jMatsuzakiの「自己啓発書評」
『嫌われる勇気』の実践的な続編『幸せになる勇気』
2016.07.29
私の愛しいアップルパイへ
先日紹介した2013年のベストセラー『嫌われる勇気』に待望の続編『幸せになる勇気』が登場しましたのでご紹介しましょう。
▼前作「嫌われる勇気」の紹介記事はこちらからどうぞ。
『嫌われる勇気』~自由かつ幸福に働くために
「嫌われる勇気」の続編「幸せになる勇気」のポイント
「嫌われる勇気」に引き続き、今回も青年&哲人コンビは健在です。今回は前作から3年後、教師として働きはじめた青年がまた哲人の部屋を訪れます。今回はアドラー心理学のより具体的で、実践的な話がテーマになっています。
今回は「幸せになる勇気」のなかでも特に印象に残った箇所をまとめます。
われわれが語るべきは「これからどうするか?」
われわれが語り合うべきは、まさにこの一点、「これからどうするか」なのです。「悪いあの人」などいらない。「かわいそうなわたし」も必要ない。
第一部 悪いあの人、かわいそうなわたし
アドラー心理学の魅力的なところは建設的なところです。
問題にぶつかったとき、人はどうしても「悪いあの人」の話か「かわいそうなわたし」の話に終始しがちだと哲人は語ります。飲み会などで誰もがこのような光景を見たことがあるでしょうし、ときには参加したことだってあるでしょう。
「悪いあの人」でも「かわいそうなわたし」でもなく、「これからどうするか」について語ること。この前提に立つことができればコミュニケーションの質が根本的に変わる力強い考え方です。
人間は誰しもが「わたし」という物語の編纂者である
人間は誰もが「わたし」という物語の編纂者であり、その過去は「いまのわたし」の正統性を証明すべく、自由自在に書き換えられていくのです。
第一部 悪いあの人、かわいそうなわたし
フロイトの原因論に対してアドラー心理学の目的論が分かりやすく説明された一節です。そして、自由に生きるための最も基礎となる考え方でもあると私は思います。
アドラー心理学では過去の原因が現在の私を作っているという原因論ではなく、現在の私が過去に与える意味によって現在を作り出しているという目的論の考え方が基礎になっています。
そして目的論に基づいているからこそ、人はいまこの瞬間に流れを変えられるのであり、すなわち自由なのです。これが人間は誰もが「わたし」という物語の編纂者であるという考え方につながっていきます。
尊敬とは「ありのままにその人を見る」こと
尊敬とはなにか?こんな言葉を紹介しましょう。「尊敬とは、人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力のことである」。アドラーと同じ時代に、ナチスの迫害を逃れてドイツからアメリカに渡った社会心理学者、エーリッヒ・フロムの言葉です。
第一部 悪いあの人、かわいそうなわたし
本書で最初に語られる大きなテーマが「尊敬」です。尊敬といえば、あまりに一般的な言葉でもはや説明不要だと思うかもしれませんが、本書では尊敬の定義を詳しく再定義しながら、多くの人が尊敬という言葉を勘違いしていることを教えてくれます。
アドラー心理学では、尊敬とは「ありのままにその人を見ること」となります。ここでポイントになるのが、その人の行動を見るのではないということです。良いことや偉大な仕事をしたから尊敬するのではなく、ましてや相手を操作・矯正するために尊敬するのでもなく、その人が唯一無二の存在であると認めることが真の尊敬なのです。
すべての問題は人間関係に帰結すると説くアドラー心理学では、この尊敬の考え方が鍵となります。
競争原理から協力原理へ
ルールを破れば厳しく罰せられ、ルールに従えばほめられる。そして承認される。つまり人々は、リーダーの人格や思想信条を支持しているのではなく、ただ「ほめられること」や「叱られないこと」を目的として、従っているのです。
(中略)
「ほめられること」を目的とする人々が集まると、その共同体には「競争」が生まれます。
第三部 競争原理から協力原理へ
アドラー心理学では衝撃的な考え方がいくつもでてきますが、その1つが褒賞と競争の否定です。褒賞をめざす人々による競争原理に支配された共同体の先に幸せはないと断言しています。
賞罰からは承認欲求が生まれ、そして人と人が競争しあうようになります。このシステムの上で成り立った組織のなかでは駆け引きと不正が生まれ、腐っていくのです。
なかでも特徴的なのは罰することだけでなく、褒めることも否定していることです。褒めるという行為は格上の者が格下の者に行う行為です(上司を褒めたりしませんよね)。つまり、褒められた相手は自分が格下であると自覚します。そして、褒められるたびに自分が無能であると刷り込まれ、不正をも厭わない競争にはげむようになります。
ですから、共同体から”競争の毒”を抜いて、協力原理に基づいた共同体をつくることを提案しています。そして、この協力原理の基礎となるのが前述した「尊敬」なのです。
普通であることの勇気
「わたし」の価値を、他者に決めてもらうこと。それは依存です。一方、「わたし」の価値を、自らが決定すること。これを「自立」と呼びます。
第三部 競争原理から協力原理へ
前述した協力原理を構築するのが難しい理由の1つは、他者から承認されたいという衝動を誰もが持っているからです。自信がないから他者に認められたい、褒められたいという衝動です。
ですから、自分の価値を他者に決めてもらうのではなく、自分で決める「自立」が鍵になってきます。競争原理によって依存を深めるのではなく、協力原理によって自立を深めるのです。
そして、自立するための鍵となるものとして「普通であることの勇気」が求められます。普通であることと無能であることの違いを知り、「人と違うこと」ではなく「わたしであること」を重視することです。そして、「特別」な存在でない自分を受け入れる普通であることの勇気を発揮することが、協力原理へシフトする鍵となります。
アドラー心理学を実践するために読みたい一冊
この記事では紹介しきれませんでしたが、本書では今日紹介した内容をベースに、ここから「仕事」「交友」そして「愛」との向き合い方について切り込んでいきます。
『嫌われる勇気』がアドラー心理学の入門だったとしたなら、『幸せになる勇気』はアドラー心理学を実践して生きていく上での指針となる一冊だと感じました。
是非「嫌われる勇気」とセットで読んでいただきたい一冊です。
貴下の従順なる下僕 松崎より
執筆者紹介
松崎純一(jMatsuzaki) IT系専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。 ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。 2015年からはjMatsuzaki名義でバンド活動を開始。 ブログ:jMatsuzaki(http://jmatsuzaki.com/)
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