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THE INNOVATION 革新の潮流


ブランド力に頼らず、「働く人」の魅力で採用を。キャリエール齋藤氏が描く「新卒採用の新しいかたち」とは

2016.07.05

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株式会社キャリエール 代表取締役の齋藤 恵美氏⓵

新卒採用市場を変革するサービスが登場した。新卒採用支援を行うキャリエールは、“採用担当者目線”で開発したOU-TALKで、いままでにない採用のプラットフォームの形成を目指す。「ブランド力がないため苦戦している中堅・中小企業の採用を変えたい」と語る、キャリエール代表の齋藤恵美氏に話を聞いた。
(企画・聞き手:@人事編集部、監修:株式会社イーディアス)

株式会社キャリエール 代表取締役
齋藤 恵美(さいとう・めぐみ)
さまざまな業界・職種を経験した後、親会社である株式会社オークネットに2005年入社。2007年より人事関連業務に従事し、2014年に新設された人財開発グループの統括マネージャーとなる。各種研修企画や人財開発体系構築、新卒採用を担当しながら、2015年2月より自らが提案した事業の責任者として、立ち上げたキャリエールの代表取締役を兼務する。
目次
  1. 「早期接触」が重要な今、ブランド力に左右されないサービスが求められている
  2. 本当に伝えたい情報は画一的なフォームでは載せられない。
    事業理解や仕事理解は「人」が伝えるべき
  3. 就活も「スマート化」の時代。リクルーター面談もWebを活用することで、企業・学生の双方がコストをかけずに時間を有効に使える
  4. OU-TALKを通じて、中堅・中小企業の採用を支援し、学生のミスマッチを減らしたい

「早期接触」が重要な今、ブランド力に左右されないサービスが求められている

-ここ数年、採用環境が目まぐるしく変わる中、優秀な学生獲得のために、インターンシップを代表とする「早期接触」がキーワードになっている。しかし、企業ブランド力を持ち合わせていないBtoB企業や中堅・中小企業などは苦戦を強いられている。

齋藤 ブランド力を持っている企業と、そうでない企業との格差は年々広がっています。その中で、画一的に「早期接触=インターンシップ」という図式ができあがっていて、特に学生側の動きが活発化しています。そこに対応したいのですが、我々中堅・中小企業にとってはそう簡単ではありません。本番の採用活動と同様に、インターンシップの募集もナビサイトを使うという流れが変わらないため、結局はブランド力がモノを言うのだと実感しています。

-具体的には何が課題なのか。

齋藤 「早期接触」をキーワードに、我々もナビサイト営業担当者のアドバイスのもと、ここ2年間インターンシップを実施しています。参加する学生に事業理解や仕事理解をしてもらうため、私達なりに試行錯誤をしてプログラムを考えていますが、ナビサイトや自社の採用ページで募集をしてもほぼ応募が来ません。おそらく学生は、プログラムの内容よりも、まずは企業名で探していると思いますし、プログラムのカテゴリーで探しても同じ内容であれば名前を知っている企業を選ぶんだろうなと感じています。

インターンシップは、仕事理解を促す大切な機会だということは認識していますが、中堅・中小企業にとっては、ブランド力に左右されずに学生と「早期接触」ができる機会こそが大事であり、それを実現させてくれるようなサービスが求められているのです。

OUT-TALKの概念図

【OU-TALK概念図】
OU-TALKがプラットフォームの役割を果たす。企業側が登録しているOU※を学生が検索し、コンタクトをとると、OUは学生情報を閲覧することができ、学生と接触ができる。チャットやSkypeを使ってバーチャル上で会話ができるため、場所や時間の制約を受けずに効率よく自社選考へ誘導することが可能だ。内定を出した学生に対して、連絡や研修のための資料を添付するなど内定者管理としての使い方もできる。早期接触から採用までを一括して効率よく運用できる点も、採用担当者のリソースが限られる中小企業にとって魅力となるだろう。
※OU:出身大学や性別にとらわれない社会人の先輩の意味。造語

本当に伝えたい情報は画一的なフォームでは載せられない。
事業理解や仕事理解は「人」が伝えるべき

-ナビサイトでは企業の魅力を十分に伝えきれないため、各社が独自のサイトやSNS活用に力を入れだしているのが業界の流れだ。ただし、学生側による、ナビサイトでまずは企業を探すという活動そのものは大きく変わっていない。

齋藤 現状で言うと、ナビサイトでの情報発信は、学生を採用するための「広告」と言えます。「広告」である以上、定形フォームの中ではボリュームが限られますし、アピール内容中心に載せるのが実態です。中途で入社する方や転職活動をしているビジネスマンであれば、読んだ時に「少し大げさに書かれているな」ということをきっと理解できるでしょう。でも、学生はおそらくわからない。そこが問題だと感じています。例えば給与、福利厚生や勤務時間などの勤務条件であれば、画一的に書かれた情報で済むでしょう。しかし、企業側が学生に本当に理解してほしいのは、どんなビジネスをしていて、どんな人が働いていて、そのビジネスが世の中にどんな貢献をしているのか。そのために当社の社員はこんな仕事をやっていて、お客さんからこんな声をいただきますなど。そのような情報をマーケットの動きと一緒に知ってもらうことが、本来の企業理解につながるのではないでしょうか。画一的なフォームで載せられるものでない。となれば、それは人が伝えなければいけないと思います。

-確かに、選考で採用担当者や役員にしか会う機会がないと、実際に働いているのはどんな人で、職場の雰囲気はどうなのかは学生に伝わりにくい。

齋藤 私達が就活を行っていた時代にインターネットはありませんでしたが(笑)、OB・OG訪問は当たり前、なるべく多くの先輩から話を聞きました。OU-TALKを通じて、「本来の就職活動ってこうだよね」と伝えていく。そういう役割を担えるサービスになれれば一番良いと考えています。その職場で働いている人の雰囲気や社風、人間関係などは、社員との接触がなければなかなか伝えられないですよね。

OU-TALKイメージ

【OU-TALKイメージ(学生が利用するスマートフォンの場合)】
OU-TALKとは企業で働くOUとSkypeやチャットを使って、時間や場所を選ばずバーチャルに接触しながら効率的な採用・就職活動ができるクローズドマッチングサービス。PC、スマホ、タブレットで利用ができる。学生が企業名ではなく「キャリア」「職種」「趣味・志向」など“働く人”の情報をキーに検索するため、特にBtoB企業や中堅・中小企業などブランド力、母集団形成に課題を持つ企業への効果が期待される。学生側の利用は大学1年生からできるため、長期スパンで学生とのコネクションを醸成できる。

就活も「スマート化」の時代。リクルーター面談もWebを活用することで、企業・学生の双方がコストをかけずに時間を有効に使える

-2017卒採用の場合は、3月の広報解禁から6月の選考開始まで3カ月。学生にとって情報収集や自己分析といったじっくり考える時間がなかった。十分な事業理解ができないまま選考を受けてしまうことは、内定辞退だけでなく、早期離職にもつながる。

齋藤 今年は3月からのスタートという前提で動いていましたが、それよりも前に双方向で情報交換ができるような機会があれば、学生にとっては早い段階で自分がどのような仕事をしたいのか、どのような企業に入りたいのかが掴めるでしょうし、企業側にとっては、きちんと自社のことを理解した学生を選考できたと思います。もちろん、その観点でもインターンシップは有効だと考えます。また、学生と社員が接触できる機会として、「リクルーター」を活用する流れが再び脚光をあびています。最近、伊藤忠商事さんが社員の職種や所属部署などの情報を学生向けに公開して、接触を促す取り組みを始めましたが、伊藤忠商事さんぐらいのブランド力のある大手でもそこまで力を入れるというのは、理由の1つに、ブランド名だけではミスマッチが起こりうると考えているのかもしれませんね。

-今年は内定辞退の数は昨年より減るかもしれないが、入社後の早期退職が増える可能性はある。そちらの方が企業にとっては問題だ。OU-TALKの場合は、大学3年生の3月の就職活動解禁(広報活動)に限らず、大学1年生でも利用できる。早い段階で、自分がどういう仕事がむいているのか、将来どんなことをやりたいのか、社会人の先輩を通じて知ることができる。

齋藤 企業理解というよりは、仕事理解のできる点がポイントです。自分の強みが世の中のどんなことに生きるのか、仕事理解と自己理解を早期から意識できるようになる。それをキャリアセンターからではなく、働いている人から学べるのです。実は、学生が企業を選ぶ選択時のポイントの中で、「誰と一緒に働くか」のウエイトは大きいというデータがあります。「人」を通じて仕事の内容を知ることができるのは、学生にとってもメリットがあるはずです。

-今年は就活期間が短くなったことも影響したせいか、ある調査データによると、OB・OG訪問のような先輩から話を聞く機会が前年より減っている。企業側は、自社のことをよく理解してもらうために「リクルーター活用」を重要な戦略として位置づけているものの、学生側は活動期間が短くなれば、その余裕もなくなってしまう。

OUT―TALKのイメージ図


Skypeやチャットは時間と場所をとらずにできる点が魅力。学生があらかじめ条件検索から話をしたいリクルーターを探して、チャットで気軽にやりとりができる。もっと深い話をしたい時はリクルーターとSkypeを使って顔を見ながらやりとりができる。

基本的には相互のやりとりは記録されるため、企業管理者(採用担当者)がフィードバックを通じた「リクルーター育成」もできる。リクルーター面談の懸念点である「不可視」を解消している点でも優れており、「こういう話し方をすれば良い」「このタイミングでこの質問をすれば良い」など具体的な指摘もできるようになる。

齋藤 企業側はリクルーターを活用したいものの、学生からすれば、3月以降は連日企業説明会があって、エントリーシートや課題を複数提出しなければならないという状況にあり、移動時間をかけて、誰かと会うことにあまり時間をかけられないでしょう。それが、チャットやスカイプであれば解消できる。リクルーターも仕事中のすき間時間を使って、複数の学生と会うことができるわけです。

-この流れは学生側も期待している。これからの就活は「スマート化」が主流となる。「@人事アカデミーVol.5」でも話題に取り上げられたが、学生側は合同説明会や企業説明会を無駄に感じている。採用担当者がHPにも書かれていることをただ話すだけで、多数の学生相手ではしっかり向き合って話を聞くこともできない。すでに一部の企業は、動画を使った説明会を導入しているが、OB・OG訪問もいずれWeb上で実施するのというのも当然の流れとして考えられるだろう。

齋藤 当社でインターンシップを実施した際に、学生にOU-TALKを使用した際のメリットについて議論をしてもらいました。両極端の意見が出されて、「コミュニケーションが得意ではない学生が家に居ながら自然体でできる意味で良い」という意見が半分。反対に、「コミュニケーションに長けた学生が就活の効率化を考えて利用する」という意見も半分ありました。確かに、私が合説に出展していると、なかなかブースの席に着けない学生、周囲の目を気にして深掘りした質問ができないという学生をよく見かけます。OU-TALKであれば、時間をとってじっくりと一人ひとりに向き合って話を聞くこともできるでしょう。

-OU-TALKはいろいろな使い方が考えられる。地方の学生に対して、企業説明会は動画を使ってWeb上で行い、1次選考はOU-TALKで実施してしまう。最終面接だけ、地方から出てきてもらうようにすれば学生側の負担も少なくて済むはずだ。

OU-TALKを通じて、中堅・中小企業の採用を支援し、学生のミスマッチを減らしたい

-OU-TALKを今後、どのように展開していきたいと考えるか。

齋藤 極端なことを言いますと、ネームバリュー(ブランド力)のある企業は、このサービスをご利用いただいてもあまりメリットを感じられないかもしれませんね。むしろ、そういった企業からすれば、企業名で検索してもらったほうが欲しい人材に会えるでしょう。このサービスは、やはりブランド力に優位性のない中堅・中小企業やBtoBの企業にこそ活用していただけると考えています。
一方で、OU-TALKは「人」で魅力を伝えるツールのため、活用するには「OU」となる働く社員が魅力的でなければ、欲しい人材を惹きつけられないというのはあります。その点では、リクルーターの育成ツールとして使っていただきながら、OU-TALKを通じて自社の採用力を高めていただきたいです。

-OU-TALKが、いまの就職活動または採用活動の流れを変えられますか。

齋藤 「大手志向」や「安定志向」は経済状況や時代の流れが影響している面がありますので、流れを変えられるかどうかはわかりません(笑)。しかし中堅・中小企業は太刀打ちできないままかというとそうでもありません。ひとつ、データを紹介します。就職活動中の学生の傾向で、就活初期はどうしても「企業名」や「業種」などを軸にして企業探しをするのですが、就職先を絞る活動の終盤に近づくほど、「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」を重視して企業を選ぶということがわかりました。さらに、「やりがいのある仕事であれば、中堅・中小企業でも良い」と答える学生の割合は、むしろ大手志向の学生より多いことがわかったのです。この2つデータがあったからこそ、OU-TALKを開発したのです。
OU-TALKが学生に広く使われるサービスとして認知されるようになれば、「知名度のある会社」という軸で企業選びをしない学生が増えていく可能性があります。 さらに、最近増えている紹介サービスと違って、最初のコンタクトは企業側から原則できません。学生側の、この人の話を聞いてみたいという“働きかけ”からスタートするため、主体性の高い学生がこのサービスを利用する。主体的に動く判断ができる学生は、どの企業でもターゲット層である可能性は高いと思います。中堅・中小に入るからこそ、「こんなことが実現できるのではないか」と考えられる学生に会えるチャンスに繋がると考えています。

-OU-TALKを通じて、キャリエールが実現したいことを教えてください。

齋藤 合説に1回参加する程度の価格で年間を通じてご利用いただけます。このサービスを広く企業様にご利用いただきたいと考えていますが、一方で当社はただ利益を追求することが本意ではありません。つまり、1つは我々自社の採用活動に役立てたい、そしてもう1つは圧倒的に大手企業が強い今の新卒採用市場の中で、本気で若い人材を育てたいと考えながらも採用に苦労している、中堅・中小企業の一助となりたいと考えています。
同じ課題を抱える企業群で手を組んで、「魅力的な学生をシェアしませんか?」というのが私達のサービス提供のスタンス。そこに共感していただける企業様にOU-TALKを利用していいただきたいと考えています。

小さなうねりではあると思いますが、OU-TALKを通じて、新卒採用における企業格差が生じている状態と、一方で優位に就活を進められる学生とそうでない学生との差を解消すること。そして、仕事理解、自己理解が不十分なまま就職して起きてしまうミスマッチを減らすことに貢献したいというのが一番の願いです。

どうもありがとうございました。【文中・敬称略】
(取材:2016年6月20日:キャリエール赤坂オフィス)

■会社名:株式会社キャリエール
■本社所在地:東京都港区北青山2-5-8 青山OMスクエア
■事業内容:新卒採用支援事業(OU-TALK企画・運営・管理)」「研修事業」「コンサルティング事業」「ソリューション開発事業」「中途採用紹介事業」など
■設立:2015年2月
■資本金:1,000万円
■代表者:代表取締役 齋藤 恵美
■社員数:4人(2016年1月時点)
■問い合わせ:03-6440-2522
■E-mail:support@carriere-inc.co.jp
■URL:http://www.carriere-inc.co.jp/

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OU-TALKを使ってリクルーターと学生が
Skypeで会話をする(写真はイメージ)

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