特集

「副業」新時代-企業の向き合い方 vol.1


副業の現状と類型、企業にとってのメリットとリスク、活用方法

2021.04.12

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人事担当者や経営者向けに、副業導入が企業に与える影響やメリット、リスク、具体的な就業規則や人事制度の構築、労務管理の注意点などを社会保険労務士・松井勇策氏と弁護士・佐々木尊子氏の協力のもと、企業が「どう副業と向き合うか」について解説する特集。

第1回目は「副業の現状と類型、企業にとってのメリットとリスク、活用方法」だ。副業解禁と働き方改革、採用における副業可否の重要性など副業に関する時代の流れや、副業の類型と事例、メリットとリスクなどに触れる。

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目次
  1. 副業に関する時代の流れ
  2. 副業の流れ、副業化の多面性、起こってきている事象
  3. 副業の類型と典型的な事例
    【1】技術の向上・イノベーション推進・キャリア形成の意味合いでの副業推進
    【2】ワークシェアリングや収入の補填の意味合いでの副業推進
    【3】広義のフリーランスや外部人材の活用の意味での副業推進
  4. 副業のメリットとリスク・整理しておくべき論点

副業に関する時代の流れ

働き方改革の一連の政策の中で、またコロナ感染症の流行による社会変動の中でも、社会的にも政策的にも進展してきた現象のひとつが「副業」です。副業が話題になって久しく、副業やパラレルワークはもはや、どの業界のどんな企業にとっても、扱いを考慮した方が良いようなことだと言えます。

現状ですと「副業については志望者も出てきていないため、発生ベースで対応するものだ、と消極的に置いておく」という対応を取っている企業がまだ多いことも事実だと思います。しかし、こうした対応は流れに合わなくなってきていると思われ、経営的な機会を失っているとも言えますし、思わぬトラブルや機会損失を生み出していくことが起きていくと考えられます。

しかしながら、当然ですが副業は、決して無条件に理想的で全力で推進すべきものだとは言えません。起こってきている現象も多面的で、一概に副業といっても様々な形態があります。副業化という今進展しつつある現象を全体的、正確に理解し、活用できる可能性をよく理解する必要があるものだと考えられます。

また、副業については、一面的な言説が目立ちやすくなっていますので注意が必要です。特に「副業をほとんどすべての人が行うような、パラレルキャリアこそが未来的で理想的だ」というような安直な言説は大きな疑問符が付くと考えられます。企業や個人にもたらすメリットとリスクの正確な把握が必要であると言えるでしょう。

副業の流れ、副業化の多面性、起こってきている事象

政策の流れを見ると、副業については近年、非常に積極的な政策がとられてきたと言えます。
まず、2017年に「働き方改革」と歩調を合わせて、副業解禁ということが経済産業省から強く広報され、2018年には厚生労働省から提示されているモデル就業規則の改訂がされました。内容としては、服務規律において副業を禁止する趣旨だった条項が書き換えられ、副業を認める方向の文言になったということです。

その後の「働き方改革」の一連の政策や法改正は、労働時間管理の厳格化や様々な方の雇用参加を可能にする制度や法令の集合体であり、「多様な働き方」を可能にする、ということが政策の中心課題であったと言えます。これは副業を促進する趣旨を全面的に持つものだと言えました。

最近の2020年から2021年の動きで言いますと、厚生労働省から出されている「副業に関するガイドライン」が書き換えられ、副業への取り組み方針や管理についてのルールが一層具体的なものとなりました。また、労災保険法が副業者の保障を厚くする方向で改正されています。2021年4月には高齢者雇用安定法で、70歳以上の方の個人事業主化の促進が努力義務とされる選択肢の中の1つとして施行が予定されており、広い意味での副業を促進する内容だともいえるでしょう。また、他企業への出向に関する助成金(産業雇用安定助成金)が創設されることが決定されており、これも副業にも関連する内容です。

こうした様々な動きがありますが、そうした中で、副業についていまひとつ捉えにくい印象があります。その理由として、副業として捉えられている現象に、かなり性質の違ういくつかの類型のものが含まれているからだと考えています。こうした副業の類型を全体的に分類した情報はあまりありませんが、様々な事象を視野に入れ、また行政から発信されている内容を視野に入れて考えますと、

  1. 技術の向上・イノベーション推進・キャリア形成の文脈での副業推進
  2. ワークシェアリングや収入の補填の文脈での副業推進
  3. 広義のフリーランスや外部人材の活用の文脈での副業推進 

の3つの種類の副業があるものと言えます。それぞれが企業の施策としても違う課題を持っており、分けて捉えないと非常に分かりにくくなると思います。それぞれ、内容と基本的な捉え方について要点を解説し、また典型的な事例を提示していきます。

副業の類型と典型的な事例

【1】技術の向上・イノベーション推進・キャリア形成の意味合いでの副業推進

コロナ感染症の前まで、社会的に主に副業として注目されてきたのはこのタイプの副業だと言えます。従来から、たとえば典型的にはITエンジニアの方などが、副業として個人事業主として自身でソフトなどを作って販売したり、専門的な技術を持つ方が複数の企業で就業したりということは行われてきました。
結果として、その方のキャリア形成上、様々な経験を獲得することができる・所属している企業でも外部の知見が活用できるようになる・本人の視野が広がりイノベーションが起こりやすくなる、といった効果が見られました。一時期、企業変革を起こすために外部との交流の場を設けるオープンイノベーションなどと言う動きもありましたが、似た特徴を持つ流れであると言えます。

(事例)【本業の業種】IT・情報処理業 【職種】エンジニア

業務で習得した技能も生かして、自分の趣味のゲーム製作を副業として行っていた。副業として販売し始めたところ広く拡販でき、本業の仕事のユーザー獲得の知見も伸びて、本業の事業にも良い影響があり、技術的にも発展がみられた

(事例)【本業の業種】運輸・倉庫業 【職種】事業統括マネージャー

本業で新規事業関係の事業マネージャーになったことをきっかけに、起業家を目指す人を自身で集める場をプロデュースし始めた。副業として事業化ができ、その後副業の事業規模が大きくなったため独立したが、その後も本業企業との間で事業パートナーとして良い影響が与えられている。
(上記いずれも、経済産業省 「兼業・副業を通じた新事業創出に関する調査事業 研究会資料」より)

これらの休暇制度について、2021年1月から1時間単位での取得が義務化され、全労働者が対象となったということが法改正の内容と位置づけとなります。今回の法改正は、育児や介護が必要な労働者について、労働との両立をさらに可能とするような方向性の改正であると言えます。次に、法改正についての詳細について解説します。

【2】ワークシェアリングや収入の補填の意味合いでの副業推進

コロナウィルス感染症の対応が起こってきた後に注目度が上がった類型です。もともと、収入の補填のために本業企業の終業後にアルバイトをするような方はある程度の数、存在しているものと思います。こうした、収入の補填などの意味合いでの副業がまず含まれます。
また、政策的・労務的に同じような特徴を持つあり方として、自社の人材を短期・中期の間、外部の別の企業等に出向させる形態が、コロナ感染症による一部の業界の全体的な業績不振により、非常に注目を集めるようになりました。こうした出向は、基本的には出向期間の全ての勤務時間を出向先企業での勤務に当てることから、その場合は副業とは言えません。しかし、出向元企業での勤務を、日単位やある一部の部分、残すような形で、副業のような形態を取る場合も散見されます。その場合は副業としての視点や運用の整備も必要となります。
2021年には産業雇用安定助成金などの出向者向けの助成金等も創設されるため、2021年に恐らく大きく注目されることが予測される形態です。

(事例)【本業の業種】観光バス会社 【職種】運転手

精密部品を専門として運送している会社が本業と別の勤務先の企業。運転手が慢性的に不足している状況で、観光バスの運転手であれば精密部品輸送に求められる丁寧かつ繊細な運転ができるとして、既存の技能を生かして活躍できる。※参照元の内容は出向の事例です。

(事例)【職種】調理人

同地域のレストランが本業と別の勤務先の企業。ホテルのインバウンド需要が大きく減少する中で、レストラン部門の調理技術を生かし、さらなる技術習得の趣旨もある事例。

厚生労働省「在籍型出向基本がわかるハンドブック」より
上記はあくまで、出向の事例として書いてある内容です。しかし、ワークシェアリング観点で共通しており、副業における技能の活用にも生かせるため、あえて事例的に提示しました。

【3】広義のフリーランスや外部人材の活用の意味での副業推進

技能を持つ外部の人材と、短時間労働の契約や業務委託契約をして自社で生かすという形態です。
業務委託は雇用とは違いますし、専門家による顧問などの形態含めて古くからある形態ですが、フリーランスの増加や副業者の紹介サービスなどが進展しており、従来よりも雇用に近い形態で部分的に働く方が多くなってきています。上記の【1】【2】が、基本的には内部の人材が副業を行うことが主題となるのに対して、こちらは外部人材の活用に主眼が置かれています。

(事例)「スポットコンサル」「顧問サービス」「副業紹介サービス」

事例としては、上記の職業などで様々に行われている多数のサービスということになると思います。ITはじめ何らかの技術的エンジニアリング、経理や財務、法務、労務、商品開発や事業運営に当たっての業界知見など、幅広い領域の知見を求めるような案件で多数のマッチングがされていると思います。
こうした副業のサービス等に自社社員が登録する場合や、自社で活用する場合など、様々な配慮が本来必要なものであると思います。

副業のメリットとリスク・整理しておくべき論点

上記のような様々な類型を見ると、恐らく少し前まで副業の典型的なイメージであった「副業とは本業である自社の就業時間外に、外で働くことだ」という一面的な見方はイメージとしても非常に貧しいものではないかと考えられます。こうした多面的な副業という現象の、どういった部分が自社と関係があり、生かしていくのかということを、整理して具体的に考えていくことが必要だと思われます。

また、副業についての企業視点でのメリットとしては、うまく活用できた場合はイノベーションが促進され、社員の自立性や視野の拡大などの育成効果が得られるような副業の活用の仕方があり得ると思います。また事業が縮小せざるを得ない環境の中でのワークシェアリングの観点では、人件費が適正化され、場合によっては企業の存続を可能にするようなものでもあるでしょう。社外の高付加価値な知見を安価に導入し、事業変革や自社サービスの付加価値の増大につなげることもできるでしょう。

反面、リスクとしては、労働者が副業を行うことは自社での勤務時間が短くなることでもありますので、特に本業の勤務時間を副業に当たる場合は、当然ですが副業分の労働力は喪失されます。また、社内施策としてうまく運用できなかった場合、組織としての求心力の低下や、時間当たりの労働力の喪失以上の生産性の低下が起こることも考えられます。また、副業について整備すべき内容が整備できていない場合、情報漏洩や権利侵害などの事故や、労基法や社会保険や税法上の違反事項を生み出していく可能性もあります。

自社で副業導入を実行するにあたって整理しておきたい論点

副業についてのメリットを増大させ、リスクを防ぐには、副業に関する課題をよく認識し、実行に当たっての整理を行うことが不可欠だといえます。整理すべき論点は、たとえば以下のようなものがあると思います。

  • 副業に関する経営方針の策定・制度の決定方法
  • 副業についての見方やマーケットの概況の知識
  • 副業者が生じた場合の法的・社内制度的なリスクマネジメントや生じ得る紛争とその防止策・対応策
  • 副業者が生じた場合の社内の労務や運用的な整備方法、既存の運用の変更点
  • 助成金や促進制度など、副業者に関連する自社に有利な制度の知識

まずは、副業導入にあたっての課題整理を

今回の特集では、副業に関して現在起こっている事例や事象、さらに副業に関する社内の運用や制度について、広く社会的・政策的な視点と、労務や法務の観点での視点で詳細に分析し、副業に関する総合的な見地を持っていただくことを目指しています。上記の各点には全て深く触れていく予定です。

今回の第1回は、副業に関する基本的な視野と、起こってきている副業の類型を整理し課題となり得る点を列挙しました。今回挙げた類型のいずれかの形で副業に取り組んでいる企業は増えていると思われます。よりメリットを増大させるような検討をしていただきたいと思いますし、また本来整備すべき運用や観点が抜けているケースも散見されます。今回の内容を参考に、まず副業関係の課題の整理を行っていただければと思います。
vol.2「副業制度の考え方と制度設計、申請フロー・手続き・届出など導入と運用」につづく】


【特集:「副業」新時代-企業の向き合い方】(順次公開)
vol.1「副業の現状と類型、企業にとってのメリットとリスク、活用方法」
vol.2「副業制度の考え方と制度設計、申請フロー・手続き・届出など導入と運用」
vol.3「諸外国の副業の現状・日本の労働市場における副業の位置づけ」
vol.4「副業に伴うリスクを防止するために必要なリスクマネジメント施策」
vol.5「副業の労務管理や運用~重要な時間管理の新しい運用」
・vol.6「副業の労務管理や運用~労働保険・社会保険・税務・健康管理に関する運用」
・vol.7「副業に戦略的に活用できる助成金や補助金~最新の産業雇用安定助成金の情報もあり」

【参考情報】
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和2年9月1日改定版)(概要)[PDF形式:767KB]
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和2年9月1日改定版)[PDF形式:375KB]
副業・兼業に関する情報ページ(厚生労働省)
部下に複業(副業)をしてほしいと思っている管理職の半数以上は、キャリア開発を期待【複業(副業)に関する意識・実態調査】パーソルプロセス&テクノロジー株式会社調べ

【編集部より】副業の企業事例や導入時の注意事項などを解説した記事はこちら

執筆者紹介

松井勇策(まつい・ゆうさく)(社会保険労務士、公認心理師、Webフロントエンジニア・グラフィックデザイナー) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。(2020年1月末時点の情報です)

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【おすすめポイント】
・1 副業・兼業の現状
・2 副業・兼業の促進の方向性
・3 企業の対応
【厚生労働省】

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