識>

LGBT とは

レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別とは異なる性を自認する人)の頭文字から取った言葉で、性的マイノリティの人たちを表す言葉として用いられる。(「LBGT報道ガイドライン」・LGBT法連合会2019年3月第1版より)
※本記事では(Q)クエスチョニング=自分の性別や性的指向に確信がもてない人に加え、さまざまな性的関心・興味を持つセクシュアルマイノリティの略称として「+」を使用し、多様な性のあり方を伝える意味で「LGBTQ+」と表記しています。

カミングアウトとアウティング

自分の性のあり方を自覚し、誰かに伝えることを「カミングアウト」。本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露してしまうことを「アウティング」と言う。アウティングは、プライバシーの侵害につながり、裁判の事例や生命に関わる程の深刻な影響をもたらす可能性があるため、細心の注意が必要。(「LBGT報道ガイドライン」・LGBT法連合会2019年3月第1版より)

SOGIハラスメント(略称:SOGIハラ)

「SOGI(ソジ)」は、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとったもの。性的指向・性自認に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせや、不当な異動や解雇をすることなどが「SOGIハラ」と呼ばれる。「アウティング」もSOGIハラに該当。「男のくせに~」「女のくせに~」といった発言も注意。

11人に1人は「LGBTQ+層」

電通が2021年4月8日発表した「LGBTQ+調査2020」によると、LGBTQ+層の割合は8.9%で2018年調査と同じだった。約11人に1人の計算で、これは日本にいる左利きの人の割合とほぼ同じと言われる。(「電通、『LGBTQ+調査2020』を実施」より)

PRIDE指標

任意団体「work with Pride」が日本企業の職場におけるLGBTQ+への取組を評価する指数。2016年から策定し、毎年、優れた取組を行う企業を表彰する。(参照:「work with Pride」HP:https://workwithpride.jp/

WokandapixによるPixabayからの画像

WokandapixによるPixabayからの画像

★LGBTQ+ 雇用に関する全体的な質問

Q1.企業としてLGBTQ+の当事者を含むだれもが働きやすい職場環境を構築するためには、 何から始めたら良いでしょうか。

次の3つが挙げられます。

  1. 経営トップがダイバーシティに関するメッセージの発信
  2. 経営方針や就業規則に「性的指向や性自認に基づく差別の禁止」に関する文言を入れる
  3. LGBTQ+に関する研修の実施、福利厚生の見直し…etc

トップから社内外にメッセージを発信し、従業員やステークホルダーへ周知された段階で、具体的なアクションが開始されるのが望ましいです。トップからダイバーシティを推進していく意義や目的を伝えることで、「2」・「3」の実施や従業員の受け入れもスムーズになります。 必ずしも同時である必要はありませんが、トップの発信が社内通達にとどまらずHPへ記載することでCSRや企業ブランディングにも影響します。また、メッセージや新たな経営方針、福利厚生などを採用情報に反映することで採用ブランディングにも良い影響を与えるでしょう。

Q2.社内でLGBTQ+についての理解を推進するためにはどんな方法がありますか。

いくつかある中で4つ挙げます。

  • 研修の実施(正しい理解と知識の習得)
  • 社内制度の見直し(福利厚生やキャリアパス、異動・転勤など)
  • 「アライ」の見える化(レインボーカラーを使用したロゴ・バッジ・ステッカー・文具等の製作)
  • 社内外でのALLYイベント開催(当事者との交流会/トークイベント/映画鑑賞etc…)

・研修の実施

正しい理解と知識の習得のためには研修が効果的・効率的です。本を購入して読んでもらう、個人でセミナーに自由に参加してもらうなどのやり方もありますが、個人によって理解や受け取り方が変わってくるケースもあります。同じタイミング・同じプログラムを一緒に受講してもらい、ほかの人の質疑応答なども一緒に聞ける状況で実施できる研修のほうが理解や受け取り方の違いもある程度抑えられ、また研修を企画する人事の立場からも効果的・効率的と考えます。

私のおすすめとしては経営層、管理者層、一般社員の順で実施していくのが1番良いと思っています。人事の皆さんは、まず経営層を巻き込みトップから研修をスタートすることで、その後に続く管理者層や一般社員に対して、人事だけでなくトップも知識を持った状態で会社の方向性や社内研修の意図を発信することが可能となり、社内での推進速度が格段にアップすると思います。そうしたやり方で実際にダイバーシティを推進させていた企業を知っています。

・社内制度の見直し(福利厚生やキャリアパス、異動・転勤など)

性的指向や性自認によって使用できる制度に違いのない、合理的配慮がなされている状態が理想です。例えば、従業員が普段利用している家族手当や社宅制度などを同性のカップルにも異性カップルと同じように利用できるよう見直すことが一例です。法律・労務の観点に注意しつつ、企業それぞれの状況に応じて柔軟に対応するのが良いでしょう。そうすることで、会社のダイバーシティの考えが浸透しやすくなります。

【関連情報】
KDDIが2020年6月から、同社社員の同性のパートナーの子どもを、社内制度上は異性婚カップルの子どもと同様に家族として扱う「ファミリーシップ申請」を開始。申請後、LGBTQの社員は出産祝い金や育児休職、看護休暇の取得といった社内の福利厚生の仕組みを利用できるようになる。
同性パートナーの子も育休・産休制度などの対象に KDDIが「ファミリーシップ申請」を開始

・「アライ」の見える化(レインボーカラーを使用したロゴ・バッジ・・ステッカー・文具等の製作)

「アライ(ALLY)」とは仲間や同盟を意味する英単語「Ally」が語源で、一般的にLGBTQ+への理解者・支援者を指します。社内にアライが存在することをネームプレートや名刺に記したり、LGBTQ+の象徴としても用いられるレインボーカラーを使用したグッズを身に着けたり、使用することで全社的に「LGBTQ+への理解がある会社」を目指していることを周知することができます。会社として把握していない既存の当事者社員に対しても、今後必要に応じてカミングアウトする場合の安心感につながると思います。また、当事者の方が来社した際にも「ああ、理解ある企業なんですね」という風に伝わりやすくなります。

【関連記事】 LGBTQ+を理解・支援する「アライ」 職場での存在は3.6%。職場での育成が課題に

・研修の実施・社内外でのアライイベント開催(当事者との交流会/トークイベント/映画鑑賞etc…)

実際にLGBTQ+の当事者の方と話をしてみることが、理解促進につながります。ミルメソリューションでは、「体感することで理解を深める」ことをねらいに、当事者の方との交流機会を組み込んだ研修プログラムもご用意しています。「面接に当事者が来てどう対応してよいか分からない」と悩んでいた採用担当者が、実際に当事者の方と話をすることで「安心感につながった」、というケースもあります。
また、LGBTQ+が抱える問題を題材にした映画を社内で鑑賞するというのも手軽に始められる理解推進策の1つです。当事者の悩みや「当事者ってどんな人なの?」を、ストーリーを通じてきっと感じ取れる面があると思います。

【関連情報】
LGBTが抱える問題を、当事者ではなく周囲の人々の目線から描いた映画「カランコエの花」は、2018年の全国劇場での上映が終了した後も、さまざまな企業や教育機関・自治体・団体で開催されるLGBT研修や性の多様性に関するセミナー・講演などで教材として利用されている。公式サイトからオンライン上映の問い合わせも可能。
映画「カランコエの花」公式サイト

Q3.なぜLGBTQ+に関する正しい知識を持つ必要があるのでしょうか。

  • LGBTQ+への差別的言動がある職場では、勤続意欲が低くなる
  • トランスジェンダーが望む性別で働けない職場は、メンタルヘルスが悪くなる
  • 自分以外のLGBTQ+の仲間やアライがいる職場では、勤続意欲が高くなる
  • LGBTQ+施策を実施している職場の方が、人間関係がよく、職場内で相談しやすい など

これまで、さまざまなアンケートや当事者の声から上記の傾向が分かっています。 また、LGBTQ+に関するダイバーシティの施策を実施している数が増えるほど、当事者の心理的安全性が高くなる傾向*があります。LGBTQ+施策は「1つやれば良い」ではなく、複数の施策をしっかりと継続して行うことで効果が期待できます。
LGBTと職場環境に関するWebアンケート調査「niji VOICE 2019」より

Q4.当社にはLGBTQ+の当事者は在籍していませんし、今後も採用予定もありません。何か対応する必要があるのですか。

実は把握していないだけで、すでに退職された方も含め在籍していた可能性もあります。また、今後の採用活動で意識せずに当事者を採用する可能性もあります。

電通が2021年4月に発表した「電通LGBTQ+調査2020」によると、日本の人口のLGBTQ+層の割合は8.9%で、11人に1人という割合で性的マイノリティの方々が存在していることが明らかになりました。当事者が所属するコミュニティ(職場や学校)によっては、まだまだ理解が乏しく、(理解してもらえないのでは?という不安から)カミングアウトのハードルが高かったり、カミングアウトの必要性を感じていない方々も存在します。そのような背景から、見えにくい存在になってしまいがちですが、数字からも分かるように、決して居ないわけではなく身近な当たり前の存在であることが窺い知れます。そのことからも正しい知識と理解をすることはとても大切です。
正しい知識や理解がないために、明日面接に訪れるかもしれない求職者や、いま所属しているかもしれない当事者の従業員を傷つけたり結果的にハラスメントを起こしてしまわないよう注意が必要です。

Q5.どのような発言や言葉がSOGIハラスメント(略称:SOGIハラ)に該当するのでしょうか。

例として次のようなものあります。
ホモ、レズ、オネェ、オカマ、「うちの職場にはLGBTなんていないから関係ないよね」「少しは男らしく」「女らしくしろよ」など
「SOGI(ソジ)」は、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとったもの。性的指向・性自認に関連して、相手への差別的な言動や嘲笑、精神的、肉体的ないじめ・暴力・無視、当事者が望まない性別での生活の強要、不当な異動や解雇などがSOGIハラスメントにあたります。

Myriams-FotosによるPixabayからの画像

Myriams-FotosによるPixabayからの画像

★LGBTQ+ 選考に関する質問

Q6.採用活動時、応募の段階で『わたしはトランスジェンダーです。選考してもらえますか』と問い合わせがありました。どうしたらよいでしょうか。

選考資格や採否判断において、LGBTQ+であるかどうかは影響しない点を伝えましょう。

その時点で具体的な質問があれば曖昧な回答はせず、分かる範囲で回答し、分からないことや対応に困ることがあれば専門家や知見のある方に話を聞いてみるなどして、面接の際に回答するのが良いでしょう。

また、こうした問い合わせがある背景の1つには、履歴書や応募時に入力を求められるフォームなどでの「性別欄」の記入が「男・女」としか記載がないことも影響しています。もし、ダイバーシティ推進を掲げて積極的に採用を行うようであれば、「男・女・その他」といった選択項目にしたり、そもそも性別の記入を求めないといった方法を検討してみてください。

【関連情報】「性別欄のない履歴書を発売」コクヨ株式会社(2020年12月21日)

Q7.面接の際に採用担当者が事前にできる配慮はありますか。

まずは、面接にくる求職者の中にも当たり前に当事者が存在するという意識が醸成されることが大切です。
そのため、正しい知識と理解を深めることが最も重要です。どのような発言や対応がSOGIハラスメントに当たるのかだけでなく、多様な性の在り方を知ることや、現在、日本で性的マイノリティと呼ばれる人たちが11人に1人という割合で存在していること。実際にさまざまな業界・職種で働いているといった事実を認識しておきましょう。

また、自分だけが配慮できていれば良いということではないため、面接官やメンターを務める社員や、最終面接を行う経営層などにも働きかけを行ってください。

Q8.面接でカミングアウトを受けました。どのような対応が望ましいのでしょうか。

選考資格や採否判断において、LGBTQ+であるかどうかは影響しない点を伝えましょう。

厚生労働省は「公正な採用選考の基本」において、「障害者、難病のある方、LGBT等性的マイノリティの方(性的指向及び性自認に基づく差別)など特定の人を排除しないことが必要です」と明記しています。(一方で、当事者の声やアンケートなどから、就職活動において不当な扱いを受けている当事者が存在することもわかっています)。
伝えた後、「あなたはどんな環境だったら働きやすいと思いますか?」をヒアリングし、現状、「会社で配慮できること・できないこと」を、誠意をもって説明してください。

例えば、自社のトイレが男性用と女性用しかない状況で、トランスジェンダーの方から「トイレはみんなのトイレを使いたい」と言われたケースで考えてみましょう。 一番良いと思われるのは、みんなのトイレを設置することです。しかし、設置するための予算が確保できなかったり、ビルの一画をオフィスとしている場合で自社都合だけで設置ができない状況も考えられます。
会社の現状を本人に説明し、物理的な制約やコスト面の事情から必ずしも本人の意に沿いきれない部分が出てくることを伝えておきましょう。仮にそのことが本人にとって働く上での弊害と感じた場合、結果として辞退となる可能性もゼロではありませんが、不当な理由で不採用にされたという認識にはならないはずです。

私も長年、人事として面接を担当してきましたが、どんな言葉選びをして、どう伝えることが会社にとってのリスク管理になるのかいま一度、人事の皆さんに考える機会を持っていただきたいですね。会社を代表して面接に臨んでいるわけですから、相手に対して「自分の発する言葉が会社としての言葉になる」というマインドが人事側に1番重要だと思っています。。

Q9.面接の際に見た目の性と履歴書に記載されている性にギャップがある場合に、どのように対応したらよいでしょうか。

カミングアウトをするか・しないか、また誰にするか・しないかは本人の自由です。
本人から特段申し出がない限りは、履歴書に記載されている通りに対応してください。ただし、履歴書上で情報の相違(例えば、性別は男の欄に丸がついていて、女子高出身など)が見受けられる場合には、業務の性質や職種の特性などの必要性を説明したうえで確認をすれば良いと思います。

Q10.面接に来た当事者の方を採用したいと思うのですが、全社的にまだ知識や理解が不足しています。どのように対応したらよいでしょうか。

カミングアウトして面接に臨んでいるということは、応募者自身もそうした状況を理解しつつもこの会社に入りたい意欲が強いのだと思われます。会社の現状を下手に濁して伝えてしまうと、かえって悪い印象を持たれてしまうでしょう。社員の意識や制度をすぐに変えられなくとも、信用してもらうことはできると思います。

例えば、「会社としてはLGBTQ+について理解促進のための研修はまだやり始めた段階です。理解がさらに進むように力を入れていこうとしています。ただ、あなたが入社したのち、配属された先で直属の上長や先輩、同僚の中にはまだ理解が出来ていない人たちもいるため、時に、あなたにとって心無い言葉を耳にすることもあるかもしれない。その時は私に教えてください」というような伝え方をすることで、信用してもらい、心理的安全性の担保につなげていくことはできると思います。

chiguy66によるPixabayからの画像

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★LGBTQ+ 入社後に関する質問

Q11.社員にカミングアウトされた場合、どのような対応が求められるでしょうか。

当事者がカミングアウトをする理由はさまざまです。福利厚生の利用申請や働き方に関するものばかりではありません。“職場で隠しごとをしているようで嫌だ”“本当の自分で働きたい” といった理由からカミングアウトする方も少なくありません。本人の困りごとや、カミングアウトの背景にしっかりと目を向けると同時に、本人の“どうしたい”にしっかりと耳を傾け、一緒に対応策、解決策を考えることが重要です。

注意が必要なのは、本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露してしまう「アウティング」などを行った場合です。プライバシーの侵害につながるため、生命に関わるほどの深刻な影響をもたらし、過去には訴訟に発展した事例もあります。

Q12.カミングアウトされた内容について、人事から配属先の上司に伝えようと思いますが、 問題ないでしょうか。

本人の同意なくSOGI(性的指向と性自認)に関する情報を第三者にアウティング(暴露)する行為は、プライバシーの侵害にあたります。 社員にカミングアウトを受けた場合、(生死に関わるような緊急度の高い状況を除き)本人の許可なく社内外で共有してはいけない情報であると理解しておきましょう。

Q13.女性として入社した社員から、今後は男性の制服を着用したいと申し出がありました。 どのような対応をしたらよいでしょうか。

業務遂行にあたり制服が本当に必要なのか? 代用はきかないのか? など、業務にあたっての服装規定を見直してみたり、業務のクオリティや成果に影響がないのであれば本人の意思を尊重することが望ましいでしょう。

Q14.どのように社内の当事者を把握すればよいでしょうか。

カミングアウトをするか・しないか、また誰にするか・しないかは本人の自由です。
当事者本人が現状の働き方や困りごとがない場合や職場でのカミングアウトの必要性を感じていない場合もあります。当事者本人の申し出がないにも関わらず、当事者探しをする必要はないでしょう。当事者本人からの申し出があり、情報の管理が必要な場合には(なぜ社内で情報の共有が必要なのか理由を添えて)本人の同意を得たうえで関係各所と情報を共有するようにしてください。

理解を深めるための研修を実施した直後は“当事者探し”が起こりがちです。そうしたことが起きないよう人事の皆さんはあらかじ留意して先回りの対応を心掛けてください。

Q15.同性パートナーのいる社員から『家族手当』の申請の申し出がありました。どうしたらよいでしょうか。

パートナーが同性か異性かに関わらず同じ制度を利用できるようにするのがよいでしょう。
また、その場合、事実婚を認めるかなど社内で規定の再検討の必要などもでてくるでしょう。性的指向や性自認によって使用できる制度に違いのない、合理的配慮がなされている状態が理想です。

例えば、従業員が普段利用している家族手当や社宅制度などを同性のカップルにも異性カップルと同じように利用できるよう見直すことが一例です。法律・労務の観点に注意しつつ、企業それぞれの状況に応じて柔軟に対応するのが良いでしょう。そうすることで、会社のダイバーシティの考えが浸透しやすくなります。

【関連情報】
KDDIが2020年6月から、同社社員の同性のパートナーの子どもを、社内制度上は異性婚カップルの子どもと同様に家族として扱う「ファミリーシップ申請」を開始。申請後、LGBTQの社員は出産祝い金や育児休職、看護休暇の取得といった社内の福利厚生の仕組みを利用できるようになる。
同性パートナーの子も育休・産休制度などの対象に KDDIが「ファミリーシップ申請」を開始

Q16.当事者が安心して働くためにどんなサポートができるでしょうか。

  • 「アライ企業」であることを発信する
  • 社員にLGBTQ+について正しい知識を身につけ、理解を深めてもらう
  • 就業規則や福利厚生などを見直す
  • 当事者が心理的安全性を担保して相談できる社外窓口を設ける  など

社内外に向けて、「アライ企業」であることの発信や当事者が安心して働く職場環境を構築するためには、そこで働く社員が「正しい」知識を身につけ、理解を深めることが必要不可欠なのではないでしょうか。
さらに、就業規則や福利厚生などを見直すことや「アライの見える化」にも取り組んでみてください。また、主導する人事部のリソースが限られていたり、忙しくて時間がとれないこともあるでしょう。そうしたときに、当事者が心理的安全性を担保して相談できるよう社外窓口等を設置することも効果的です。

【おわり】

※情報は2021年7月26日時点
※本記事の取材は主にメールでのやりとりによるもので、一部を感染対策に留意しながら行いました。

【ミルメソリューションのコンサルティング】

会社の目指す企業戦略・組織目標を明確にし、どのようにダイバーシティを受け入れていくべきなのかの大前提を整理した上で、企業側・人材側両面で求めている多様性のあり方を定義し、実行まで徹底サポートします。まずは無料相談で診断と対策をご提案!

問い合わせhttps://consul.mirume-s.jp/#p-home-contact

ミルメソリューション株式会社
本社:東京都渋谷区恵比寿南3丁目3番1号ES33ビル4
HP:https://consul.mirume-s.jp/

【企画・制作:@人事編集部広告制作部】

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