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失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム


タバコ休憩、トイレ休憩…◯◯休憩が多い社員への対処法

2016.07.25

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「労働者は休憩時間以外の労働時間中は職務に専念すべきである」という原則は、経営者としてあたりまえのことだと思われがちですが、従業員が労働基準法・就業規則等で定めた休憩時間以外にタバコ休憩などをしてしまう例は数多くあります。「仕事に専念して欲しいがどうしたらよいのか」と頭を悩ませる前に、またタバコ休憩等は労働時間になるのか否かを問う前に、以下の3つの原則を確認しておきましょう。

  1. 労働時間中は、労働者は職務に「専念」する義務を帯びています。
  2. 休憩時間とは一斉休憩であり、労働から完全に解放されている時間のことを指します。
  3. 労働時間の計算は、実労働時間を元に計算し、労働をしていない時間に対して賃金を払う義務はありません。(ノーワーク・ノーペイの原則)

この原則を踏まえて、以下のケーススタディをしていきましょう。

目次
  1. (1)タバコ休憩の多い社員
  2. (2)トイレ休憩の多い社員
  3. (3)外勤者の休憩

(1)タバコ休憩の多い社員

近年、喫煙者への風当たりが強くなっているとはいえ、まだまだ喫煙者にとって勤務中のタバコ休憩はやめられないのが本音でしょう。しかし食事と違い、喫煙は「喫煙者」と「非喫煙者」がはっきり分かれるのが特徴で、非喫煙者の社員は「喫煙者だけタバコを吸っている間休めて、タバコを吸わない私は休めないから不公平だ」という気持ちを抱きがちです。

厳密に言えば、外や喫煙場所でタバコを吸っている時間は、職務に専念しておらず労働時間ではないと解されがちなのですが、判例では「喫煙時間=労働時間」と認定された例があります。その際の根拠は、「職場内で喫煙していたとしても、何かあればただちに対応しなければならないのであるから、労働から完全に解放されている状態とはいえない」というものでした。そのため、就業規則で完全に解放されている状態を作り出すために、喫煙休憩に回数制限を設けたり、そもそも許可制にしたりすることは規則上可能ですが、就業規則で明記されていない限り、タバコ休憩は暗黙のうちに労働時間となるのです。しかも、労働基準法の原則は一部例外を除き「従業員一斉休憩」ですから、喫煙者のみ賃金を払わなくてもよい休憩時間を規定することもできません。

喫煙者と非喫煙者に不公平感を生まない対処法

それでは、タバコ休憩の多い社員には、どう対応すれば良いのでしょうか。喫煙者と非喫煙者に不公平感を生まない方法としては、1~3時間に5分程度は休憩時間と規定し、喫煙の有無に関わらず一斉休憩とすることが考えられるでしょう。適度なタイミングでの休憩は仕事の効率アップにつながるので、効果的です。また、その時間以外の喫煙は禁止してしまうことをお忘れ無く。もちろんその5分に対して賃金を支払う必要はありません。下手に喫煙者のみ賃金カットしたり、非喫煙者の賃金を増やしたりする対策よりも効果的と言えるでしょう。

「どうしても自分の会社では一斉休憩が難しい」という場合は、喫煙者はその喫煙休憩頻度に応じて、賞与を減額する計算式を取り入れるのも効果的です。賃金と違って賞与はどのような計算式であろうと、経営者の自由ですから、比較的簡単に導入することが可能になりますし、合理性も確保できるでしょう。

(2)トイレ休憩の多い社員

近年はスマートフォンなどの電子デバイスの発達により、労働時間中にも関わらず、トイレにこもってスマホでゲームをするという不良社員も増えているようです。タバコ休憩と違い、非トイレ者などはいないわけですが、トイレの回数が目に付く、重要なときにいつもトイレで席にいない、という労働者を見かけることはよくあることです。ただ、このトイレ休憩についても、労働基準法的に考えれば、タバコ休憩と同じく、もし裁判になれば「何かあればただちに対応しなければならないのであるから、労働から完全に解放されている状態とはいえない」という判断が下される可能性が高いと言えます。たとえトイレ中でも、いつ指示・命令が下されるかわかりません。労働していなくても指揮命令下にある労働時間とみなされるということです。

ただし、ゲームをしていた証拠になるデータ(ログイン履歴)があるなど、サボタージュしているのが分かれば、その時間は労働時間とはみなされず、勤務態度不良で懲戒処分(最初は勧告。改善しなければ減給以上の懲罰)も可能です。また、「トイレ休憩が多い」ことを理由に賃金を削ることはできませんが、「タバコ休憩が多い」場合と同様に、人事評価を下げる理由、賞与を減額する理由とすることは可能です。

(3)外勤者の休憩

外回りの営業中に、営業車の中で昼寝をしている人を見かけると、サボっているとみる人が多いでしょう。内勤者と違い、外勤者は1度会社を出ると、何をしているのかまったく把握できない状態に陥っていることも珍しくありません。ただし、外勤者ももちろん休憩時間が保証されているわけですが、営業上の都合で休憩がズレたり取れなかったりする例も多く、外勤者にとってみれば、「内勤の人たちは休憩が取れるのに、自分は取れていない」と逆に不公平を感じている例もありえます。

過剰に休憩を取っている外勤者がいる場合、なんらかの処罰を…と会社側は考えるところですが、外勤者に対して「事業場外労働」を適用している場合は、労働時間の把握が難しいと会社側が宣言しているに近く、処罰することは難しいと言えるでしょう。ただ、休憩が過剰であれば、それだけ働いている時間は短いわけですから、成績にも影響が出る可能性があります。営業成績の低下や職務遂行の完遂ができてない状態については、当然人事評価を下げることや、賞与を減額したりすることは可能です。そのため、休憩の過剰さに対して罰則を与えるのではなく、素直に成績を見て、もし悪ければそれ相応の評価を与える、というのが正攻法となるでしょう。

代表的な例をご紹介しましたが、全体としては、休憩の多い社員1人に対して特別な措置を講じる、というのはなかなか難しい状態と言えます。特定の1人を処罰するために社内規定を考えるのではなく、全体最適として「うちの会社」はどうするべきかを考え、必要な場合は規定を変更するのが良いでしょう。

【編集部より】
問題を抱える社員への対処法に関する記事はこちら。

職場の受動喫煙対策に関する、この他の記事はこちら。

執筆者紹介

田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。

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