【シニア層の就業実態・意識調査2021】ジョブズリサーチセンター(株式会社リクルート)
コロナ禍で採用予定を減らした企業は2割。今後のシニア層の採用・雇用、活躍促進には健康管理とITツール利用の工夫が必要
2021.05.28
コロナ前後でシニア層(55~74歳)の就業意欲や企業の採用・雇用意欲や手法がどう変化したのか。リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター(JBRC)』が5月25日に発表した調査レポート「シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編・企業編>」で明らかになった。
調査結果から、コロナの影響で採用予定を減らした企業は全体の2割で、理由は「すでにいる従業員の雇用維持優先」が4割で最も多く、次いで健康管理やITツール対応への不安が挙がったことが分かった。一方で、シニア層の就業意欲は大幅に変わらないものの、「コロナが終息しない限り、仕事や通勤の面で不安」「高齢で感染が心配なので仕事を控えている」など体調や感染を気にする声が聞かれた。
今後のシニア層の採用・雇用、活躍の推進には、設備や出勤に関する就業規則などを含めた感染対策を考慮した健康管理と、ITツールをスムーズに活用できるようなマニュアル・動画の用意、講習の実施などの工夫が求められる。
シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<企業編>TOPIC
- 【1】働き方の変化として、「シニアの採用・活躍支援」について「後退した」または「とても後退した」との回答が8.2%、「長時間労働の是正」では7.2%だった。【2】採用予定への影響(正社員)として、採用予定を減らしたとの回答が全体の19.8%。業種別に見ると、「不動産、金融」「フード、販売、サービス」「各種製造」で2割超を数え、採用予定を減らした企業が少なくないことが分かった。
- 【3】シニア層採用意欲への影響(正社員)については、「以前より積極的になった」「以前よりやや積極的になった」の合計と、「以前より積極的でなくなった」「以前よりやや積極的でなくなった」の合計が、いずれも11.7%だった。【4】シニア層採用に積極的でなくなった理由として、「すでにいる従業員の雇用維持を優先するため」との回答が、いずれの雇用形態についても4割前後で最も多く、次いで「健康管理に不安があるため」は3割前後、「ITツールなどへの対応に不安があるため」は2割前後だった。シニア層の活躍を促進するためには、これまで以上に健康管理やITツールなどへの対応に工夫が求められる。
- 一方で、【5】シニア層正社員採用に積極的になった理由として、「採用人数が増えたため」との回答が最も多かった。また、「シニア層が働きやすい仕事内容が増えたため」「シニア層が働きやすい時間帯の仕事が増えたため」も2割前後となった。
- 新型コロナウイルスの影響による採用方法など【6】採用や働き方の変化を具体的に聞いたところ、「ITを活用できる人材を強く求めるようになった」「デジタルに頼るシーンが増えたので、デジタルリテラシーの高さが求められるようになった」といったITに強い人材を求める声があがった。また、Web面接・リモートワークの難しさについて、「求める人材であるか否かの判断が難しくなった。本人と直接会うことが少ないため」「リモートワークが増えたため、OJT等が実施しにくくなった」など苦戦する声が聞かれた。
- 【7】採用活動の変化は、「オンライン面接を導入・拡大した」との回答が18.2%で 、オンライン導入が進んだ。また、「感染対策について記載するようになった」「即戦力をより重視するようになった」「求人情報サイトをより活用するようになった」との回答もそれぞれ 1 割を超えた。
シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編>TOPIC
- ・【1】就業意欲への影響として、「強まった」または「やや強まった」との回答が計9.5%、「弱まった」「やや弱まった」との回答が計21.0%だった。【2】就業意欲が弱まった理由は、「感染予防のために外に出ることを減らそうと思った」が66.3%で最も割合が高く、次いで、「外に出るのがおっくうになった」「仕事が見つからないだろうと思った」が3割以上だった。
- 【3】生活の変化について聞いたところ、「健康に気をつかうようになった」が「あてはまる」または「ややあてはまる」との回答が8割超。「パソコンやスマートフォンを使い始めた、使う時間を増やした」は5割超、「家族や友人とビデオ通話などオンラインでのコミュニケーションを増やした」は約3割で、日常生活でもオンライン化が進んできている。
- 【4】今後の希望や不安について、具体的に聞いたところ、「今は仕事が激減しているので、パート収入が3分の1になった」「コロナ補助が全く足りない。数種類の給付金など去年のうちにとっくになくなって生活ができない」といった収入減への不安のほかに、「コロナが終息しない限り、仕事や通勤の面で不安である」「高齢で感染が心配なので仕事を控えている。コロナワクチンを接種し、効果が実感できたらまた仕事に復帰したい」「派遣会社から仕事は来るが、コロナ感染が心配で特に混雑した電車通勤が有ることに踏み切れないでいる」など体調や感染を気にする声があがった。
以下、リリースおよび調査レポートより抜粋して紹介する。
調査結果の詳細はこちら
- 【調査レポート】シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編>
- 【調査レポート】シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<企業編>
- 【プレスリリース】シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編・企業編>
解説:中長期的ニーズを見据え、コロナ影響をシニア雇用促進の契機に
今回の調査結果からは、コロナ影響により就業意欲が弱まったシニアが少なくないことが分かりました。このような影響は他の年代でもあると推測されますが、採用活動の際は各年代に合わせた対応も必要です。シニアほど「定期的に洗浄・消毒などを実施している」、「対面での面接を空調に配慮した場所で実施している」ことが応募・就業意欲につながったという調査結果【下記図】もあります。
企業編の結果を見ると、コロナ前後でシニア採用への積極性に大きな変化はありませんでした。シニアに限らず採用予定を減らしたとの回答は少なくないものの、中長期的に見ると、少子高齢化や人材不足の状況は続くと考えられます。コロナ影響をむしろチャンスと捉え、どの年代の人も働きやすい職場を作る契機にしたいものです。
【ジョブズリサーチセンター長・宇佐川邦子】
シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<企業編>
【1】働き方の変化
「オンライン会議」「非常時のテレワーク」については「とても進んだ」または「進んだ」との回答が4割超となるなど、オンラインでの働き方が急速に進んだことが分かる。一方で、「後退した」または「とても後退した」との回答が「シニアの採用・活躍支援」では8.2%、「長時間労働の是正」では7.2%となっている。
【2】採用予定への影響(正社員)
正社員の採用予定を減らしたとの回答が全体の19.8%だった。業種別に見ると、「不動産、金融」「フード、販売、サービス」「各種製造」で2割超となっている。影響を受けた前後の採用予定人数はさまざまだと考えられるが、採用予定を減らした企業が少なくないことが分かる。
【3】シニア層採用意欲への影響(正社員)
正社員でのシニア層の採用については、「以前より積極的になった」「以前よりやや積極的になった」の合計と、「以前より積極的でなくなった」「以前よりやや積極的でなくなった」の合計が、いずれも11.7%だった。積極的になる、積極的でなくなる、どちらの場合もあるものと考えられる。最も多かったのは「どちらともいえない」で約8割だった。
【4】シニア層採用に積極的でなくなった理由
「すでにいる従業員の雇用維持を優先するため」との回答が、いずれの雇用形態についても4割前後で最も多かった。また、「健康管理に不安があるため」は3割前後、「ITツールなどへの対応に不安があるため」は2割前後となっている。シニア層の活躍を促進するためには、これまで以上に健康管理やITツールなどへの対応に工夫をする必要があるだろう。
【5】シニア層採用に積極的になった理由
正社員については、「採用人数が増えたため」との回答が最も多かった。パート・アルバイト、その他雇用形態については、「シニア層からの応募が増えたため」が最も多い。また、「シニア層が働きやすい仕事内容が増えたため」「シニア層が働きやすい時間帯の仕事が増えたため」も2割前後となった。
【6】採用や働き方の変化について Q.新型コロナウイルスの影響による採用方法や働き方の変化について、具体的にお知らせください。(自由回答)【対象者:全員】
新規採用の見合わせ
- 営業が大きくストップした時期があり募集を1年間ストップした。(東京都、飲食関連業、300~500人未満)
- 業績の悪化により新規の採用が見送られている。(埼玉県、各種製造業、50~100人未満)
- 業績の先行きが不透明化したため、できる限り人件費負担を軽くできるように採用抑制や残業規制を強化している。(愛知県、各種サービス業、1,000~2,000人未満)
- 先が見えない、予測できないため、積極的に採用は考えられない。(福岡県、その他業種、10~30人未満)
ITを活用できる人材・即戦力の重視
- ITを活用できる人材を強く求めるようになった。(北海道、その他小売業、10~30人未満)
- デジタルに頼るシーンが増えたので、デジタルリテラシーの高さが求められるようになった。(東京都、商社・各種販売業、10~30人未満)
- 即戦力のある人材が貴重になってきた。(大阪府、その他小売業、10~30人未満)
- 専門的な職業のため経験が浅い応募者の採用を減らした。(愛知県、各種製造業、100~300人未満)
Web面接・リモートワークの難しさ
- 求める人材であるか否かの判断が難しくなった。本人と直接会うことが少ないため。(福岡県、建設・土木・工事関連業、300~500人未満)
- リモートワークが増えたため、OJT等が実施しにくくなった。(東京都、IT関連業、10~30人未満
【7】シニア層採用に積極的になった理由
画像:調査レポート「シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編・企業編>」(ジョブズリサーチセンター・株式会社リクルート)(※回答者には、募集・採用を行わなかった企業も含まれている)
シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編>
【1】就業意欲への影響
「強まった」または「やや強まった」との回答が計9.5%、「弱まった」「やや弱まった」との回答が計21.0%となった。特に非就業者では就業者に比べて就業意欲が弱まったとの回答が多く、いずれは働こうと思っていたがコロナ影響でためらうようになった人が少なくないと考えられる。
調査対象者には働くつもりがない人が含まれていない点に注意が必要。「シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編>」 P.3参照)
【2】就業意欲が弱まった理由
「感染予防のために外に出ることを減らそうと思った」が66.3%で最も割合が高い。次いで、「外に出るのがおっくうになった」「仕事が見つからないだろうと思った」が3割以上となっている。
【3】生活の変化
「健康に気をつかうようになった」が「あてはまる」または「ややあてはまる」との回答が8割超。「パソコンやスマートフォンを使い始めた、使う時間を増やした」は5割超、「家族や友人とビデオ通話などオンラインでのコミュニケーションを増やした」は約3割だった。前頁同様、WEBアンケートという条件はあるものの、日常生活でもオンライン化が進んできていると考えられる。
【4】今後の希望や不安
Q.今後の仕事や生活についてのご希望や不安についてどの様な事でも結構ですので具体的にお知らせください。(自由回答)【対象者:全員】
収入減
- 今は仕事が激減しているので、パート収入が3分の1になった。早くコロナが収まって日常がいつもどおりになってほしい。(70歳女性、アルバイト・パート)
- コロナ補助が全く足りない。数種類の給付金など去年のうちにとっくになくなって生活ができない。( 61歳男性、自営業・自由業)
働きたいが感染が心配
- コロナが終息しない限り、仕事や通勤の面で不安である。61歳女性、派遣社員)
- 高齢で感染が心配なので仕事を控えている。コロナワクチンを接種し、効果が実感できたらまた仕事に復帰したい。(70歳男性、無職)
- 派遣会社から仕事は来るが、コロナ感染が心配で特に混雑した電車通勤が有ることに踏み切れないでいる。(61歳女性、専業主婦/主夫)
- リタイアして1年。コロナ感染がこわくて働いていないが、段々復帰できないような気がしてきた。( 66歳女性、無職)
仕事探しの難しさ
- コロナ禍で思うように仕事探しができない。(66歳女性、専業主婦/主夫)
- コロナのせいで求人が少なくなってきているように感じる。経済的なことより、社会とのつながりや、外に出ることによって身なりを気にしたり健康面に緊張感をもてるので体の続く限りはたらきたいというのが正直な気持ちである。そのために仕事に就きたい。(74歳女性、無職IT関連業、10~30人未満)
調査概要
調査結果の詳細および、図・解説の出典
- 【調査レポート】シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編>
- 【調査レポート】シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<企業編>
- 【プレスリリース】シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編・企業編>
【プレスリリース「調査レポート「シニア雇用への新型コロナウイルスの影響<個人編・企業編>」 コロナ影響でシニアの約2割は「就業意欲が弱まった」 企業のシニア採用意欲に大きな変化なし」より|2021年5月25日・株式会社リクルート】
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